我ら、八ツ橋高校科学研究部!   作:ぺんたこー

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私は部長の依頼を見学するために、車に乗っていた。学校の駐車場に停まっていたものだ。しかしこれは前にゆうさんと狂気の戦場タルタロスへ行ったときの車とは違った。黒の混じった青色、ダークブルーみたいなカラーだ。内装は皮のシートで車内には様々な色のドリンクホルダーが沢山、それはもう沢山、スーパーの安売りでドリンクを大量に買ってもドリンクホルダーの方が余るくらいあった。

「ねぇ部長…このドリンクホルダーなんなの?」

助手席から隣の運転席を見る。慣れた手つきでハンドルを切る姿はどこか美しさを感じる。

「…奈々ちゃん、どれか一つ取ってみてぇ?」

「これとか?」

私は何も考えずに目の前にあった黒色のドリンクホルダーを一つ手に取った。触れてみて初めて分かったことは、飲み物は入っていないはずなのに重いということだ。片手で持てないことはないが見かけ以上に重い。私がまだ小さいとはいえ、ドリンクホルダーはそれなりの質量がある。

「部長!ほんとに…なんなのコレ!」

焦る私をどこか微笑ましそうに見る部長は変わらぬ口調で言う。

「そのままだとドリンクホルダーだけどぉ、変形すれば科学武器(スキル)だよぉ」

これがスキルだと言われても、ただの鈍器としか考えられない。重いこと以外は普通のドリンクホルダーと同じだ。

「これのどこがスキルなの?」

「それは失敗作の鈍器だよぉ」

鈍器で正解だった。

「そっちの青色ならぁ結構自信あるよぉ?」

ドアに掛かっていたうちの一つを手に取る。失敗作の赤色よりは軽いが、それでも普通のドリンクホルダーではありえない重さだった。

「ホルダーの底面をひねってみてぇ?」

言われた通り底面をひねる。かちっと心地良い音がしてスキルが起動する。光と音と共にドリンクホルダーの形が崩れ、新たな形を作りだす。ドリンクホルダーが真ん中から真っ二つに割れ、双方に倒れる。元の高さを2倍して縦に真っ二つに割ったような形だ。そして中から導線らしきものが飛び出す。

「変形ってロマンよねぇ」

「……ちょっとよく分かんないけど、これってどんなスキルなの?」

明らかな落胆の表情を隠しながら、部長は説明を始める。視線は前だ。運転中だから当たり前。安全運転。安全第一。

「えーっとねぇ?今持ってるところを強く握ってみてぇ?」

ドリンクホルダーの本体だった部分を強く握る。少し待っていると導線が両端から橙色に染まり始め、やがて全体に均等に色がついた。手をかざすと導線は熱を持っているらしく、ほのかに暖かかった。

「触っちゃだめだよぉ?触れた所から落ちちゃうからぁ」

私は直ぐに手を引っ込めた。どうやら発砲スチロールカッターと同じ仕組みのようだ。だがゆうさんがそうであったように、人を殺すのに躊躇いがない人だから、火力、このスキルの場合熱量は並ではないはずだ。こんな物いつ使うのだろう。

「電源切る時はぁ底面をさっきと逆方向に回すだけだよぉ」

逆回転。底面を回した途端左右に広がっていた半円の円柱が閉じて円柱に戻り、気がつけば手の中には元の青色のドリンクホルダーがあった。

ドリンクホルダーを元あった場所へ掛け、しばらく車が走るのを見守った。部長はまだまだ未知の存在なので、いつカーチェイスを始めるか分からない。ただ安全に無傷で目的地に着くのが今の願いだ。

「着いたよぉ。降りてぇ奈々ちゃん」

危惧していた事態は一切起こらず、無事目的地に到着した。

車を降りて辺りを見回す。

都市。私の知識ではこの単語しか浮かばなかった。ごく普通の市街だ。

「あれぇ?そういえばぁ奈々ちゃんって防具型のスキル持ってないのぉ?」

部長が車のトランクからスキルを取り出して身体のあちこちに装備しながら私に問う。

「そういえばそうだね。パパとママを殺してもらってから一回も研究所に戻ってないから、今持ってるのはえーっと……びりりんとカプセルと…あとこの鎌の三つだよ」

『びりりん』は入部試験で作ったスキル。

『カプセル』はタルタロスでゆうさんに貰った小型カメラのスキル。

『鎌』もタルタロスでゆうさんに貰ったスキルだが使い方が全く分からない。それに『鎌』は正式名称ではなく、私がそう呼んでいるだけだ。そしてびりりんと(たぶん)鎌が攻撃型、カプセルが援護型だ。防具系のスキルはもといた研究所で作ったことは何回かあるが、今は持っていない。

「その鎌って勇から貰ったのぉ?」

「そうだよ。どうかしたの?」

「スキルにはぁ、必ずスキル名と作者名を書かないといけないんだよぉ。ほらぁここ見てぇ?」

部長は鎌の柄の部分をぱかっと開いた。そこにはスキルの情報が記されていた。

スキル名・テンペストキー

作成者・南古都(なこと) (ゆう)

この鎌型のスキルは『テンペストキー』という名前で、どうやらゆうさんが作ったらしい。

「さてぇ、奈々ちゃん。これ着てみてぇ?」

部長は車のトランクからなにか(・・・)を取り出して私に向かって投げてきた。私は慌てて受け取ろうとするが、先程所持スキルの確認をしていたので、手にはスキルを三つ持っている。そんな状態で、しかもいきなり投げられたものを受け取るなどほぼ不可能である。

「ひゃぁいぃ!!」

私は部長が投げたものの着地点から飛び退いた。直後、どすんと鈍い音をたてて、先程まで私がいた位置になにか(・・・)が着地する。

「あぁっご…ご、ごごっごめんね奈々ちゃん!!」

部長は慌てて駆け寄ってくる。

「私は大丈夫だけど…これもスキルなの?」

「うん、そうだよぉ…」

本当に申し訳なさそうに呟く。私は地面に放置されているなにか(・・・)を拾い上げる。防弾チョッキのようだが形はスマートで厚さがない。つまり薄い。

「防具系のスキル?どんな能力なの?」

「極薄の高濃度金属を何重にも重ねたプレートを敷き詰めただけだよぉ。能力っていうほど大袈裟なものじゃないけどぉ普通の弾丸ならほとんど通さないよぉ。私が小さいころに使ってたからぁもう私は使えないしぃ奈々ちゃんにあげるぅ!」

私は強化鎧を着てみる。思ってた以上に軽く、簡単に装着することができた。試しに跳ねてみるが、鎧は身体にぴったりとくっついてずれる様子がない。かといって痛かったり苦しかったりもしない。

私は部長を見ると銃口がこちらに向いていた。正しくは鎧を着た胴体を狙っていた。そして私が逃げるよりも早く弾丸は射出され、私の胴体に直撃した。鉄と鉄が衝突する高い音が鳴る。しかし痛みは一切ない。恐る恐る目を開けるが血も出てない。私は全くの無傷だった。

「部長!すごいよこれ!急に攻撃食らっても平気だよ!」

撃たれたことより鎧に傷ひとつ付いていないことに衝撃を受けた。しかしこの後、更なる衝撃を受ける。

「でしょ…」

言葉を最後まで言い終えるよりも先に銃声が鳴り、部長は頭の右側から血を吹き出した。一瞬だけ、噴水のように吹き出た血液はその後勢いを落としたが、どくどくと頭から流れ続けている。

そのまま力なく倒れ、部長は動かなくなった。




こんにちはぺんたこーです。
今回言えるのは、八ツ橋の科学研究部を舐めてはいけないということだけです。
それでは、また次のあとがきで!
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