『こちら15号車。撃破されました。ウェールズのフラッグ車は、TOG2です』
フラッグ車の捜索を命じていた15号車からの連絡を受ける。
「了解、ご苦労様です。いつも危険な単独偵察をよくこなしてくれます」
『そのかわりに最後まで生き残る事は少ないんですけどね』
「いえ、14、15号車が居なければ勝てなかった事だらけです」
そう言って無線を切る。路地に入って無線のやり取りをしている私は朱里の方を見る。
「そろそろ敵が正面を通過する頃よ。バックの用意を」
「了解」
「明美は砲撃用意。麻衣、徹甲弾を装填」
麻衣が砲弾ラックから徹甲弾を取り出し、装填する。暫くして、履帯の音が聞こえてくる。
「砲撃準備。合図と同時に砲撃し、バックで路地を抜けて」
正面にヴァレンタインを捉える。
「発射!!」
20ポンド砲が火を吹き、砲弾がヴァレンタインの砲塔側面に命中して白旗を出す。
「大通りに移動後、側面に待機。出てきたところを狙ってください」
「クロコダイル、路地に入って追撃。焼き払って」
『了解』
途中で合流したチャーチル・クロコダイルが路地に入る。そして、火炎放射を行った。
「ハッチ閉じ。後退急いで」
急いで戦車の各部ハッチを閉じた。多少の火炎放射を浴びたが、路地を抜けて側面に着く。
「待機。クロコダイルが出てきたら撃って」
「了解しました」
明美が答えている間に麻衣が再び徹甲弾を装填、待機する。
「麻衣、煙幕弾発射機用の煙幕弾を取って」
「ん」
麻衣が操縦席の後ろにあるラックの中から煙幕弾発射機用の弾を取り出す。私がそれを受け取り、砲塔上部にある発射機に装填した。
「発射!!」
戻るなり、クロコダイルを確認する。私は攻撃命令を下した。
「発射します」
砲弾が放たれ、クロコダイルの車体側面に命中した。白旗が再び挙がる。
「後退急いで」
「不味い、後退」
しかし、遅かった。火が牽引している燃料トラックに引火して爆発を起こした。後続していたヴァレンタインはひっくり返り、その1台後ろのヴァレンタインを巻き込んだ。
「一気に4台もやられるなんて」
ブリタニカは怒りを露にする。
「隊長、落ち着いてください。怒りは冷静な判断が出来なくなります」
左側に停車しているブラックプリンスから顔を出したリーキは隊長を宥めるが、効果などない。
「フラッグ車とその護衛部隊へ、直ちに集結。敵を蹂躙してあげなさい」
正面装甲76.2mmの重戦車であるTOG2。装備している17ポンド砲と相まって、ウェールズ高校ではそれなりの戦力である。それと同時に威圧感がある。
「敵は集結するでしょう。その集結する道に全車を待機しています」
私は地図を出して明美と相談する。
「敵はこの位置で集結すると、隊長は読んでいるんですね」
駅前にある噴水広場。ここで十字防御しながら合流を待つのが防御力で勝るウェールズのやる事である。舞阪女子はそれを読み、合流しようとするTOG2を合流前に仕留めるべき、各路地に待機させた。
「隊長、後ろに!」
朱里がそう叫んだので、私は砲塔から顔を出して後ろを見る。
「リーキ。貴女は、何処まで度胸があるのよ」
乗員が脱出した後も燃え続けるクロコダイルの残骸を押し退けながらブラックプリンスは通りに出て来た。
『聞こえていますか?、舞阪女子の隊長の池田麻美さん』
「隊長」
麻衣が無線機を渡してくる。私はそれを受け取り、応答する。
「こちら舞阪女子隊長の池田です。リーキ、貴女ね?」
『はい。ウェールズ高校副隊長のリーキです。残念ながら、隊長は敗北の手を打ちました。もう何を言っても、あの人は聞き入れないでしょう。なので、貴女にお願いがあります。敗北する前に私と、一騎打ちを申し込みます』
それを聞いて私は驚いた。まさか、自分の学校の敗北を宣言をし、更にはそれを承知で一騎打ちを挑むなんて。
「貴女、分かっているの?仮にも副隊長が敗北宣言をしているのよ。その上、それを知った上で一騎打ちを挑むなんて」
『ウェールズ高校は頭の固いトップが居るが為に負けます。それが教訓となれば私は負けても構いません。しかし、今負けるのは悔いが残ります。なので、最後に貴女と一騎打ちをしたい』
「・・・・・上等。部隊の指揮を執りたかったけれど、貴女の意気込みを聞き入れました」
『感謝します』
「朱里、相対して」
「了解」
朱里は車体を反転させると、ブラックプリンスと相対する形となった。
「さあ、行くわよ」
そう言って私は朱里に前進の指示を出すのだった。