たとえ、全てに否定されようとも   作:Laziness

57 / 59
UA数7000突破+合計文字数100000文字突破ですね。

いやはや皆様、本当にありがとうございます。

そして、Ⅵ・第四話の
【地球の心臓と繋がっているような。】

このフレーズ、覚えておいた方が得かもしれませんね。




Ⅵ・第六話

「ごほっ、ごほっ!大丈夫かい、魅宇?」

 

 瓦礫の中から顔を出した少年は、同志の存命を確認した。

 

「ええ・・大丈夫です。あちらに私達の情報が回ってしまいましたが。大丈夫なのですか。」

 

「いや寧ろ、回ってくれた方が好都合だ。」

 

 彼女の心配に対し、不安どころか寧ろ、望んだ通りと言わんばかりの返答だった。

 

「好都合・・・とは?」

 

 やはり、彼女もその言葉には余り納得がいかないようで。

 

「天城翔に僕達2人が関与していることがばれた方が良いってことさ。彼は恐らく、潜入捜査部部長との会合を果たしている筈さ。ならば、それなりの混乱状態にあるはず。加えて、代表取締役の登場さ。混乱は最高潮に入っている筈だ。そこに更に、学校関係者の登場で追い討ちをかける。これで、彼には易々と冷静な判断は出来なくなる筈さ。」

 

 要約すると、混乱の連続に最後に会長が入れば、最早冷静な判断なんて出来なくなるだろうということだ。

 

「ふむ。理解しました、会長。」

 

「いやぁ、でも。流石に支部長クラスの一撃は痛いねぇ。」

 

 逆に、支部長クラスの一撃を受けて生きていられる彼らは、素直に賞賛に値する。

 

「受身だけ訓練し続けた甲斐がありました。」

 

「はぁ・・でも結局、僕達って捨て駒なんだよなぁ。」

 

 そう、彼らは卓越した地位には就いておらず、こんかいも捨て駒として用意されたのだ。

 

「井の中の蛙でした。」

 

「まったく・・辛辣だけどその通りだねぇ。」

 

 溜息をつきつつ、彼らはWN×WRの残兵に見つからないよう、ゆっくりとその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?治療は必要かしら、兄さん?」

 

 彼の混乱を他所に、先程から皮肉ばかりを吐いてくる。

 

 加えると、勿論剣の力があるため、治療なんてする必要は無い。

 

「代表取締役。多分、そのまま行ってもあんたの兄は答えちゃくれないぜ?」

 

 潜入捜査部部長を一瞥すると。

 

「知っているわ。唯の皮肉よ、無駄な口は慎みなさい。というか、もう帰りなさい。」

 

「えぇ・・せっかく来てやったのに。」

 

 舌打ちをする彼女には、学校での面影などはどこにもなく。

 

「鏡月も・・なんでだよ。」

 

 これ以上混乱を煽られるのも癪だろうか、彼は僅かばかり声のトーンを落として問いかけた。

 

「ああ?もう、さっきから質問してばっかじゃねぇか。まあ、仕方ないけどな。」

 

 その口調にも、元の彼女をはめようにもはめられない。

 

「いや、貴女がその組織なのは理解した。何故、わざわざ学校にまで来て俺に接触しようとしたんだ?こんな事をしたということは、貴女は敵と言う認識で間違いはない筈。接触の中で、俺を殺せばよかっただけの話じゃないのか。」

 

 思えば愚かだが、彼は確かに彼女に全幅の信頼を置いていた。

 

 その油断は、彼女にも分かった筈なのだから、その際に殺してしまえばよかった。

 

「んま、そう考えるよな。ふつーは。なに、目的は殺すことじゃないって事さ。」

 

 目的は別にあるということだろうか。

 

「ならば・・目的は。」

 

「ああ、それはな」

 

「待ちなさい。」

 

 そこで、静止の声がかかった。

 

 向くと、痺れを切らし、社長が怒りの形相で睨んでいた。

 

「それ以上は私が喋ることよ。勝手に喋らないで頂戴。」

 

「はいはい。悪かったねぇ、出番を奪っちまって。」

 

 彼女は、しぶしぶ控えた。

 

「目的はね、私が教えてあげるわ。」

 

 社長様が、兄の方へ向き、繕いの笑顔を投げた。

 

「殺すことではない、と?」

 

「ええ。そうね、簡潔に説明すると・・・

 

 

 

 

 

 生け捕り。かしらね。」

 

 

 生け捕りとは。なんとも動物的扱い。

 

「ほう。何だ、捕虜にでもするつもりか?」

 

「別に、戦争じゃないんだから。そんな捕虜だなんて。」

 

 どうやら、劣悪な条件ではないようだ。

 

「じゃあ何だ?バイトか?清掃員か?」

 

「何でそうなるのよ・・。簡単よ、貴方は唯居てくれるだけでいい。いえ、違うわね。私達のものであるだけでいいのよ。」

 

 ・・少し意味が分からない。私達のものであるだけでいい?

 

「TATユナイテッドワークスには、地球最後の兵器が両者揃うことが必要なのよ。あ、別にWN×WRへの牽制とかそういうのじゃなくて。」

 

「要するに・・俺にWN×WRを裏切れと?」

 

 素直に返答すると考えての発言ならば、大変滑稽である。

 

「無論ね。」

 

「滑稽だ。」

 

 そう返すのも当然であろう。相手に攻めの一手があれば別だが。

 

「はぁ・・。やっぱりね。もう、残念ね。大好きな彼に裏切られちゃったわよ?」

 

「なに・・?」

 

 自らの懐に目をやりながら吐くその台詞は、どうにも不審だ。

 

「もう・・仕事も失って。大好きな人に振られて。貴女も散々ねぇ。」

 

 貴女・・?一体誰だと言うのか。

 

 

「どんな表情をしてるか・・見てみたいわねぇ!

 

 

 有里美・・杏?」

 

 

 杏・・!?確かに言った。今、杏と。

 

 

「おい・・どういうことだ?」

 

「あら、つい言っちゃったわ。でもいいわ、出てきて頂戴。」

 

 虚より穴が開き、そこに見えたのは。

 

「あ、杏・・!!」

 

 見慣れた腰まで届く黒髪。幼さを残したその顔に・・。

 

 刺さった5つの刃。

 

 当然、彼は駆け、彼女の元へ向かうが。

 

「あら、駄目よ。それ以上近づいちゃ。」

 

 社長様が彼女の首に剣をあてがうため、近づくことが出来ない。

 

「くっ・・!」

 

「あら、焦りが見えてるわよ?ほーら、おとなしく組織を裏切る決断をしないと━━。

 もう、この先は言わなくても分かるわよね?」

 

 当然、杏を殺すということだろう。

 

「くっ・・。」

 

 どうするべきか。

 

「ほーら、早くー!」

 

 自意識過剰なわけではないが、WN×WRが彼を失ったら、大変な損失になるだろう。

 

「もーう!遅い!」

 

 とうとう、彼女は剣を振り下ろそうとする。

 

 

 

「・・分かった。俺が組織を出よう。」

 

 そういった瞬間、敵の3人は満面の笑みを浮かべた。

 

「いやぁ、兄さんならそう言ってくれると思ってたわ!」

 

「お!やっぱりな。社長は策士だねぇ。」

 

「ショウ・アマギ。貴方の英断、感謝致します。」

 

 やはり、それだけ彼の奪取が必要だったのだろうか。

 

 聞いた瞬間、杏という人質を蹴り飛ばし、魔術の鎖で彼を縛った。

 

「逃げられると困るわ。まあ、そんなことは無いでしょうけど。」

 

 当然、抵抗することは無い。

 

 彼は、彼女らがまだ警戒して、杏へ攻撃する体勢にあることは知っているから。

 

「ほら、行くなら早く連れて行け。この鎖だって、切ろうと思えば今すぐに切れるんだぞ。」

 

「杏様を捨てれば・・でございますね。」

 

 長らく口を閉じていた執事的風貌の男性が、ようやく口を開いた。

 

 捨てる・・というのは、殺すということで相違ないだろう。

 

「はっは!論破できないなあ!」

 

 それに便乗する、すっかり口調に違和感を感じなくなってきた、優しかった筈の少女。

 

「あなたたち、いい加減黙りなさい。」

 

 ようやく本当に連れて行く気になったのだろうか。手錠に力が加わる。

 

「【外典・我道照照 冥香命裂 僅灯与与】

 頁三【転移術式・神至位】」

 

 突如として、地面に大きな魔法陣が現れた。

 

「これは・・」

 

「ふふ、凄いでしょ。無制限に転移できて、しかも人数も無制限。素晴らしいでしょう?」

 

 聞いたことはある。

 

 あの、核兵器相当術式の1つ【山紫水明】だ。

 

 まさか、たった一人。しかもものの10秒で完成させてくるとは。

 

 

「では、行きましょう?貴女、そして私で、このセカイの頂点に立つの。」

 

「頂点・・?」

 

「なーに、気にすることは無いさ!唯あんたはついて来ればいい!」

 

「・・分かった。」

 

 彼は、眩い光の中に包まれていった。

 

 

 

 最後に、この言葉を残して・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってろよ・・杏・・・。」

 

 一枚の紙を手放しながら・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そういえば・・結局あの捨て駒2人は間に合いませんでしたね・・。

まあ、本部に行ってから会わせる事にしましょう。

では、次回もよろしくお願いします。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。