-舞阪女子高校-
グラウンドには整備されたセンチュリオンとT30が並んでいる。
「お姉ちゃん」
試合前に設営されているテントに私と妹の佳奈が居た。
「私は強いお姉ちゃんに憧れていた。でも、お姉ちゃんがセンチュリオンに乗っていて分かった。お姉ちゃんは強くなっていない。昔からずっと、ずっと同じ戦車に乗っている」
「使い慣れている戦車を使っているだけよ。それだけ、練度は熟練しているわ」
「お姉ちゃん、もし弱くなっていたら。許さないから」
妹は私を睨む。憧れを裏切ったからなのか、それとも他に理由があるのか。私には分からなかった。
正午になり、私の母も到着する。母は私を見るなり、何も言わずに観客席へと行ってしまう。それほどまでに、溝があるのだ。
「こんな私闘に巻き込んですみません。家を出るという私の軽率な行動のせいで、迷惑掛けて」
私は同じくセンチュリオンに乗る明美、朱里、麻衣に謝る。
「そんな、私も池田流には少し疑問を感じてましたし」
「それに、私達も隊長に従って出たんです」
「問題ない」
皆、私を責めないでくれた。
「・・・・ありがとう」
私はそう、告げることしか出来なかった。
私はいつもと同様にセンチュリオンの車長ハッチから中に入る。そして、無線を掴んだ。
「朱里、エンジン始動」
『了解』
センチュリオンはエンジンがかかり、いつでも走れる状態になる。
「隊長、普段通りの指示をお願いします」
砲手席に座る明美が言ってくる。
「分かっているわよ。戦闘に私情は持ち込まないわ」
「相手は普段の静止目標でも、ただの門下生でもありません。恐らく、私達が戦った中では最強の敵といっていいです」
佳奈は無線機で乗員に伝える。口ではああ言ったが、姉が侮れない敵であることは認めている。
(本心を言えば、私はお姉ちゃんと戦いたくない。けど、私も池田の名を継ぐ者。けじめはつけないと)
そして開始を告げる信号弾が上がった。
「農林科の人達には悪いけど、使わせてもらうわ」
私達は早速戦車を移動させ、林の中へと入って擬装用ネットを展開した。
「明美、ここから狙える?」
私は双眼鏡で目標を捉える。今、校門を潜って外に出たところだった。
「何とか狙えますが、中てられるか心配です」
距離は2kmといった所だが、こちらは坂になっているため角度が付いている。狙うには難しい角度だった。
「こっちに向かっているということは気付いている。なら、中らなくてもいいから先制攻撃して」
「了解。発射!!」
センチュリオンは早速初撃を放った。
「敵、発砲!」
私は車内に入ってハッチを閉じる。直ぐに衝撃が来た。
「流石お姉ちゃん。この距離で撃つなんて」
私は無線機を取った。
「このまま前進。距離を詰めて。砲手は砲撃開始」
T30は田んぼの中に入る。でこぼこした道、ぬかるんだ田んぼの中などお構い無しに進んでいく。
「度胸があるわね」
私はハッチから顔を出して、前進してくるT30を見る。その前進はこちらの砲撃など無意味と主張しているようだった。
「少なくとも2発命中していますが、全然駄目です。止まりません」
「煙幕を張ります。その間に朱里は移動して」
私は隣に備えられている煙幕弾発射機に装填する。煙幕弾はすぐに発射され、木に当たった煙幕弾は煙を吹き始めた。
「後退して陣地移動」
私達は林を出て道路を艦尾側に向かって走った。
「移動されたわね」
既にセンチュリオンは居なかった。しかし、履帯跡は確りと残っていた。
「履帯跡に沿って移動」
「待ち伏せばかりですね」
今度も最初に待ち伏せしていた林から少し離れた位置にある別の林の中に身を隠していた。
「正面からまともに戦ったんじゃあ勝てないからね。待ち伏せでの攻撃で仕留めるチャンスを作る」
「すみません。中々決定打が与えられなくて」
明美は申し訳なさそうに言うが。
「別に構わないわ。数をとにかく撃って。麻衣も大変かもしれないけど頑張って」
「鍛えている。大丈夫」
麻衣が親指を立てて言う。私はそれに頷いた
「さて、厳しいけど。勝つわよ」
私は楽しんで書いています。資料提供や助言をしてくれる方々、本当にありがとうございます。東海大会的には中途半端ですが、次回で第一部が完結します。