蒼が導く幻想の旅路~東方蒼幻録~   作:wingurd

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更新完了しました。
約2か月、やっぱり遅いですね。
前よりはましでしたが。

今回で対紫戦決着です。
この後は、異変終結宴会で異変パートは終了、資料集更新を挟んでから後日談へと移行します。
主人公の新能力を使っての本格戦闘ですが、うん、はっきり言ってチートですね。
まあ、主人公最強設定なので気にしませんが、不快に思う方はごめんなさい。
変える予定はありませんのであしからず。

では、前置き長々話しても仕方ないので早速始めましょう。
対紫戦決着パート、お楽しみください。


幻蒼異変 第一章 《conviction resonance》part10

紅魔館客室(現在は永琳の処置室)

 

永琳

「・・・終わったわね。後は目覚めるのを待つだけか。」

 

八雲紫に気絶させられ運ばれてきた霊夢達3人の処置を終え、他に異常はないかを検査していた永琳は、一つ大きな息を吐き腰を下ろした。

 

永琳

(一通り検査したけど、やはり絶妙に手加減がされている。あくまでも気絶させることが目的か・・・。まあ、顔見知りを怪我させるような人物ではないわね、彼女は。でも、だとしたら腑に落ちないわね。最初から強行手段を取るつもりなら、わざわざ紅魔館を襲撃して彼の怒りを買う必要はなかったはず・・・。それなら、霊夢達の事を気にする必要もないし、彼が一人の時を狙えば良い。紫の能力なら造作もないはずだし・・・。一体何のために・・・?)

 

3人の状態を確認した永琳は、紫が手加減していたことを看破していた。

しかし、何故わざわざ紅魔館を襲撃するやりかたを取ったのかが分からなかった永琳は思考していた。

その時、勢い良く処置室の扉が開け放たれる。

反射的に入口を見た永琳は、肩で息をしている一人の女性の姿を捉えた。

 

永琳

「誰!?・・・あら?貴方は・・・。」

 

???

「・・・はあ、はあ。す、すみません!ショウさんと紫さんは何処に!?」

 

この女性の訪問が、永琳に今回の事件の全ての答えをもたらす事になる。

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

ショウ(code:SoulEater)

「噛み砕け!!」

 

「ぐ!?」

 

ラグナの力を使い、振り抜いた刀身から獣に変化した魔素を放ち、紫を追い詰める。

対する紫は絶対的な優位を崩された上、ショウが手にいれた蒼の力を把握出来ない為、防戦一方であった。

 

(どういう事よ?あの男の力は全て境界を通して見てきたはず。であるなら、私に力の境界操作が出来ないはずはない・・・。温存していた?いや、ならスカーレット姉妹との戦いの際に使うはず。あれほど満身創痍になりながら、力は温存していたなどとは考えられない・・・。)

 

紫は、ショウの能力を境界を通して全て把握していた。

先程は、把握していた力を操作し、自分の支配下に置いたが、今のショウの能力を操作する事が出来ず困惑していた。

 

ショウ(code:SoulEater)

「・・・考え事とは余裕だな?気を抜くなんて致命的だぜ?」

 

思考していた紫の注意は散漫になっており、射程圏内にショウが接近していた事に気付くのが遅れていた。

そして、ショウの手にはスペルカードが握られていたが、そのカードは今までショウが使用していたカードとはデザインが違っていた。

 

「!?・・・あら?何かと思えばスペルカード?私には通じないと分かってるわよね?」

 

ショウが発動しようとしていたのはスペルカードだと分かった紫は、自身には通じないと完全に油断していた。

だが、ショウは表情を全く変えずに言い放った。

 

ショウ(code:SoulEater)

「・・・その慢心と油断が命取りだ。その代償は受けてもらうぞ!反逆『リベリオンシザーズ』!!」

 

「!?」

 

スペルカードが赤黒い光を放つと、その光と同じような色のオーラがショウの持っている剣から発生する。

オーラが纏われた剣をショウが振り抜くと、剣からオーラと同じ赤黒い光を放つ刃状の弾幕が無数に放たれる。

 

(見たことはないスペル。でも、私には関係ないわ!境界操作で―――!?操作・・・出来ない!?くっ、仕方ない!)

 

紫は境界操作でスペルを掌握しようと試みたが、結果は失敗。

仕方なく、迎撃用の弾幕を放つ。

ショウが放った弾幕は追尾型で、紫をホーミングで追い詰めていたが、至近距離に迫った弾幕に迎撃用の弾幕を当て、相殺した。

しかし、ショウの新スペルの恐ろしさはここからだった・・・

 

ショウ(code:SoulEater)

「・・・相殺お見事・・・。そして・・・地獄の始まりだ。反逆の意思を・・・示せ!!!」

 

ショウの叫びと同時に、砕けた弾幕の破片が周囲に弾け、残っていた弾幕に吸収される。

すると、破片を吸収した弾幕が巨大化し、凄まじい速度で紫に迫った。

 

「!?」

 

ショウ(code:SoulEater)

「・・・反逆と名が付くスペルなんだから、多少は警戒するかと思ったが、意外に呆気なかったな・・・。喰われろ!」

 

巨大化した弾幕は速度だけでなく、ホーミング性能も上昇しており、瞬く間に紫の逃げ道を奪っていった。

 

「ぐっ・・・まだよ!境界『魅力的な四重結界』!!」

 

周囲を囲まれた紫は、周囲を防御するスペルを展開。

スペル弾幕を全て防ぐ。

しかし、全ての弾幕が消されたにも関わらず、ショウの顔に焦りや動揺は全くなかった。

 

ショウ(code:SoulEater)

「馬鹿が。さっき言っただろ?そのスペルは反逆の名前を持つスペルだ。破壊すれば、更なる反逆の意思を持って襲いかかる。これで、終いだ・・・。」

 

砕かれたスペル弾幕の破片が一つに集まり、巨大な球体を作り出す。

その球体の表面は僅かに胎動しており、まるで生き物のようであった。

そして・・・

 

ショウ(code:SoulEater)

「・・・反逆の刃よ。その刀身に宿す復讐の炎で、仇成す力を焼き尽くせ!!」

 

ショウの咆哮に呼応するように球体は弾け、再び刃状の弾幕を形成するが、その弾幕には先程とは違い黒炎が纏われていた。

 

「少しばかり強化された所で、私を倒せるなどと思い上がるな!」

 

紫は再び弾幕を放ち、飛来するスペル弾幕を相殺しようとする。

しかし、紫の思惑は外れ、相殺しようと放った弾幕は、スペル弾幕の黒炎に触れた瞬間、消滅した。

 

「な!?意にも介さず消滅した!?」

 

ショウ(code:SoulEater)

「反逆の言葉の意味をまだ理解できないか?このスペルの特性は、破壊されれば、更なる反逆の意思を持って襲いかかる。更に、破壊された攻撃の特性を記憶し、一度受けた攻撃は、纏われている黒炎が無効化するため、二度は通じなくなる特性を持つ。だから言ったろ、その油断と慢心が命取りだってな!」

 

「!?しまっ――がはっ!?」

 

相殺出来ずに虚をつかれた紫は弾幕の直撃を受け、体勢を崩す。

体勢を崩した紫に向かって跳躍し、手にしている剣を変形させた。

大剣の持ち手を伸ばし、刀身は根本から折れ、そこから赤黒い魔素が発生、刃を形成し、その見た目はまさしく《鎌》に変わる。

その鎌を紫に向かって振り上げたショウ。

その手にはスペルカードが握られていた。

 

ショウ(code:SoulEater)

「一気に畳み掛ける!!凶刃『インフェルニティデスサイズ』!!」

 

鎌に変化した刀身がスペル宣言と同時に揺らぎ、刀身が複数の刃を形成する。

ショウがその鎌を振り抜くと、オリジナルの刀身以外が刃状の弾幕となり、回転しながら曲線を描き、紫へと殺到した。

体勢を崩していた紫は回避行動を取れず、殺到する弾幕を持っていた傘で防ぐ。

 

「ぐ!?何て力なの!?」

 

かろうじてガードした紫だが、オリジナルの刀身の一撃を受けた際の傘から伝わる力に耐えきれず膝をつく。

それをショウは見逃さない。

 

ショウ(code:SoulEater)

「まだ終わりじゃねえぞ!」

 

ガシッ

 

「!?しまっ――放せ!!」

 

ドゴッ

 

「がっ!?――ぐ・・・あっ――」

 

膝をついた紫の首を掴み、無理やり引きずり起こす。

そして、がら空きの腹部に強烈なボディーブローを叩き込んだ。

鳩尾にクリーンヒットした一撃に、紫はたまらず体をくの字に折り曲げた。

眼前にいるショウから、あろうことか視線をはずしてしまう。

つまり、紫はショウの次の一撃を完全に無防備な状態で受けることになるのだった。

 

ショウ(code:SoulEater)

「悪いがテメエには・・・容赦しねえぞ!『闇に・・・喰われろ』!!」

 

「うああああ!?」

 

ショウは咆哮と共に、魔素を纏った左手で紫を掴み上げる。

同時に、ショウの体から大量の魔素が吹き出し、その全てが、左手に拘束されている紫に襲いかかった。

 

ショウ(code:SoulEater)

「砕け散れ!!」

 

言葉と共に左手に力を込めると、爆散するように魔素が弾け、紫は衝撃により吹き飛ばされる。

 

「くっ・・・まだ、まだよ・・・うっ!?な、何?・・・体が、上手く動かない・・・?」

 

ショウ(code:SoulEater)

「悪いが、ここまでだ。」

 

諦めない紫は立ち上がろうとするが、体に力が入らず立ち上がれない。

その姿を見下ろすショウがいたが、紫の瞳にショウが映ると、その姿には異変が起こっていた。

 

「な!?傷が・・・瞬く間に治癒していく?」

 

紫の眼前に立つショウの体についていた無数の傷が、凄まじい速度で治癒していたのだ。

 

ショウ(code:SoulEater)

「俺の能力の殆どを知っていたことから考えると、お前はフランと俺の戦闘を見ていたんだろ?だったら、今お前自身と俺に起きていることが何なのかは、分かるはずだ。」

 

「・・・・・・まさか!?フランドール・スカーレットが暴走時に使用していた能力・・・ソウルイーター!?」

 

ショウ(code:SoulEater)

「正解だ。お前の生命力を吸収し、俺自身に還元した。・・・悪いが、もうお前に勝ち目はない。体力にかなりの差が出来た上に、お前は俺の新しい能力を掌握出来ていない。諦めるんだな。」

 

既に勝負は見えていた。

圧倒的な力の差を見せつけ、完膚無きまで叩きのめした。

結果、ショウはほぼ無傷なのに対し、紫は満身創痍。

至るところから鮮血を流し、体はボロボロ。

生命力までも奪われ、立ち上がることも出来ず地を舐めている。

勝負は誰の目から見ても決していた―――

 

その様子を見ていた視線が二つ。

ショウを助けに来た魔理沙とフランの物だ。

二人はショウが勝利したことに安堵していたが、ショウの近くには行かず、何故か呆然としていた。

 

魔理沙

「・・・勝った、のか?でも・・・ショウのあの姿、何なんだ?凄まじい力だけど・・・何故か、全然安心できないぜ・・・。」

 

フラン

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ショウと紫との闘いを近くで見ていた魔理沙とフランは、戦闘の苛烈さに加え、ショウの変化に戸惑い、その場を動くことが出来なかった。

魔理沙はショウの姿を見て、力の強さを認識したが、言い知れない不安を抱いていた。

フランはショウを見つめたまま微動だにしない。

 

フラン

「・・・・・・・・・・・・ダメ」

 

魔理沙

「?・・・フラン?どうした―――!?」

 

微動だにしないフランが、ぼそりと呟く。

フランの言葉に反応し、フランへ視線を向けた魔理沙の瞳には、涙を流しながらショウの方へ手を伸ばすフランの姿があった。

 

フラン

「お兄ちゃん!それ以上先に・・・行っちゃダメ!!!」

 

声を張り上げ、ショウへ自分の願いを叫ぶ。

フランは知っていた。

ショウが今どのような状態なのかを。

何故なら、今のショウは昨日の自分と同じだから。

感情を爆発させてしまい、それを蒼の力で暴走させられている。

フランは秘めた願いを求める心を。

ショウは身を焦がす程の紫への殺意を。

そして、暴走させられた感情がやがて行き着くのは、全てを憎悪し、全てを壊そうとする狂気しかないのだ。

フランは強く願う。

自分を狂気から救ってくれた人が、自分と同じ狂気に堕ちる所など見たくない。

認めたくない。

嫌だ、嫌だ、嫌だ!

そんなの・・・・・・許さない!!!

 

フランの願いは、ショウの狂気に対する明確な敵意になり、ショウが狂気に堕ちるという事象を完全に敵と見なした。

フランはまだ知らない。

自分を苦しめた自身の能力が、蒼の力で変質していることを。

救いを求める様に伸ばした手に、何かを掴んだような感覚を覚えた。

 

フラン

(――――――!?)

 

フランは、自分の手に感じた未知の感覚に反射するように反応し、咄嗟に拳を握った。

掴んだ物を握りつぶした様な感覚を覚える。

すると、手にした感覚は霧散し、もう何も感じなかった。

 

フラン

(今の・・・何?)

 

フラン自身にも何が起こったのかわからない。

しかし、この時のフランの行動が、結果的にショウを救うこととなった。

その事をフランが知るのはまだ先の話であるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少しだけ遡り、紫に諦めの言葉を告げたあとのこと

 

「くっ・・・!?どこまで、規格外なのよ!」

 

敗北の事実を告げられた紫は苛立ちを露にする。

怒りに支配された感情を爆発させ、憎悪が籠った目をショウへと向けた。

しかしショウは、その視線を受け流し、這いつくばる紫へ殺意を込めた視線を向け、冷たく言い放った。

 

ショウ(code:SoulEater)

「・・・終わりだ外道。せめてもの情けだ。痛みなくあの世に送ってやる・・・。」

 

終わりを告げる言葉を放ち、左手を異形化させて紫へと向けるショウ。

 

「ぐっ!?はな、せ・・・!」

 

異形化させた腕で紫を掴み上げ、残っている僅かな生命力も根こそぎ奪い取ろうとする。

無論、完全に殺す気であった。

 

ショウ(code:SoulEater)

「――――死ね。」

 

一つの命が幻想郷から消え去ろうとしていた。

そして、この時のショウは、内に秘めていた蒼の力により殺意を増幅されていた。

フランにも起こった感情の爆発。

この時ショウが抱いていた殺意は、フランが焦がれていた願いを求める感情と同じか、それ以上と言える程高く、引き金になった紫をこの世から消すまで、決して消えるはずが無いほど、激しい怒りに支配されていた。

その怒りがショウの内側から囁く。

 

《殺せ・・・》

 

《殺せ・・・!》

 

《大切な者を奪い取った仇を・・・許すな!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《コロセ!!!!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《それ以上先に・・・行っちゃダメ!!!》

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――パリン

 

 

 

 

 

 

 

 

???

「待って・・・ショウ・・・!!」

 

命の灯が消え去るその瞬間、殺意に支配されたショウの耳に、聞こえる筈のない声が届く。

 

ショウ(code:SoulEater)

「―――・・・!?その、声・・・?」

 

その声は未だに意識を取り戻していない筈のショウの大切な親友の声。

体の芯まで届いたその声に、ショウの意識は一時的に理性を取り戻し、掴んでいた紫から手を離した。

紫は重力に従い地面に倒れる。

死んではいないが、既に虫の息であり、後数秒手を離すのが遅れていたら、間違いなく紫の命は潰えていた。

 

ショウ(code:SoulEater)

「・・・アリ、ス・・・?」

 

アリス

「・・・はあ、はあ・・・。ショウ・・・もういい。殺す必要は・・・、ないわ。既に勝負は決して・・・うっ!?」

 

声はアリスの物だった。

だが、フランの一撃は間違いなく致命傷クラスの物であり、魔素で損傷を修復できる自分や、高い再生能力を持つレミリアやフランとは違い、永琳の治療で峠を越えたとは言え、予断が許されない状態であったはず。

少なくとも、後数日は目を覚まさないはずだと言うのは永琳の見立てであった。

しかし現実、アリスは意識を取り戻し、この場にいる。

ただ、相当無理をしているようで、話している最中に耐えきれず蹲ってしまった。

それを見たショウが、慌ててアリスの元に駆け寄り、その体を抱えた。

その姿は既に変わっており、髪は元の黒髪、服は黒を基調とした何時もの格好に戻っていた。

 

ショウ

「アリス!?・・・ったく、無茶しやがって・・・。しっかりしろ!」

 

アリス

「うっ・・・。ごめん、なさい・・・。八雲紫がここに来たと聞いて、無我夢中で・・・。」

 

ショウ

「直ぐに永琳さんの所に連れていく。それまでは気をしっかり持てよ?」

 

アリス

「あっ!?ちょっと・・・!?どさくさに紛れて!大丈夫だから下ろして!」

 

謝罪を口にしたアリスに対し、永琳の所へ連れていくと伝え、体を抱き抱える。

ちなみに、お姫様抱っこだ。

すると、みるみる顔を赤くしたアリスは、ショウの行動に文句を言ったが・・・

 

ショウ

「無茶をする奴の『大丈夫』程信用できない言葉はないな。大人しく抱えられてろ。」

 

と、アリスの意見を一蹴した。

 

アリス

「うっ!?・・・・・・・・・わかったわよ、もう。」

 

アリスは観念して大人しくなった。

顔はうつむいており、ショウから表情は見えなかったが、恥ずかしさのあまり、まるでトマトのように真っ赤だった。

しかし・・・

 

ショウ

(顔がかなり赤いな・・・。やっぱり未だ万全なわけがないか。急いで連れていこう。)

 

ショウは、そんな感情を全く理解していない、超鈍感野郎だった。

アリスはその事に気づいていないが、これが幸か不幸かは分からない。

 

魔理沙

「ショウ!大丈夫か!?」

 

フラン

「お兄ちゃん!」

 

ショウに近付かず様子を見ていた魔理沙達だったが、ショウの姿が元通りになったことで、抱いていた不安感がなくなっていた。

二人はそれを見て直ぐにショウの元へと駆け出す。

 

ショウ

「魔理沙、フランも。すまない・・・。心配かけたな。もう大丈夫だ。あの通り、もうあいつは戦えない。アリスを永琳さんの所に連れていくから、魔理沙達もついてきてくれ。」

 

二人

「わかった(ぜ)!」

 

アリスを抱えて歩き出したショウだが、不意に足を止め、振り返ることなく口を開く。

 

ショウ

「・・・・・・立て、八雲紫。死んじゃいない筈だ。アリスに免じて命まではとらない。だが、洗いざらい話してもらう。それと、霊夢、レミリア、咲夜さんに詫びてもらわなきゃならんからな。ついてこい・・・。一応、治療ぐらいなら頼んでやる。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ショウの言葉に返答はせず沈黙していたが、体はピクリと反応し、おぼつかないが体を起こした紫。

顔は下に向けたままであり、表情は見えない。

 

「・・・・・・・・・・・・なさい。」

 

ショウ

「?・・・・・・―――!?」

 

後ろから掠れるような声が聞こえる。

小さすぎて聞き取れないが、声が届いた瞬間、ショウの背後から凄まじい殺意が放たれた。

 

「・・・秘奥義『零式弾幕結界』」

 

ショウ

「な!?」

 

アリス

「紫!?馬鹿な真似はやめなさい!もう勝負は!?」

 

立ち上がれない紫は顔だけを上げ、ショウに右手をかざしていた。

逆の手にはスペルカードが握られており、倒れているうちに懐から出していたのだろう。

スペル宣言がされ、技は発動した。

ショウとアリスの視界は、七色に輝く弾幕に埋め尽くされる。

その弾幕密度は、先程の弾幕結界を遥かにしのぐ程膨大であり、ショウやアリスだけでなく、後ろからついてきていた魔理沙とフランも結界の中に捕らわれている。

 

「・・・あなたは、死ななきゃならない。貴方の存在は・・・くっ・・・故意、偶然に関かわらず・・・この世界、幻想郷に破滅を・・・もたらす。私の愛するこの世界は、私の命に代えても・・・『守る』!!!」

 

既に死に体の紫の言葉はか細く、殆ど聞き取ることは出来ない。

しかし、最後に発した『守る』と言う叫びは、ショウの耳に、紫が今まで発した言葉の中でも一番と言えるほどに響いていた。

それが示すのは、紫が抱く信念。

命に代えても守ると誓う、覚悟の意志であった。

 

ショウ

「・・・・・・魔理沙、フラン。こっちに来てくれ。アリスを頼む。」

 

魔理沙

「・・・わかった。任せとけ。」

 

フラン

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

ショウ

「・・・ああ、大丈夫だ。弾幕結界が無くなるまで、俺の傍から離れるなよ。」

 

魔理沙とフランにアリスを託し、紫と回りを囲む弾幕結界を睨み付けるが、その表情は先程とは違った。

怒りではなく、真剣な面持ち。

最大限に警戒しているといった表情で口を開く。

 

ショウ

「・・・・・・なるほどな。お前も俺と同類か・・・。命に代えても守りたいと願う物を、自分ではなく他の物と定める者。大切な物を守りたいと言う意志そのものが、自分の力になる純粋な願い・・・。分かるよ。俺も同じだから。でもな・・・―――。」

 

紫の本質を悟ったショウは、出会ってから初めて紫を認めた。

紫が抱く意志、覚悟は、自らが信じる最強の力。

守るために戦う力こそ、ショウが今まで見てきた力の中で、もっとも強い力だと信じている。

その力を強く持っている紫をショウは認めた。

しかし、だからこそ紫を許すことは出来ない。

絶望的な状況であろうと、ショウに敗北は許されない。

 

何故なら、紫は傷付けたから。

 

ショウの大切な者達《霊夢、咲夜、レミリア》を

 

何故なら、紫は奪おうとしているから。

 

ショウの大切な者達《アリス、魔理沙、フラン》を。

 

ショウ

「―――だからこそ、俺はお前を許さない!霊夢達を傷付け、今まさにアリス、魔理沙、フランを巻き込んでいる!彼女達は俺にとっての大切な者達だ!だから戦う!『守る』ために!!!」

 

ショウの力もまた、守るための力。

大切な者達《自身と繋がり、共に歩んでくれる親友達》を守るために命を懸ける―――

 

ショウ

「紡いだ記憶を力に変える・・・。世界を繋げ!!」

 

ショウの手に再び、揺らめく蒼い炎が輝く。

 

ショウ

「(力を借りるぞ・・・レイチェル!)幻蒼符『ファンタジア・インストール』code:Sylphide《シルフィード》、共鳴解放《レゾナンスブレイズ》!!!」

 

ショウの手に握られているカードから蒼い光が放たれ、それが大きくなりショウを包み込む。

近くにいたアリス達は眩しさから目をつむり、少したってから目を開いた。

 

三人

「――――――・・・!?」

 

三人の視界に写ったのは、目を疑う光景だった。

 

???

「―――偽装輝神『ツクヨミユニット・シャドウフェイク』」

 

目の前の人物が手にしたカードから金色に輝く光が放たれると、アリス達の周囲に魔法陣が展開され、薄いバリアの様な結界を形成した。

周囲から襲いかかる弾幕は、悉くバリアに弾かれ、衝撃も内側にいたアリス達には全く届かない。

アリス達は驚愕していたが、そのバリアの圧倒的な強度よりも、目の前の人物に驚いていた。

そこには、先程までショウがいた。

弾幕結界が形成されてからこの場所に来れる者など、空間転移を持つ八雲紫かその式である八雲藍くらいしかいない。

ならば、よほどのことがない限り、目の前の人物は先程までその場にいたショウのはずだが、その姿は似ても似つかない物であった。

 

「・・・くそ!どうして・・・何で凌げるのよ!?」

 

弾幕の外から、ショウ達の様子を息も絶え絶えな状態で見ていた紫は信じられないという表情を浮かべる。

秘奥義『零式弾幕結界』は、通常の弾幕ごっこでは絶対に使用出来ない、回避不可能の反則スペル。

隙間のない膨大な物量の弾幕で押し潰す物で、ボムを複数回使用しなければかわせない代物のはずだった。

だが、現実に目の前の弾幕は凌がれている。

特に内側からのアクションは確認できない。

ただ一回、スペル宣言がなされただけで、何か結界のような物に全ての弾幕が弾かれ消滅していた。

やがて、紫のスペルが時間切れとなり、膨大な弾幕がもたらした砂煙が徐々に晴れていった。

 

???

「――――――」

 

魔理沙

「・・・・・・ショウだよな?何なんだぜ?その格好。」

 

フラン

「お兄ちゃん、そんな服が趣味なの?可愛い!」

 

アリス

「・・・意外ね。可愛らしい服が好みだったのかしら?言ってくれれば仕立てて上げたのに。」

 

???

「―――茶化すなよ。俺の趣味じゃなくて、仕様なんだよ。まあ・・・、なんだ。詳しくは後にしてくれ。まずはあいつを黙らせる。」

 

煙が晴れて、視界が戻った紫の前には、アリス、魔理沙、フランの前に立ち、こちらに鋭い視線を向ける、黒を基調とした膝下まで伸びる長袖ロングコートに白いレースの様な装飾が施された、一見してゴスロリ服のような格好をした『金髪長髪』の、一瞬女性と見間違う様な顔をした人物がいた。

 

「・・・本当に何者なのよ・・・。その力、その姿、何もかもが異質、異様、異常!・・・貴方は一体何なのよ!?」

 

ショウ(code:Sylphide)

「・・・・・・お前の敵だよ。それ以上でも以下でもない。俺は、大切な者を守る為に戦うだけだ。お前が俺の守りたい者達に牙を剥くなら、俺はその牙を折るだけだ。」

 

ショウの姿は、媒介となった記憶の人物に寄せる様に変化する為、今はレイチェルの姿に酷似した格好をしている。

元は、ショウの姿がベースなので、細部までは再現されていないが、元々整った顔立ちなので、服が変われば、雰囲気も変わる。

今のショウは、煌めく様な金髪が腰付近まで伸びており、その格好も相まって麗しい女性のような姿をしていた。

まあ、声はまんまなので、ギャップがとんでもないことになっているが。

 

ショウ(code:Sylphide)

「さて、悪いがアリスの容態もある。時間を懸ける気は更々ない。早々に終わりにさせてもらうぞ。散弾『バラージュシードアマリリス』」

 

紫を見据え、呟き、言葉が終わると同時にスペル宣言がなされる。

ショウの前面から光が放たれ、光がやむとそこには、複数の大砲の銃口が紫をとらえていた。

 

「な!?」

 

紫が驚愕するのとほぼ同時に、銃口から大量の散弾が射出される。

放物線を描きながら、広範囲に降り注ぐ弾丸の雨。

紫は直ぐに自身の能力でその場から転移するが・・・

 

ショウ(code:Sylphide)

「ナイス回避。だが、まだまだ終わらないぞ?『テンペストダリア』」

 

ショウがコートをなびかせ、紫に向かって手を掲げると、大量の物体がまるで竜巻に飛ばされたかの様に縦横無尽な軌道で飛来してきた。

 

「く!?数が多すぎる!捌き切れない!?」

 

飛来する大小様々な物体を結界や弾幕で凌いでいた紫だが、圧倒的な物量に押され、次第に逃げ場を失っていく。

仕方ないと、空間転移し空中へと避難した紫であったが、紫自身空中へと避難するのは避けたかった。

体力を大幅に奪われている状態での飛行はリスクが高く、制御に不安が残るからである。

そして、紫の懸念は皮肉にも現実のものとなる。

 

――――――パチン

 

高い炸裂音が響き渡る。

次の瞬間―――

 

「きゃあ!?」

 

一陣の風が、空中の紫を吹き飛ばした。

 

「くっ、今の強風は―――」

 

ショウ(code:Sylphide)

「――――――チェックメイト」

 

「!?」

 

強風に吹き飛ばされた紫は地面へと転落。

叩きつけられるのは辛うじて回避したが、体勢を崩し無様にも地面を転がる。

やっとのことで体勢を立て直し、空中に佇んでいるはずのショウを視界に収めようとした瞬間、決着を意味する言葉がショウから伝えられた。

そして、紫の視界はショウの姿よりも先に、自身が置かれている『積み』の状態を捉えてしまっていた。

それは――――――

 

「な、何なのよ、これは?」

 

自身の周囲の地面から、天へと伸びる無数の柱。

そして、その柱の奥で優雅にたたずむショウの姿。

その手には、既に光を放つスペルカードが掲げられている。

 

ショウ(code:Sylphide)

「―――招雷『バルディッシュデイジー』」

 

ショウの言葉と共に、天から無数の落雷が降り注ぐ。

それらは寸分違わず紫の視界に広がる無数の柱に着弾し、その柱から周囲に雷撃が迸った。

 

「!?しまっ―――きゃあああああ!?!?!?!?」

 

自身の周囲全方位から飛来する雷撃を咄嗟にかわせるわけもなく、全弾直撃する。

そして、身体中を駆け巡る激痛に紫の意識は即座に刈り取られる事はなく、断ち切られた意識は激痛により覚醒、そして雷撃により再び昏倒を永遠と繰り返され、次第に声にならない悲鳴へと変化する。

やがて雷撃が止み、その場には、ピクリとも動かず横たわる紫の姿があった。

 

 

ショウ(code:Sylphide)

「・・・・・・・・・・・・・・・終わったな。」

 

――――――パシン

 

紫の意識が断ち切られたのを確認したショウの姿は、元通りの黒を基調とした姿へと変わる。

 

ショウ

「・・・・・・・・・まだ死なせねえぞ、八雲紫。お前にはやってもらわなきゃならんことが山のようにあるからな。・・・それに―――」

 

ショウは倒れ伏す紫へと視線を落とす。

 

ショウ

「―――確かめなきゃならないことも、できたしな・・・。」

 

その瞳にはもう、殺意と呼べる感情は微塵も感じられなかった・・・・・・・・・

 

to be continue




これにて紫戦決着です。
いやにあっさり終わりましたね。
主人公の新能力に対する対処法が確立されていない状態なら仕方ない話ですが。
後半になるにつれて徐々に浸透し、無双ゲーにはなりませんが、いつになることやら。

次回は前書きのとおり、異変終結宴会パートですが、今回の文章には、一部あれ?と思う場面が幾つかあったかもしれません。
これについては意図的にぼかしたり、言葉を抜いたりしています。
回収は次回以降、異変終結宴会パートか後日談パートで明かす予定ですが、元ネタがかなり複雑にフラグが絡んでいくストーリーなので、回収に失敗する可能性を考慮し、何度も繰り返し前の話を読みながら作ります。
その為、更新が毎度の事ながら遅れる可能性が高いです。
あらかじめご了承ください。

では、この辺で後書きを終わります。
本作品を読んでいただきありがとうございました。
次回更新までしばらくお待ち下さい。
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