この素晴らしい世界にオーブの祈りを! 作:波紋疾走(pixiv)
勘のいい人は、登場人物の名前で今回登場する怪獣が分かると思います。
冒険者ギルドに美しい夕陽の光が差し込む頃、美人受付嬢と名高いルナは、帰宅の途についていた。
「はぁ⋯⋯ なんで私には素敵な恋人ができないんだろう⋯⋯」
肩を落としながらぼそぼそと呟くルナ。本来ギルドの受付嬢というのは、冒険者と接する機会が多い職業なのでモテるのだ。現にルナの前にはたくさんの冒険者が集まるし、他の街では恋人を作っている受付嬢もいる。
にも関わらず彼女には恋人ができない。ちなみにそれにはサキュバスが関わっているのだが、そんなこと知る由もない。
とにかく激務なうえに、恋人がいくら経っても現れないので、いつしか彼女の後姿から哀愁すら漂うようになっていた。
そんな彼女に対し、ローブを羽織った生気の感じない不審な男が声をかけた。
「あなた今、悩み事がありますか?」
「ええ? ありますけど⋯⋯」
「その悩み、晴らしたくありませんか?」
「晴らしたいとは思ってますけど⋯⋯」
こんなローブで顔を隠している不審者に悩みを晴らしてもらうなど、何か裏があってもおかしくない。信用に置けないので断ろうとする。しかし次の瞬間、驚きの言葉を発した。
「あなた、恋人ができないことで悩んでますね?」
なんと何も情報を与えていないのに自分の悩みを的確に言い当てたのだ。
「私、何でも見透かすことが出来るんですよ。どうでしょう?あなたの悩み、晴らしたくありませんか?」
その言葉を聞いた途端、ルナの体は自分の意思とは無関係に動き始めた。この不審者についていき始めたのだ。
「(あれ?体が⋯⋯)」
体は動いている。意識ははっきりしているのにだ。
抗うことも出来ぬまま、彼女は男についていく。街を抜けて森に入り、歩み続けること数分。一軒の不気味な洋館にたどり着く。案内されるがままエントランスホールを抜け、儀式を行う部屋へと入る。そこには若い男女が魔法陣を囲うように立っていた。
「ここで主をお待ちください」
そう言われて待つこと数分、主と思わしき人物が現れ、魔法陣の中心に立った。
「私はシジルと申します。。あなた方の悩みを取り払う者です。あなたの悩みを言いなさい」
一人ひとりの悩みを聞いていく。内容はなかなかモンスターに勝てないといった冒険者らしい悩みや、子どもが言うことを聞いてくれないという家庭的な悩みなどさまざまものだった。そしてついにルナの番が回ってきた。
「あなたの悩みは?」
「えっと⋯⋯ 私、恋人がなかなかできなくて⋯⋯」
「なるほど、恋人がほしいのですね。わかりました」
彼女の悩みを聞くとその後も悩みを聞いていく。そしてすべて聞き終わると、呪文を唱え始めた。そして杖を天に掲げると閃光が走った。ビックリしたがそれで終わったのか、導き出された答えをそれぞれ伝授していく。そしてルナの番が回って来た。
「あなたは、自分から行動を起こさなくても恋人は現れます」
「そ、そうなんですか?!」
「ええ。あなたが命の危機に瀕した際に救世主が現れます。それこそが、あなたの運命の人になるであろう人物です」
やたらとリスクが大きい気もするが、恋人が現れることについてはひとまず安心した。
儀式が終わると、施錠されていた扉が開き、皆各々帰っていた。ルナもまた帰路についていた道中、カズマをおだて上げるクエストを依頼した少女、ランとばったり会う。どうやら彼女もあの儀式に参加していたそうだ。
「あ、あなたも参加していたんですね」
「ええ、まあ。なんとなく参加しただけですけど⋯⋯」
「へぇ~ でも幸運でしたね。実はあの人、最近密かに街で有名な人らしいですよ? なんでも、悩みを打ち明けたら必ず解決してくれるとか。友達もあの人に悩みを打ち明けたら欲しかったスキルを習得できたって言ってましたし」
「へ、へぇ~」
結構評判のいい人のらしいが、何か邪悪なオーラを感じたルナにはそうは見えなかった。
とにかく今日は夜も遅いのでさっさと帰って寝ることにした。
それから二、三週間ほどの月日が流れた。ルナにはこれいって特に命の危機に瀕する出来事は降りかかってはいなかった。しかしランには予言通りのことが起きたらしく昨日ウキウキな気分で報告してきた。
なんで私にはなにも起きないのだろうか。もしかして呪われているのか?そんなことを思いながらクエストを受けに来る冒険者たちを待っていると、今日は妙に騒がしいことに気付く。同僚になぜこんなにも騒がしいのかと尋ねると
「なんか変な儀式に参加した人が失踪してるみたいよ」
と答えてくれた。
そしてその事件はガイとカズマの耳にも入っていた。
「おはよう、ウィズ。バニルは⋯⋯ってガイさん?」
「よお」
「どうしたんですか?」
「クエストのためのアイテムをとな。ほら、最近失踪事件が多発してるだろ?その被害者探しのクエストを受けててな。それに役に立つアイテムを探しに来てた」
「ああ、あの事件ですか。不気味ですよね。被害者の自宅周辺ででかい化け物も見たって人もいるそうですし」
「その話、詳しく聞かせてもらおうか」
先程の話を聞いていたのか店の奥からバニルが現れた。興味深そうに尋ねてきたので、とある魔術師に掛かった人々が失踪しているという事件の詳細を話した。一通り話すと彼は突然こんなことを口にした。
「この事件。もしかすると大魔獣の仕業かもしれんな」
大魔獣?聞きなれない言葉に耳を疑うガイとカズマ。二人が尋ねると、バニルはそれについて語り始めた。
「遠い昔、とある村に一人の優秀な魔術師がいた。その魔術師は村人に助けてもらったお礼に、自分の魔法で恩返しをしていた。しかし村には魔術師を疎ましく思っていた人も少なくなかった」
「ある年のこと。その年は大凶作で食べ物が足りず飢饉が起きてしまった。こうなった原因はあの魔術師だと決めつけた村人は、証拠もなく魔術師を追放してしまったのだ」
「そりゃあ酷いな⋯⋯」
「この村を愛しているから私はやっていない。と言っても聞く耳を持たれなかった魔術師は、悲しみと絶望に暮れた。そして恩を仇で返す村人に憎しみを抱き、復讐すべく悪魔と契約を交わしてしまった」
「悪魔と契約した魔術師は、村を襲撃し村人全員の魂を奪い壊滅させた。さらに契約した悪魔をも取り込み、大魔獣ビシュメルとして世界を闇に包みこもうとした。しかし勇者によって封印され、その野望は途絶えたのだった⋯⋯ という話だ」
「なあ、その話が本当ならもしかするとこの事件を起こしてるのってそいつってことじゃ⋯⋯」
「十分ありえるな。ともかく、俺はいくよ。クエストを達成しなければならないからな」
そう言うと人探しのためガイは店をあとにした。
その夜、一向に現れない恋人について聞きに行くべく一人灰暗い森の中へと入っていった。そしてその行動をジャグラーは目撃していた。
その時あのローブを羽織った男がジャグラーに声をかけた。
「もしもしお兄さん、悩みを抱えてませんか?」
「生憎俺は悩みなんて抱えてない。それよりもお前、何か邪悪なオーラを感じるな。さては人間じゃないな?」
そう言うと突然殴り掛かって来た。蛇心剣で受け止めたジャグラーはそれをはじき返しそのまま抜刀、切り裂いた。その時、偶然その様子を目撃したガイが何事かと思って駆け寄って来る。
「ジャグラーお前いきなり人を斬るってどういうことだ?!」
「よく見ろ。こいつは人じゃない」
そこには死体などなく、羽織っていたローブだけが残されていた。そしてその男のものと思わしき魂が漂い、森の方へと逃げるように去って行った。
「なんだあれは?」
「⋯⋯ところでガイ。さっきギルドの受付嬢があの森に入って行ったぞ。あの魂と同じ方角にな」
追わなくていいのか?と言わんばかりにニタァっと笑みを浮かべるジャグラー。万が一のことがあるため、ガイは魂を追うのだった。
一方洋館にたどり着いたルナはシジルを探すべく、暗い洋館内を歩き回っていた。その時、従者と思わしき人物に遭遇する。
「すいません、シジルさんは⋯⋯?」
居場所を尋ねられ振り向く従者。次の瞬間、頭がポロンと取れ、ガイコツと化した頭部が露になる。
あまりの恐怖に絶叫するルナ。その声に釣られたのか、ゾンビのような風貌の従者たちが一斉に襲い掛かってきた。命の危機を感じた彼女は一目散に洋館中を逃げ惑った。そしてやっとの思いでエントランスにたどり着く。これで助かった。そう思った時、背後に気配を感じ振り返る。するとそこにはシジルが立っていた。
「どうなさいました?」
笑顔のシジル。しかしその目の奥に恐ろしい”ナニカ”を感じる。意を決したルナはシジルに問いかける。
「あ、あの、私の悩みはいつ解決するんですか?」
「申しわけない。私の魔術は個人差があって、早くに効果が現れる人もいれば遅くまでかかる人もいるのです」
「なるほど⋯⋯ それともう一つ。あの従者さんは一体⋯⋯?」
「ああ、あれは⋯⋯ 私に従うよう魂を入れ替えた者たちです。一部腐敗が進み、体が脆くなっているのもいますが」
「えっ⋯⋯?!」
衝撃の一言に言葉を失うルナ。そんな彼女にシジルはあるものを見せる。それは既に奪われたランと魂だった。
「この娘、あなたとお知り合いなんですよねぇ?」
そう言うとシジルはランの魂を食べてしまった。その光景を見たルナは恐怖で足がすくんでしまう。そんな彼女にシジルはじりじりと詰め寄って来る。
「あなたは知ってしまった。なので申し訳ありませんが、悩みを解決する前にあなたの魂を頂きます」
手を伸ばすシジル。絶体絶命のピンチ。その時、エントラスホールの正面扉が開く。
「そこまでにしな。大魔獣ビシュメル!」
「その声は⋯⋯ ガイさん!」
ガイが駆けつけてくれたのだ。すぐにルナは彼の元に駆け寄る。シジルは邪魔者が入ったことに怒りを露にする。
「貴様⋯⋯!邪魔をするな!」
「俺は今、お前に捕らわれた人たちを救うクエストを受けているんでな」
「フン、人間風情がこの私に敵うとでも?」
そう言うとシジルは従者の魂を吸収し、洋館の近くに巨大化した姿で現れる。その姿はまさしく悪魔と呼ぶにふさわしい姿だった。そう、これこそがシジルの真の姿。大魔獣ビシュメルなのだ。
ビシュメルが現れたことにより、天候は悪化し雷雨に変わる。ガイはルナを安全な場所へと避難させる。
「お前はここにいろ。あいつは俺がやる」
「一人であいつを倒すなんて無茶ですよ!」
「心配するな。俺は簡単には死なない」
その言葉を残してガイは行ってしまった。そしてガイはビシュメルと相対する。
「お前に奪われた人々の魂は、俺が取り戻す!!」
オーブリングをかざし、光に包まれる。
「ジャックさん!」
『ウルトラマンジャック!』
「シェアッ!」
「ゼロさん!」
『ウルトラマンゼロ!』
「デェェェアッ!」
「キレのいいやつ⋯⋯ 頼みます!!」
『フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ! ハリケーンスラッシュ!!』
光と共にオーブが姿を現す。
「光を超えて、闇を斬る!! シュアッ!」
決め台詞を言うと、オーブスラッガーランスを構えてビシュメルに向かって行く。そしてそれを振り下ろし、立て続けに突き攻撃を繰り出す。それを手で受け止めるビシュメル。しかしはじき返され、腹に蹴りを入れられる。さらに続けて攻撃するオーブ。しかしビシュメルは瞬間移動を見せ、一気に背後に回る。
だがオーブもまた瞬間移動が使える。対抗するようにそれを使い、瞬間移動を駆使したバトルが繰り広げられる。
目にも止まらぬ速さで戦った後、ビシュメルは超能力を使い木々を引っこ抜いて飛ばす。それをオーブは蹴りとオーブスラッガーランスを駆使して破壊する。次にビシュメルは自らの腕に雷を集中させ雷撃を放つ。今度はオーブスラッガーランスを自らを守るようバリアのように回転させることでそれを無力化する。そしてその勢いのままレバーを三回引く。
「トライデントォォ⋯⋯!スラッ⋯」
必殺のトライデントスラッシュを放とうとする。その時、ビシュメルの動きが止まった。そしてまるで人質を取るかのように自らが取り込んだ魂を見せつける。
「ンッ!?」
これでは攻撃できない。その隙を突き雷撃を食らわせる。直撃を食らったオーブはオーブスラッガーランスを手放しながら後方に吹き飛ぶように倒れた。
倒れているオーブに追い打ちをかけるように腹をボールを蹴るようになんども蹴る。そして最後に強烈な蹴りを食らわせ吹き飛ばす。
「グゥッ⋯⋯ウッ⋯⋯」
それでもなお立ち上がるオーブにビシュメルは超能力を使い、木の根っこを縄に変化させて縛り上げる。さらにそこに雷を落として攻撃する。大ダメージを受けたオーブのカラータイマーは赤に変わってしまった。
「オーブが!!」
このままではオーブが敗北してしまう。そう思ったルナは何か救う手立てはないかと考えると、あの儀式の部屋のことを思い出し洋館に戻った。途中シジルが持っていた杖を拾い、そして部屋にたどり着く。そこにはまるで心臓のように鼓動する魔法陣があった。
「これをこいつで突き刺せば⋯⋯!」
そう言ったルナは迷いもなく魔法陣に杖を突き刺した。次の瞬間、眩い光が部屋を包み込む。
それと同時にビシュメルは苦しみだし、取り込んだ魂をすべて吐き出した。魔術が解けたことにより、自由の身となったオーブは再びオーブスラッガーランスを呼び出し、レバーを一度引く。
「オォォブランサァァァーシュートッ!!」
先端から光線が放たれる。直撃したビシュメルは青い炎を燃やしながら消滅するのだった。
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戦いは終わり、取り込まれていた人々は元に戻った。ガイとルナは朝焼けの光が立ちこむ森を街を共に歩いていた。
「オーブのおかげで、皆さん助かりましたね」
「ああ。でもいいのか? あんたの悩みが解決されなくて」
「いいですよ。別に大した悩みではなかったですし」
「そうか。なら、どんな悩みだったのか知りたいな」
「それはその⋯⋯ 恋人のことですよ。私の命の危機に瀕した時に助けに来てくれる人が運命の人だって⋯⋯」
そう言った途端ルナの足が止まる。そう、気付いたのだ。運命の人が誰かと。そして今、その人は隣にいる。
「(私の運命の人ってまさか⋯⋯!)」
シジルが言っていた運命の人、それはガイだったのだ。それを知った途端に顔を赤らめてしまう。
「顔が赤いぞ。どうした?」
「い、いえ!なんでもありません! で、では!!」
「お、おい!」
恥ずかしさのあまりそのまま帰ってしまった。そしてその日からルナのガイに対する異性としての意識が変わったとか、変わってないとか。
ハリケーンスラッシュ単独撃破&夜戦をやってみたかったんですよね。ちなみにハリケーンスラッシュ単独撃破は前回予定していた(ダクネスと共にフュージョンアップする)のですが、ジャグラーを目立たせるためにボツにしました。
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