いやはや皆様、本当にありがとうございます。
そして、Ⅵ・第四話の
【地球の心臓と繋がっているような。】
このフレーズ、覚えておいた方が得かもしれませんね。
「ごほっ、ごほっ!大丈夫かい、魅宇?」
瓦礫の中から顔を出した少年は、同志の存命を確認した。
「ええ・・大丈夫です。あちらに私達の情報が回ってしまいましたが。大丈夫なのですか。」
「いや寧ろ、回ってくれた方が好都合だ。」
彼女の心配に対し、不安どころか寧ろ、望んだ通りと言わんばかりの返答だった。
「好都合・・・とは?」
やはり、彼女もその言葉には余り納得がいかないようで。
「天城翔に僕達2人が関与していることがばれた方が良いってことさ。彼は恐らく、潜入捜査部部長との会合を果たしている筈さ。ならば、それなりの混乱状態にあるはず。加えて、代表取締役の登場さ。混乱は最高潮に入っている筈だ。そこに更に、学校関係者の登場で追い討ちをかける。これで、彼には易々と冷静な判断は出来なくなる筈さ。」
要約すると、混乱の連続に最後に会長が入れば、最早冷静な判断なんて出来なくなるだろうということだ。
「ふむ。理解しました、会長。」
「いやぁ、でも。流石に支部長クラスの一撃は痛いねぇ。」
逆に、支部長クラスの一撃を受けて生きていられる彼らは、素直に賞賛に値する。
「受身だけ訓練し続けた甲斐がありました。」
「はぁ・・でも結局、僕達って捨て駒なんだよなぁ。」
そう、彼らは卓越した地位には就いておらず、こんかいも捨て駒として用意されたのだ。
「井の中の蛙でした。」
「まったく・・辛辣だけどその通りだねぇ。」
溜息をつきつつ、彼らはWN×WRの残兵に見つからないよう、ゆっくりとその場を離れた。
「で?治療は必要かしら、兄さん?」
彼の混乱を他所に、先程から皮肉ばかりを吐いてくる。
加えると、勿論剣の力があるため、治療なんてする必要は無い。
「代表取締役。多分、そのまま行ってもあんたの兄は答えちゃくれないぜ?」
潜入捜査部部長を一瞥すると。
「知っているわ。唯の皮肉よ、無駄な口は慎みなさい。というか、もう帰りなさい。」
「えぇ・・せっかく来てやったのに。」
舌打ちをする彼女には、学校での面影などはどこにもなく。
「鏡月も・・なんでだよ。」
これ以上混乱を煽られるのも癪だろうか、彼は僅かばかり声のトーンを落として問いかけた。
「ああ?もう、さっきから質問してばっかじゃねぇか。まあ、仕方ないけどな。」
その口調にも、元の彼女をはめようにもはめられない。
「いや、貴女がその組織なのは理解した。何故、わざわざ学校にまで来て俺に接触しようとしたんだ?こんな事をしたということは、貴女は敵と言う認識で間違いはない筈。接触の中で、俺を殺せばよかっただけの話じゃないのか。」
思えば愚かだが、彼は確かに彼女に全幅の信頼を置いていた。
その油断は、彼女にも分かった筈なのだから、その際に殺してしまえばよかった。
「んま、そう考えるよな。ふつーは。なに、目的は殺すことじゃないって事さ。」
目的は別にあるということだろうか。
「ならば・・目的は。」
「ああ、それはな」
「待ちなさい。」
そこで、静止の声がかかった。
向くと、痺れを切らし、社長が怒りの形相で睨んでいた。
「それ以上は私が喋ることよ。勝手に喋らないで頂戴。」
「はいはい。悪かったねぇ、出番を奪っちまって。」
彼女は、しぶしぶ控えた。
「目的はね、私が教えてあげるわ。」
社長様が、兄の方へ向き、繕いの笑顔を投げた。
「殺すことではない、と?」
「ええ。そうね、簡潔に説明すると・・・
生け捕り。かしらね。」
生け捕りとは。なんとも動物的扱い。
「ほう。何だ、捕虜にでもするつもりか?」
「別に、戦争じゃないんだから。そんな捕虜だなんて。」
どうやら、劣悪な条件ではないようだ。
「じゃあ何だ?バイトか?清掃員か?」
「何でそうなるのよ・・。簡単よ、貴方は唯居てくれるだけでいい。いえ、違うわね。私達のものであるだけでいいのよ。」
・・少し意味が分からない。私達のものであるだけでいい?
「TATユナイテッドワークスには、地球最後の兵器が両者揃うことが必要なのよ。あ、別にWN×WRへの牽制とかそういうのじゃなくて。」
「要するに・・俺にWN×WRを裏切れと?」
素直に返答すると考えての発言ならば、大変滑稽である。
「無論ね。」
「滑稽だ。」
そう返すのも当然であろう。相手に攻めの一手があれば別だが。
「はぁ・・。やっぱりね。もう、残念ね。大好きな彼に裏切られちゃったわよ?」
「なに・・?」
自らの懐に目をやりながら吐くその台詞は、どうにも不審だ。
「もう・・仕事も失って。大好きな人に振られて。貴女も散々ねぇ。」
貴女・・?一体誰だと言うのか。
「どんな表情をしてるか・・見てみたいわねぇ!
有里美・・杏?」
杏・・!?確かに言った。今、杏と。
「おい・・どういうことだ?」
「あら、つい言っちゃったわ。でもいいわ、出てきて頂戴。」
虚より穴が開き、そこに見えたのは。
「あ、杏・・!!」
見慣れた腰まで届く黒髪。幼さを残したその顔に・・。
刺さった5つの刃。
当然、彼は駆け、彼女の元へ向かうが。
「あら、駄目よ。それ以上近づいちゃ。」
社長様が彼女の首に剣をあてがうため、近づくことが出来ない。
「くっ・・!」
「あら、焦りが見えてるわよ?ほーら、おとなしく組織を裏切る決断をしないと━━。
もう、この先は言わなくても分かるわよね?」
当然、杏を殺すということだろう。
「くっ・・。」
どうするべきか。
「ほーら、早くー!」
自意識過剰なわけではないが、WN×WRが彼を失ったら、大変な損失になるだろう。
「もーう!遅い!」
とうとう、彼女は剣を振り下ろそうとする。
「・・分かった。俺が組織を出よう。」
そういった瞬間、敵の3人は満面の笑みを浮かべた。
「いやぁ、兄さんならそう言ってくれると思ってたわ!」
「お!やっぱりな。社長は策士だねぇ。」
「ショウ・アマギ。貴方の英断、感謝致します。」
やはり、それだけ彼の奪取が必要だったのだろうか。
聞いた瞬間、杏という人質を蹴り飛ばし、魔術の鎖で彼を縛った。
「逃げられると困るわ。まあ、そんなことは無いでしょうけど。」
当然、抵抗することは無い。
彼は、彼女らがまだ警戒して、杏へ攻撃する体勢にあることは知っているから。
「ほら、行くなら早く連れて行け。この鎖だって、切ろうと思えば今すぐに切れるんだぞ。」
「杏様を捨てれば・・でございますね。」
長らく口を閉じていた執事的風貌の男性が、ようやく口を開いた。
捨てる・・というのは、殺すということで相違ないだろう。
「はっは!論破できないなあ!」
それに便乗する、すっかり口調に違和感を感じなくなってきた、優しかった筈の少女。
「あなたたち、いい加減黙りなさい。」
ようやく本当に連れて行く気になったのだろうか。手錠に力が加わる。
「【外典・我道照照 冥香命裂 僅灯与与】
頁三【転移術式・神至位】」
突如として、地面に大きな魔法陣が現れた。
「これは・・」
「ふふ、凄いでしょ。無制限に転移できて、しかも人数も無制限。素晴らしいでしょう?」
聞いたことはある。
あの、核兵器相当術式の1つ【山紫水明】だ。
まさか、たった一人。しかもものの10秒で完成させてくるとは。
「では、行きましょう?貴女、そして私で、このセカイの頂点に立つの。」
「頂点・・?」
「なーに、気にすることは無いさ!唯あんたはついて来ればいい!」
「・・分かった。」
彼は、眩い光の中に包まれていった。
最後に、この言葉を残して・・。
「待ってろよ・・杏・・・。」
一枚の紙を手放しながら・・・。
そういえば・・結局あの捨て駒2人は間に合いませんでしたね・・。
まあ、本部に行ってから会わせる事にしましょう。
では、次回もよろしくお願いします。