-東富士演習場-
国内最大の演習場には、第一次世界大戦の戦車が並んでいた。
「私達が乗るのは、この戦車ね」
停車しているマーク戦車に乗り込む。中はそれまでのマーク戦車と違い、居住性は向上してはいるけど、まだまだ戦車黎明期。私達の乗るセンチュリオンとは雲泥の差だった。
「朱里は操縦に専念して。私が車長、ブレーキ手、左砲の砲手を兼任する。麻衣は両方の砲に砲弾を装填して。明美は右砲の砲手、変速手を兼任。とりあえず、これでいく」
私は車内に入り、全員に仕事を指示する。
「了解です。それでは開始位置に行きますね」
マーク戦車はゆっくりと走りながら、スタート地点に到着する。
「前方には塹壕か。よく再現されてるわね」
ソンムの戦いの場を再現している様だった。最も、相手にも戦車が居るけど。
「勝利条件は、相手の陣地に到達する事。敗北条件はこちらの陣地を取られる。それじゃあ、進撃開始」
合図と同時に、試合開始を示す信号弾が上がった。
「皆さん、賭けですね。陣地を守らず、全軍で敵の陣地を攻撃に向かうなんて」
「そう言う私達も向かってるでしょう、明美」
先頭の車両群は、早くも最初の塹壕線に到達する。そして、超えられると判断した車両は車体上に備えている角材を落とさずに進撃した。
「後ろにはルノー軽戦車がいるから、おとしてあげて」
麻衣がハッチを開けて、角材を少し落とした。
「後続のルノー軽戦車も角材の上を通過しました。サンシャモンもです」
エンジンの熱はある程度軽減されているのでそちらは不快に感じなかった。
「車内は揺れが激しいわね。と、前方にLK IIが3台確認」
麻衣が急いで砲弾を右砲に運ぶ。明美がそれを受け取り、装填した。
「前方の戦車隊も目標を発見した様です。停車して、狙ってます」
見ると、前方を走っていたマーク戦車3台とシャール2c1台が狙いを付けていた。
「一斉攻撃ね。明美、タイミングを合わせて」
「了解」
肩で狙いを微調節し、前方の戦車の砲撃と合わせて砲撃する。1台に命中し、白旗が昇った。
「1台撃破。でも、直ぐに撃ち返される」
その言葉の通り、残った2台が撃ち返す。命中が無かったが、既に土煙が晴れたときには姿が見えなかった。
「敵が居なくなった?」
居なくなった事に安心したのか、前方のマーク戦車が前進を始めようとする。しかし、少し前進したところで撃破されてしまった。
「敵!!。A7VとA7VーUが接近」
私もブレーキ手の席から離れて、左砲に着く。麻衣がこちらにも砲弾を渡してくる。
「麻衣、疲れるかもしれないけど頑張って」
戦車の中を右に左にと行ったり来たりする麻衣が一番疲労が溜まっている。
「大丈夫、まだまだ問題ない」
それを聞き、私は狙いを定める為に集中する。
「砲撃の精度は集中に比例する。集中は精神力に比例する。そして、この砲撃は結果に比例する」
つまり、百発百中を宣言しているのだ。言い終えたあと、私はすぐさま砲撃する。砲弾はA7Vに命中。白旗が昇る。
「流石です、隊長」
「褒めてないで前進。この戦車は肉薄してこそ強みが生かせる」
左右に砲があるため、相手の間に潜り込めば左右の敵を同時に撃破できる。
「さて、このまま一気に敵陣地に突撃よ」