-生徒会室-
「いやー、2回戦勝利おめでとう」
会長の田辺はサインし終えた書類を横に避けながら言う。
「ありがとうございます、会長」
私は頭を下げる。
「案外、あっさり勝っちゃって拍子抜けだけどね」
「それは相手に失礼ですけど。でも、冷静な判断が出来ていなかったのは事実ですが」
私は溜め息をつく。冷静だったリーキが隊長だったら、危なかったと感じた。
「3回戦、相手はあのセダン高校だね」
「はい。前回の大会でもベスト4入りした高校です。安定した強さを持つ古豪といいましょうか。2回戦でアラスを破っています」
「それに勝てば準々決勝だね。期待しているよ。ここで負ける訳にはいかないんでしょう?池田流戦車道家元さん」
会長は紅茶を淹れて渡してくる。
「茶化すのはやめてください」
私は渡された紅茶を飲みながら言った。
-戦車道部部室-
「これで備品の整理は良しと。あ、隊長。お帰りなさい。今備品のチェックを終えたところです」
部室では朱里が備品のチェックをしていた。
「ありがとう。皆は?」
「魚あらで盛り上がっている頃だと思いますよ。戦勝祝いに」
「貴女も行きなさい。後は私がやっておくから」
「そんな、隊長悪いですよ」
朱里は手を振りながら言う。
「勝てたんだから行きなさい。それに、会長と同じく、忙しいのが私の仕事だから」
「はあ、分かりました。なら、後で来てくださいね。用意して待っているんで」
そう言って朱里は部室から出て行く。
「さてと、朱里は細かく仕事をやるからね」
そう言って書類のチェックをし直そうとした時、部室のドアが開く。
「どうしたの朱里?忘れも・・・・!!」
言いながら振り向いた私は驚愕する。
「へえ、お姉ちゃん。やっぱり可愛がっていた門下生とここに居たんだ。佳奈は悲しいな。お姉ちゃんに可愛がられずに、捨てたも同然に家を出て行くんだから」
「か、佳奈?」
「でもお姉ちゃん。佳奈は認められたいんだよ。だからあまり言いたくないけれど、池田流戦車道次期後継者を掛けた試合、やろうよ?」
池田佳奈。私の妹が、扉の所に立っていた。
「師範代は佳奈とお姉ちゃんを戦わせ、勝った方を後継者とすると仰っているの。だから佳奈、本気で戦うの」
「で、負ければ私は勘当ね。今まで不思議なくらいよ。厳しい母が、家を出て行った私の教育費を払い続けたのがね」
私は妹と自分に紅茶を淹れて渡し、自分の分を飲みながら会話している。
「佳奈も本気でやらなきゃならないの。だからその前にお姉ちゃんに会っておきたかった。試験は明日だって」
「はあ。えらく急ね。別にいいけど、私はセンチュリオンでいくわよ」
「いいけど、佳奈に勝てるかな?」
「貴女が未だにM4中戦車に乗っているのなら楽勝ね」
私が家を出た時に彼女はM4中戦車に搭乗していた。今でもそれに乗っているのなら私は勝てる。
「佳奈はいつまでも子供じゃない。そろそろ到着する頃ね」
エンジン音が響いてきたので、私は窓の外を見る。
「へえ。いい戦車に乗っているじゃない。T30重戦車。これじゃあ、そう簡単には勝てないわね」
T29重戦車の上位互換車両とも言うべきその戦車に佳奈は搭乗しているのだ。
「でも、私なら速攻で勝てるわ。明日の勝負も拍子抜けね」
佳奈と私はお互いを見つめあう。明日、決着がつくのだ。