「撃て!!」
正面に現れたポーランド戦車は、一斉攻撃で狙ってくる。
「私達も攻撃」
しかし、こちらは大型戦車が主体である。この場所では狭くて展開できない。それに、向こうは広い交差点に陣取っている為、全車が展開できている。完全に火力負けだった。
『こちら5号車。被弾につき、砲塔旋回不能。転輪もやられ、動けません』
先頭で撃ち合っていた5号車のコメットに攻撃が集中し、砲塔と転輪をやられた。しかし、修理可能とコンピューターが判断している為、競技資格喪失を示す白旗は挙がっていない。
「了解。砲は相手に向けているので、そのまま攻撃してください」
『隊長、お願いです。後退してください。ここは、私達が引き受けます』
「でも」
『ここで撃ち合ったらジリ貧になるだけです。まだ5号車は健在です。隊長達は後退して体勢を整えてください』
5号車の車長以外からも後退を要請してくる。
「隊長」
「隊長」
「隊長!!」
明美も朱里も。普段殆ど喋らない麻衣ですら後退を進言する。
「指揮官たるもの。潔く引くのもまた、一手ね。自分の非を認めずに自滅するより、ここは非を認めて後退しましょう」
「了解」
朱里がギアをバックに入れ、後退する。他の車両もバックに入れてそれに続いた。
「ほう。敵わぬと見て引いたか。やっぱり、舞阪女子は手強いな」
7TPから顔を出したヴイチクは引いていく舞阪女子を見る。そして、その後退を援護するたった1台のコメットに目を移した。
「あのコメットの乗員は、軍功勲章並みの活躍だな。その勇士に免じて、私自らの手で仕留めて上げる」
そう言って車内に入り、砲手と交代する。
「戦士の名に賭け、一撃で仕留める」
もともと砲手だった人が砲弾を装填し、準備を整えた。
「安らかに眠れ。勇気ある戦士よ」
砲撃し、一撃で仕留めた。戦車の弱点、車体と砲塔の間に命中させ、白旗を挙げた。
「やられましたね。無線が通じません」
往還通りを走りながら無線で連絡を取っていたが、砲撃音が入ったのを最後に通じなくなった。
「こうなったら、私達が囮になります。各車はこのまま走って、国道一号線とぶつかる交差点にて待機していて下さい」
私は舞阪小学校に続く道に入り、坂にて待機する。
「一度攻撃したら後退し、交番まで行きます。そしたらそこを右に曲がり、国道一号線を一気に東に向かってください」
「了解」
朱里がそう答え、ギアをバックに入れてブレーキを踏んで待機する。明美は砲身を往還通りに向け、待機する。
「さて、賭けになりそうね。あのカーブミラーで私達は敵の接近が分かるけど、逆に言えば私達の姿を晒している。どっちに転ぶのか」
「敵は往還通りを真っ直ぐ東に向かっています」
副隊長のゾーシャが双眼鏡で走っていく舞阪女子を見る。
「このまま前進。駆逐戦車は足が遅い。追撃戦なら私達の方が有利よ」
ヴイチクは全車に前進を指示して追撃戦を開始しており、左右を見ていなかった。
「吉に転んだわね。明美、攻撃用意」
カーブミラーに映る、こちらに向かってくるポーランド戦車。こちらは砲弾を装填して待機している。狙いは完璧だった。
「3・・・・2・・・・1・・・・攻撃!!」
タイミングを見計らって、攻撃する。先頭を走っていたヴィッカーズタイプBを仕留めた。
「後退。全速後退!!」
朱里はアクセルを踏み込み、バックを開始する。その間に、ヴェステルプラッテは撃破されたヴィッカーズタイプBを押し退けて道路に侵入して来る。
「装填。攻撃用意」
麻衣が徹甲弾を装填し、明美が狙いを定める。
「発射」
しかし、狙いは外れて道路に着弾した。
「すみません。外してしまいました」
「別にいいわよ。走りながらじゃあ、百発百中なんて難しい。どんな名砲手も、行進間射撃を百発百中なんて不可能だわ」
コンピューターが発展し、更に砲安定装置を採用している現代の主力戦車でも、百発百中は不可能である。ましてや、移動目標の戦車をこちらも移動しながら狙うのは不可能だった。
「朱里、自動車みたいにバックしながら反転できる?」
「これは自動車じゃなくて戦車ですよ。超信地だってやってやりますよ」
そう言って朱里はレバー操作で車体を超信地旋回させながらギアをバックからドライブに入れて前進する。
「ギア鳴りおこしますけど、直ぐにギアが噛み合いますよ」
ガリガリとギア鳴りを起こしていたが、直ぐにギア同士が噛み合って音がしなくなる。
「さて、それじゃあ決着をつけにいきましょう」
「「了解」」
センチュリオンは右折し、国道一号線を東に向かって走り始めた。
MT車であるセンチュリオンが走りながらギアチェンジするとギアが噛み合わなくてギア鳴りと呼ばれる現象を引き起こします。
これはMT車全体に言える事です。