どうしよう、リーグ表を前に私は目を疑った。そこには名前がある。しかし、たかが文字だ。もしかすると名前が同じだけで全くの別人なのかもしれない。されど文字だ。現に今、私の体は恐怖で軽く硬直している。
「お〜奈々、ここにいたのか」
緊張状態でいきなり話しかけられたので心臓が飛び出るかと思うくらい驚いた。でもこの声はゆうさんのものだ。私は安心して振り返るとそこにあったのは、
「……ゆうさんなに食べてるの?」
「なにって…干し芋だが?」
干し芋を食べているゆうさんだった。
「そうだ、リーグ表見たのか?次の相手は誰だ?」
その光景に苦笑いをするしかなかったが、干し芋の件をきれいに流してくれたので私は答える。
「えーっと……」
そういえば違うところを見ていたので、ゆうさんの対戦相手は確認していなかった。
「……おっ、次の相手が目的のスキルを持ってるやつか」
固まっている私を通り越してリーグ表を見たゆうさんは、干し芋をかじりながら言った。
「パーツ回収したすぐに帰るぞ」
予想外の言葉に私は驚愕を隠せなかった。
「え?なんで?最後までやらないの?」
「今回の目的はパーツ回収だけだ。この大会で優勝することじゃない。それに、無駄に人を殺したくないし、俺だって命かけてまでやりたくねぇよ」
これまた予想外だ。てっきりゆうさんは『強敵はどこだぁ!』とか言ってる人なのだと思っていた。それに人の命を案じていることも意外だ。まぁ、自分の命を大切にすることは普通だ。
「そうだ奈々。これ持っとけ」
そう言うとゆうさんは、私に新しいスキルを渡した。そのスキルはとても小さく、カプセルの錠剤に似ていた。色は黒く、見かけより重かった。
首をかしげる私にゆうさんは、スキルの説明をしてくれた。
「それは小型カメラだ。カプセルの両端を持ってひねるとフタが開くだろ?」
ゆうさんに言われた通りにひねってみると、フタが開いて片方にはレンズが、もう片方にはボタンのようなものがついていた。
「そっちのレンズがカメラの本体だ。そっちのボタンを押すと写真、長押しで動画が撮れる。普通は眼鏡とかにつけるんだが、他にも仕込むところはあるだろ。まぁ、便利だから持っとけ」
多分、このとき興奮のあまり笑みが溢れていただろう。
「データは部室にあるパソコンに直接保存される。容量は気にしなくていいぞ」
説明を終えたゆうさんは「じゃ行ってくる」と言って人混みの中に消えていった。
しまった、リーグ表に書いてあった名前の人物について話すことを忘れていた。少し考えた後、ゆうさんの対戦相手じゃないからいいか。と自分の中で勝手に決めた。
「あんたが優勝候補のグレイモアか?」
「あぁ、そうだ」
今回の目標の持ち主に対して勇は答える。相手の名前はルート、服装は普通のスーツだ。右手にはスキルらしき鉄塊を持っている。それはガトリングガンのような形をしている。その他の装備は何もない。
「すまないが、俺の目的はあんたのスキルだ。それ置いていってくれないか?俺だって無意味に命を奪いたくない」
その問いにルートは微笑しながら答える。
「私はここに戦いに来たんだよ?それをスキルを置いて帰れってか?きみはバカか!ハハッ」
「別に降参してやってもいいぞ。俺の目的はあくまでもスキルだ。命じゃない」
「それじゃきみに勝ったってスキルがないなら戦えないじゃないか、矛盾してるよ!」
勇は少し考え、それもそうだな、と呟いた。
「交渉決裂ってワケだ。さぁ、始めようぜ?優勝候補くん」
「あぁ、終わらせよう」
数分間の話し合いの末、二人は戦うことになった。
「みたところ、きみのスキルは接近系ばっかりだ!ならば近づかないまでだ!」
ルートは開戦と共に右手に持っているスキルを勇に向けて構えトリガーを引いた。会場中に爆音を響かせて放たれた弾丸は、勇の額めがけて一直線に飛んでいった。
「甘い」
勇が呟く。弾丸が当たるギリギリでしゃがんで左足についている正方形のスキルを取り、ボタンを押す。正方形は展開し、やがて閉じ新たな形を作っていた。それは誰が見ても分かるほど普通の形をした片手銃だった。
勇は
飛んでくる弾丸をルートはスキルの側面で受け、自分を守る。金属と金属が衝突し、耳障りな金属音が響く。
「遠距離系があったとは……予想通りだな」
「さっさとスキル置いて行ったほうが身のためだって言ったのに、お気の毒だ」
勇は銃口をルートに向けて構える。
「あんたのそのスキル接近戦にも
勇は引き金を引き、弾丸はルートに向かって飛ぶ。ルートはスキルを横に向け、さっきと同じように防ぐ。再び音が鳴り響く。
「そんなオモチャじゃこの私には勝てないぞ?あんた勝つ気はあるのか?もっと本気出してもいいんだぜ?」
自信ありげに言った言葉に、勇の表情が変わった。
勇は笑った。正確には口角を五ミリほど上げただけだが、それでも会場にいる常連さん達には分かった。
この戦いの勝者がどちらなのか
勇は素早く弾丸をリロードすると、この試合三発の弾丸を放った。どう見ても普通の銃から放たれた弾丸は、前の二発と同様にルートの持つガトリングガン型スキルの側面に当たった。しかし前の二発よりも大きな音が生み出された。それは金属音ではなく爆発音だった。バトルリングの中央で、小さいながらも十分な殺傷能力を持った爆発が眩い光と共に広がった。
勇が放ったのは爆裂弾だった。
「教えてやるよ!」
爆発に巻き込まれた者が真っ黒になりながらも息をしていることを確認した勇は、新たな弾を装填しながら近く。
「教えてやる、さっき撃った弾は先端にエタノールを染み込ませた綿を入れて、後方には火薬を詰め込んだものだ。あんたのスキルと接触した時の火花が綿に着火して潰れた弾の中で火と火薬が反応する。それだけだ。火薬の威力はいじってあるけどな」
勇は銃口をルートに向けて、
「じゃ、人生お疲れさんっと」
四発目の弾で脳天を貫いた。
ー彼は勇を笑わせてしまったのだー
こんにちは、ぺんたこーです。
皆さん、最近笑っていますか?
笑うことはいいことですよ。それがたとえ、愛想笑いでも、苦笑いでも、余裕の笑みでも、怒りの上位互換でも、笑い泣きでも……
それではまた、次のあとがきでお会いしましょう。