「なっ……まさか死ぬつもりか!!」
「とでもいうと思ったんですか?」
私が死をもって彼へ繋がる情報を隠蔽しようとしているとでも勘違いしたのだろうか、自来也は見るからに慌てだし手に持っていた起爆札を素早く懐に戻すと私に向かって走り出す。つくづく甘い男だ、情報など死体からでも読み取れる時代に態々危険を冒して私を助けようとするとは、これが『火の意思』という奴なのだろうか、無用な殺生は望まない?それが次の火種になるとしても?まったくもって理解できない。
手のひらで組み合わされた印は『風遁』、私の水牢を風遁で吹き飛ばすつもりだろうか。もっとも、どちらにしても私は端から死ぬつもりなど無いので、それは無駄な行為だが。いや、起爆札での攻撃が止んだので、これで反撃のチャンスが出来たか。
「まさか、こんな所で死ぬわけにはいきませんよ」
「ぬぅ……その姿、霧隠れの忍を言うわけでもあるまい...お主、大蛇丸の実験体かなにかか?」
「ふふふ、其れはどうでしょうか、それも捉えた後に聞いて見れば良いのでは?勿論、この姿を見せた以上、私も捕まる気は一切ありませんが」
肺呼吸からエラ呼吸へ、ゆっくりと酸素を吐き出し、チャクラを含んだ水で私の肺を満たし循環させていく。毎度の事ながら乾いたエラが急速に潤っていくこの瞬間だけは好きになれない。肩口に開いた刀傷の様な呼吸口から体内へ水を排出し取り入れるとまるでおぼれているような錯覚を感じるからだ。
だがこの変化のおかげで私は水中でも問題なく活動することが出来る。徐々に手や足に水かきが発生しているのを確認した私は更に印を組んだ。
『水遁 豪水腕の術』
体内に吸収した水牢の水を全身の筋肉に変換したことで私の両腕は見る見るうちに大人の男でも目を見張る様な剛腕へと姿を変えた。同じ要領で身体全体を一回り大きく変化させチャクラの吸収量を増していく。さながら今の私はいくらでも水を吸うスポンジに近い。私を護っていた水牢が完全に消滅したころには、私はその水分を余すところなく吸収し2mちかい巨漢へと姿を変える。
「ほぉ……これは見事なチャクラコントロールだのぉ、その歳で其処までの水遁使いは見たことがない」
「これは、伝説の三忍ともいえる忍に褒められるなんて光栄ですね。ですがこれはあくまで会得難易度Bクラス程度の技でしかない、お世辞では全くうれしくはありません、ねっ!!」
飛んできたクナイを私は右腕を軽くふるって弾き飛ばす、いわばチャクラの鎧を着込んだ私にとってこの程度の攻撃、いくら打っても傷一つ付かない……と言えればカッコよかったんですけど。正直この豪水腕も現状の私のチャクラ量を考えればもってあと15分が限界だろう。それまでに何としても決着を付けなければならない。
勝つことは不可能に近い。私がここで死ぬことを計算にいれて戦いを挑んでも自来也相手には簡単に返されてしまうだろう。