───How do you like fate?───
カルデアの食堂。イスに座りテーブルの上で手を組み口元を隠す藤丸とそんな藤丸の後方に立っているマシュ。
「カルデアからおはようございます、藤丸立香です」
「マシュ・キリエライトです。巷ではドすけべ礼装、デンジャラス・ビーストと呼ばれ、わたしは大変遺憾です」
マシュのテンション、トーンは低い。少しばかり怒っているように見えるのは気のせいではない。
そんなマシュを尻目に藤丸の目が光る。
「ふ、これを見ている皆さんはマシュが今回どんな格好するか楽しみにしてたでしょう………
残 念 だ っ た な !
今回のマシュは普通に制服です。マシュのスク水が見たいと子ギルと一緒に議論しましたが、マシュに却下されました。オレらの声は届かなかったよ……」
後ろで藤丸をジロッと睨むマシュ。顔を赤くして睨む姿を可愛いと思ってはいけない。
「えー、今回はサンフランシスコに到着という流れになります。では、どうぞー」
ちゃんと半ヘルを被らせたナーサリーライムを後ろに乗せ、バイクを駆る藤丸。
「すごい、すごいわっ!マスターっ!景色が後ろに流れていくわっ!」
ナーサリーライムが喜びながら景色を見ているのを藤丸も喜んでいた。
カルデアという閉鎖空間の中で年少のサーヴァントに対して娯楽は少ない。こういった旅で楽しんで貰えればマスター冥利に尽きるというものだった。
「ナーサリーは次に行きたい所はある?」
藤丸は何となしにナーサリーライムに聞いてみた。
「ええ、マスターの生まれ故郷の日本に行ってみたいわっ!黒ひげのおじ様が言ってらしたアキバとコミケっていうところに行きたいの!いっぱい絵本があるんでしょう?」
黒髭ギルティ。ええ、たくさんありますね、大人向けの絵本がね。藤丸はダヴィンチちゃんにインカムから通信を入れる。
「ダヴィンチちゃん………」
『ああ、わかってるとも。ルーラーたちに連絡しておいた。彼を火刑に処してもらおう』
ダヴィンチちゃんも看過できなかったのかダヴィンチちゃんの重い一言に藤丸は頷く。
「コミケとか、幼子に教えるなよな……くっそ、部屋に戻ってゲームしたい」
流石に幼子にコミケは早すぎる。そう孔明は呟いていた。
孔明なんかはオタク文化に寛容というか、ぶっちゃけオタクではあるがゲーオタだ。そんな孔明はバイクのサイドカーに座って、口元が寂しいのか煙草、いやシガレットチョコをくわえている。
孔明は孔明で口では不満を言ってはいたが、隣のイスカンダルと旅が出来るのが嬉しいのだろう、何時もの不満げな表情が幾分和らいでいた。
「マスター、日も暮れてきたけど宿はどうするんだ?」
モードレットが藤丸の隣を走りながら声をかける。ナーサリーライムをチラチラ見るのは羨ましいからだろうか。
恋する乙女とはよく言ったもので、モードレットは藤丸の前では狂犬どころかなつきまくったワンコである。モードレットの様子を見た劇作家どもが狂ったように物語を書いているぐらいだ。
アーサー王の物語に藤丸をモデルにした人物を入れたモードレットの恋愛の物語。これを見たモードレットは劇作家どもを追いかけ回すことになるが。
「そうだなぁ………テント張って野宿か、空き家があれば其処にか…………飯より宿だな」
「まぁ、結構なノープランな旅だしなぁ。なら、俺がひとっ走りして探してこようか?大将」
金時の提案に考える藤丸。藤丸は藤丸でテントを張るのも悪くないと思っているが、夜間のキャンプ地は重要であることは自覚している。空き家があるならばそれに越したことはない。
今更ながら、今、藤丸たちがいるのは1783年の独立戦争終盤のアメリカである。更にそこに魔術王の介入まで入っている。出来るかぎり危険な地は選びたくはないのである。
「んぁー、じゃあ、頼めるかなぁ?」
「了解だ、大将。ちょっくら行ってくるぜ」
手を上げて、少し暗くなった道を走っていく金時。それを見届けたら、一旦、全員はエンジンを止めてティータイムに入る。
バイクから離れた藤丸はお茶を飲みながら、ぼけーっと物思いに耽っていた。カルデアにアルバイト感覚と旅行気分で来てみればいつの間にか人類を救うという壮大なことになってしまった。
正直なところを言うと、ぶっちゃけ藤丸は世界を救うとか魔術王とかどうでもいいから旅がしたいと思っている旅人気質な男だった。
そんな藤丸の様子をイスカンダルはくっくっと笑いコーヒーを飲みながら見ている。
イスカンダルから見た藤丸という男は実に面白い男だった。何せ、基本的にサーヴァント相手に気後れしない。胆が据わっているというか、あのギルガメッシュにタメ口で話してる姿を見たときは驚いた。エルキドゥが「ついに僕以外に友達が出来たんだね」と涙ぐんでいたのは大爆笑ものだったが。
イスカンダルはこの藤丸立香というマスターについて考える。藤丸立香はこれまでの人理救済の旅において様々な時代を旅をしてきている。その時代の中で藤丸は様々な英雄と話し、轡を並べてきた。英雄の器ではあるのだろう。では、王としての器は?
ギルガメッシュとイスカンダルが雑談の流れで話していた時である。
『あれが王としての器かあるかどうか、だと?あるわけがなかろう。あれは誰かを導くことなどもせぬし、支配しようとも思っておらぬ。王よりもゲームで言う主人公気質。どこぞの赤毛の冒険者のようなものよ。
あれはな、ただバカをやりながら旅をしたいと思ってるだけに過ぎぬ。他のサーヴァントも同じであろうよ。
いや、その通りと、イスカンダルは思う。この男との旅はオケアノスへ目指していた時とはまた別のものだ。自らがではなく他人から誘われて行くのも悪くないと。
「なぁ、孔明。帰ったらG〇ェネ教えてくんね?クリア出来ないステージあんだけど」
「ああ、構わないけど……クリア出来ないか?意外と今回から戦艦ごり押しでもいけるだろ?」
「いや、なんでか知らんがこっちは命中70%でも攻撃あたらんし、相手は40%で当てるんだぜ?戦艦がいつの間にか沈んでるんだよなぁ」
そんな藤丸はイスに座って、膝の上にお茶を飲んでるジャックを乗せて孔明とゲーム談義をしている。
金時のバイクの音が聞こえる。金時が帰ってきたのだろう。
全員がおや?と思う。金時がしょっぱい顔をしている。それに隣に並走しているのは自転車?見たら本格的なレース用の自転車だからバイクに並走出来るぐらいわかるのだが。
「ん?あれ?メドゥーサ?」
「すみません、マスター。遅ればせながらライダー、メドゥーサ、到着致しました」
そうメドゥーサが金時のバイクと自転車で並走していた。いや、何というか全員が思った。メドゥーサ、なんかエロいと。
最終再臨より露出は少ない自転車用のライダースーツ。一回り、サイズが小さいのだろうか、彼女のスタイルがかなり強調されていた。
ああ、それでか。金時の顔がしょっぱい顔をしていたのは。全員が納得した。
彼女の首元から流れる汗がライダースーツの開いた胸元を伝う。ゴクリと男子勢は唾を飲む。イスカンダルなんか「おぉっ!!」と言いながらのガン見である。ここにフェルグスがいたらどうなっていたことやら。
「やれやれ、男子勢は………欲望に忠実だねぇ…」
「むぅ…………」
ダヴィンチちゃんがやれやれと首を振る。マシュは藤丸がメドゥーサの胸を見ているのを頬を膨らませて睨んでいた。
メドゥーサの胸元を見ていた藤丸はモードレットに尻を蹴られ、金時の報告を聞いていく。
「少し、行った先に集落らしきものがあったが、その手前にバイコーンの群れがいたぜ…」
「あの馬なのか鹿なのかわからん奴が一杯いるのか………」
藤丸がどうするか考える。セイバーは今、モードレットしかいない。火力不足が否めない。
「ふっ、藤丸くんらしくない。私たちは何時だって正面突破じゃないかっ!!」
ダヴィンチちゃんがサムズアップしてくる。OKとばかりに藤丸はサムズアップし返す。
「ふっ、そうだった。オレたちは何時だって前のめりで正面突破だったな!全員突撃すっぞっ!!」
「「「「おーっ!!!」」」」
暴走族のノリで藤丸が両手を上げれば全員が手を上げる。我等カルデアに余計な策など不要。何時如何なる時も正面突破。
全員がバイクを走らせれば件のバイコーンの群れが見えた。藤丸はバイクのアクセルをフルスロットルでバイコーンの群れに飛び出す。
「マイクチェックの時間だオラァっ!!!」
それを遠目に見ていた野良サーヴァントの一人は語る。
「あれが普通の人間とか嘘だと思う」
次はちょっと京都編書きたい。