-セダン高校 戦車格納庫-
「総員、整列!」
副隊長のゲルマニアの号令で全員が戦車の前に整列する。
「隊長がもうじき来られる。総員、そのまま待機」
そして、暫く待つと隊長のテオドールが姿を現した。テオドールはゆっくりと中央に向かって歩く。
「全員揃っております、隊長」
「分かったわ」
テオドールは一同を見渡す。端の数台のⅡ号戦車やⅣ号戦車の前には今年入ったばかりの新入生が整列している。三回戦で使える戦車の数は20台となり、新たに追加された車両である。テオドールはその新入生の方へと歩み、前へと移動した
「新入生、気楽やれると思うな。我々は勝つ。そして、勝利には君たちの力も重要となる。重戦車は戦いは得意だが偵察は不向きだ。それを補うのが君たちなのだ」
「「はい」」
「声が小さい!!」
「「はい!!」」
新入生は大きく返事をするが、テオドールはそのまま中央へと再びゆっくりと歩き始める。
「お前たちがそのような状態では次は勝てませんな」
それを聞いて、新入生の一人が横の様子を窺った後、
「暴風酷寒訪れど」
静かに、そして全体に聞こえるようにセダン高校の戦車道部歌を歌い始める。
「「炎天日差しが降り注ぐも、酷暑の真昼も、極寒の真夜中も、埃と油に顔が汚れようと、我等の使命を果たす」」
それに、新入生が一緒に歌い始めた。
「「「戦車は勇ましく、戦場を駆ける」」」
他の上級生たちも歌い始める。テオドールも微笑をこぼした。
「「「「暴風酷寒訪れど、炎天日差しが降り注ぐも、酷暑の真昼も、極寒の真夜中も、埃と油に顔が汚れようと、我等の使命を果たす。戦車は勇ましく、戦場を駆ける」」」」
最後はテオドールも含めた全員歌った。
-舞阪女子 生徒会室-
「次に三回戦を控えて、練習もより過酷になっているみたいね」
会長は執務机の後ろの窓に立っている。窓の外から見えるグラウンドには隊列組んでの走行間射撃の訓練をする戦車が見える。
「それで、この部屋へ制服以外での入室は感心しないわね。池田」
パンツァージャケットを着て入室した私にわざわざ名字で、それも強調して会長は言う。
「会長に、お願いがあって来ました」
「分かってるわよ。去年みたいにやれでしょ。三回戦から20台。戦力増強の為にレストア中の5台の内の一台に乗ればいいんでしょ」
「そうですね。今日中にはレストアが終わるので。終わり次第、試験走行を行います」
「試験走行翌日に実戦ね。私の好きな戦車みたいにならないでよ。クルスクの二の舞は御免よ」
会長はため息をつきながら言う。去年も同じ無茶をして増強戦力5台の戦車全てが潰れたのだ。
「大丈夫ですよ。今年は足回りも修理しましたし、去年のような事にはなりません」
その時、私の携帯電話が鳴る。手に取ると、レストア班からだった。私は通話ボタンを押す。
『隊長、レストア完了です。直ぐに来てください』
「分かりました」
私は電話を切り、会長を見て
「では会長、出番です」
そう言った。
グラウンドでは下校途中の生徒も集まって走行試験中の戦車を見ている。
「T34重戦車、アメリカ陸軍が試作した強力な重戦車です。主砲は120mm高射砲を元に設計された120mm高射砲です。装甲は一番厚い部分で約280mmを誇っています」
走行テストも順調だった。射撃試験も実車の問題を解決した主砲を搭載しているので問題なく射撃も行えた。
「テスト結果は順調。これで制式化ですね」
私は会長にT34の資料と操縦マニュアルを渡す。この戦車には生徒会のメンバーが乗り込むのだ。
「明日に備えて下さい」
「家に許されたからって、無茶しすぎじゃない?」
T34が2台と3台のT32が追加される。着々と戦力を増強していった。
(あの学校にリベンジするためにも、戦力を増強しなきゃね)
「マリア隊長、明日の舞阪女子とセダンの戦いはどうします?」
「そうね。暇だから見に行くのもいいかもね」
廊下を歩いている隊長のマリアは副隊長に言う。
「でしたら、直ぐに車の用意をしますのでお待ちください」
そう言って副隊長は走っていく。マリアは廊下を歩き続ける。
「この前は酔狂な見世物を見ましたが、あれが本気ではないのでしょう?。池田麻美」
手に持っているコインを宙に飛ばす。そのコインには矢印十字が描かれており、その中にブダペスト記念硬貨と書かれていた。
最初のセダン高校の場面は、名戦車映画『バルジ大作戦』の作戦前にドイツ軍戦車指揮官が副官の言葉で部下となる者たちに不安を覚えて集めさせたシーンです。
部下となる戦車長達ですら指揮官から見れば子供だった為、不安を覚えている時に一人の戦車長が歌い始めた事がきっかけで指揮官も信用することとなった場面を元に書きました。
歌は一応訳を見てオリジナルで作ったつもりです。問題があれば変更します。
クルスクの二の舞は、クルスクの戦いに投入されたとある戦車を指しています。