でこぼこコンビside
とある街中にて少し短めの固そうな黒髪をした、細身の少年と長身で大柄な少女が歩いていた。
まずは少年の方を説明しようと思う。
彼、少年は、身長こそ165cm前後と現代日本人として小柄な方だが、均整のとれた体つきと隙の無い身のこなしから、見る人がみれば【タダ者ではない】事が、直ぐにわかる。
ラフな感じの黒髪と、切れ長の静かだが鋭い眼光を持つ双眸が印象的だ。
そして次に少女のこと説明しよう。
身長が186cmという長身で大柄な体型である
次に目をひくのは身長の次…いや、ある意味、身長以上に目立つのは、その歩く度にゆっさゆっさと揺れる巨大な二つの膨らみだ。そのサイズは、103だと思われるほどボリュームがでかい。
髪はミルクティー色でさらさらストレートヘアだがナイスなバディとは裏腹に、顔は可愛い系の極めつけの童顔というので目は垂れ目がちである。抱きしめられるとかなり苦しい思いをすることだろう。
「時に【綾菜】…」
ふと少年はピタッと止まり、身長差から見上げるような感じで、おそらく少女の名と思われる名前で呼ぶ。
「ふぇ? なぁに、【こーちゃん】?」
きょとん、した表情で少年を見下ろす少女。
身長差は20センチくらいあるから当然な光景なのだろう。
「俺のトレーニングについて来るのは、しょーがないと諦めた。 俺のまねごとをしたいということも汲んでやらなくもない」
「まねじゃないよー。 わたしはいつでも本気なんだから~」
呆れながらといった感じで問いかけられるとふにゃりと笑みを見せて答えた。
「…はぁ。お前は俺が見ておかないと駄目だったな。お前の場合は放っておくと、危なくて危なくて危なっかしいからな…色々な意味で」
「三回も言われたぁ~っ!(泣)」
つい涙目になる綾菜だが、ここは綾菜の将来を考え、厳しく躾るべきという親心から、あえて頭を撫でくりまわして、宥めてやりたいという衝動を、少年はグッと抑え、
「取り敢えず聞け。とにかく、付いてくるのは許す。だが…」
少年は何かを思い出したように、
「いつぞやのように、野良猫、野良犬、野良フェレット、野良椰子蟹(ヤシガニ)を拾ってきて、お持ち帰りしようとするな」
…何か、聞きなれない物が混じってる気がするのは気のせいだろうか?
「え~! だってだってぇ~っ!! 可愛いんだよぉ! スリスリしてくるんだよぉ!」
少年、眉間を押さえ頭痛と戦いながら、
「ヤシガニがスリスリするというのは、どういう状況だ? それ以前に、ここは種も仕掛けもない関東だ。何故、椰子の木がないのに、ヤシガニがいた?」
すると、綾菜は困ったように、
「私に聞かれても知らないよぉ~っ! きっとヤシガニさん、気が変わって樫の木とかに住むようになったんじゃないかな?」
少年は、頭痛が更にひどくなるのを感じつつ、
「どういう生物学を無視した突然変異だ、それは? そんなのがいたら、メンデルやダーウィンが、あの世で号泣する。第一、それではヤシガニじゃなくてカシカニだ」
綾菜は、にぱぁ~っと笑い、
「じゃあ、カシカニさんなんだよ、きっと♪」
ついに少年は諦めたような溜め息をつき、
「…良かったな。新種の世紀の大発見だ」
「うん♪」
少年の記憶は過去を遡り、
「そうだったな…お前は、小学校の遠足では行った潮干狩りで、カブトガニに懐かれて持ち帰り、沖縄の修学旅行ではイリオモテヤマネコを持ち帰る奴だったな…」
ちなみに、遠足先は有明海でも九州の海でもない。
中学校では沖縄にいったがそうそう出会えるもんではないのに、綾菜に集まるようにくるのだ。
「とにかく、カブトガニやヤシガニやスベスベマンジュウガニは却下だ。特にスベスベマンジュウガニは猛毒を持ってるからな」
と、少年は一旦、言葉を切り、
「フェレットとかイタチとかの、げっ歯類は特にアウトだ」
「ほぇ? なんで? 可愛いのにぃ~」
綾菜は不思議そうな顔をするが、少年は至って真面目に、
「連中は突然喋りだし、赤いビー玉を渡しながら化物と戦う事をなし崩しに強要し、挙句、『僕と契約してよ!』と違法営業を迫り、お前を魔法少女だか魔砲少女だかに仕立てあげそうだ」
「色々混じってる気がするのは、私の気のせいかなかな?」
もうかなり混じっているのはいうまでもないだろう。
だが、彼女の場合はどんなのでも喜んでやってそうだ。
「しかも、軍隊モドキのブラックな職場にバイト扱いで放り込まれ、成り行きで正社員にさせられ、19歳にもなるのに魔法【少女】を名乗らせられる屈辱に合い、25歳になっても浮いた話一つ無い人生に絶望し、エントロピー維持のエネルギーを吸い取られた後の絞りカスが、世に災いをもたらす存在になりそうだ」
「やっぱり色々混じってる気はするけど…」
綾菜は、ニコッと満面の笑みで、
「私のこと、心配してくれるんだぁ~♪」
「…フ、フン」
そっぽを向く少年。それは、照れ屋な少年特有の肯定の意思…
「こーちゃん、だぁ~い好きっ!!」
"むぎゅ~!"
「ば、ばか! 止めろ! 抱き着くな! 顔を胸に挟むな! さ、酸素…」
それは、とある何気なく時間の流れる春の晴れた日…
小柄な忍者少年【土屋康太】と、大柄な少女【相沢綾菜】…そんな凸凹な二人にとっては、わりと平凡な一日だったりするのだった。