「今からそっちに向かうから携帯電話の電源は切らずに置いておけ!」
応答がない。部長の携帯電話で奈々が話していたということは、何かは分からないが結構ヤバい状態にあるということだろう。部長がいればどんな状況にいても命を落とすことはないはずだ。しかし部長がいなければ話は別だろう。
私はパソコン隣に置いてある電話の親機の隣に子機を置き、部室内の更衣室へ向かう、
「今回は…四部作を二つ試してみるか」
そう言うと私はロッカーの中から二つの
「さて…行くか」
ゴルフクラブケースを背負って更衣室から出てデスクの上に置いてある救急箱とカロリーメイトを鞄に入れる。そして鞄を肩に背負う。引出しの中からバイクの鍵と黒色の鉛筆を一本取り出して鞄に入れ部室を後にする。
八ッ橋高校の駐車場。勇の車の隣に駐めてあるバイクに鍵をさし、エンジンをかける。スキルが入っているゴルフクラブケースをバイクの側面に固定する。バイクに鍵を挿してエンジンをかける。
そして私はハンドルを握ってスタンドを上げる。ヘルメットは被ってない。そのまま数回クラッチをきる。エンジンが唸る音と共にマフラーから黒いガスが上がる。
「………またか」
バイクはエンストした。
「いつになったら乗れるんだ?まったく…」
私はバイクから降りてスタンドを立て直し、ゴルフクラブケースを取り外す。そしてバイクの隣に駐めてあるセグウェイに乗った。ハンドルにゴルフクラブケースを立てかけて、前に体重をかける。静かな電動音と発しながら二輪のタイヤが回って進む。
「どう考えてもこっちの方が簡単に乗れるんだが、なぜ勇のやつはバイクに乗れと言うのだ?」
私は疑問に思いながらもセグウェイを操作して学校を出た。
10分くらいだろうか。周りの景色は徐々に普通の都市になってくる。さらに少し進んだところに見覚えのある車が駐まっていた。しかしその車には窓がなかった。いや窓が覆い隠されていた。
「ここか…」
私はゴルフクラブケースを持ってセグウェイから降り、車の後ろ側に近づく。ゴルフクラブケースからスキルを一つ取り出し、ボタンを押す。スキルは形を変えて、非常に殴るのに適した形になる。私はスキルを頭上に構えて、本来ならガラスである部分、覆い隠されている窓に向かって大きくスキルを振り落とす。
スキルが車に接触した瞬間、大きくはないが小さいともいえない衝撃波が空気中を翔けた。車の窓は覆っていた装甲ごと粉々になり、ガラスと混じりながら散った。
「うぅ……」
今にも泣き出しそうな瞳で私を見る少女が、割った窓の奥に見える。
「来たぞ、ちびすけ」
「ぐがざぁあぁあん!!」
涙と鼻水で大惨事になっている顔を服の袖で拭きながら、奈々がガラスが割れてフレームだけが残った車の窓からひょこっと出て来て私に抱きつく。
「おい!やめろちびすけ!私の服で顔を拭くな!」
「そんなことより!ぶちょーがぁ!!」
「心配するな。部長はそう簡単に死なない」
「でもぉ!でもぉお!!頭撃たれたんだよ!!血がぶしゃーってぇ!!」
必死に訴える奈々の頭を私は右手でくしゃくしゃ撫でて車に入った。
運転席でありえない形で詰め込まれている部長を乗り越えて、『SHELL』と書かれたボタンを押す。すると車を覆っていた装甲が瞬く間に収納されて、元どおりの車になった。後部の窓が割れているのは気にしてはいけない。
「さて…部長!部長!!朝ですよ!部長!!…駄目か」
呼んでも起きない。頰をぺちぺちしても起きない。寝ているわけではなさそうだ。私は部長の首筋に指を押し付ける。静かながらも、しっかりと脈はある。死んではいないようだ。逆に死んでいたら怖い。
「ちびすけ!撃たれたのは頭だけか?」
「うん…多分そうだと思う。逃げるのに必死であんまり覚えてないけど、銃声は聞こえなかったよ」
私は部長の首筋から指を離して頭を探る。髪の毛をかき分けると固まった血がこびりついた小さい穴が空いていた。その穴の奥には銀色に光る小さな物体がある。
私は肩から掛けていた鞄から救急箱を取り出して開ける。無数にある道具の中からピンセットを取り出す。そして部長の頭に空いた穴にピンセットで弾丸をつまみ出す。
「ふぅ…おい、ちびすけ!部長は軽い
「えっと…あっちのビルの上かな」
私は奈々の指差す方向を見た。そこにはこちらを向いた銃口が車を狙っていた。
「……!!て、展開!!」
私は叫んだ。当時は無駄だと思っていたが、今になって音声認識機能を搭載しておいて本当に良かったと思う。ゴルフクラブケースを引き裂いて中にあったスキルが広がる。言葉の通り、展開する。広がったスキルは私たちを守る盾となり、銃弾を弾いていく。
「ちびすけ!部長を頼む!!起きたらこれを渡してくれ!あとこれも持っておけ!」
私は鞄からカロリーメイトと黒色の鉛筆を取り出して奈々に渡す。車から出て射撃を続ける狙撃手を見る。銃は見たことのない形をしている。多分スキルだろう。降り注ぐ銃弾を盾型スキルで防ぎながら奈々の方を振り向く。
「ちびすけ!お前は賭けに勝った。誇れ!」
私はそれだけ告げると盾型スキルと破れたゴルフクラブケースに入っているもう一つのスキルを持って、敵がいるビルの屋上へと向かった。
こんにちはぺんたこーです。
次回には
それではまた、次回のあとがきで!