松並木を超えて再び舞阪町内に入った舞阪女子は前進を続けた。
「浜に居るテオドール達は修理が終わるまで動かない筈。フラッグを仕留めたいけど、修理の為に守りを固めているから突撃は危険です。だから先に別働隊を見つけて叩きます」
私は無線で残存全車に伝える。
『『了解』』
全車からの応答を確認し、地図を広げる。
(別働隊は一体何処に移動しているの?)
「直ちに舞阪女子を発見し、フラッグを仕留めなさい」
ゲルマニアが無線で連絡を取っている。
『了解しました。けど、舞阪女子もやりますね。隊長の戦車の天輪を仕留めて、そのまま逃げ切るなんて。フフフ』
無線の相手は笑いながら言う。
「笑ってないで。それで、勝算はあるの?」
『やってみなくちゃ分からない、ですかね。とりあえず、見つけ次第です。とりあえず、例のもの使いますね』
「勝てるのなら、構わないわ」
『了解。必ず勝って見せますよ』
そう言って無線が切れる。
「ホーエン隊長、私たちE部隊の出番ですか?」
ホーエン指揮するセダン高校実験部隊E部隊が国道を一列に走っていた。
「そうですね。では、指揮官旗を掲げて」
「了解です」
ホーエンの乗るE75に指揮官旗が翻る。
「戦闘隊形。障害物を気にせず、戦闘隊形に移行して」
すると、先頭に2台のE50が移動してホーエンの乗るE75ともう一台の75が後ろに。その間にE100が入った。
「E50へ、発見しだい攻撃して構わない。周囲への警戒を怠らず前進せよ」
ホーエンはそう命じた。
『こちら14号車。現在セダンのフラッグは急ピッチで修理中です。しかし、重戦車なので修理は大変そうですね』
「それはそうよ。履帯も外して、転輪も片側ほぼ全て交換しないといけないからね」
その時、麻衣がこちらを向く。
「隊長、15号車から通信。別働隊発見」
「了解。15号車に繋いで」
麻衣が無線を操作して15号車に切り替えた。
「15号車、状況を教えて」
『こちら15号車です。現在、国道一号線を別働隊が東に向けて走行中。あ、今中央のE100から黒煙があがりました』
「くそ。足回りがイカれたか」
E100が自重に耐えられなくなり、エンジンのパワー不足もあって故障してしまった。
「修理不可だな。生憎、今の装備でこいつを直せる筈が無い」
重量があるため、修理には専用の設備が必要である。
「仕方が無い。E100は放棄する。審判にもそう伝えろ」
『E100はどうやら放棄するようです。今乗員が出て来ました』
「了解。引き続き監視をお願い」
無線を切り、外の様子を確認する。
「別働隊を撃ち破るのは今がチャンスね。相手は主力を失って身動きもできない状態。これより、セダン別働隊を撃滅します」
1号車を先頭に前進する。しかし、国道へ出たところでその1号車に砲弾が炸裂した。
「いったー!!」
私は衝撃で頭をぶつけていた。他の乗員も同様だった。
「皆、大丈夫?」
頭がクラクラする中で車内を見渡す。
「体は大丈夫だけど、走行装置に問題発生。4段以降ギアが入らない」
被弾したセンチュリオンの横に会長の乗るT34が停車した。
「左旋回、撃て!!」
左に車体を旋回させ、センチュリオンを攻撃したE50を撃破した。
「撃て、撃ち続けて!!」
他の車両も国道に出て砲撃を行う。
「一旦隠れよ」
ホーエンは残った僚車と共に建物の陰に隠れる。
「残ったのは3台か」
白旗を挙げたE50が国道に止まっている。そしてE100はエンジントラブルで走行不能となっている。
「隊長達はまだ動けないみたいだし、拙いね」
ホーエンはマイクを掴んだ。
「全車へ、これより方陣を組む。防御力勝負だ」
「方陣。けど、3台で組んでも効果を発揮しないわね」
私は物陰から敵の様子を窺う。
「E75を前に出して、その間にE50ね」
「どうします?。E75の正面装甲はもっと近づかないと抜けませんよ」
隣に明美が来て言う。この距離でE75を撃ちぬけるのはT34のみ。
「16、17号車は正面へ。これより、進撃します」
T34、2台が国道に出る。その瞬間、攻撃が始まった。
「池田、私たちにこんな真似させて、覚えてなさいよ」
会長は悪態をつきながら言う。時々命中弾があり、車内に衝撃が来る。
「ほら、攻撃」
「は、はい」
砲手が照準儀を覗き込んでE75に狙いを付ける。
「命中なし。残念ね」
攻撃したが、外れた。
「こちら15号車、回り込み成功です」
クロムウェルがその快速を生かして敵の背後に回りこんだ。そして、砲をE50の車体後部に押し付ける。
「非力な巡航戦車の砲でも、この接射に耐えれるかな?」
砲撃し、E50を撃破した。
「やった、初戦果」
その任務の性質上、殆ど戦果をあげないクロムウェルがE50を仕留めたのだ。
「おのれ。砲搭を後ろに向けろ」
ホーエンの乗るE75の砲搭が旋回し、砲を後ろに向ける。
「いやー、これで思い残すことなくリタイヤできるね」
その瞬間、砲撃を喰らった15号車は白旗をあげた。
『こちら17号車。覆帯がやられ、走行不能』
「了解。そのまま路肩で待機してください」
私たちの乗るセンチュリオンがようやく仕留められる距離になった。
「徹甲弾装填。発射!!」
麻衣が砲弾を装填し、明美が狙いを付け、放った。砲弾はE75の正面装甲に命中し、白旗をあげた。
「残り一台。会長、頼みます」
「分かってるわよ。発射!!」
ホーエンの乗るE75も仕留めた。
「これで、終わりね」
会長がそう言った時、空から砲弾が降り注いだ。
「な、何なの!?」
「撃ち続けろ。砲弾が無くなっても構わん。とにかく投射しろ」
ブルムベアが連続で攻撃を続けた。
「隊長、修理を全て完了しました」
ティーガーの修理が完了した。走行も問題なく行えた。
「よし、全員戦車を整列させろ」
「残った車両は私たち1号車とフラッグの3号車、後は14号車と16号車、20号車だけとはね」
先ほどの攻撃で残った戦力を大部分失い、僅か5台となった。
「しかも、14号車の報告で敵は浜で戦うみたいね。決戦になるわ」
浜ではセダン高校の残存戦車と乗員が整列した。
「諸君、E部隊は全滅した。そして、私たちの残り7台」
ティーガー、パンター、Ⅳ号戦車が2台とⅣ号突撃砲が3台となった。他は撃破されるか弾薬か燃料を使い果たしてのリタイヤとなっている。
「最後の戦いを前に言う。戦う意思の無い者はリタイヤして貰って構わない」
ティーガーとパンター以外の乗員は殆どが1年生である。
「怪我はありえないと言わない。これは武道だ。絶対の安全は無い。諸君等には未来がある。何度も言うが、戦う意思の無い者はリタイヤして貰って構わない。それで学校が諸君等にどうこう言う事もない」
テオドールが全員を見渡す。すると、1人の生徒が歌いだした。
「我はセダン高生。君知るや我が旗の色。この白と黒の旗は我が前に翻る」
それはプロイセン国歌を模倣して作詞されたセダン高校の校歌だった。
「「父祖が自由に殉ぜしを、我が旗の色は象るものなり。我は断じて躊躇わじ、斉しくやり遂げる覚悟ぞ」」
次々と生徒達が歌う。テオドールもゲルマニアも残りの生徒達も歌った。
「「「陰鬱なる日も、陽光照らす日も、我はセダン高生にして、セダン高生たらん」」」
そして、全員が戦車の車体を隠すための穴を掘り始めた。