この素晴らしい世界にオーブの祈りを! 作:波紋疾走(pixiv)
「私のお父様が⋯⋯ 殺されるかもしれないんだ!!」
「また何か変なことでも⋯⋯って、えっ?!」
一瞬聞き流しかけるカズマ。しかし聞き直せば面倒事ではなく、かなり重大なことだった。パーティーメンバーの身内の非常事態なので、とりあえず落ち着かせて話を聞くことにした。
「親父さんが殺されるかもって、どういうことだよ?」
「まずはこれを見てくれ」
そう言って一枚の紙を広げて見せた。そこにはダクネスの父親の顔に赤いペンでバツ印が描かれており、その下には未知の言語で何か書かれていた。
「こ、これ⋯⋯ 親父さんの顔にバツ印がついてるから、殺害予告ってわかるけど⋯⋯ その下はなんて書いてあるんだ?」
「えっとだな⋯⋯ 本日の夜、ダスティネス・フォード・イグニスを殺害する。俺は最強の暗殺者だ、獲物は確実に仕留める。震えて眠るといい。っと書かれてるらしい」
内容を読んで分かったのは、中二病が入った暗殺者であることだけだった。それはさておき早速対策を練ろうと考え始める。
「なあ、俺達が武装して親父さんを守るっていうのはどうだ?」
「それはだめだ。今日は屋敷でダンスパーティーが開かれるから、たくさんの来賓が来る。ドレスコードもあるから武装した格好では中に入れないし、来賓の人たちを不安にさせてしまう」
「となると、誰か強い人を潜り込ませなきゃいけませんね」
「まあカズマは論外として、とりあえずスーツ着ながらでも戦えそうな人っていったら誰かしら?」
アクアの余計な一言はさておき、四人は該当する人物はいないか考え始める。するとそれが似合いそうな人物が、カズマ達の元へと訪ねてきた。
この人だ!! そう思った四人は早速事情を話し、その人物をダクネスの屋敷へと連れて行った。
そして夕陽の光が部屋に満たされる頃、ダクネスのダンスパートナー兼イグニスの護衛であるガイはドレッシングルームにて正装に着替えていた。彼がちょうど着終わった時にダクネスも普段からは想像もできない髪形や化粧、きれいなドレスに着替えていた。
「似合ってるじゃないか。そっちの方が綺麗だな」
「や、やめろ。恥ずかしい⋯⋯」
普段見せないような姿のダクネスをからかうガイ。それはさておき着替えを済ませた二人は応接室に入り、正装に着替えたカズマ達と共にイグニスがやって来るのを待っていた。
「すまないな。突然ダンスパーティーなんかに誘って」
「いいさ。こういうのは一度あったし慣れてる」
その時、イグニスが部屋に入って来る。全員立って挨拶をする。
「はじめまして。私が、ララティーナお嬢様のパートナー兼イグニス様の護衛と務めさせていただきます、クレナイ ガイと申します」
「君のことはララティーナから聞いているよ。さぁ、座って」
そう言われたガイ達は座る。そして、今回の件について話し始めた。
「今回の件についてなんですが⋯⋯」
「ああ。心配はいらないよ。二人はパーティーを楽しんできてくれ」
「何をおっしゃるのですかお父様!?」
思わず立ち上がるダクネス。そんな彼女をカズマは落ち着かせる。
「私の心配をしてくれているのだなララティーナ。しかし大丈夫だ。こちらには、ガイ君に負けないぐらい強い執事がいる。入って来たまえ」
そう言うとイグニスはガイと同じぐらい強いと言われる執事を中へ招き入れる。その風貌はカズマ達から見れば非常に紳士的で好青年のように見えた。が、ガイはその姿を見て驚いた。
「お前⋯⋯!!」
かつて銀河の果てと地球で何度も死闘を繰り広げた、ガイの永遠の宿敵⋯⋯。
「紹介しよう。彼は、ジャグラー君だ」
「はじめまして。ジャグラス・ジャグラーと申します」
イグニスの言っていた執事とは、ジャグラーのことだった。彼が全員にお辞儀をしたのちにガイは突然胸倉を掴んだ。
「おいジャグラー! これはどういう意味だ」
「言葉通りの意味さ。それよりも、手を離せ。せっかくのタキシードがしわくちゃになるじゃないか」
ガイの手を無理やりはがすジャグラー。そして服装をもう一度しっかりとただす。ガイの突然の行動にただならぬ雰囲気の中、恐る恐るイグニスはガイにジャグラーとはどんな関係なのかを問いかけた。
「ジャ、ジャグラー君とは知り合いのようだね⋯⋯?」
「ええ。知り合いを通り越してあいつとは腐れ縁の中ですよ」
「く、腐れ縁なのか⋯⋯ 一体君たちの過去に何があったのかな?」
「話せば長くなります。が、一つ言えることは、俺とジャグラーは長い間やりあってきた仲だってことです」
ただならぬ関係だと察したイグニスは、もうすぐパーティーが始まると言ってガイとダクネスを会場へと向かわせた。一方ガイはカズマ達に
「ジャグラーの動向に気をつけろ。何か不審な行動をしたら、その時は俺がやる」
とだけ言い残して、会場へと向かうのだった。
ダンスパーティーが始まり、ガイとダクネスは周囲から一目置かれるほど息の合った美しい社交ダンスを披露していた。その頃、ガイからジャグラーの監視を指示されているカズマ達は、不審な人物はいないか目を凝らしつつ、彼にも注意を配っていた。ある時、会場にいたジャグラーがその場を離れどこかへと行ってしまった。三人はその後ろ姿を追っていくが、見失ってしまう。そこで分かれて探す作戦を取り、屋敷内を捜索していく。
「どこに行ったんでしょうか⋯⋯」
屋敷内を探すめぐみん。すると、ジャグラーの後ろ姿を発見する。なにやら立ち止まって何かをしているようだが、暗くてはっきりとまでは分からない。目を凝らしていくうちに目がしょぼしょぼしてきたので、いったん目をこすってもう一度視認しようとした。
しかし不思議なことにすでにジャグラーの姿はなく、どこかへと消え去っていた。どこに行ったんだろうと目を凝らすめぐみん。その時、ジャグラーが彼女の背後に現れ、肩に頭を乗っけてきた。
「やあお嬢さん。探しているのは、私ですか?」
「きゃあああああ!!!!」
びっくりして悲鳴をあげてしまった。その声を聞いたカズマとアクアがやって来る。そしてめぐみんの肩に顔を乗っけているジャグラーにドン引きした。
それはさておき、ジャグラーは顔を離す。めぐみんはすぐさま彼から離れ、カズマ達の元に戻る。
「誰かつけていると思ったら、やっぱりお前たちだったか。まあどうせ命令したのはガイだろうな」
「そうよ! ガイに頼まれてあんたを監視しろって言われたの。それよりも、あんたに聞きたいことがあるわ!」
「なんだ?」
「ガイとはどんな関係なの?」
「フン。概ねさっきガイが言った通りだ。俺とガイは何千年もの間、銀河を股にかけ、時には共闘したりしてやりあってきた仲だ」
「ふーん。じゃあもう一つ。どうしてダクネスの屋敷で働いているの?」
それを聞かれたジャグラーは乾いた笑みを浮かべた。
「アクシズ教徒とかいう頭の逝かれた連中のしつこい勧誘で疲れ切っていた俺をあの人が助けてくれたからさ」
頭の逝かれたアクシズ教徒という聞き捨てられない言葉を聞いたアクアは、ジャグラーの胸倉を掴む。
「なんですってー!! 今あんた、頭の逝かれたアクシズ教徒って言ったわね? 私の大切な信者をそう言うなんて、女神として断じて許せないわ!!」
「なんだお前もあの頭の逝かれた狂信者どもと同じ宗教を崇拝しているのか。通りであいつらと同じ気配が感じると思ったぜ」
「落ち着けアクア!ジャグラーさんも煽るようなこと言わないで!」
いがみ合う二人の間になんとか入ってカズマは仲裁する。しかしアクアの怒りは収まらない。
「今度もし私の信者のことをバカにしたら、その時はあなたをギッタンギッタンにしてやるわ!!」
威勢よく啖呵を切るアクア。しかしその威勢も、蛇心剣を突き立てるジャグラーの覇気にかき消されてしまう。
「やれるものなら⋯⋯ やってみろ」
そう言うと蛇心剣を戻してどこかへと消え去るのだった。そしてその闇のオーラを纏っているかのような背中を見たカズマとアクアは、ヤバいやつに喧嘩売ってしまったと後悔するのだった。
時は進み、ダンスタイムは終わり、美しい社交ダンスを見せたガイとダクネスのペアには溢れんばかりの拍手と賞賛が贈られた。
「美しいダンスだったよ。ララティーナ、ガイ君」
「お父様⋯⋯」
「ありがとうございます」
「君とララティーナはお似合いだな」
父親の冗談に顔を赤らめるダクネス。それはそうと食事の時間まで時間があるので、空いた部屋で休憩するといいとイグニスは言う。それに甘えたガイは連れられ休憩室に案内された。ガイは部屋につくとソファーに座り、すっかり気が抜けてリラックスしていた。
そんな彼の様子を伺いながら、イグニスは懐からナイフを取り出す。そしてゆっくりとガイに近づき、一気に振り下ろした。
しかし間一髪気付かれ、高級ソファーにナイフが突き刺さる。突然の凶行に戸惑いを隠せないが、勘のいいガイはこのイグニスは本物のイグニスではなく、殺害予告を出した張本人が化けているものだと気付いた。バレたと悟ったイグニスの偽者は真の姿を現す。その正体は奇怪宇宙人 ツルク星人だった。
「さすがウルトラマンオーブ。一筋縄ではいかないな」
「まさか、本当の狙いは俺だったのか?」
「そうだ」
「なら一つ聞かせてくれ。ダクネスの親父さんはどこへやった!」
「そいつなら、地下の貯蔵庫で眠ってるよ」
イグニスが死んでいないと知ってホッとするガイ。しかしそれも束の間、ツルク星人は仲間を呼び出した。その仲間とは⋯⋯ ジャグラーだった。
「ジャグラー! お前⋯⋯!!」
「悪いな、ガイ」
そう言うと蛇心剣から斬撃を放つ。それを避けたガイは戦いを森へと移すべく、窓を突き破って暗い森に逃げていく。それを追ってツルク星人とジャグラーは二手に分かれて森に入っていくのだった。
ダスティネス邸から充分離れたところで歩みを止め、ツルク星人が来るのを待った。そして程なくしてツルク星人がやって来る。
「どうした? これ以上逃げられないと思ったのか?」
「いいや。ここでなら、お前を十分に倒せると思っただけさ!!」
そう言うとオーブリングを掲げ、オーブオリジンのカードをリードする。
『覚醒せよ! オーブオリジン!』
「オーブカリバー!」
現れたオーブカリバーを手にし、中央のリングを回転させトリガーを引く。そしてオーブニカのメロディーと共に各エレメントが光り、それらが融合するとオーブオリジンが闇に包まれた森にオーブカリバーを掲げながら姿を現す。
それを見たツルク星人も巨大化。両腕に剣を携えた怪獣のような姿に変身する。
「銀河の光が、我を呼ぶ!!」
カリバーを構えたオーブは決め台詞を放つと、ツルク星人に向かって行く。互いの剣と剣が交差し、火花を散らす。均衡を破ったオーブは重い一撃を食らわせようとする。
しかしカリバーの動きは鈍く、さらにツルク星人の動きが機敏なため、いとも簡単に避けられてしまう。それどころか、オーブカリバーではツルク星人の素早い斬撃に対応できず、ダメージを受けてしまう。
「くっ! 早い!しかしジャックさんとゼロさんの力を使えば⋯⋯」
オリジンの力では太刀打ちできないと考えたオーブは、ハリケーンスラッシュに変身しようと試みる。だが、それをさせまいとツルク星人は一気に懐にまで詰めて攻撃し、トドメに剣から衝撃波を放ってオーブを吹き飛ばす。
その頃、屋敷では来賓の人々が出された料理を堪能し、カズマ達もまた料理に舌鼓を打っていた。そんな時、ダクネスがガイを探している様子でこちらへとやって来た。
「なあカズマ。ガイを知らないか?」
「ガイさんがどうかしたのか?」
「ああ。休憩を取るって言ってから、どこにもいなくて⋯⋯」
「ガイさんのことだからきっとどこからともなく現れるって」
ガイを心配するダクネスにそう軽く言って料理を堪能していると、突如として外の森から爆発音が聞こえた。何事かと思って外に出た瞬間、目の前に巨人が倒れこんできた。
「えっ!? オーブ!?」
「どうしてオーブが戦ってるのよ?! それに、かなりピンチっぽいじゃない!」
アクアの言う通り、オーブのカラータイマーは赤に変わっており、片膝をついて苦しそうな姿だった。カリバーを取りいこうとも、今いる場所からでは遠く、仮に取りいったとしたら、間違いなく攻撃される。
絶体絶命のピンチ。しかしツルク星人は無慈悲にも剣を向け、そのまま振り下ろした。もはやここまでか、と思ったその時だった。
「ぐわあぁぁぁ!!!」
彼方から飛んできた衝撃波を受けて、ツルク星人は吹き飛んだのだ。思わずそれが飛んできた方向に目を向ける。するとそこには刀を持ち、三日月型の胸の傷が特徴的な巨人が立っていた。
「なんだよあいつ?!」
「っ!あの刀、まさか!」
めぐみんは刀を見てあの巨人の正体に気付いた。カズマはあの巨人の正体を教えてくれと詰め寄る。
「あの巨人の正体。それは⋯⋯」
「ジャグラー⋯⋯!!」
「なんのつもりだ、ジャグラー!!」
あの巨人の正体、それはジャグラーだった。
「フン。ガイはこの俺が倒す相手だ」
「貴様⋯⋯! 裏切るのであれば、容赦はしない!!」
裏切り行為に激高したツルク星人はジャグラーに剣撃を繰り出す。しかし片腕で受け止められ、隙だらけの腹に蛇心剣の一閃を食らわせる。そして立て続けにもう一度強烈な斬撃を食らわせた。
たった二発でツルク星人をグロッキー状態に陥らせたジャグラーは、トドメの一撃の準備に入る。
「さぁ、終わりの時だ」
蛇心剣の刀身が禍々しい闇のオーラを纏う。そしてその闇の力をツルク星人に向けて放った。
「蛇心剣・新月斬波!!」
闇を纏った衝撃波はツルク星人の体を抉るかの如く回転。その後倒れ、絶命した。
ツルク星人を倒したジャグラーは元の姿に戻り、闇に包まれた森の中へと消え去っていくのだった。
あの事件から数日経った。あの後。ツルク星人の遺体はオーブによって処理され、囚われていたイグニスも無事発見された。しかしジャグラーだけはどこに行ったのか分からずじまいだった。
「まさかあいつがこの世界に来ていたとはな⋯⋯」
「しかしどこに行ったんでしょうね、ジャグラー
ギルドの酒場で新メニューのラムネを飲むガイとカズマ。その時、二人の隣に男が座り、同じくラムネを頼んだ。
「この世界にもラムネが存在するんだな」
「ああ。俺が流行らせ⋯⋯ってお前!」
隣に座っていたのは、なんとジャグラーだった。これには驚きを隠せない。
「お前、どこに行ってたんだよ!」
「ん? ここのギルドで冒険者登録をしていた」
「冒険者ってまさか⋯⋯」
困惑する二人にジャグラーは冒険者カードを見せる。
「冒険者ジャグラスジャグラー。職業はソードマスターだ。力が欲しければ貸すぞ。フッフッフ⋯⋯」
そう言ってジャグラーはどこかへと消えていった。そしてカズマとガイは彼が冒険者になったことで波乱の予感がすると思うのだった。