我ら、八ツ橋高校科学研究部!   作:ぺんたこー

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memory of one days
「ったく科学武器(スキル)なんてどうやって作るんだよ…ググってもでてこねぇし、果物ナイフの刃を回したいだけなのによ。モーターぶち込んじゃダメなのか…?
……やってみるか」




屋上で一人の少女が正座している。

「テクノっていうのは技術、technologyからできた造語よ」

ロウェイド・リリィ・コンシェータは(うつむ)いたまま、一音一音を丁寧に発する。

「で?どういうものなんだ?」

「そのままよ。テクノロジー…つまり科学技術(かがくぎじゅつ)のこと」

納得と疑問が混じった顔で駆我はさらに言葉を続ける。

「なぜ科学技術(テクノ)を欲しがる?私にはそんなに価値のあるものに見えないんだが」

奈々は次を待つ。言葉、動作、感情、あらゆる要素をじっくりと観察し、的確に、確実に知識として情報を取り込まんとする。

しかししばらく待っても次の動きが無い。HARDのリーダー、ロウェイド・リリィ・コンシェータは俯いたまま黙り込んでいる。

静かな屋上には、グラウンドで活動している運動部の掛け声がこだまする。

「そろそろ話してくれ、寒い」

まだ夏だ。

しかしそんなことはどうでもいい。肝心なのは次の声だ。

「それは俺が話す」

気がつけば屋上へ入る唯一のドアにもたれかかっていた青年。茶色の作業服を着た彼は、情報屋ファイルにあったHARDのメンバーの一人だ。

「いいだろう、だがその四肢(しし)に装備している科学武器(スキル)を外せ」

青年は不気味な笑みを浮かべると作業服を脱ぎ去り、その下の武装を(あら)わにする。両手両足についた竜を思わせる銀鎧は、太陽の日を浴びて辺りを燃やさんと輝く。

「やっぱバレてたか…」

鎧腕(がいわん)の爪をぎゃりぎゃりと鳴らし、青年は歩みを進める。

「外して欲しけりゃ力づくでやってみな!」

突如走る。驚異的な瞬発力は鎧脚(がいきゃく)によるものだろう。アスファルトに傷を残しながら駆我に向かって一直線、低い姿勢で一気に距離を詰める。そして標的まで後数歩の所で姿勢を上げ、大きく腕を振り上げる。

これがいつものやり方。相手に反撃の隙を与えない準奇襲攻撃。

青年はこの方法でいくつもの仕事をこなしてきた。

しかし、これに対して駆我がとった行動は圧倒的に少なかった。

展開(・・)

相手に背を向けてただ一言呟いた。たったそれだけだ。

駆我が背負っていたゴルフクラブケースから、科学武器(スキル)が飛び出す。

四方向にその部品を広げた科学武器(スキル)は、駆我を守る盾となり銀鎧の爪を止める。

金属が(こす)れ合い、不快な音がこだまする。

「うっそだろ…」

渾身の一振りを容易く止められた青年は、動揺を声にするもすぐさま体勢を立て直し距離をとる。

体全体を使った動きを口を少し動かしただけで対処された。

たった一言で攻撃を止められた以上、次に何が来てもおかしくない。

ここで動くのは命を半分の確率で捨てに行くようなものだ。

半分本能ともいえるその行動に対して駆我は挑発する。

「もう二、三撃くると思ったが…思ったより“コケコッコー”だな」

多分『チキン』という意味だろう。普通にそう言われるよりも腹が立つ。実際、竜の鎧の青年は歯をくいしばり、己の憤怒を必死に押し留めていた。

「どうした!もう終わりか?」

さらなる追い討ちがかかる。この口車に乗ることが意味するのは 死 のみだ。怒りと死を天秤にかけて怒りの感情をどうにか押し殺す。

大きく深呼吸をし、青年は盾を見る。

「分かった…降参だ、話す」

渋々負けを認めた青年は四肢に着けていた科学武器(スキル)を外し、手の届かない場所まで蹴る。装備をなくして無防備な状態で両手を頭より上に上げた。

「いい判断だ。アマチュアかと思ったがそうでもないようだな」

駆我(くが)は盾越しに青年を評価した。

「さあ約束だ。話してもらおうか」

駆我は盾を向けたまま青年に近づく。

後ろでリリィが正座しているというのに、もはや相手にならないと言うように大胆に背を向ける。

少し離れた所から一部始終を眺めていた奈々は科学武器(スキル)びりりんの電源を入れてバチバチとリリィを威嚇する。

駆我(くが)の圧倒的な強さにHARDの二人は文字通り手も足も出せない。

切断(・・)

またもや呟いた一言。駆我の持っている盾は言葉に反応してその姿を変える。軽い駆動音と風を切る音が終わると盾の面影を一切見せない大きな剣がそこにあった。

剣の切っ先を青年へ向け、チェックメイトをかける。

青年はゆっくりと口を動かして科学技術(テクノ)の説明を始める。

科学技術(テクノ)って言うのは自ら科学武器(スキル)を作り出すことができない科学者(アサシン)が使う手段だ。工夫次第でちゃんとした科学武器(スキル)を作れる」

屋上の床を見つめながら放たれた情報は駆我を呆れさせる。

「そんなもので科学武器(スキル)を作って何が楽しいんだまったく。期待して損した…奈々、帰るぞ」

収納(・・)と呟き剣を元のコンパクトな形に戻すとゴルフクラブケースに入れてそれを背負った。

バチバチが楽しくなってきた奈々は少し躊躇(ためら)いながらもびりりんの電源を切り、駆我の後をついていく。

屋上にはリリィと青年だけがとりのこされた。下校を告げるチャイムが八ツ橋高校全体に響き渡る。

脱力した二人はしばらく放心状態だったが、チャイムが鳴り終わると大の字で寝転んだままリリィが口を開ける。

「もう一度科学技術(テクノ)に頼らずに科学武器(スキル)を作ってみましょうか」

青年の口から溢れたのは、はい。の一言だった。

夕暮れで赤く燃える遠くの山は少女らの心に火を灯した。




こんにちは、ぺんたこーです。
とても久しぶりの投稿です。待ってる人がいるかは分かりませんが遅くなってしまいすみません。
今回のお話は科学技術(テクノ)科学武器(スキル)の関係について。
テクノとは、スキルを料理に例えるならレシピ、プラモデルに例えるなら説明書のようなものです。
裏社会で科学武器(スキル)が流行り始めた少し後に普及だした物になります。
攻略本のように分厚いものから同人誌のよように薄いもの、PDFファイルやwebサイトまで多種多様です。
これからお話とどう絡んでくるのか楽しみにしてください!
それではまた、次回のあとがきで!
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