ガールズ&パンツァー 東海の覇者   作:橘花

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姉妹対決

林に擬装ネットを被せた状態で待機しているセンチュリオンはこちらに向かってくるT30に狙いを付け始める。

 

「相手は履帯跡を頼りに向かってきています。狙いを付けてから発砲してください」

 

私は無線機で指示を出しハッチから少しだけ顔を出して相手を見る。

 

「装填、完了」

 

麻衣が言ってくる。砲身が動くのも止まった為、明美も狙いを付けた様だ。

 

「発射!」

 

センチュリオンから再び放たれた砲弾はT30の車体正面に命中する。

 

 

 

「被害は?」

 

車内には煙が発生していたが、目立った損傷はない。

 

「駆動系等異常なし。走行可能です」

 

「砲塔の旋回等に異常なし。攻撃可能です」

 

「それじゃあ、前進」

 

T30は再び走行を開始する。

 

 

 

「敵、走行を再開。特にダメージを与えてないか」

 

「すみません」

 

明美は謝ってくるが私は聞き流す。

 

「朱里、移動して。麻衣、煙幕弾を」

 

麻衣から煙幕弾を受け取り、発射機に装填して発射する。そして、発生した煙幕に紛れて移動した。

 

「撹乱していれば、チャンスはある。それにT30は重戦車。走り回れば足回りが壊れるわ」

 

林から出たセンチュリオンは後退を続け、再び別の林に隠れる。

 

「煙幕晴れます」

 

煙幕が晴れた所で私は驚く。晴れた先に居るT30がこちらに砲身を向けているのだ。

 

「衝撃に備えて!!」

 

敵が発砲した砲弾が近くに着弾する。衝撃で車体が揺れた。

 

「撃ち返して!!」

 

明美を発砲するが相変わらず跳ね返される。

 

「全弾命中させているのに抜けません」

 

「撃ち続けて」

 

撃ち合いだった。相手は分離装填式の為に発射速度に難があるが威力は絶大である。

 

「榴弾だから外に出る訳にもいかないし。これじゃあ後退の指示が出せない」

 

『隊長、移動を私に任してくれませんか?』

 

無線機越しに朱里をそう言ってくる。

 

「朱里?」

 

『この場から移動すればいいんですよね?』

 

「そうだけど。・・・・私は外に出れないし、任せるわ」

 

『了解しました』

 

朱里はギアを後進に入れ、アクセルを踏み込んだ。車体は一気に後退し、撃ち合っている所から抜け出せた。

 

『このまま走ります』

 

朱里は後退させた後、直ぐに車体を反転させて走らせる。私はようやくハッチから顔を出せた。

 

「よくやってくれたわ、朱里」

 

砲撃が止む。相手は追撃に移っていた。

 

「敵が追ってきている。明美、砲塔を旋回させて」

 

「了解」

 

明美が砲塔を旋回させ始める。砲塔が180度真後ろを向いた。

 

「徹甲弾を装填。車体と砲塔の付け根を狙って」

 

「了解」

 

麻衣が砲弾を装填する。装填されたのを確認した私は

 

「発射!!」

 

そう命じた。放たれた砲弾はT30の車体前面に命中し、弾かれる。

 

「すみません。外しました」

 

「やっぱり、正面じゃあ何処も弾かれるか」

 

私は砲塔内に戻って溜め息をついた。

 

『隊長、零距離射撃を具申します』

 

「零距離射撃、ねえ」

 

零距離射撃。即ち、砲身が水平の状態で放たれる射撃法である。

 

「そこまで接近できる?」

 

『やるしかありません』

 

「・・・・そうね。任せるわ。戦車は壊しても構わない」

 

『了解』

 

 

 

「逃げてばかりね、お姉ちゃん」

 

佳奈はハッチから身を乗り出して双眼鏡でセンチュリオンを捉えている。

 

「追撃して」

 

T30はくぼ地を乗り越えて前進する。田んぼも池もお構い無しだった。

 

 

「あの戦車に地形は関係ないようね」

 

私は双眼鏡を覗いて観察する。どんな地形も関係なかった。

 

「砲塔旋回、砲撃準備」

 

センチュリオンは砲塔を旋回させ、T30に狙いを定める。

 

「準備完了」

 

麻衣が砲弾を装填し、明美が狙いを定めた。

 

「発射!!」

 

私の合図で砲撃が行われる。しかし、砲弾はT30の正面装甲に命中して弾かれる。

 

「走り回っていれば足回りに負担が大きくなる。そうすれば、いつかは走行不能になるけど」

 

「そんなの関係ないみたいですね」

 

明美が照準儀を見ながら言ってくる。確かに、あの戦車の乗員にとって関係ないのだろう。

 

「市街地に入って、動きを制限させるしかないか」

 

「はい」

 

「朱里、市街地に入って。いつも通りの運転で構わないから」

 

『それだと、こっちの戦車の足回りが壊れますよ』

 

「市街地で決着をつける。多少の無茶には耐えてもらうわ」

 

『あとで整備する人は大変ですね』

 

 

 

「市街地に向かうのね」

 

佳奈はセンチュリオンの進路を見ながら言う。

 

「お姉ちゃん、動きを制限しようと無駄なのに」

 

T30は家の壁を破壊して、家自体を半壊させて進む。

 

「このまま進んで」

 

家を壊したときに発生した埃や煙を巻き上げながら市街地へと入った。

 

「主砲、装填」

 

佳奈は装填手に命じる。装填手は重い砲弾を取り出し、それを主砲に装填する。

 

「正面の家に砲撃」

 

主砲弾が放たれ、家を半壊させる。

 

 

 

「危ないわね」

 

破壊された家の反対側を走っていた私たちに材木などが飛んでくる。

 

『履帯が切れそうです』

 

「構わないです。このまま走って」

 

材木などを乗り越えて前進する。後ろを振り返ると、破壊された家からT30が姿を現す。

 

「相変わらず、無茶するわね」

 

道はセンチュリオンでギリギリの道幅なため、多少全幅が大きいT30は塀などを踏み潰して追ってくる。

 

「正面の十字路を右へ。明美、主砲を角に沿って旋回させて後ろを向けて」

 

道幅が狭く側面には塀があるので主砲を旋回させられない。だから、十字路に入ったら主砲を車体に追従させずに正面を向けておき90°車体を旋回させたところで主砲を後ろに旋回させる。そうすることで後ろを狙うことができる。

 

「ここでも、無茶するのね」

 

佳奈は主砲長なども一切考えず塀を破壊して旋回する。

 

「あれじゃあ、このさきの河原で決着つくかな」

 

この先には人工河川があり道幅も狭い。踏み外せば河川へと滑り落ちる。

 

「朱里、微速でいいから慎重に走って。麻衣は徹甲弾を装填。明美、合図したら左履帯を撃って」

 

『『了解』』

 

全員が答えた。

 

進むと、川幅3.5mの一条河川と河原の側道が見える。そこを右折して河川に平行に走る。

 

 

「河川?」

 

佳奈は車長席から河川を見つける。

 

「操縦手、慎重に」

 

 

 

「思ったとおり、多少は慎重にはなったか」

 

T30は先ほどの無茶な走りは多少抑えた走りになる。右折も教本通り旋回させたい側の履帯を塀の角に合わせて曲がる。

 

「でも、この河原は地盤が緩いのよ。明美、撃って」

 

「了解」

 

放たれた砲弾は左履帯に命中し破壊される。

 

 

「しまった」

 

そのまま右側履帯だけが駆動し、河原の坂に突っ込む。ブレーキを掛けても片方だけでは効ききらず、河川へと突っ込んだ。

 

「白旗は?。白旗は挙がったの?」

 

佳奈はハッチを開けて確認するが、まだ白旗は挙がっていない。しかし、エンジンは停止した。

 

「エンジン停止。主砲も旋回不能。重量があるので流されはしませんが、行動不能です」

 

 

「止めは、後部のエンジンルームを狙ってください。これで、決着です」

 

「了解」

 

麻衣が砲弾を装填し、明美が狙いを付ける。

 

「準備良し。いつでもどうぞ」

 

「撃て!!」

 

試合は、私たちの勝利に終わった。

 

 

 

 

-戦車道部部室-

 

「佳奈、泣いてたね」

 

部室には私と明美が居た。

 

「これで私も勘当されたようなものだからね。あの子、人一倍私を慕ってたから」

 

私は机に突っ伏したその時、ドアが開く。

 

「何しょげてんのよ?貴方らしくない」

 

見ると、ドアの所に会長の翔子が居た。

 

「会長、どうしたんですかこんな所に?」

 

明美が応対する。会長は私を見て封筒を取り出した。

 

「貴方に、師範から」

 

「師範から?。勘当を手紙で伝えるつもり」

 

私は封を切り、中の手紙を取り出した。手紙は墨で書かれている。

 

『麻美、貴方が家を出て考えたの。池田流が本当に未完成ではないかと。だから、貴方に池田流の未来を託したい。それまではこの未完成の池田流を私と佳奈で守るわ』

 

ただ、そう書かれていた。

 

「良かったじゃないの。これで、家出も含めて公認されたじゃない」

 

「良かったですね、隊長」

 

私は封筒と手紙を机の上に置いた。

 

「全く、お母さん」

 

「ん?。隊長、封筒にまだ一枚紙が入っているみたいですが」

 

「え?」

 

私は再び封筒を掴み、中を見る。

 

「確かに。えっと」

 

私はそれを広げる

 

『追記  たまには、家に帰ってくること。妹がお姉ちゃんに会いたいって言っています』

 

「優勝して、家に凱旋しなさい」

 

「はい」

 

会長は私にそう言う。

 

「さーて、もう夜も遅いし、寮まで送って行くわよ」

 

会長は外に止めているロールスロイスファントムⅡに私達を乗せ、寮まで送ってくれた。

 

 

 

-セダン高校ー

 

日が昇ったころ、大通りには両側に人が大勢並んでいる。柵と警備する軍服を着た女性達に仕切られた中央道路に一台の超高級車、グロッサーメルセデス770kが走る。

 

「隊長、明日は私達の試合です。相手はあの舞阪女子です」

 

「知っている。その2回戦を見たのだ。強くなった。ここからは皆、友と呼べる強敵が相手だ」

 

後部座席に座るテオドールは運転するゲルマニアに言う。

 

「強敵ゆえに、切り札は出し惜しみしないぞ。明日が楽しみだ、舞阪女子」

 

テオドールの乗る車の後ろからはティーガーⅠ、パンターG、ブルムベアなど出場する車両が隊列を組んで行進していた。




実は3月末には殆ど完成していたのですが、いつも以上の駄文などが目立ちすぎた為、改訂作業や資料の読み返しなどを行っていました。

他にも生活に慣れるためであったりしました。そして、5月末投稿を目指して進めてたのですが、少し不幸な、傷ましい事件が起こってしまいました。

そしてようやく作業が終わり、投稿できるレベルに仕上げることが出来たので投稿しました。
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