-戦車道喫茶『マーク』-
名古屋港区、各校の水上機が駐機されている港が見渡せる地に店を構える戦車道喫茶に私達は居た。
「すみません、ザッハトルテとミルフィーユ、ドボシュトルタ、ショートケーキを各1つずつ下さい」
歩いてきた店員さんに注文をすると、
「了解しました。少々お待ち下さい」
と、敬礼して店の方に歩いていった。
「イギリス戦車兵の制服ですね。デザート色。アフリカ戦線ですか」
歩いていく店員さんを見ながらあけみは言った。
「制服オタク?」
「酷いですよ。まいさんも好きな事はあるでしょう?」
そんな事を言っていると、走行レーンから戦車の形をしたケーキを乗せたイギリスのトランスポーター『スキャメル戦車運搬車』がテーブルの上に走ってきた。
「それにしても、隊長はショートケーキで良いんですか?この中で一番質素ですよ」
あかりが自分の頼んだドボシュトルタと私の頼んだショーとケーキを見比べる。
「そうですよ。なんなら、私のと交換しますか?」
と、あけみが自分の頼んだザッハトルテと交換しようとしてくる。
「私はいいです。昔から、ショートケーキが好きなので」
そう言って私は食べ始める。実際、初めて食べたケーキがショートケーキで、それ以後はケーキで頼むのはショートケーキのみとなっている。
「まあ、それならいいですけど」
そう言って他の3人も食べ始めた。暫く食べていると、見覚えのある顔が歩いてきた。そして、私達のテーブルの前で止まった。
「こんな所で余裕に構えていると、私たちが優勝を取れちゃうよ」
小柄な。本当に小柄な少女。小学生と言っても通用しそうなほど小柄な少女が私達に言ってきた。
「そう言う貴方も余裕ですね。原流戦車道師範の娘であり、富士女子高校の隊長。原伊吹」
ぴくっと、原は眉を動かした。
「今年は私たちが優勝するからいいの。この東海大会、今まで連覇した高校は居ない。去年は後れを取ったけど、今年はそうはいかないわ」
「連覇した高校は無い、か。なら、私たちが初と言う事になるわね」
その瞬間、原は思いっきり激怒した。
「うるさーい!!。私達が今年は絶対優勝する。これは決定事項なの」
怒っている原を他所に、あかりが耳打ちしてきた。
(原さんって、試合中は冷静ですけど、何で日常ではこんなに沸点が低いんでしょう?)
(試合でも、酷く追い詰められたときはこうなるそうよ)
そう私は耳打ちし返し、ある人が居ない事に気付いた。
「そう言えば、島田は?」
「隊長、速いですよ」
と、金髪ツインテール。こちらも小学生と言っても通用しそうな身長の少女が走ってきた。
「おそーい!!。カレン。今年の優勝校は?」
「は、はい。富士女子高校です」
走ってくるなり、直ぐに立ち止まって答えさせられた。
「いや、呼吸を整えてから答えようよ、島田」
私がそう言うと、島田は
「いえ、私は大丈夫です」
確かに息が全く上がっていなかった。
「とにかく、今年は絶対に私達、富士女子高校が優勝するの。それをせいぜい見ている事ね」
そう言うと歩いていってしまった。島田も急いで後を追っていく。
「試合中は基本的に冷静なのに」
ケーキを食べながら私は言った。
「どうして日常じゃあ、あんなに沸点が低いのか」
そんな時、携帯の着信音が鳴った。
「何ですか、この着信音?」
「登録していないメールアドレスだから、この音なのよ」
私は携帯を開いて確認する。メールの送信者は全国戦車道連盟だった。
「なになに、エキシビビョンマッチへのご参加をお願いいたします。搭乗車両はマークⅣ型になります。どうか、戦車道の広報にご協力下さい」
「マークⅣ型を、4人で動かすの?」
「乗員定数は?」
「8名」
「倍じゃん!!」
あかり、まい、まみ、あけみの順に言葉を発する。操縦関係4名と武装関係4名で構成されるマーク戦車の乗員配置。これを4人でやらなければならない。
「戦う場所は、富士演習場。決勝戦と同じ場所か」
「4人で倍の仕事をするか。私達しか参加しちゃいけないの?」
「なになに、通知した者以外の搭乗を禁ずる。マーク戦車に乗れる人間は、私達だけね。それと、他の車両はどれも搭乗員が分からないみたい。だから、相手が誰か分からないけど、こちらも相手には分からないみたい」
「それで、どう言うルールなの?」
「フランス、イギリスVSドイツみたいですね。これじゃあ、史実どおりに連合軍が勝っちゃいますよ」
「そこは、腕と戦術でカバーしてくるでしょうね。戦車黎明期と違い、今では戦車戦も進歩している。戦略は幾らでも立てられるだろうから」
-戦車道部部長室-
「マーク戦車の特徴は、左右に設けられている6ポンド砲です。これはドイツで一番手強いA7Vにも有効です。ですので、落ち着いて狙えば十分撃破出来ると思います」
私はマーク戦車の特徴を簡単に説明する。
「しかし、定員8名を4名で動かす事になるのか。キツイと思いますけど」
「それでもやるしかないのよ、あけみ。まいも、あかりも。戦車道に多くの学校が参加してもらえるように戦車道連盟も広報に力を入れているけど、一部の強豪校しか最近は出れなくなっているそうよ。だから、一番戦車道が盛んなこの東海地区を使って戦車道を宣伝しようとしているのよ」
最近の全国大会では、もう一部の強豪校しか参加できなくなっているのが現状だった。戦車道連盟は戦車道の競技人口の低下を懸念して、大会を盛り上げる企画を考えていると聞いていた。その一つが、このエキシビジョンマッチなのだろう。
「それでも全国大会等が無くなったら嫌ですしね。そう言うことでしたら、4人でも頑張りましょう」
「そうね。ちょっとキツイけど、頑張りますね」
「頑張る」
あけみ、あかり、まいがそれぞれ決意を語る。
「それじゃあ、行きましょうか。富士演習場に」
「「了解」」
富士女子高校
隊長の原伊吹は日本戦車の父である原乙未生中将から採りました。また、島田カレン副隊長は島田戦車隊隊長の島田豊作から採りました。
また、一部保有車両紹介
・五式軽戦車
・九八式軽戦車
・九七式中戦車