大通りでブラックプリンスとセンチュリオンは交錯する。
「流石、リーキね。去年も苦しめられただけのことはあるわ」
交差した私達はブラックプリンスの背後に回り込もうとするが、直ぐにブラックプリンスが反転して再び正面を捉えてしまう。
「20ポンド砲は遠距離射撃では命中精度が大幅に低下する。この砲は近距離射撃に特化した砲だから、接近して撃たないといけないわ」
20ポンド砲は遠距離射撃に向かない為、出来る限り接近しての砲撃戦が基本となる。市街地だから、その点は楽に成るのだが。
「側面を撃たしてくれないか」
ブラックプリンスに座上するリーキは的確な指示のもと、戦車が操られる。そう一筋縄にはいかなかった。
「リーキ、お願いだから側面撃たしてよ」
「ふざけないで下さい。一騎打ちと言った以上、こちらは手を抜きません」
センチュリオンは唸りを上げながら側面を取ろうとするが、相手はそれを許さない。
「本当に、腕が良いわ。今度のウェールズは間違いなく強くなれる」
私はハッチから顔を出しているリーキを見据える。リーキは無線機で指示を出しながらこちらを常に見続けている。
「朱里、路地に入って」
「了解」
朱里は後ろを取る機動をやめ、チャーチル・クロコダイルが炎上している路地に入る。
「さて、リーキ。私達の決着が先か、それともフラッグ車を撃破するのが先か楽しみね」
「リーキ、リーキ応答せよ」
ブリタニカは無線で呼びかけるが、リーキに通じない。
「全く、どうして応答しないのよリーキ」
ブリタニカは無線機を切り、車内に入る。
「合流は?」
「見えてきました」
道をローカストに護衛されながら走行してくるTOGⅡは合流するべく車体を左に向けたその時
「撃て!!」
路地に待機していた舞阪女子のトータスが側面装甲を撃ち抜き、撃破した。
「なっ!!」
『試合終了。舞阪女子高等学校の勝利!!』
ブリタニカは唖然とする。まだ殆どの戦車が残っているのに負けてしまったからだ。
「ま、まさかそんな」
ブリタニカは煙を上げながら停車しているTOGⅡを見ながら言った。
「案外、あっさり決まったわね」
路地の出口で待ち伏せしていた私達はブラックプリンスの車体側面に戦車砲を向けた状態で停車していた。
「リーキ、どうやら一騎打ちは決着がつかないようね」
「一同、礼!!」
「「ありがとうございました」」
私達は礼を終え、直ぐに撤収の用意に入った。停車させていたトランスポーターに戦車を積み込む作業に取り掛かる。
「今年の優勝はどうなるのでしょうね?」
私は振り返ると、そこにはブリタニカが立っていた。
「頭に血が上ると冷静な判断が出来なくなる。それを学べただけでも今日は収穫ね」
「リーキに怒られたんですか?」
「そうね。あの子は確り者ですので。それにしても、まだこちらは殆どの戦車を残していたのに負けた事が悔しいですわ」
私は停めてあるハンバー・スナイプに乗り込み、エンジンを掛ける。
「じゃあ、来年もウェールズは安泰ね」
「そうね。貴女の学校はどうなるのかね。町が運営じゃあ、色々と大変でしょう」
「そうね。けど、無くなっても伝統は守るわ。だって、私達の町だから」
「実家に戻る気はないのね?まだ、勘当されていないみたいだけど」
「妹が後継者に選ばれたんなら、私は勘当されるわね。そうなったらいよいよ、私は池田流を完成させなくてはならなくなるわ」
未完成な池田流を完成させなくては実家には戻れないのが今の私の立場だった。妹が池田流を継げる年齢になる15歳まで。もう1年もない。
「ふふ、まあ頑張りなさい。貴女とはまだまだ戦いたいから」
「精進します、リーキにも宜しく言っておいてください」
そう言って私はアクセルを踏み込み、皆よりも一足先に帰路に着くのだった。
「舞阪女子が勝ちましたね」
グロッサー770Kの横に立っているゲルマニアは後部座席に座っているテオドールに言う。
「当然ね。ウェールズなんて弱小高に舞阪が負ける筈が無いわ。けど、次の戦いに勝つのは私達よ」
ゲルマニアが運転席に戻り、エンジンを掛けて車を走らせる。
-豊橋市 池田流戦車道家元-
「師範代がお見えになります」
池田流戦車道師範代『池田葵』が訓練場に入る。戦車を後ろに門下生が整列している。
「佳奈はいますか?」
池田流戦車道次期後継候補の『池田佳奈』が前に出る。
「はい、師範代!!」
パンツァージャケットを着こなす少女の前に師範代が歩み寄る。
「貴女を正式に次期後継候補になりました。15歳の誕生日に貴女に試験を課します。その試験にクリアすれば貴女を正式な時期後継となるのです」
「はい、師範代」
「宜しい、今日は終了とします。各自、戦車の整備・清掃後解散」
「「はい!!」」
「お母さん、お姉ちゃんはどうなるの?」
「どうなるもこうなるも、その試験が麻美を倒す事よ」
廊下を歩きながら葵は佳奈に説明する。
「ええ!?お姉ちゃんを!?。そ、そんなの無理だよ。だって、お姉ちゃん。強いんだもん」
「『池田流戦車道は未完成。私が絶対に完成させる』そんな言葉を残して3人の門下生と家を飛び出した麻美は本来は勘当だけれども、貴女がまだ不十分だから待つ事にしたのよ。けど、貴女ももうじき15歳。試験で貴女が勝てば、麻美は勘当にする」
「で、でも」
「試験は本気でやりなさい。もし手を抜いたのなら、貴女を勘当させるわよ」
葵は佳奈に向き直り、真剣な眼差しで言う。
「わ、分かりました。けど、お願いがあります。お姉ちゃんに会わして下さい。何処の学校に行っているのか教えてください」
葵は振り返り、再び歩き始める。
「お母さん、教えてください!!」
葵は立ち止まり
「・・・舞阪女子よ。そこに、麻美は居る」
そう告げたあと、再び歩き始めた。