昨日の大食い対決の形相をし出した第一ラウンドは終わり、今日は本命の第二ラウンド。ドーチェスター高校との練習試合である。
「今日の練習試合、勝てますように」
岐佐神社の社殿の前で二礼二拍手一礼をする。地元での試合ではいつもの日課だった。
「隊長、既に他の車両は集合場所である河合楽器工場跡に移動しています」
「分かった。それじゃあ、こちらも行きましょうか。隊長が遅刻じゃあ、示しがつかないだろうし」
私とあけみは社殿まで登ってきた階段を下る。参道を歩きながら二つの鳥居をくぐった。
「暖機運転から戻ってきたんですね」
履帯音が聞こえたと思うと、センチュリオンが道路を走ってきて参道前に停車した。
「隊長、エンジンは快調。問題なし」
あかりが操縦手用ハッチを開けて言う。パンツァージャケットの袖を捲くっているのが気になったが、まだ試合ではないので大目に見た。
「ただ、校章が取れかかっているのは気になるなあ」
校章は舞阪と刺繍されたマツバギク型のワッペンである。それが半分取れかかった状態だった。
「すみません。直ぐ縫います」
「あけみ、縫い終わるまで操縦手をお願い」
私があけみに指示を出し、左から車体によじ登る。そして、砲塔上部にある戦車長用ハッチから半身を出した状態で立つ。
「集合地点に向かって前進」
了解と言う応答と同時に、センチュリオンは発進する。クラッチを繋いでいき、加速していく。坂を降り、舞阪第二保育園が左に見えた。
「園児達が屋上から手を振っていますね」
「ええ。応援してくれている」
こっちも手を振り返した。あかりも縫い終わったのか、砲手用のハッチを開けて手を振っている。
「ありがとう、あけみ。もう大丈夫」
信号で停車したときに、あかりは操縦手を交代した。
「まいは?寝不足?」
「違う。寝すぎた」
目を擦りながらまいは答える。さっきから会話に参加してないのでおかしいと思ったのだが、ずっと目を掻いていたらしい。目が赤かった。
「弾種を間違えないでよ。弾種が違って負けましたなんて、会長にもどんな顔をすればいいのか分からなくなるから」
その時、役場からの町内放送が流れた。
『こちらは広報舞阪です。町民の皆様、本日は町立舞阪高等学校とドーチェスター高等学校との練習試合となっております。交通は一時的に寸断されますので、ご了承下さい。また、競技エリアからの退避もお願いいたします』
そう流れて、放送は切れた。
「いよいよ、練習試合って感がありますね」
左に曲がって、集合場所である河合楽器工場跡に到着した。真っ白い石が敷き詰められただだっ広いこの場所は、試合開始前の集合場所に丁度良かった。
「左端に停車させてください」
隊長車は真ん中に止めるのが一般的な学校の配置だが、舞阪では一番威圧感のあるトータスを中央に置き、その両脇にT28が停車するのが通常配置となっている。
「流石に石の上はサスペンションがあるとはいえ揺れましたね」
「乗用車が走るよりかはマシよ」
あけみの言葉にあかりが即答する。遠まわしに操縦が下手と言われたと思ったのだろう。
「静かに!!。整列!、相手が来た」
音楽が聞こえ始めたと思うと、ドーチェスター高校の戦車が入ってきた。M4、M26、M6。そして、車体側面にはベツィー・ロス・フラッグの13個の星の代わりに大きな星とその下にドーチェスターハイスクールと描かれている校章が描かれていた。
「本当に、自由が好きなんですね」
スーザ作曲の『自由の鐘』を流しながら走ってくるドーチェスター高校の戦車はそのまま綺麗に横に広がっていき、等間隔で停車した。
そして、隊長のメアリーと副隊長のスカーレットがそれぞれ戦車から降りる。
「昨日はあんな事があったけど、今日は宜しくね」
「こちらこそ。正々堂々と決着を着けましょう」
「それではこれより、舞阪高等学校対ドーチェスター高等学校との練習試合を開始する。一同、礼!」
「「お願いします!」」
全国戦車道連盟から派遣された主審の号令で、競技参加者全員が相手に頭を下げた。そして、連盟から渡されたフラッグをフラッグ車となるT29に取り付けた。
「久しぶりの練習試合ですから、わくわくします」
「楽しむのも大事だけど、勝てないと意味がない。全車へ、ほどほどに楽しみ、完膚なきまでに叩きなさい。それが、池田流だから」
各車から了解の返答を貰い、試合開始まで待つ。舞阪中学校跡からのスタートの為、最初の選択で大きく変わる。
『試合開始!!』
その言葉と同時に信号弾が空で破裂した。いよいよ、ドーチェスターとの練習試合が始まったのだ。
メアリーは南北戦争で活躍した女性軍人(軍医)、スカーレットは風と共に去りぬのヒロインの名前から採った。時代違うけど
ドーチェスター高校の使用車両
M6A2E1
T26E2(90mm砲モデル)
M4A3E8
M4A3E2
学園艦の形状はエセックス級です。