ハンバーグ回避譚   作:缶詰伽哩

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前回が乳母&母親回だったので、今回は姫昌回です。若い姫昌の口調がわからず6巻を読み返したけど、まだいまいち不明。

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俺と伯邑考と姫昌

 歴史の道標、それは遥か昔に地球にやってきた宇宙人のうちの一人であり、歴史を自分の望む姿にしようとして何度も文明を破壊しては造り直してきた神であり、藤◯竜版の封神演義におけるラスボスである。

 女禍という名前自体は古代中国の人を創造した女神であるらしいが、この世界においてはすべての元凶で黒幕であることは間違いない。その女禍の望む歴史が殷周易姓革命であり、これを手伝い、手段を選ばず成し遂げるのが妲己である。つまり、俺の死が革命に必要だと思われれば、この妲己ー女禍という凶悪なラインに命を狙われ続ける、ということだ。

 

 まじ勘弁。

 

 俺の死を回避する上で考えざるを得ないが、考えても結論がでないのがこれだ。すなわち、女禍は俺の死を望むのか。望むと言われたら生き延びられる気がしないから以前は楽観視したが、根本的なところではなにも解決していないことは確かである。

 とはいえ、俺がいくら考えても結論を出せなかった問題である。それはさておき、報告がある。

 

「ちちうえ、おしえてほしい」

「おお、伯邑考よ。どうした」

 

 俺、話せるようになりました。

 

 よっしゃ、これで未来の老賢人に質問できる。とはいえ、まだ1歳半ぐらいなので、自分なりに、複雑な文を話さないように気をつけてはいる。前世の妹がうるさくなったのも1歳ぐらいだったと思うし、せっかく口や舌が回るようになったのに赤ちゃん言葉を喋らなくてはならないのは辛すぎる。しかし、あまり言語が堪能すぎては必ず問題になるので、その妥協点が複雑な文を話さないことだった。とはいえ、姫昌と二人で話しているときは、安心感からか気が抜けてしまうことも多いのだが。

 

「ひとはせんどうにかてないでしょう」

「仙道に勝つ、か。仙道が人間界に介入することはあまりないはずだが、確かに、人が仙道と正面切って戦って勝つということはないだろうな」

「なら、せんどうにころされそうになったら、どうしたらいいですか」

「仙道に殺されそうになるとは物騒な話しだな。うむ、逃げるか、そもそも殺されないようにするだろう」

 

 仙人骨を持たない人間は仙道に勝てない。これは間違いなく常識だろう。原作で太公望は普通の兵士に捕まることがあったが、宝貝を持っていなかったり、策のためにあえて捕まっただけだったりした。女禍や妲己は絶対に勝てない相手であり、その例えとして仙道を出したわけだが、姫昌にはうまく伝わったようだ。

 逃げるか、殺されないようにするか。戦っても勝てないのだからどちらかしかない。俺の考えでは、女禍や妲己から逃げようとしても無理だろうから、殺されないようにしようと思っているのだが。

 

「せんどうからは、にげられないでしょう」

「仙道の目の前から走って逃げようとするならば、そうだろう。しかし、逃げるというのはそれだけを意味するわけではない」

「え」

「あらかじめ手の届かないところに逃げる、というのも立派な逃走手段だ」

「あ」

 

 それは考えてもみなかった。

 

 女禍はともかく、妲己の手の届かない場所ならいろいろある。崑崙山や桃源郷もそうだし、いっそ国を出てもいいだろう。今の日本は弥生時代だろうが、そこまで逃げればまさか妲己が追ってくることはないだろう。将来国を背負うべき長男が逃げる、というと申公豹が激怒しそうだが、よほど運が悪くない限り出会うこともないだろう。女禍は表立って動けないので、逃げた俺に拘る暇はないはずだ。

 

「ちちうえ、すごい」

「そうか。凄いか」

「うん」

 

 姫昌に頭をぐりぐり撫でられながら頷く。俺の考えていた殺されないように立ち回るよりもよほど現実的で確実だ。流石に国外逃亡は全てを捨てることになるから最終手段にしようと思うが、1つ方針が立ったことでかなり気楽になった。

 姫昌は視野が広い。俺が先入観を持ちすぎていたのかもしれないが、殷郊、殷洪兄弟のことも知っていたはずなのに、先に姫昌に言われて気付くとは。

 

 やはり、姫昌に聞いてみよう。俺が結論を出せなかった問題について。

 

「しんだひとのためのたたかいってあるでしょう」

「弔い合戦のことか」

「それでかってくにができたら、そのひとはしななきゃいけなかったのかな」

「建国のための戦いが弔い合戦から始まったとしたら、最初の犠牲者は必要だったのか、という話か」

 

 姫昌、聞き取り能力やばい。

 

 あまり複雑な文にならないようにしているせいで全く言葉が足りないにも関わらず、何故ここまで解読できるのか。これが王に必要な力だとしたら、俺は絶対に王にはなれないだろう。

 

「それは結果論だな。最初の犠牲者はきっかけではあるが、その人がきっかけでなければならない理由はない」

 

 俺もそう思う。しかし、女禍は結果ありきで歴史を造っている。

 

「みらいをしっていたら、そのひとをころすの」

「未来を知る、とは占いか」

「ぜったいにあたるうらない」

「未来はうつろうものだと思うが。うむ、成功するとわかっているなら行うかもしれないが、行うことの危険度と利点をもう一度洗い直して、それが釣り合うのかが問題だろう。それに、未来を知るのが犠牲者の仲間だとしたら、例え成功するとわかっていても、他の方法を探すだろう」

 

 リスクとメリットか。女禍視点で考えてみよう。俺を殺すことのメリットは、姫昌に殷へ反旗を翻す気にさせること。では、リスクはというと、俺をハンバーグにしたことで、姫昌を肉体的にも精神的にも弱らせたことだ。例えば姫昌が太公望と会う前にすぐ死んでしまったり、自殺してしまったりしたら、周の文王がいなくなってしまう。場合によっては、周の国自体ができなくなるかもしれない。そうすると殷周易姓革命が起こらなくなり、女禍にとっては失敗の歴史になってしまうだろう。

 ハンバーグはおそらく妲己が勝手にやったことだろうが、意外と女禍にとってはリスクの高い行動だ。リスクとメリットが釣り合わない。つまり、この件に関して女禍と妲己は一枚岩ではなかった、ということだ。ここらへんに、ハンバーグと俺の死回避の秘訣が隠れている可能性がある。

 そして、俺があまり深く考えなかった「未来を知るのが犠牲者の仲間だとしたら、例え成功するとわかっていても、他の方法を探すだろう」という言葉が後々になって脳裡に蘇ることになるとは、このときの俺は思ってもみなかった。

 

「やっぱりちちうえはすごい」

「む、そうか。だが伯邑考よ、父を評価できるお前が凄いと私は思うぞ」

「う」

 

 それは、凄いというよりも異端の証なので放っておいて欲しい、1歳児であった。




姫昌を有能に書きたかっただけ。
作者の頭脳レベルが反映されるので、あまりうまくいきませんでした。原作読んで姫昌の凄さを思い知る度に手直ししたい気持ちに駆られます。
主人公は所詮普通の大学生なので、そんなに頭良くないし、チートでもないよという回でした。セリフのひらがな読みづらくて申し訳ありません。姫昌と二人だと気が抜けて口が軽くなり、敬語もなくなります。前世の主人公の年齢に近いからです。
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