この素晴らしい世界にオーブの祈りを! 作:波紋疾走(pixiv)
ある日のこと。ダクネスは実家に帰り、アクアは朝からどこかに行って屋敷にはいないので、カズマとめぐみんは暇を持て余していた。そんな時、なにやら鬼気迫る表情でアクアが屋敷に戻って来た。
「大変、大変! 大変よカズマ!」
「なんだよ昼間っからうるさいな」
「はあ~?! アクシズ教の総本山があるアルカンレティアがピンチだっていうのに、よくもまあそんなことが言えるわね!このヒキニート!!」
「ヒキニートは余計だろ!」
アクアの余計な一言により口喧嘩が始まり、その中で飛び交うのは、駄女神、やらクソニートといったくだらない言葉ばかりだった。その様子を傍らで見ていためぐみんは、呆れながらも二人の間に入って仲裁し、喧嘩を終わらせる。
「くだらない口喧嘩はやめてください。それより、アルカンレティアが大変ってどういうことですか?」
そう聞かれたアクアは、二人に今朝知ったアルカンレティアで起きている奇怪な事件を伝える。どうやら、ここ最近アルカンレティアの温泉の温度が急に上昇し、街の人たちや観光客が入れなくなっているそうだ。しかし話を聞いている限りでは、風呂の湯加減を間違えただけの出来事のように思える。
「そんなのたまたまその日のお風呂の湯加減をミスをしただけの話では?」
「それが違うのよ! 街中の公衆浴場や温泉が同時にこうなったらしくて⋯⋯」
「で、これは魔王軍の仕業だ。って言いたいんだろ?」
「そう! だから明日にでもアルカンレティアに行って調査したいんだけど⋯⋯」
アクアが二人の顔を見ようとすると、即座にそっぽを向かれてしまった。
「なんでよ~!!」
「二度とあんなとこ行くか! もうあそこは懲り懲りなんだよ!」
「そんなこと言わないでよ~!! めぐみんはついてきてくれるわよね?」
「わ、私はちょっと用があるので⋯⋯」
そう言ってそそくさと屋敷を出ようとする。しかしカズマは逃げようとするめぐみんの腕を掴み、逃げないようにする。
「おいめぐみん。お前一人だけ逃げようとするな」
「嫌です!私もう二度とあの街に行きたくないんです!!」
「そうか。でもお前、以前俺にこんなこと言ったよなぁ?”いくときはいっしょです”って。まさか偉大な魔法使い様が、嘘つくわけねぇよなぁ??」
根性なしやらとりあえず挑発すればめぐみんはムキになって乗るのだが今回は違う。相当あの時の体験で堪えたのか、挑発に乗る気持ちよりも行きたくないという気持ちが上回っていたようだ。絶対に行きたくないと頑なに拒んだ。
どうやら本気で行きたくないのだと察したカズマはついに実力行使に出る。めぐみんのマントを掴んで無理矢理行かせようとする。
「嫌です嫌です! もうアクシズ教はこりごりなんです!」
「んなもん俺だってそうだ!」
「ちょっと二人とも、私の可愛い信者たちになんてこと言うのよ! 罰として、二人ともついてきなさい!」
そう言ってアクアもマントを掴み、無理やり行かせようとする。
その時、屋敷の門から聞き覚えのある声でめぐみんを呼んでいるのが聞こえてきた。その声に反応しためぐみんは二人を引き離し、玄関へと向かう。そして扉を開けるとそこにはゆんゆんとハネジローが待ち構えていた。
「来たわねめぐみん! 今日こそ決着をつけるわよ!」
「ぱむぱむー!」
めぐみんと戦う気満々のゆんゆん。アルカンレティア行きを逃れるチャンスだと思っためぐみんはこの決闘に乗るのだった。
「いいでしょう! 今日ならいくらでも相手してあげますよ!」
「ホント?!」
「ええホントですよ。さぁ、早速決闘の場へ移動しましょう!」
あいつ逃げやがったというカズマの目を尻目にめぐみんはゆんゆんと共に決闘の場へと向かって行くのだった
それはそうと、めぐみんが行ってしまったのでアルカンレティアに行くのはカズマとアクアの二人だけになってしまった。しかしここで問題が起きてしまう。以前カズマ達一行がアルカンレティアを訪れた際、魔王軍幹部ハンスへのゴッドレクイエムの影響により街の温泉がただのお湯に変わってしまった。そしてカズマ達はその犯人として顔を覚えられてしまっていたのだ。つまり、カズマとアクアでは調査に支障が出るというわけだ。
どうしようかと悩むカズマにアクアはあの人を誘えばいいのではと提案する。そう、あの風来坊を⋯⋯
同日夕方、馬車に揺られカズマ、アクア、ガイの三人は目的地であるアルカンレティアへと向かっていた。
「⋯⋯なあカズマ」
「な、なんですか?」
「いくら俺が暇そうだからって、いきなりどこかへ行こうっていうのはやめてくれ。俺にだって予定はある」
「す、すいません⋯⋯」
そう言いながらガイは果てしなく続く荒野を見つめるのだった。
「そういえば、ガイさんと僕らが出会ったのもこんな場所でしたよね」
「ああ。お前らが怪獣に襲われているところを俺が助けたんだよな」
「ホント助かりましたよ。でも、ガイさんがオーブだってことの方が驚きでしたけどね」
そんな他愛ない話をしていると、あっという間に時間は過ぎていく。そして次の日の夕方、目的地であるアルカンレティアに到着する。到着するや否やカズマとアクアは宿に予約を入れに行った。一人残されたガイは夕陽の光に照らされた街を散策することにした。
「(見たところ、特に何もないように見えるが⋯⋯)」
そう思いながら歩いていると、後ろからやって来た馬車に危うく轢かれそうになった。
「おい兄ちゃん、あぶねえぞ!」
「すまない⋯⋯」
謝るガイ。その時、荷台に水が大量に積んであることに気付く。
「どうしてこんなに水を運んでるんだ?」
「ん? お前さんここ最近、この街の水全部が熱湯になっちまってるってことを知らないのか?」
「温泉の温度が上昇していることは知っているが⋯⋯ それ以外にもなのか?」
「ああ。温泉はもちろんのこと、生活用水や川すら熱湯みたいになっちまってる。おかげでここの人たちはろくに水が飲めなくて困ってるんだよ」
「つまりその水は、そのための物なのか」
その時、突然地震が起きた。揺れは少ししてから収まった。驚いたガイは男に問いかける。
「地震が起きたぞ!?」
「これもここ最近よく起きてんだよ。一日に一回は必ず揺れる。気をつけろよ。じゃあな」
そう言うと男は過ぎ去っていった。丁度宿の部屋が取れたカズマが呼びに来たので、ガイは散策をやめ、宿へと向かうのだった。
その夜、名物である露天風呂で疲れを癒したガイは、宿自慢の全身マッサージを受けていた。
「お客さん、よくあの熱湯に入れましたねぇ」
「あ、結構熱いの大丈夫なんで。それより、ここ最近大変でしょう?」
「ええ。アクア様を語る偽者のせいで、温泉がただのお湯になったと思えば次は街中の水がお湯に変わったんですからそりゃもう大変ですよ。それに⋯⋯」
「それに?」
「幽霊騒ぎも起きてるんですよ⋯⋯」
それを聞いたガイ詳しく説明してくれと言う。
「実はですね。あの源泉が湧き出るあの山で、何人もの人がうめき声を聞いたらしいんですよ」
「それって、いつから?」
「温度が上がり始めた時期とほぼ同時期ですかねぇ」
もしかすると、あの山に原因があるのでは? そう思ったガイは明日、あそこへ調査に行くと決心した。
「それはそうと、お客さん、ウチの石鹸気持ちよくないですか?」
「ああ。気持ちいいな」
そう言った次の瞬間、マッサージ師はまるで人が変わったように、アクシズ教入信の紙を突き出してきた。
「今、入信すればもれなく食べても大丈夫なこの石鹸をプレゼントしちゃいます! いかがですか?!」
「お、俺は別にいいです!!」
何か危険な雰囲気を感じ取ったガイは即座に脱衣所へと向かう。なんだアイツは、と漏らしながら脱衣かごの中にある自分の衣服に着替えようとする。しかしそれを覆うように大量の先程の石鹸と、入信の紙が置かれていた。その時、初めて気付いた。なぜカズマ達が自分を連れてきたのかを⋯⋯
次の日。空はまるで不吉な予兆を告げるかの如く、曇天に覆われていた。チェックアウトを済ましたガイ達(特にガイ)はアクシズ教徒から逃れるべくさっさと調査を終らせようと、源泉が湧き出る山へと歩みを進めていた。途中守衛に阻まれるが、ガイが腹を殴って気絶させて源泉へと向かう。そしてたどり着いた先に見えたものは、普段と変わらぬ景色だった。
「なんだ。何も起きてないじゃないか」
拍子抜けしたカズマは下山して帰ろうとしたその時、アクアが悪魔の気配を感じ取った。
「待って。この匂い、まさか⋯⋯」
鼻をすんすんさせながら匂いを感じ取る。そして、その匂いの元は源泉の方にいると指さす。すると、気配を察せられた”悪魔”は姿を現した。
「やはり貴様らは、俺の邪魔をする存在のようだな」
「その声は⋯⋯ ハンス!!」
声の主はかつてカズマ達が倒した魔王軍幹部のハンスだった。その姿は幽霊のようなおどろおどろしいものになっていた。
「あんたが一連の騒動の元凶ね。ほんっとしぶといヤツだわ」
「フフフ⋯⋯ 貴様らに倒されてから、俺はこの場をさまよう幽霊になった。しかし、それがどうやら功を奏したようだァ。姿の見えない幽霊になったおかげで、俺はこの山に眠る怪獣を見つけだすことができた」
「なに!?」
「そして、その怪獣の体内に潜り込み、乗っ取ることが出来た⋯⋯ッ!」
そう言うと、ハンスはふわりと浮く。
「今から貴様らとこの街に恐怖と絶望を味わわせてやる!!」
そのまま山に向かって飛んでいく。しばらくすると地震が起きた。この場にいては危険だと察したカズマ達は、急いで麓まで戻る。そして再び山の方を見ると、山肌が崩れ眠っていた怪獣が姿を現した。
「あの怪獣、まさか!!」
ガイには見覚えがあった。黒い岩のような体表に、鋭く尖ったヒレ。名はデマーガという。そう、この怪獣はカズマ達のことを襲い、オーブに撃退された怪獣なのだ。
「俺が撃退した怪獣があそこに隠れていたとは⋯⋯!」
「それよりも見て!」
アクアが指さす先に見えるのは、ハンスと融合したデマーガの背中と腕から剣のようなものが生え、ツルギデマーガと変貌を遂げていた姿であった。
「フハハハハハ! こいつの力、この街を焼き払ってやる!!」
そう言うとツルギデマーガは背中から火炎弾を放ち、街を破壊していく。パニックになった人々は街を右往左往しながら逃げ惑う。
「やめて! 私の大事な街を破壊しないで!!」
「落ち着けアクア! こうなったのも、あの時俺が倒さなかったせいだ。あいつは俺が倒す。だからお前はカズマと一緒に逃げろ!」
ガイの言葉を信じたアクアはカズマと共に避難する。そしてガイは街を破壊するツルギデマーガに向かって行き、オーブリングを掲げた。
「タロウさん!」
『ウルトラマンタロウ!』
「トオォ!」
「メビウスさん!」
『ウルトラマンメビウス!』
「セアッ!」
「熱いヤツ⋯⋯ 頼みます!!」
『フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ! バーンマイト!!』
「デュアッ!」
オーブが土煙を上げ大地に降り立つ。構えを取り、オーブがツルギデマーガを睨むと両者互いに向かって行き、土煙を上げながら激突する。
両者の力と力がぶつかり合う。均衡を破ったのはツルギデマーガだった。オーブを突き放し、頭突きを食らわせる。怯んだ隙に腕の剣で体を切り刻む。
だがオーブもやられるばかりではない。炎を纏った拳で胸部を攻撃。続けざまに頭の角を掴む。しかし、がら空きになった胴体を殴られ怯んでしまう。その隙を狙ったツルギデマーガは、角をオーブの胴体に突き立て、そのまま後ろへ放り投げてしまう。さらに立て続けに尻尾で攻撃を加えた。
地上戦では厳しいと考えたオーブはスワローキックを放つ。しかしヒットはしたものの大したダメージを負っていなささそうだ。
「タフな野郎だ!」
「こいつの前では、貴様の攻撃など無意味!!」
そう言うとツルギデマーガは熔鉄光線を放とうとする。すかさずオーブもストビューム光線の構えを取る。
「ストビュゥウウウム光線ッ!!」
ストビューム光線と熔鉄光線が同時に発射され、ぶつかり合う。お互いに力を込めて放ち続ける。均衡を破ったのは⋯⋯
「ウオアアアア!?」
ツルギデマーガの方だった。オーブは強力な熔鉄光線を受けて吹き飛ばされ、たちまちピンチに陥ってしまう。
「だから言っただろう! こいつには勝てないと!」
「なら、おれのとっておきを見せてやる!」
そう言うとオーブの体は光輝いた。
「ギンガさん!」
『ウルトラマンギンガ!』
「ヘッ!」
「エックスさん!」
『ウルトラマンエックス!』
「イィィーサァァーッ!」
ギンガスパークでリードするかの如くポーズを取り、両手を胸で合わせる。そしてその後その両手を左側に回してからオーブリングを掲げた。
「痺れるヤツ、頼みます!!」
『フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ! ライトニングアタッカー!!』
「シュワッ!」
ギンガとエックスの変身音が合わさった変身音が流れると、電撃を纏いながらオーブは姿を見せる。姿を見たツルギデマーガは再び熔鉄光線を放つ。しかし⋯⋯
「電光雷轟、闇を討つ!」
その決め台詞と共にスパークさせた腕で弾かれてしまった。
「なんだその姿は!!」
見たこともない姿に動揺したハンスは、オーブに向かって行く。そして自慢の剣で攻撃を仕掛ける。
しかしライトニングアタッカーの強固な腕に弾かれその隙に腹部に電撃を伴ったパンチを食らう。さらに顔面にもパンチを食らうと、再び腹部に複数回食らった。そしてもう一度、頭部に強烈な一撃を食らわされてしまった。
距離が離れたことを確認すると、オーブは飛び上がり体をうずくませてエネルギーをチャージする。そして体を広げ、一気にそのエネルギーを放った。
「アタッカーギンガエックス!!」
必殺のアタッカーギンガエックスがさく裂。それを受けたツルギデマーガは倒され、ハンスも完全に消滅したのだった。
戦いが終わった後、数日ほど街の復興作業をしてからアクセルの街に帰って来た。同行していたガイは、もう二度とあの街に行きたくないというほど、復興作業中にもしつこく勧誘されたらしい。
そしてカズマたちはゆんゆんとの決闘を終えためぐみんとともに、ギルドの酒場でダクネスを待ちわびていた。その時だった。
「カズマ大変だ!」
「お帰りダクネス。ってどうしたんだよそんな血相を変えて」
様子のおかしいダクネスにカズマは問いかけた。するとダクネスはこう言った。
「私のお父様が⋯⋯ 殺されてしまうかもしれないんだ!!」
次回はついにあいつがやってきます!