魔法少女リリカルなのは~the worst~   作:柳沢紀雪

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2.退屈ではあるが何もないことが一番だとよく言われる

 小学校のコミュニティーとは一種独特なものだ。前の時は特にそんなことを感じなかった……というか、そんなことに気が付けるほど経験も知識もなかったものだから、それが独特なのかどうかさえも分からなかったというべきか。

 ともかく、改めて小学校というものに通ってみると、なるほどこれは確かに社会の縮図を見ているようにも思えた。

 

 小さく狭いクラスルームは小さな社会のモデルルームだ。

 

 上があり下がある。メジャーがありマイナーがある。グループが存在し、何となくその間で派閥のようなものさえ見え隠れしてくる。

 自分自身のグループが、コミュニティーがより他よりも優れていると思うためにそれ以外のコミュニティーあるいは個人を見下して排斥することもある。一般的にそれはイジメと呼ばれるものに発展しやすいのだが……まあ、何というか、その標的にされやすいのはたいてい弱い立場の人間であることは、大小関わらずどのようなコミュニティーでも常識と言うべきだろう。

 

 つまり何が言いたいかというと、俺もまたそのような小さな存在であるということだ。正確には俺ともう一人の少女がその標的にされようとしているというところか。

 といっても、まだまだ小学生でも一年しかたっていない状態で本格的なイジメに発展することはまだないだろう。しかし、これが二年三年とたっていき、ここにいる少年少女達が自分と他人という違いを明確に意識して定義し、自分たちと他の人たちという自他の関係性の中に生きようとし始めれば、おそらく全てが始まるのはそのときだろう。

 

 俺はぽかぽかと陽光の差し込む窓際の席に座り、まだまだ覚めない眠気にうとうとと船をこぎながらその二つ前の席に一人座り俯きながらもチラチラとクラスでできはじめている級友達の島を眺めながらも席から立とうとしない少女の後ろ姿を何と無しに眺めていた。

 

 寂しそうな背中だった。幼稚園で一緒だった友人が別の学校に行ってしまったのだろうか。この聖祥小学校はこの地域ではそれなりに名門でお嬢様学校と言われる類のものであるから、普通の家庭の子ども達はおそらく近くの、通学に便利な公立の小学校にいっただろう。その為、ここに来て友人がいなくなってしまったのかもしれない。

 あるいは、幼稚園や保育園といった処にも通えなかった類の子どもなのか。最近増えているともっぱらの噂だが、こうして目の当たりにされると何となく胸に訴えるものがあるように思える。

 

 しかし、彼女を中心に見てみるとどうも彼女は孤独であるだけではなさそうに思える。俺と同じような……というよりも、彼女と同じような立ち位置の子はこのクラスにもいくらかいるようで。その子達もまた、一人でいる彼女に対してチラチラとまるで猛獣の機嫌を伺うような視線を向けているように思える。

 

 全く気にされていないよりは何倍もましだ。後は切っ掛けさえと思うが、強いては事をし損じるという言葉もあるだろうから。ある程度は自然に任せてみるのも良いかもしれない。

 

 まあ、それに俺とて今は良いが、やはり人恋しく成るときもあるし、せっかく学校に通っていながらも友人の一人もいないというのも寂しい。といっても、俺は今まで自分から友人を作りに行ったことなどなかった。前の時は、友人自体は少なかったが、幼少から死ぬまでずっと付き合っていた親友と呼べるものも一人二人はいたから決して寂しいとは思わなかった。そのどれもが気が付いたら何となく一緒にいて、何となく関係が続いているような腐れ縁の延長のようなものだったし、今回もそんな風にすればいいかと全く楽観的にしか考えられない。

 

 寄る縁あれば離れる縁もある。来るもの拒まず、去る者追わずが俺のモットーだ……と格好をつけてみたが、結局のところ、奥手であるにすぎない。そのせいで前の時も女性と付き合ったことはなかった。今回は俺が女性だから、色々と面倒なことが起こるだろう。なにぶん女性と話すのは苦手だし、男性とは性差が由来して親密なつきあいができないだろう。

 

「まあ、成るようになるさ……成るようにしか成らないだろうけどね……」

 

 俺はそう呟き、授業開始のベルの音を聞き届けながらゆらゆらと春の陽気の中に意識を埋没させていった。

 

 俺の名前は、はるかだ。だから、俺は春には勝てない。だからお休みみんな。

 ああ、できれば昼食には起こして欲しいな……と……。

 

 

 

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