-舞阪-
文化センター前の駐車場に戦車を並べた私達は、対戦校のセダン高校を待った。
「もうじき、集合時間です。そろそろ、着くと思いますが」
明美が私に言ったその時、国道一号線から右折してくる18tハーフトラックとそれに牽引される116型トレーラーが見える。そして、その後ろにはグロッサーメルセデスが続いた。
「吹奏楽、演奏始めて」
吹奏楽部は楽器を構えて、セダン高校戦車道部公式行進曲『プロイセンの栄光』を演奏する。
「お久しぶりです。去年の大会以来ですね」
私はグロッサーメルセデスから降りたテオドールに挨拶する。
「ええ。こちらこそお久しぶりです」
相手も挨拶し、お互い握手を交わす。
「そちらは一台しか来てませんが」
「先に、出撃場所に移動しました。少々、移動に手間取る車両がありますので」
「なるほど」
私は事前に提出された相手車両のリストを見る。確かに、最後の方に手間取りそうな車両があった。
「では、今日もよい勝負を」
「こちらこそ」
「これより、舞阪女子高等学校対セダン高等学校の試合を始めます。一同、礼!!」
「「宜しくお願いします!」」
試合前の挨拶を終え、セダン高校の選手は全員移動を始めた。
「会長、気楽にお願いします」
『分かってるわよ。操縦手もようやく慣れたみたいだから』
私はセンチュリオンに乗り込み、会長にそう言う。
「去年もやってるから、大丈夫ですよ」
『去年はエンストしてそのままエンジン破壊したわよ』
『試合開始、10秒前!。10、9』
そうアナウンスが流れ、私達は集中する。
『5、4』
『隊長さん』
突然無線で会長が呼びかけたので、私はそちらを見た。
『勝利、期待してるわよ』
『試合開始!!』
信号弾が上がる。それと同時に私は頷いた。
「全車、停止」
私達は記念橋の前まで移動する。
「この橋は慎重に渡ってください。あまり、負荷をかけ過ぎると崩落の危険があるので」
そう言って私は無線を朱里に繋ぐ。
「朱里、慎重に渡って。大丈夫、敵は重戦車が多いからそう早く来ることはない」
『了解』
私たちの乗るセンチュリオンはゆっくりと橋を渡る。渡りきり、私は直ぐに左折させて後続車の援護体制を作った。
「渡ったら真っ直ぐ進んでください」
『了解』
2号車以降の車両が渡ったらそのまま前進する。
「こちら偵察部隊。敵車両、記念橋を渡りました」
『了解。そのまま監視任務を続行せよ』
「了解しました。直ちに移動、監視任務を続けます」
対岸で見つからないように市街地迷彩を施されたⅠ号戦車とⅡ号戦車は移動を開始する。
「舞阪女子は橋を渡って浜を目指しているそうです」
無線を切り替えて、ゲルマニアはテオドールに伝える。
「その橋、私のティーゲルは大丈夫かな?」
テオドールの乗るティーガーⅠは停車してある車を踏み潰す。
「トータスやT34などが渡れたのだから、大丈夫と思われますが」
舞阪女子の保有する重戦車等が渡れたのだから、大丈夫とゲルマニアは伝える。
「まあ、あの重戦車達は別ルートだから良いけど。最後に渡る。先に行かして」
テオドールの乗るティーガーは道の端に止め、後続車を先に行かせる。
「隊長、半分渡れました。あと少しです」
ゲルマニアの乗るパンターが援護するなか、ティーガーは記念橋を渡る。しかし、あと少しの所で橋は崩落する。
「え?」
テオドールのそんな声と共に橋桁から二つに折れ、ティーガーは後ろ側が少し水に浸かった。
「こちら15号車。ティーガー、橋の崩落に巻き込まれました。白旗は上がってませんが、あれでは動けないと思われます」
偵察に動いていたクロムウェルが橋の崩落を目撃し、隊長に報告する。
『了解。敵に気付かれないように慎重に監視してください』
「待ってください。ティーガーから黒煙が」
「やってくれたわね、舞阪女子。でも、こんなトラップでやられる程、私達は弱くないわ」
操縦を代わったテオドールはエンジンを吹かし、低速ギアで一気に崩落した橋を上って脱出した。
「こちら15号車。ティーガーが脱出しました。無茶苦茶ですよ、あんな脱出方法」
『了解。14号車と連携して逐一敵の所在を教えてください』
「了解。迂回して追跡します。14号車にも位置を伝えました」
私は無線を切る。
「まだ、あの戦車との接敵報告は無いのね」
私は砲塔内に入って言う。
「所在が掴めないんじゃ、不安ですからね」
5台、未だに所在が分からない。
「早く見つけないと不味い。あの戦車は強力すぎる」
私は車両リストの最後の5台に見る。そこには、E50、75、100と書かれていた。
何だかんだで三回戦。
続くとは思わなかったですけど、三回戦。私のやってきたスポーツでは色々因縁のある三回戦を書ききれるよう頑張ります。