舞阪中学校跡からスタートした各車は、正面の通りを前進した。
「14、15号車は先行。敵の戦車を発見次第報告後誘導をしてください」
14、15号車。つまり、クロムウェルは隊列より先行して信号機を左折した。
「他の車両は周囲を警戒しながら前進。まずは往還通りにぶつかるまで前進します」
先頭は1号車であるまみ達が乗るセンチュリオン。その後ろは2号車の同じくセンチュリオン。その後ろにはフラッグ車の9号車が居る。
『こちら9号車。本車両は予定通りに走ります』
「ええ、そうして。作戦通りに行けば、そっちは大丈夫だ。ただ、思っていたよりも地盤が弱くなければだけど」
そう言って無線を切る。あけみはこちらを見上げてきた。
「隊長、向こうは乗ってきますかね?」
「向こうには偵察用車両は居ないわ。それに、戦車駆逐車は戦車道のルール上参加できない。だから、向こうには対戦車戦闘をまともに行える車両はM26だけ」
「フラッグ車はどれだと思います?」
「セオリー通り、一番装甲が硬いM4A3E2だと思うわ」
そう言った時、後方で爆発音が聞こえた。そして、
『こちら6号車。敵にやられました。敵は、真後ろです』
無線から聞こえると同時に、後方を見た私は白旗が挙がっている6号車。つまり、コメットがやられているのを見た。
「でも、敵は何か分からない」
僚車によって白旗が挙がっているコメットは確認できるが、その後方に居る敵が何なのか分からなかった。
『敵はM26です。そして、その後ろには2台のイージーエイトです』
重戦車1台、中戦車2台。3両小隊としては一つの理想形である編成だった。
「位置を報告されただろう。全車、全速力にて走行。途中で分かれて、舞阪駅で合流します」
そう僚車に伝える。各車がそれに従い、全速力で走り出した。
「あかり、少し前進は待って。あけみ、砲塔を180度回して」
『了解』
二人が答え、砲塔は旋回を開始する。その間にも、後ろの車両は狙いを定めてくる。
「M26を狙って。指揮官がやられれば、残りの2両は混乱する筈です」
120度位回ったところで
「まい、弾種高初速徹甲弾。あけみ、一発で仕留めてよ」
「了解です。任せてください」
まいは即応弾の中から高初速徹甲弾を引っ張り出し、砲に装填した。尾栓が閉まり、いつでも発射可能となる。
「目標、パーシング重戦車。発射!!」
発射された砲弾は、目標へと向かって飛翔する。そして、寸分違わずに戦車の弱点の一つ、車体と砲塔の境界線に命中した。
「白旗確認。パーシング、競技資格喪失です」
あけみが伝えた通り、パーシングからは白旗が挙がっていた。そして、残りの2両は動揺した。
「まい、徹甲弾を装填。あけみ、残りの2台も仕留めて」
「了解しました」
あけみは、動揺してどうすれば良いか分からなくなっているイージーエイトに徹甲弾を命中させ、競技資格を喪失させた。
「もう一台も」
そう言いかけた時、動揺するイージーエイトの後ろの交差点から新手のM26とイージーエイト2台が現れる。
「やってくれるじゃない」
新手の先頭に停車したパーシングからメアリーは顔を出した。
「内の新人を可愛がってくれてありがとう。お陰で、もっと訓練をする必要がある事を実感したわ」
「なら、残りの一台も可愛がってあげたいけど。そうも行かないね」
その後ろからも同じ編成の新手が現れた。
「メアリー隊長、ちょこまか嗅ぎ回っていたクロムウェルを仕留めました」
偵察に出していたクロムウェルはやられているのだろう。呼びかけても応答がない。
「クロムウェルの競技資格が喪失しています。これで、こっちは残り12両です」
あけみが言ってくる。しかし、それを聞いたまみは無線機のスイッチを押した
「各車、潜む場所に向かってください」
そう指示を出し、メアリーと相対する。
「偵察車両を仕留めた事。高くつくよ」
そう言うと同時にセンチュリオンを砲を後ろに向けたまま全速力で走り出した。
「往還通りを右折し、国道を渡って松並木に入ってください」
十分な速度がついたセンチュリオンは超信地旋回を走りながら行い、ドリフト感覚で右折した。
「往還通りと国道との交差点で、稲荷神社に行く方には歩行者用の信号がある。そこにトータスが待機している。そこで、まずは一台を仕留める」
まみの言う地点に、確かにトータスが待機していた。その主砲なら、M26の装甲など撃ち抜くに容易かった。
「一両撃破」
後ろを見ると、側面を撃ち抜かれたイージーエイトが居る。白旗と煙を挙げ、動かなかった。
「あけみ、当てなくてもいいから撃って」
後退するトータスに攻撃が集中しているため、気を逸らすために発砲した。
「よし、松並木に入って。そこに、味方が集結しています」
左折して、松並木に入る。右には波小僧の石造があるが、その周囲にもドーチェスターの砲弾が命中する。
「神さん向かって砲撃するなんて」
「舞阪の守り神を砲撃する輩にはお仕置き」
松並木で視界が利かないのを利用した包囲は成功した。戦車が走れる道全てに味方戦車を配置し、包囲したのだ。
「各車、砲撃開始」
包囲に成功した9台が撃ち捲くり、次々に白旗が挙がる。
3分ほどの撃ち合いで、こっちは3台がやられたが、向こうは全滅した。
「後はフラッグ車とその護衛についていると思われるM6が2台という訳ね」
地団太を踏むメアリーを尻目に各車に伝える。
「こっちのフラッグ車は何処?」
『こちら9号車、10号車がやられて、本車も逃走中』
「今何処!?」
突然の緊急事態に大きな声で答えた。
『現在、線路脇を舞阪駅目指して走行中。砲塔は主砲の長さの関係で旋回できません。最後尾には敵フラッグ車も確認』
「分かったわ。そのまま走って。舞阪駅前、駐輪場を越したら無線で知らせて」
『りょ、了解しました』
「間接射撃の基礎は稽古で学んだわよね?」
松を植えている縁石に片方の履帯を乗り上げて射角を取り、連絡が入るのを待った。
『たった今、越えました』
「了解。あけみ、発射!!」
「発射します!!」
発射された徹甲弾は放物線を描きながら落下する。そして、煙が上がった。
『こ、こちら9号車。砲弾が空から降って来て。敵フラッグ車に直撃し、旗を挙げました』
報告でも驚きを隠せていなかった。それと同時に
『ドーチェスターフラッグ車、走行不能。よって、舞阪高等学校の勝利』
そう、アナウンスが流れた。