浜へと入った私達は戦車を展開して前進する。
「明美、この頃の射撃精度はどう?」
「う~ん、良いとはいえませんね」
「了解。麻衣、無線を全体無線に切り替えて」
「ん」
麻衣が無線機を操作して全車に通じるようにする。
「全車、敵の残り5台の所在が掴めません。慎重に移動してください」
『『了解』』
全車から応答を聞き、無線を切った。
「甘いわね。全車、攻撃開始!」
バイパスの上に先回りしたセダン高校の戦車が一斉攻撃を始める。
「回避運動!!」
私はマイクに向かって叫んだ。朱里が急いでジグザグに走り始める。後続もそれに従った。
「応射急げ!!」
回避運動をしながら砲塔を敵に向かって旋回させる。
『こちら6号車、やられました』
『11号車、履帯を切断。行動不能』
落伍していく戦車を尻目に残った戦車は応戦する。
「3号車、先に行ってください。やられればその場で負けです」
『了解。隊長、幸運を』
3号車のセンチュリオンは回避運動をやめ、全速力で走っていく。私達も応戦しながらそれに続いた。
「被害報告」
テオドール率いる部隊がバイパスのガードを破壊して浜へと降りた。
『パンターが1台やられただけです』
「上出来」
動けなくなっているトータスを真後ろから砲撃して白旗を挙げさせた。そして、その左右を抜けて追撃する。
『こちら16号車、敵は追撃中』
「了解、ありがとうございます会長」
無線を切り替えて2、4、5号車へと繋ぐ。
「最後尾にて横隊になってください。煙幕を展開します」
『『了解』』
徐々に速度を落として、最後尾にて2、4、5号車と速度を合わせて横一列になる。砲弾は休み無く飛んでくるが、走っているため命中精度は低い。
「次の出口で浜を出てください」
『了解』
先頭を走る3号車から応答があった。
「明美、煙幕を展開」
「了解です」
明美が脇からスイッチを取り出して押した。すると、車体後部に設置しておいたボンベから煙幕が出た。横に並んでいる車両からも同様に煙幕が出る。
「煙幕!!」
ティーガーの後ろを走るパンター。それに乗っているゲルマニアは驚く。
「隊長、気をつけて下さい」
『分かってる』
セダン高校の戦車が煙幕の中に突入した。
「朱里、速度を落として。明美、合図したらそちらに砲を向けて攻撃して」
「「了解」」
朱里は指示通り速度を落とし始める。そして、煙幕の中に入る。
『こちら4号車、やられました』
「な!?。どういう事?」
『分かりません。突然、後ろから攻撃を受けました』
この煙幕の中を正確に撃ち抜いた。私は思案する。
「なるほど。ゲルマニアの乗るパンターね」
『よくやったゲルマニア』
煙幕の中を進むセダン高校の戦車。その中に居るパンターがキューポラ上に設置した光学機器『ヴァンパイア』を使って4号車、コメットを撃ち抜いたのだ。
「ブルムベア、攻撃」
ゲルマニアの命令でパンターの右を走るブルムベアが砲撃する。
「右2度修正。それで命中よ」
ブルムベアは言われた通り角度を修正し、発射した。
「命中。よくやったわ」
『こちら2号車。15cmを喰らいました』
「了解。自走できるならそのまま波打ち際を走って停車しなさい」
私は無線を切る。煙幕に、そして敵車両群に上手く紛れ込めたようだった。
「そろそろ煙幕が切れる。明美、用意して。麻衣も装填早くね」
「了解」
「ん」
明美と麻衣がそれぞれ答え、準備する。麻衣も砲弾ラックから一発装填し、もう一発を取り出して抱える。
『こちら16号車。全車浜を脱出。後は貴女達だけよ』
「了解。ありがとうございます」
会長からの連絡を受けた。
「5号車、そちらも先に行ってください」
『了解。隊長、無事でご、きゃ!!』
「どうしたの!?」
『やられました。恐らく、パンターです』
「了解。ご苦労様」
煙幕が晴れ始める。私はタイミングを待つ。
「やっぱり敵群のど真ん中」
センチュリオンはセダン高校の車列の真ん中を上手く走っていた。
「よし、まずは右側面のⅣ号戦車」
砲塔を旋回させ、Ⅳ号戦車に狙いを付ける。そして、砲撃して仕留めた。
「次、斜め右後ろのⅣ号突撃砲」
そのまま旋回させ、Ⅳ号突撃砲に狙いを付ける。
「発射!!」
Ⅳ号突撃砲にも命中し、白旗を挙げた。
「そのまま回して、左に居るⅡ号戦車も仕留めて」
Ⅱ号戦車がこちらに銃塔を向けて機関砲を撃ち始める。
「テオドール、新入生を乗せているのね。機関砲は車体ではなく履帯を狙うのよ」
Ⅱ号戦車にも砲弾を命中させ、白旗が挙がったのを確認する。
「朱里、全速力で脱出。敵車両を翻弄して」
センチュリオンのエンジン音が一際大きくなり、敵車両の間をスラロームで抜ける。
「隊長、どうやらセンチュリオンが混ざったようです」
先頭集団を走るパンターに乗るゲルマニアが後続の異変に気付いた。
『何!?。いつの間に?』
「私たちの間を走り抜けます。攻撃します」
『いや。私がやる』
そう言うとテオドールの乗るティーガーの砲塔が右に旋回を始める。
「明美、砲身を下げて。このままだと砲身同士がぶつかる」
左から前に向かって旋回途中のセンチュリオンの砲身と右に向かって旋回中のティーガーの砲身がぶつかる危険性が出てきた。
「追い越します!!」
朱里が更にアクセルを踏み、センチュリオンはトップスピードに達する。
「発射!!」
抜きざまにセンチュリオンが発砲した。砲弾はティーガーの転輪に命中し、命中した箇所を中心に転輪が割れた。
「中心を撃ち抜かれました。恐らく内側の転輪も破壊されたので、交換は非常に手間ですね」
停車したパンターからゲルマニアが顔を出して確認する。テオドールをはじめ、ティーガーのクルーも降りて確認する。
「急いで修理!!」
テオドール達はティーガーの修理に取り掛かった。
「フラッグのティーガーを仕留めれませんでした」
明美が残念がる。
「構わないわ。朱里、このまま皆と合流して」
「了解」
暫く走ると道の脇に一列に舞阪女子の戦車が停車していた。
「お疲れ様。それじゃあ、先導宜しく。隊長」
「会長が先導してくださいよ」
「ご勘弁ね。先に立つのはあまり好きじゃないわ」
「貴女、会長よね?」
私たちのセンチュリオンを先頭に後ろが続いた。
「さて、手酷くやられましたが。勝たなきゃ駄目ね」
私達は前進を再開した。