ごいりょくがとられた せかいの はなし   作:いかすみ

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ご‐い〔‐ヰ〕【語彙】

《「彙」は集める意》
1 ある言語、ある地域・分野、ある人、ある作品など、それぞれで使われる単語の総体。「語彙の豊富な人」「学習基本語彙」
2 ある範囲の単語を集録し、配列した書物。「近松語彙」



第一話

「おぉ おぬしが ゆうしゃか ▼」

 

 野太いが、威厳を感じさせない声が聞こえる。

 ここは……。とぼんやりとした頭のまま目を開けると、目の前に王様のような存在と、王妃のような存在が、自分の前で豪華そうな椅子に立っていた。

 

 見渡せば、そこが豪華な屋敷っぽい場所であることがわかった。

 何かピカってしてるシャンデリアっぽいものに、赤そうな絨毯に、何か高そうな調度品。王様っぽいのに仕える兵士みたいな存在が、整列してるような感じで立っている。

 

 ……先程から説明がおぼつかないのは許して欲しい。

 しかしそうとしか言いようが無いのだ。

 自分が知る存在とはかなり違う。というより意図的にディフォルメされているように感じで同じなのか分からないのだ。

 イメージとして分かりやすいのは3DのRPGのディフォルメキャラクターと言った方が分かりやすいか。

 というかただ座って居るはずなのにワチャワチャと動いてるぞこいつら。ますますRPGっぽいな。

 

 困惑する自分を置いて、王様……いや、もう王様でいいや。

 王様は自分に語りかけた。

 

 おうさま:

「おぬしは このせかいをアレするために あそこからよばれた ゆうしゃよ

 かってなねがいで アレだが まおうのせいで

 せかいがなんか かなりヤバめなので アレしてほしいのだ ▼」

 

 そうかヤバイな。特にお前の発言がヤバイ。

 話から何一つどうして欲しいのかが全く分からない。何が一体どうしてヤベェんだ? 

 それを説明しろよと口を開こうとすると……なんと口が開けない!

 

 どういう事なのだと慌てると、自分の丁度目の前の空間に何かが出ているのが分かった。

 

 

 ニアはい

   いいえ

 

 

 選択式かよ! ここはRPG世界か何かかよ畜生、まずは質問させろと急いでいいえを選ぶ……これ、どうやって選ぶんだ?

 手で触ろうとしても通り抜けてしまう。というか自分の手すら何かがおかしい。

 あ。これ自分もディフォルメされてるわどういう事だよ……。

 何がなんでもいいえだ、いいえを選ぶぞ!と念じていると、選択肢が動いた。

 

 

   はい

 ニアいいえ

 

 

 そうです、そうだよ、いいえだよ!

 こんな要点の掴めない説明で世界をアレするとか嫌だわ! っていうかアレってなんだよ! 仮に世界を救うことを指してるとしてもいきなり過ぎて嫌だわ! 他を当たってくれ!

 

 

 おうさま:

「なんと おぬしはせかいを アレしたくないというのか ▼」

 

 

   はい

 ニアいいえ

 

 

 そうだよアレしたくないよ。

 世界に対して俺が出来る事なんて何もないよ、っていうかこいつよくぞ王様になれたな。 いくらこの国で一番偉い人でもこんな説明じゃ絶対頷かないからな!

 

 

 ニアはい

   いいえ

 

 断固としたノー。選択肢は「はい」だけどノーだよ!

 王様に三行半を叩きつけてやる気持ちで選択肢を選ぶと、何もしてないのにワチャワチャしてる姫様から声が聞こえた。

 

 

 おうひ:

「わらわからも おねがいしますゆうしゃよ

 まおうはせかいから なんかそれっぽいのをうばってしまい

 かなりヤバいんです アレしてくれませんか? ▼」

 

 

 ヤバイのはお前もだったか。何なのこの国、トップが全部ボキャ貧なの?

 しかもまた選択肢出たよ、いいえに決まってんだろが!

 

 

   はい

 ニアいいえ

 

 

 だいじん:

「わたしからも おねがいしますゆうしゃよ

 このままではせかいが ダメくさいんです ▼」

 

 

   はい

 ニアいいえ

 

 

 へいし:

「おぉ ゆうしゃさま

 わたしたちに なんかすごいちからを かしてください ▼」

 

 

   はい

 ニアいいえ

 

 

 めいど:

「あぁ ゆうしゃさま

 せかいの アレは あなたにかかってるっぽいんです ▼」

 

 

   はい

 ニアいいえ

 

 

 せんし:

「ゆうしゃどの アレするときは わたしのアレもつかってください

 そしてせかいから アレをナニしてください ▼」

 

 

   はい

 ニアいいえ

 

 

  ・

  ・

  ・

  ・

 

 

 その後、賢者やら議長やら、主要国人が出揃って懇願し、その尽くを断っていった。が、断っても断っても次が出てきて、終わらない。

 それらが終わったら普通の村人っぽいのが出てきて、ついに子供が駆り出され、もう部屋中わちゃわちゃする人だらけ。

 そして最終的に……。

 

 

 ねこ:

「にゃー ▼」

 

 

   はい

 ニアいいえ

 

 

 ついに人ではなくなり、選択肢は運ゲーに突入した。

 今まで「いいえ」ばっかりの選択肢だったが。時々、奇をてらって「はい」を選ばないといけない発言もあったので、もはやどちらを選べばいいかが分からない!

 ……ええいままよ!

 

 

 ニアはい

   いいえ

 

 

 っしゃぁ! 猫が下がっていった!

 

 

 いぬ:

「わん! ▼」 

 

 

   はい

 ニアいいえ

 

 

 次が来やがったあぁぁぁああぁぁぁ!!

 くそ、分かんねえ! はいだ!

 

 

 ニアはい

   いいえ

 

 

 おうさま:

「そうか せかいをアレしてくれるか! 

 ありがとう ゆうしゃよ ▼」

 

 

 ああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!111!!!!

 

 

 おうさま:

「ゆうしゃよ おぬしにはたびのアレとして

 ナニをわたしておくので なんかつかうと いいことあるぞ ▼」

 

 わちゃわちゃしてる兵士が目の前に来ると、これまたディフォルメされた宝箱を置いていった。

 くそ、もう旅は確定かよ! 貰えるならと仕方なくソレを開けて見ると……。

 

 

 ・それっぽいモノ

 ・ちょっとしたアレ

 

 

 俺は何を渡されたんだよ!




《アレ ずかん》

・それっぽいモノ
 なんかそれっぽいモノ
 てでもって アレするといたい

・ちょっとしたアレ
 おみせとかでつかえるアレ
 つかうとなくなる
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