この素晴らしい世界にオーブの祈りを! 作:波紋疾走(pixiv)
夕陽の風来坊ことクレナイ ガイには、この世界に来てから足しげく通っている店があった。
「おばちゃん、いつもの」
「はいよ。兄ちゃん」
ガイは瓶に入ったジュースを買い、その場で飲み干す。そして今日もおいしかったよ。と礼を言って瓶を店主に返し、ふらりとどこかへ行こうとしたその時、冒険者ギルドに向かう途中のカズマ達と偶然出会う。
「おうカズマか。みんな連れてどうしたんだ?」
「ちょっとギルドに用があって。ガイさんこそ何をしているんですか?」
「いつも来ている店でジュースを買ってた」
ガイさんってあの店にいつも行っているんだ、意外だな。そんなに美味しいなら俺も今度行ってみようと思いながら、ふとガイの顔を覗くと、なんだか物足りないような表情を浮かべていたので、それについて尋ねた。
「ガイさん、なんか満足いかない顔してますけど⋯⋯ どうしたんですか?」
「ああ。この街の飲み物は美味しいものが多いんだが⋯⋯ なにかスカッとする飲み物がないんだよな。ラムネみたいなこう⋯⋯ 大人も子どもも飲める飲み物が」
「クリムゾンネロイドがあるじゃない」
アクアにそう言われたが、首を振ってそうじゃないと返す。
「確かにクリムゾンネロイドもおいしい。でも、ラムネと比べるとシュワシュワとか、のどに伝わる爽快感とか、とにかくいろいろと足りないんだよ⋯⋯っ!」
並々ならぬラムネへの愛を語るガイに、カズマ達は少し引いてしまうと同時に意外な一面もあるんだ。と思ったりもした。
それはさておき、めぐみんとダクネスは先程からガイが愛を語るラムネが何なのかさっぱりわからないので、話についていけずにいた。
「ねえカズマ。一体ラムネってどんな飲み物なんですか?」
「ラムネっていうのは、俺がここに来る前にいた国の飲み物で、大人から子どもまで絶大な人気を誇っているんだ」
「そんなに人気の飲み物なら、私もぜひその味を知りたいのだが⋯⋯」
「わかった。教えてやるよ」
そう言うとカズマはガイを連れてアイテム屋に行き、重曹と砂糖、クエン酸にレモンエキスを買ってから屋敷に戻る。そして、買ってきた材料で、早速ラムネを作り始める。
「まず容器に、水200mlを入れます」
「ふむふむ」
「これにクエン酸と砂糖を加えて溶かします」
「ほうほう」
「で、完全に溶けたら氷で冷やし、キンキンに冷えたら別の容器に移し替えてレモンエキス、重曹を素早く加えて容器の口を占めて逆さにすれば、完成!」
出来上がったラムネに興味深々のめぐみんとダクネス。さっそく二人はコップに移されたラムネを試飲する。
「ごくごく⋯⋯ ん~! これはおいしいですね!」
「ああ! ガイの言う通り、クリムゾンネロイドとはまた違った、のどに伝わる爽快感がたまらないな!」
そう言って全部飲み干し、もっと作ってくれ、おかわりが欲しいと要求するほど、二人はラムネにはまってしまう。
「めぐみんとダクネスったら、完全にはまっちゃったわね⋯⋯」
「ああ。それよりもラムネの作り方なんてよく知っていたな」
「小学生のころ、自由研究の課題があって、その時にラムネの作り方を知ったんですよ」
「へぇ~」
カズマの意外な過去に驚くアクアとガイ。その時、体が崩壊しそうなほどボロボロになったバニルが突然現れる。
「ば、バニル!? いつの間に!?」
「フハハハハ。商売の匂いが汝らから匂えたのでついて行ってみれば、やはり予想通りだったか」
「⋯⋯ねぇちょっと。なんでまたこの屋敷に入ってるの⋯⋯?!」
ゆらりと振り返るアクア。その表情は殺意に満ち溢れていた。彼女の表情を見たガイはカズマにどうしてあんな表情しているのかを尋ねる。カズマはアクアは一度バニルに結界を突破されていた過去を話し、それを聞いたガイはなるほど。と納得した。
それはそうと、このまま放置していればアクアとバニルは喧嘩を始めるに違いないので、カズマは間に入って仲裁する。そして、用件はなんだとバニルに問いかける。
「おおそうだそうだ。先ほども言った通り、吾輩は汝らから商売の匂いを感じ取った。今日はそれの商談に来たのだ」
「また知的財産権の話か⋯⋯ あいにく、今はそんなものなんて一つも⋯⋯」
「あるではないか。そこに飲料水が」
指を指す先にあったのはラムネだった。ラムネの知的財産権を欲しい知ったカズマだったが、あいにくこれはそんなつもりで作ったんじゃないと返す。が、バニルは交渉する気満々なのかカズマの言葉を気にせずラムネを試飲する。
「うむ。悪魔である吾輩にはこれが美味かはわからないが、人間は美味と感じる味だな。しかし、まだこの飲料水を商品化するにはまだ足りない」
「足りないって⋯⋯ 何が?」
「インパクトだ。この飲料水にはインパクトが足りない。⋯⋯そうだ、ラードゥガレモンの果汁を組み合わせるのはどうだ? 今よりも数段美味となるはずだが⋯⋯」
そう言われたが、そもそも商品化する気のないカズマは乗り気ではなかった。しかし、ラムネにはまってしまっためぐみんとダクネスが、おいしくなるのなら取りに行こうと提案する。最初こそ拒否していたが、二人の押しに負けカズマはラードゥガレモンを取りに行くと渋々決めるのだった。
それから三日後、カズマ達はガイと共にラードゥガレモンが唯一自生していると言われている樹海、アルコイリス樹海の入り口に立っていた。
アルコイリス樹海とはアクセルの街から見て北部に位置する樹海である。この樹海は地理的な関係で狐の嫁入り、つまり天気雨が起きる場所なので、虹がよく発生する。それ故にこの樹海は虹の樹海と呼ばれ、無数にかかる虹を見ようと観光客が押し寄せる人気スポットなのである。
しかし今日は残念ながら、雨は降っておらず虹もかかってはいなかった。がっかりするめぐみんにカズマは、虹を見に来たわけじゃないと言うと、まだ雪の残る道を歩み始め森の最深部に実るラードゥガレモンの採集に向かう。これといって道中はトラブルもなく、またモンスターに襲われることもなく順調に進み目的地にたどり着く。そしてお目当てのラードゥガレモンを三、四個ほどもぎ取ると、そのまま出発地点に戻っていく。しかし半分を過ぎたところで日が暮れてきたので、テントを張って一夜を過ごすのだった。
そして次の日の朝。一番に目を覚ましためぐみんは、美しい色の大きな虹を発見する。感動しためぐみんは、カズマを無理やり起こして見に行こうと提案する。
「カズマカズマ。虹が出てますよ。一緒に見に行きましょうよ」
「別にいいよ~ 俺はまだ寝ていたい」
「そんなこと言わずに行きますよ」
毛布をバッと剥がされたカズマは寒さから目を覚ましてしまう。無理やり起こされて若干不機嫌だったが、気にせずめぐみんは手を引っ張って虹の近くまで向かう。
そして数分後、虹の近くにまでやって来た二人は、改めてその美しさと大きさに驚く。
「わぁ~! 近くで見るとすごい大きくて綺麗ですね!」
「本当だな!見に来て正解だったよ!」
「でしょ~? あ、そうだ! 今度は虹の間を通ってみましょうよ!」
再び有無を言わさず手を引っ張って虹の間をくぐる。真下から見た虹はいつもと違ってまた綺麗だった。名物の虹を堪能した二人は、これ以上居続けるとアクア達が心配すると思い来た道を辿ってテントの方へ帰って行くのだった。
しかし戻れど戻れど、テントの場所までたどり着くことが出来ない。不安に思ったカズマは持ってきていた方位磁針をポケットから取り出し、方角を確認する。が、不思議なことに針がくるくると回って機能していなかったのだ。
「あ、あれ? コンパスの調子が悪いのかな?」
焦ったカズマは体から離してもう一度測定する。だが結果は同じ。針は回っていただけだった。
「ちょ、ちょっとカズマ、かなりまずい状況じゃないんですか⋯⋯?!」
「う、うるさい! と、とにかく、このまま来た道を辿っていくぞ!」
再び歩み始める二人。しかし進めど進めどテントどころか、最初に虹をめた場所にすらたどり着かない。これはかなりマズイ! そう思った矢先、目の前に探検隊のテントであろう大きなテントが見えた。人に出会えて安心した二人は、そのテントに駆け寄り声をかける。
「すいませーん! 誰かいませんか?」
「私たち、迷ってしまったので、助けてほしいのですがー!」
何度声をかけても返事はない。不審に思ったカズマは勝手ながらテントの中に入る。そしてもう一度声をかけようと毛布をめくった。
次の瞬間、彼の目に映ったのは、白骨化した人間の遺体だった。しかもよく見ると、この中にいる人間全員が白骨化していた。
「うわあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
白骨遺体を発見したカズマは思わず悲鳴をあげながら、テントを飛び出した。そしてめぐみんにこの樹海はやばい。早く逃げよう! と言って彼女の手を握りしめる。その時だった。地響きが鳴り響き、巨大な何かがこちらに向かっていることに気付く。恐る恐る振り向くと、そこには羊のように捻れた角、全身銀色の鱗のような皮膚に赤いラインが入った怪獣、シルバゴンが二人のことを獲物として見つめていたのだ。
「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」」
シルバゴンと目を合わせた二人は悲鳴をあげて一目散に逃げる。シルバゴンもそれを追いかけていく。
「怪獣がいるなんて聞いてませんよ!!」
「それは俺だって言いたいよ!」
「(危険なモンスターはいないって言ってただろォ!? 嘘じゃん!? 何が安全な樹海だ、虹の樹海だ! これじゃあ虹の怪獣魔境じゃないか!! ああああああああ!!!)」
心の中で絶叫するカズマ。その時、めぐみんが岩に足を取られ転んでしまったのだ。しかも悪いことに捻挫までしてしまい、走ることが困難になってしまった。
「めぐみん!?」
「カズマ! 私のことはいいので、早く逃げてください!」
「バカ! そんなことできるか!!」
そう言うと覆いかぶさるようにして彼女を守る。目を瞑り、歯を食いしばりながら、食われるかもしれない恐怖に耐えていると、シルバゴンはなぜか動きを止めてそのままどこかへ行ってしまった。理由は分からないが、とにかく逃げるチャンスが出来たので、カズマはめぐみんに肩を貸し、気付かれないように安全な場所まで逃げるのだった。
その頃、ガイとアクア、ダクネスはいなくなったカズマとめぐみんを探していた。
「カズマー めぐみーん どこにいるのー?」
「ガイ。そっちはどうだった?」
「ダメだ。探したが、いなかった」
「どこ行ったのかしら⋯⋯?ハッ! もしかして先に二人そろって帰っちゃったのかしら?!」
「それはない。テントの中にはめぐみんの杖と、カズマのリュックが残されていた。勝手に帰ったなら、杖とリュックは持って帰るはず」
「となると、二人の身になにか起きたの考えるのが妥当か⋯⋯」
不穏な空気が漂う。そんな中、ふとアクアが空を見ると、そこには大きな虹がかかっていた。
「ねぇ見て! 虹よ虹!」
アクアが指さす先には大きく綺麗な虹がかかっていた。アクアは他の二人に近くまで見に行こうと誘う。が、ガイはこの虹の不自然さに勘付き、行くなと告げる。
「どうしてよ!?」
「おかしいと思わないか?」
「何が?」
「雨だ。雨が降っていないのにどうして虹がかかっているんだ?」
「そういえばそうね。雨が降った感触がしないわ」
「⋯⋯なあガイ。まさか⋯⋯」
「ああ。おそらくカズマとめぐみんは朝起きて、この虹を見たんだろう。興味本位で近づき、虹を越えた先の異次元空間に迷い込んでしまった⋯⋯ のかもしれない。とにかく、一刻も早く二人を助けなきゃならない。二人とも、テントを片付け次第あそこに向かうぞ」
ガイがそう言うと二人はテントを片付けカズマとめぐみんを救うべく虹のかかる方へと三人は向かうのだった。
一方カズマとめぐみんは、ようやく最初に虹を眺めた場所まで戻ってきていた。しかし歩きっぱなしだったことと、空腹で疲労はピークに達していた。
「カズマ⋯⋯ 私たち、どうなってしまうんでしょうか? このまま死んじゃうんですかね?」
「バカ! そんなこと言うな! きっとガイさんたちが助けに来て⋯⋯」
と、その時。聞き覚えのある声が二人の名を呼んでいた。
「カズマー!! めぐみーん!!」
「この声は⋯⋯!」
「間違いない! アクアだ!」
このチャンスを逃したら終わりだ。藁にも縋る思いで二人は声を上げる。するとそれが功を奏したのか、こちらの存在に気付いてくれた。ガイにアクア、ダクネスの姿を視認すると、二人は一気に駆け寄っていく。これで助かったと思ったその時、見えない壁にぶつかってしまう。
「痛ってぇ⋯⋯」
「どうしたのよ。二人して頭抱えて」
「見えない壁にぶつかったんですよ!」
「はぁ? そんなものあるわけ⋯⋯ 痛っ!」
二人の元に歩み寄っていたアクアも、見えない壁にぶつかってしまう。その後ろからガイが恐る恐る触ると、壁の感触が手のひらに感じ取れた。
「見えないバリヤーか⋯⋯」
「クソぉ⋯⋯ だったらこれで!」
ちゅんちゅん丸で斬りかかるが、簡単にはじき返されてしまう。ガイもまた殴ったり蹴ったりするが割れる気配はない。途方に暮れるカズマ達。そんな一行に追い打ちをかけるかのようにダクネスがとんでもないものを見つけてしまう。
「みんな、上を見ろ!」
そう言って指さす先に見えたのは、一本角と間に触手を生やしたかぎ爪が特徴的な怪獣、ガギがカズマ達を罠に引っかかった獲物を見るかのように睨んでいた。
また怪獣に出くわしたカズマとめぐみんは再びパニックに陥る。なんとか助け出そうとありとあらゆる手を尽くすが、まったく壊れない。このままでは二人が危ない。そう考えたガイはオーブリングを取り出し変身を試みる。
その時だった。どこからともなくシルバゴンが現れ、ガギの張っていたバリヤーを自慢の剛力で破壊し、中に入って来たのだ。
「なんて破壊力だ!?」
突然の乱入者に敵意を向けたガギはカズマとめぐみんから目を逸らし、シルバゴンの元へと向かっていく。その隙にガイ達は、シルバゴンが割って入った穴から侵入し合流する。
一方ガギとシルバゴンは互いに戦闘を開始していた。まず先手を打ったのはガギだ。角からビームを放ち攻撃する。しかしそれはシルバゴンの強固な皮膚にはじき返されてしまう。ドラミングをして挑発されたガギは角を立てて突進する。しかし角を掴んだシルバゴンは左右に揺さぶると、そのまま投げ飛ばしてしまった。
立ち上がったガギは触手を首に絡ませ苦しめる。だがシルバゴンは自慢の剛力でそれを引きちぎり、千切られた触手で殴り掛かる。そして怯んだ隙にガギの首に噛み付き、そのまま噛み殺してしまった。ガギを倒したシルバゴンは勝利を誇るかのようにドラミングをする。そして、ガギが狙っていた獲物。カズマ達に視線を向ける。
と、その時。ガイは脱出口であろう虹を発見する。しかも最悪なことに消えかかっていた。
「こいつは俺が食い止める! だからお前たちはあの虹の方まで走れ! おそらくアレが出口だ!」
「でも!!」
「いいから走れ!! 虹が消える前に、必ず倒す!!」
ガイに強く言われたカズマ達は、虹の方まで走り出す。そして十分な距離が取れたところでオーブリングをかざす。
「ウルトラマンさん!」
『ウルトラマン!』
「ヘェッ!」
「ティガさん!」
『ウルトラマンティガ!』
「チェッ!」
「光の力⋯⋯ お借りします!」
『フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!!』
紫の光と共にオーブが現れ、決め台詞を放つ。
「闇を照らして、悪を撃つ! シュオッ!」
ファイティングポーズを取り、オーブはシルバゴンの角にチョップする。そしてパワータイプの力を使い胴にパンチ、太ももに蹴りを入れて攻撃するが、頑丈な皮膚はそれを通さない。驚くオーブにシルバゴンは頭、わき腹を殴りもう一度頭をはたいて反撃する。
真正面からでは勝てないと踏んだオーブは、スカイタイプの力で背後に回る。そして尻尾を掴み転倒させることに成功する。しかし尻尾を左右に振って揺さぶる。必死に抵抗するが、パワー負けし、振り払われてしまう。
起き上がったシルバゴンは角を立てて突進し、頭を掴んだオーブをそのまま後ろに投げ飛ばしてしまった。
「スペリオン光線!」
投げ飛ばされたオーブは、片膝をついた状態から発射動作を短縮したスペリオン光線を放つ。それを受けたシルバゴンはダウンしてしまう。
「やったか!?」
さすがのシルバゴンもこれを喰らったらひとたまりもないだろう。そう確信した矢先、何事もなかったかのように再び立ち上がり、スペリオン光線の発射ポーズを真似する。しかし光の戦士ではないジルバゴンには撃つことができない。それを知り悔しくて地団太を踏むという一幕があった。
それはそうとこいつは手強いと思ったオーブはタイプチェンジを行う。
『ウルトラマンオーブ! バーンマイト!!』
「紅に燃えるぜ!! スアッ!」
バーンマイトに変身すると、シルバゴンの胴に腰の入ったパンチを繰り出す。さすがにこれにはのけ反るシルバゴン。その隙にオーブはタロウの力を使った連続パンチを腹に繰り出す。そして背後に回り、角を掴む。
しかしシルバゴンは必死に抵抗し、持ち前のパワーでオーブを前方へ放り投げる。投げられたオーブは体勢を崩しながらもなんとか着地する。だがそこへシルバゴンの尻尾が飛んできて、頭にヒット。そのまま倒れ、カラータイマーが点滅を始めてしまう。
「ねぇちょっと! かなりマズイんじゃない!?」
「このままじゃ、ガイさんが負けてしまいます!」
「(何か⋯⋯ 打開策は⋯⋯)」
シルバゴンの弱点はないかと、記憶を辿るカズマ。その時、ふと最初に襲われた時のことを思い出し、あることに気付く。
「そうだ!」
何かを気付いたカズマは走りながら後ろを向き、こう言った。
「ガイさん! そいつは、動くものにしか反応できないんです!」
カズマの助言を受けたオーブは、早速それを実行する。素早く後ろに回り込み、そのまま静止する。するとシルバゴンは突然攻撃をしてこなくなった。そう、カズマの言う通り、シルバゴンは動くものにしか反応できない。だからカズマがシルバゴンからめぐみんを覆いかぶさるように守っていた時、止まっていたので襲われなかったのだ。
静止しながら戦う戦法、通称だるまさんがころんだ戦法が有効だと気付いたオーブはそれを多用し、シルバゴンを翻弄する。パンチを繰り出しては止まり、蹴りを入れる寸前で止まり、後ろを向いたら攻撃し⋯⋯ とにかく見ている方からはかなりシュールな戦いだった。
しかしこの戦法が功を奏し、シルバゴンはどんどん疲弊し、隙が現れるようになった。それを逃さず、頭を掴み投げ飛ばす。そして延髄に飛び蹴りを食らわし転倒させると、頭を下にする体勢で持ち上げ、そのまま豪快に地面に叩きつける。
それを喰らったシルバゴンは地面に頭が突き刺さり、身動きが取れなくなってしまう。その隙に空へ飛んで一度距離を取る。
「ストビュゥームダイナマイトォッ!!」
全身に炎を纏い、右腕を突き上げてシルバゴンに特攻。撃破すると、そのまま虹の方角に飛んでいくのだった。
「はあ⋯⋯ はあ⋯⋯ なんとか脱出できた⋯⋯」
「そうですね⋯⋯ でもガイさんは⋯⋯」
あの魔境に取り残されてしまった⋯⋯ そう思ったその時、遠くからガイの声が聞こえてきた。
「おーい! みんな無事かー?」
「それはこっちのセリフですよ! ガイさんこそ無事だったんですね!」
「ああ。なんとか虹が消える前に倒すことが出来た。サンキューなカズマ」
「いえいえそんなこと」
「お話の途中で悪いけど、早く帰りましょ。家に帰って暖を取りたいわ」
「そうだな。帰るとしよう」
そう言うと、一行はアクセルの街へと帰っていくのだった。
後日、ラードゥガレモンのエキスを入れたラムネを試作する。バニルの言う通り、普通のラムネよりも美味だった。しかし仕入れ値の高さや、取りに行く危険度を考えると、別に普通のラムネでもいいという結論に至った。
それを踏まえてカズマとガイが相談した結果、ラムネの知的財産権はバニルではなく、街の店を経営している人たちに譲ることになった。ラムネは瞬く間に広まっていき、一躍有名となった。そして、ラムネを広めた張本人であるガイは、街の子どもたちから親しみをこめて、ラムネのお兄さん。と呼ばれるようになったのだった。
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