Fate/Grand Order 「マシュ。聖杯ってよく拾うけど全部願望器として機能してるの?」「勿論ですよ先輩」「じゃあソロンモさんを永み─」「先輩!」 作:第2類医薬品
やはり回転数が命か……
これにて並行世界(隣)の聖杯戦争は終結。なんだか無理矢理纏めた感が否めません。
そしてこれからの展開ですが、新章の話は流石にプレイして貰った方が良いかと思いますので新宿、アガルタ、CCCの話は出しません。基本、事後でサーヴァントも出します。ただサーヴァントの方は真名で出すので未プレイの方は気を付けてください。まぁ、まだすぐに出すわけではないので進められるなら進めた方が良いかと。
今更ですけど、新宿の話は良かったですよ。アガルタはまぁ……CCCは元をプレイしてないと面白さが分からないのではないでしょうか?
「ヌオオオオッ!!」
「ふんっ!!」
遊具が吹き飛び、アスファルトが爆ぜる。
日本武尊の振り下ろしの余波が一直線に伸びて園内のありとあらゆる装置を粉砕する。
ゲーティアの俊敏:Dとは思えない瞬間移動からの拳が風を起こし、小さな台風が幾つも発生する。
一撃一撃が正真正銘の必殺級な戦い。俺達はそれに入り込む隙もなく、ただ攻撃の余波を喰らわないように逃げ回るので精一杯だった。
「何なのよあれえ!!」
ゲーティアは以前巨大化は無理だと言っていたけど……何で出来た?それに、これほど強力なフォームチェンジなら俺から吸い上げる魔力は一瞬で全部持っていくだろう。なのにそれが無い……一体何が?
「と、兎に角俺達はバーサーカーだ!行くぞ!」
「む!させんぞ!」
「どこを見ている!!」
僅かな隙にゲーティアの左フックが日本武尊の脇腹を突き刺す。
まるで爆発したような音と衝撃は流石の日本武尊の表情を曇らせ、一瞬で遊園地の一番端まで吹き飛ばしてフリーフォールよりも高い土の柱を立てた。
しかし感心するのも束の間、雷鳴が轟いて全身が一瞬痺れたかと思うと地を蹴った衝撃でもう1柱の土柱を立てた日本武尊がゲーティアの懐で既に紫電を纏った草薙剣を腰だめに構えていた。
「くぉ!」
「むぅん!」
竜が咆哮した。否、惜しくも空を裂いた草薙剣は纏っていた紫電と音を越える速度によってそれを彷彿とさせる音を発生させた。
紫電はそのまま空高くへと昇っていき、曇りかけていた空の暗雲を穿って遊園地全体を日の元に晒す。
「フハハハ!やはり強いな!」
「人類悪がこれ程とは……宝具の使用も惜しんでは居られまい。行くぞ!」
「更地になる前にバーサーカーを倒してキャスター達を救うぞ!」
ゲーティアが何故戻れたのかは今推測することはない。俺達は俺達の目的を果たすためにぬらりひょんを連れて離れていくハンニバルを追い掛けた。
◇
「ふん。漸く離れたか。これで少しは本気が出せそうか」
「汝は手を抜いていたと?」
「貴様もだろう日本武尊。その程度の筈があるまい」
「……ふ。見抜かれていたか。では……お互い
ゴゥッ!!
草薙剣が今度は炎を纏った。だがそれはすぐに勢いを失っていき、最終的にはあまりの高熱で白くなった刀身に変わっていた。
3mは離れているゲーティアにもその熱波が届き、辺りの乾燥した草木は即座に燃え出す。
僅かな水分の存在すら許されぬ絶対戦闘領域。チリチリと熱が肌を焼いていく中、ゲーティアが飛び出した。
日本武尊の真正面から大振りで拳を振り下ろす。日本武尊はそれを見切り、最小限の動きで紙一重でかわし、草薙剣を横一文字に凪ぎ払う。
しかし、薙いだ腕には当たった感覚は無い。
「フゥンッ!!」
「がっ!?」
草薙剣を跳んで避けた──訳ではなく、地面にベッタリと伏せてやり過ごしたゲーティア素早く身を回転させて日本武尊の足を払う。
完全に掬われる形になった日本武尊が宙にまだ浮いている刹那の間にゲーティアの力を込めたアッパーが鳩尾にめり込む。メキメキと軋む音、日本武尊の視界は既に雲の上にあった。
普通のサーヴァントなら確実に即死するレベルのアッパーは轟音を上げて日本武尊を遥か上空に打ち上げていたのだ。
「なんと……強い!だが!」
草薙剣を握り直し、更に熱量を上げる。
周りの雲が一瞬で消え去り、背に太陽の光を受けた日本武尊は、今度は重力に引っ張られて元居た戦場に落ちていく。
「はぁぁぁぁぁぁああああああッ!!!!」
両手持ちに切り換えて空中で前転。1回、2回、更に加速をして3回と縦回転をしながら落ちていく日本武尊。自由落下のエネルギーと回転のエネルギー、そして日本武尊とその草薙剣のエネルギーが地上のゲーティアを震わせる。
「ハアアアッ!!」
着地はせず、エネルギーが充分すぎるほど乗った草薙剣を地面に叩き付ける。その瞬間、回避したゲーティアも、日本武尊本人も何もかもを破壊せんが如く地を裂いて巨大な火柱が立ち上った。
「ぐぉぉぉぉっ!!」
「あああああ!!」
凄まじすぎる熱と魔力の奔流。その様子は最早太陽がそこにあるかのよう。
アスファルトは全て剥がれ、辛うじて残った建物や遊具等も熱に耐えきれず融けて崩れる。そんな地獄が顕現したような中、2体の怪物は互いを倒すために攻撃の手を止めない。
ゲーティアが高速のラッシュで日本武尊を怯ませ、日本武尊もまた草薙剣で極めて堅いゲーティアの体を傷付けていく。
お互いの血は超高熱の外気に触れた瞬間に蒸発して傷口も焼け広がる。だが、そんな事は今の2人には関係無かった。眼に映るのは目の前に立ちはだかる強敵のみ。周りの事など微塵も気にしている余裕は無い。
「……ッ!」
「!ッ!」
拳と剣が再び衝突した衝撃でお互いその地獄から弾き出された。
一瞬で通常外気域まで移動したことで温度差による表皮へのダメージが否応なく全身を刺す。サーヴァントでも、全身の皮膚が剥がれていくような苦痛には耐えがたい。それでも、日本武尊とゲーティアは立っていた。
この状況、スカサハであれば間違いなく歓喜していたであろう。それほどまでに密度の高い戦いだ。
「まだまだぁぁあああ!!」
「天照大神よ、素戔男尊神よ、私に力を!
草薙剣が割れ、一回り大きくなった刀身が姿を表す。
これこそが日本武尊の、草薙剣の宝具解放。草薙剣として出力が制限されていたそれは、真の姿である「天叢雲剣」となって力を解放する。
「オオオオオオオオオオオオオッ!!!」
「ハァァァアアアアアアアアアッ!!!」
眩い閃光と共に遊園地が、その周辺の山林が更地になるのに時間は2秒と掛からなかった。
◇
「!!」
遊園地には実は良くあるらしい地下空間。俺達はそこへ逃げ込んだハンニバルを追い掛けて大分深くへ降りていた。
そんな最中、地下全体が激しく揺れ、天井が崩れていく。恐らく上のゲーティアと日本武尊の戦いの余波だろう。
「あんたの使い魔大丈夫なの!?て言うか人類悪ってどういう事よ!そいつも人類悪だって言うの!?」
「落ち着いてランサー。私も少ししか知らないけど、人類悪って言うなら私達を今まで何回殺せるタイミングがあったと思う?」
「それは……」
「もしかしたらぐだ男さんが最後の最後まで味方のフリをしているのかも知れない」
「そんな事は無い!ぐだ男は最高のマスターなのだぞ!その様な真似をする筈が無かろう!」
(あぁ……羨ましい。あんなにも夢中になれる人が居て、その人に絶対の信頼を寄せてる。そしてぐだ男さん自身も彼女へ絶対の信頼を寄せてる。そして、何か大きな……私達では耐えられないような大きな偉業を成したような強さがある。こんな素晴らしいマスターとサーヴァントが悪人なんてハナから思ってないわ)
「ごめんね。疑ってる訳じゃないの」
「ありがたいけど、そろそろ切り替えた方が良さそうだ」
到着した最奥。地下故にひんやりとしている空気と不気味さの奥底にそれは居た。
たったの数分。それだけしか経っていないのにまた一段と醜悪さを増したハンニバルとぬらりひょん。そして地べたにそのまま横にされた新堂だ。
「ハンニバル・レクター!」
「ギ……ッ!き……来た、か。ひ、ヒハッ!」
ケタケタと表情が安定しないハンニバル。アイツが何をしてこんな事になっているのか分からないが、もう説得等の類いは望めないだろう。
「ハンニバル、お前は英霊なんかじゃない!」
「英……霊だから、人のミ方とでも思っタカ?なら、愚かなのは貴様だ」
ぬらりひょんの腹にハンニバルの手刀が刺さる。
柔い肉とハンニバルが呟くとおり、ぬらりひょんはお爺ちゃんだ。筋肉も無ければ張りのある皮膚は過去に忘却された。そんなご老体に手刀が刺さっていくのは僅かな力で充分だった。
「!」
「がふっ……!」
「止めろぉ!!」
ゲイボルクを投げる。ヘクトール直伝の投擲だが、穂先はハンニバルの肉体に傷ひとつ付けずに弾かれて明後日の方へ転がっていく。コイツ!!
「ヒハハハハハハハハ!!」
「やれやれ。そう言う笑方する悪役はやられるものだよ?ハンニバル・レクター」
「!?」
ボンッとぬらりひょんが花に変わった。いや、花がぬらりひょんに化けていたんだ。いつから……これはもしかして幻術か!
「ご名答。流石はぐだ男君だ」
「マーリン!!来てくれたのか!」
「歩いてね。あぁ、そこの女の子とキャスターは無事だよ」
「誰あれ?マーリンって?」
「気にするとシワが増えるよ?気にしない気にしない」
「よし。アイツも攻撃対象ね」
滝夜叉姫の矛先がマーリンに向くのを抑えつつ、ハンニバルを見やる。
ハンニバルはぬらりひょんに突き刺した右手を凝視して立ち尽くしている。どうしたんだ?
「彼はもう駄目だ。何しろ、もうハンニバル・レクターではないからね」
「……詳しく」
「臭うだろう?あれからボクの綺麗な花とは別の、魔神柱の匂いが」
「……しない」
「うん。そうだろうね。何せボクしない」
「……」
「まぁ、兎に角。彼はどういう経緯か、魔神柱に寄生された存在なんだ。だけど、魔神柱も寄生するので力を使い果たしてしまった。結果的に残ったのはハンニバル・レクターでもなければ魔神柱でもない残滓。自分をハンニバルだと思い込む、生前とはまた違った無差別の殺人者さ。そんな存在が聖杯を手にしたら偶然、無差別で破壊の限りを尽くす魔神柱が復活するかも知れない。それは無視できないんじゃないかな?君もゲーティアも」
「ゲーティアが?」
そう言えばどうして俺達はこの世界へ飛ばされた?発端はプレマストに詰め込んだ俺の全(財産)力とビースト・デンジャーの全力がぶつかった事で起きた。もしかして全て意図的に……?いや、でもあんな状況で跳べる場所を選べられるとは思えな──
『未だ残滓程度でも残っていた時間神殿の空間片と俺の宝具リアクターが同期でも──』
それだ!ゲーティアの目的は知らないが、アイツは俺達をここへ跳ばすつもりだったんだ。
そしてその理由はマーリンが言ったように魔神柱の復活か。
「そこまで行き着いたらほぼ正解だね。ゲーティアは人理の焼却は完全に諦めたさ。彼自身、色々君から学んだみたいだからね。だけど他の仲間はそうはいかなかったわけだ。臆して逃げたものや見切りをつけて離脱したもの。
「その間は力を貸してくれるのか……な?」
「どうだろうね。まぁ、ボクが貯めていた聖晶石もゲーティアが戦うために使っちゃったし、後戻りは出来ないよ」
成る程。どうりで此方にフィードバックされないわけだ。
何はともあれ、これでゲーティアが戻れた理由やこの世界に迷い混んだ理由が分かった。ティアマトは良くわからないけど、多分ゲーティアのおまけだろう。そうしておく。
「取り敢えずハンニ……バーサーカーを倒そう。ネロ行ける?」
「うむ」
「私も行けるわよ」
「じゃあボクは見てるよ」
「良いけど、補助くらいはお願いね?ネロ!令呪を使う!」
「任されよ!さぁ、刮目せよ!余の人生最大の晴れ舞台を!ローマ最大──世界最大の結婚式を!!」
カンと原初の火を床に突き立てる。それを中心にネロの大魔術が世界に上書きされていく。
薄暗かった空間はたちまち豪華絢爛な結婚式場へと変化。薔薇が舞い、黄金の光が地下にさした。
「これは……」
「ぐだ男よ。余の手をとってくれ。あれを倒すのに余だけでは些か心細いでな」
「あぁ。勿論俺も戦う」
「ちょっとー。私も戦うわよ?」
「頑張ってランサー」
「グキィッ?キヒハ……ヒヒッ!クキィャカカカカカカカ!!」
笑いながら、顔面がほぼ逆さまに回転したバーサーカーが駆け出す。
おかしくなっても膂力の衰えは無いらしく、1歩1歩が式場の床を捲れ上がらせる。この空間内だと相手の力は思うように出ない筈だが……それを感じさせない。それほどまでに強力か!
「ぬぅ!」
何の考えもない拳の振り下ろし。それをネロが原初の火で弾こうとしたが、逆にネロが弾かれてしまう。俺はその弾かれたネロを受け止めようとしたが、想像以上に衝撃が強く、腰の辺りから変な悲鳴が聞こえた。
「ふぉあっ!?腰!!」
「カカカカッ!!」
「ふっ!」
追撃と迫るバーサーカーを今度は滝夜叉姫が迎え撃つ。
ネロと俺の様を見たからか、薙刀で斬撃を行うのではなく柄を使って合気道のように相手の力を利用して受け流す見事な動き。
バーサーカーはそれに教科書のお手本の様に宙を一回転して強かに叩き付けられた。しかし、バーサーカーに大したダメージが入った様子もなく、すぐに立ち上がって滝夜叉姫にがむしゃらな攻撃を浴びせる。
再びそれを冷静にいなし、再度叩き付けるがやはりダメージは薄い。
「すまぬ……!」
「大丈夫……まだ劇場は生きてるな……畳み掛けるぞ」
「ぱぱ!めっ!」
「ファ!?」
立ち上がろうとした途端、ティアマトが目一杯の助走から大きな巻角タックルで鳩尾を抉られる。若干
「どうしたのだ!?」
「あんさーがほーぐ!」
「宝具?」
「そうよ!ちょっと邪魔になるから退いてて!」
「クキャッ!?」
バーサーカーの巨躯を素早い回し蹴りで劇場の端に追いやると、滝夜叉姫は小さな声で何かを呟きだした。
「……ってここ固有結界張れないじゃない!──何?──あぁ、そう言うこと。じゃあ蜘蛛と夜叉来なさい。──忙しい?んな分けないでしょ!早く!──知らないわよ!サフくらい後で出来るでしょ!──分かったから!今度リアルグレード買ってあげるから!」
「誰と話してる?」
「知らないけど、ガンプラ関係なのは分かった」
「──はい!さぁ、来なさい!」
「クギィィィィィィィアアアアアアアアアアアッ!!」
バーサーカーが肩甲骨辺りから腕を生やし、それらの腕4本と2足で劇場の床を破壊しながら滝夜叉姫へと突進する。
いよいよもって人の原型が無くなりかけたそれを滝夜叉姫は先刻のようにいなすのではなく、真っ向から挑んだ。俺はそれが危険だと思い、ガンドを撃とうとした。しかし、俺の行動はすぐに無駄になると気付いた。
「あらよっ」
突然現れた小柄な少年が自分の身の丈をゆうに2倍は越える大剣でバーサーカーの生えたばかりの腕の内左腕を肘から切り落としたのだ。
更にその反対には少年とは違って落ち着いた雰囲気の女性が大太刀を音もなく抜いて右の腕を根元から綺麗に切り落としていた。
「夜叉。また適当に攻撃したな?」
「ごめんごめん。でも倒せれば良いんでしょっ!と」
「そうねっ!」
2人が同時にバーサーカーを蹴飛ばす。
それにしても夜叉……もしかして滝夜叉姫の夜叉丸と蜘蛛丸か?
「蜘蛛、夜叉。良く来てくれたわね」
「いや、それは姫が無理矢理つ──」
「良 く 来 て く れ た わ ね ?」ギリギリ
「ハイ,モチロンデス」
「姫。状況は大体理解しましたが、今の化物は?」
「バーサーカー。何かあそこのマスターと一悶着あったらしくて、それで暴走してるみたい。まぁ、貴女達が入れば百人力よ。正直、私が戦うより強いし」
「何を言いますか姫。筋力値なら私達より上でしょう」
「あまり言わないで……」(筋力:A)
「滝夜叉姫。それが宝具……?」
「そうよ。本当は手下み皆で固有結界張ってから召喚するんだけど、今回はこの劇場で遮られてこの蜘蛛丸と夜叉丸を引っ張り出すので精一杯だったわ。で、蜘蛛。がー(がしゃどくろ)さん何だって?」
「儂の骨の髄まで搾り取れば行けるんじゃね?って。まぁ、結局全員の力で僕たちが来れたわけだけど。取り敢えず、アイツ殺れば良いんだよね?」
滝夜叉姫の手下、蜘蛛丸と夜叉丸は滝夜叉姫と話しつつもバーサーカーを相手にして1歩も引かない。多分、滝夜叉姫の宝具はイスカンダルのそれと同じようなシステムなのかも知れない。ただ、今回はどういう原理か分からないけど、皆が来る筈の所を何とかあの2人に絞って召喚を実行したようだ。
「気を付けなさい。あれは内側から食い破られている化物。下手にちょっかい出すと殺られるわ」
「わぁってるよ姫」
「ギギッ……」
ヒュッとバーサーカーが姿を消した。いや、姿だけではない。奴の音も、気配も消えた。気配遮断だ。
ネロの劇場にいながらにしてこの強さ……ティアマト曰く、寄生した奴の残留思念が大分作用しているらしい。だとしたらまた魔神柱の怒りが……いや、俺だってあの時は魔神柱が素材財布の紐を大胆にも緩めてたからちょっと狂化ついちゃったのは反省してる。でも後悔はしてないわけで……あぁ、だからこそ魔神柱が怒るのか。
「まぁ、そうでなくても君に対する怒りや復讐、恐怖は魔神柱を突き動かす要因になるからね。これから大変だよ」
「ぁい」
「しかし君も縮んだね。ゲーティアと一緒にカルデアで暮らすかい?」
「ん」
「止めてぇぇぇ!これ以上カルデアにトラブルメーカー持ち込まないで!」
「気を抜きすぎよ!静にィッ!!??」
「「姫!!」」
滝夜叉姫が見えない何かに攻撃され、背骨があらぬ方向に曲がる。次いで駆け寄ろうとした夜叉丸がバーサーカーに掴まれたのかミシミシ全身が軋まされ、蜘蛛丸は腹を蹴り上げられ、劇場の天井に一直線。
コイツ、まだそんな力が!
「ガッ!アアアアア!!離ッ、しやが──!」
ゴキンッ!ボギッ!ブシュッ!!
「キャハハハハハハハハハハハ!!ハッャギ」
俺達も戦うべく、ネロが先行する。あの巨体のバランスを崩すため、アキレス腱を裂く。
バーサーカーは増大しすぎた自重を支えきれず、アキレス腱の傷が自分の体重でバックリ拡がる。骨も折れ、皮膚を裂いて露になった。
「!!ォォォォォォオオオィギギュギ」
「おああああ!!」
倒れた瞬間、俺もゲイボルクを構えて走り出す。逆さまになった顔面の急所……あらゆる生き物の弱点である眼球に全膂力を振り絞って突き刺す。
ブシッと血が飛んでくるのを我慢してもう一方の眼も潰す。流石のバーサーカーも蜘蛛丸を握り、かつネロから攻撃されていてはそう簡単に俺には手を出せなかった。完全に両の眼を潰して離脱しようとした。が、そればかりは許してもらえなかった。
「!ォォォォオオダグ」
「ぐぶッ!?」
バーサーカーは夜叉丸を放り投げ、その自由になった手で己を前に引っ張る。一気に3mはあった間を詰め、口角までの筋肉が露になった口で俺の左太股に噛み付いた。
辛うじて骨まで持っていかれずに済んだため、バーサーカーは多少の肉を食いちぎる形となった。俺も痛みで泣きたくなるのを堪えて覆い被さってきたバーサーカーの下を向く脳天目掛けてゲイボルクを設置。狙い通り、脳天から突き刺さって顎へと貫通した。
「ぐだ男!」
「こりゃ大変だ。治療は任せてくれ」
ネロに引っ張られて何とか離脱。
脚に心臓があると錯覚するほどの脈動と炙られているような熱と痛み。極限まで興奮して戦う状態ならまだしも、冷静なままこの痛みはかなり応える。ネロが涙を流して死ぬなと訴えてくるが、そこまでのものでも無いだろうに……。
「大丈夫だよ。ぐだ男君なら戦闘続行もあるし耐久もEXだし主人公補正もあるからね。死にはしないさ」
「なぬ!そうならそうと早く言え花の魔術師よ!心配したではないか!」
「悪いネロ……でもこれでバーサーカーは──」
「■■■■■■■■■■──ッ!!!!」
最早叫び声すら人のものでは無くなったバーサーカーがいつの間にかこちらへ拳を振り下ろしていた。
気配遮断からの殺意を悟られることなく攻撃への展開。ネロは振り返りで防御は間に合わない。俺もガンドも眼ドも間に合わない。マーリンも俺の治療で間に合わない。クソォォォ!!
「はぁっ!」
と、思わず覚悟したその時、バーサーカーと俺達の間に割って入った人影が杖の柄で拳を叩き、何らかの外力を発生させて攻撃をそらした。
「ぬらりひょん!!」
「儂とて戦えるわい!」
「止めるんだ!貴方では到底敵う相手ではないよ!」
「心配せんでも宜しいぞ高名なキャスター。儂の宝具は今は使えんでも……妖怪の総大将。とあまり好きではない2つ名があるんじゃ。マスター、頼む」
「ごめんね……ごめんね……
「ぬっ……ぅっ、ぐぉぉぉぉ!!」
ぬらりひょんが三画の令呪を受け、苦悶の声を上げる。
みるみる背が伸びていくぬらりひょんは持っていた杖が刀に変わり、曲がっていた腰は真っ直ぐ伸び、顔の皺が減っていく。
「■■■■■ッ!!」
「待たせたのバーサーカー。これだけ魔力が入ったのにも関わらず、儂はお前さんを足止めする位しか叶わないだろうて。じゃがの?この老いぼれが死んでも、その後を生きていく若者が居る。儂の命で助かる命が幾つもあるんじゃ。儂の……
「ぬらりひょん……まさか……!」
「勝ってくれよ。異邦のマスターよ」
そう述べた瞬間、俺にはぬらりひょんの若い姿が見えた気がした。
「儂は滑瓢。正体不明の妖怪、百鬼夜行の一妖怪よ。じゃが、最近は儂が強いとかそんな話ばかり出てきおる。じゃから儂もたまには……流行りに乗らせてもらうかの!」
ぬらりひょんがバーサーカーの眉間に刀を刺突し、少し動きが鈍った所でバーサーカーの両腕を掴む。かなり膂力が増大しているのか、あの太い腕が中々動かせずにいる。
そしてぬらりひょんはそのまま己の魔力全てを放出。自分もバーサーカーもまとめて業火に呑まれ始めた。やっぱり捨て身か……!
「──お爺ちゃん!!」
「ぐだ男!どうするのだ!?」
「……」
「ぐだ男!」
「……俺が合図するまでまってくれ。ネロ、準備しててくれ。マーリンもネロにバフを」
「そうだね。辛い決断だけど、それが正しい」
正しい、か……。
「おおおおおお!!」
「■■■■■■■■■■■──ッ!!」
燃える。
新堂が「お爺ちゃん」と本当の孫のように泣く。
燃える。
俺はぬらりひょんの合図を待つ。
燃える、燃える……。
「──」
「今だネロォォォ!!」
「はぁっ!」
最後の令呪とマーリンからのバフで現状限界まで強化されたネロが跳び出す。
炎が消え、焦げたバーサーカーは五感を失ってネロの肉薄に一切気付いていない。
「バーサーカーよ!これで終いだ!」
◇
「止めてお爺ちゃんッ……バーサーカーはぐだ男さん達が倒してくれる!だから……お爺ちゃん、そんな事言わないでよ……」
「すまんの。如何せん、あのままでは皆危ないんじゃ。儂の願いは叶ったようなものじゃが……聖杯を手に入れられなくてすまんの」
「そんな……やだよお爺ちゃん……独りになりたくないよぉ……」
「……老人はの?孫が可愛くて可愛くてしょうがないんじゃ。だから、孫の為に頑張るのを許しておくれ」
◇
「──ぁぁ……すまぬバアル……私では……倒せ──」
バーサーカーの体が左右に分かれ、霧散する。ネロの渾身の一撃は、バーサーカーの
最期の瞬間、何かを喋ったように見えたが、全く聞こえなかった。ただ1つ言えるのはその言葉はハンニバルのものではないと言うことだけ。
「お爺ちゃん!ねぇ、しっかりしてよお爺ちゃん!」
「ぬらりひょん……」
「良くやった……これで儂も安心して逝けるわい……」
「ねぇそこのキャスター!お爺ちゃんを治してよ!ねぇ!」
「それは無理だよ。もう、霊核が砕けている」
「じゃあ聖杯は!?聖杯を使ってよ!」
「それも無理だよ。ここの聖杯も残り2騎になれば出てくるけど、今3騎残ってるだろう?」
ハッとして新堂が周りを見る。
残っているサーヴァントはネロとぬらりひょん、そして滝夜叉姫だ。つまり、ネロか滝夜叉姫を倒さない限りぬらりひょんは助からない。
「……儂はもう良い。じじぃはもう充分生きた……後は若い者に任せるとするわい。それに……今更遥か過去の死人じゃ。今は今、昔は昔じゃ。異邦のマスターぐだ男……聖杯を使って帰りなされ。お前さんはここに居るべきではない」
「……はい」
「ねぇ!ぐだ男さんお願い!お爺ちゃんを助けて!」
「……マーリン。聖杯を手にしたらマスターとサーヴァントの願いを叶えられるんだよね?」
「そうだね」
だったら……こんな使い方でも良いのではないのだろうか?
「俺の願いは──」
◇
その後、ぬらりひょんは消滅。滝夜叉姫も辛うじて生きていたが、俺の願いを話すと「楽しみに待ってる」と逝った。
地上で戦っていたゲーティアと日本武尊も、ゲーティアの勝利に終わったらしく、元の(?)ちんちくりんになっていたところを回収。
そして聖杯は別の場所に出現。意外にも汚染などはされておらず、何故あのような殺人鬼が召喚されたのか謎だが、皆に話したとおり、俺は聖杯へと願いを投げ掛けた。
「この聖杯戦争で、死人は出なかったことにしてくれ。ただしバーサーカーペア、テメーらは駄目だ」
◇
「──と言う訳です。実際にはもうちょっと細かい設定をしてきましたけど」
「かなり無茶苦茶な願いだったね。それでよく聖杯がネロの願いを叶えてくれたものだよ。だって死人が出ていないならサーヴァントだって死んでいない。なら、聖杯も出なかったことになってるだろう?」
「聖杯も大分無理したみたいで、ネロがカルデアに帰ると願いを叶えた瞬間、砕け散りました。でもご都合主義なのでサーヴァントも退去されることは無いです。聖杯をめぐる戦争も起こしたくても起こせません」
「何にせよ、お帰りぐだ男君。そして頑張って」
「嫌だぁぁぁぁああ!ドクターお願いです!この部屋に居させてぇぇぇ!!」
あれから俺達は無事カルデアへと帰還した。
大分無茶した冒険だったが、ゲーティアと一騎討ちしたのに比べれば全然……え?ゲーティア達はどうしたかって?
まずゲーティアは元ソロモンであるドクターに合うや否や弁慶の泣き所に鋭いパンチを食らわしてカルデアの中を勝手に歩き回っている。
ティアマトは見た目が可愛いし、ちんちくロリだからジャックやナーサリー達と遊んでいる。
ネロは疲れたと、真っ先に薔薇の風呂に入りに行った。
マーリンは黙ってカルデアを出てきてたらしく、いっぱい居るアルトリアに何処かへ連れていかれた。
そして俺は数日間カルデアを空けた事でサーヴァント達の色々なフラストレーションが溜まっているらしく、何をされるか分からないのでほとぼりがさめるまでこうしてドクターの部屋に避難している。
「止めてくれよ……ボクだって被害は受けたくないし」
「……パソコンの秘蔵コレクシ」
「ゆっくりしていきなよ」
本当は秘蔵コレクションなんて知らないけどね!
「ところでぐだ男君。ネロとは何かあったのかい?」
「?いや別に何も無いですよ。どうして急に?」
(あれ?この顔は質問の意味を理解できてないな。だとしたら何もなかったと言うことか。良いんだか悪いんだか……)
『すみません、ドクターいらっしゃいますか?』
「ん?何かな?マシュ」
と、扉の外から懐かしいマシュのこ──懐かしい?
『マスターをご存じないですか?』
「あぁ、ぐだ男君なら……」
「……ステップドクター!これはマシュの声だけどマシュじゃない……」
小声でドクターに言うと、意味が分からないのか首をかしげる。それも当然だ。何しろマシュの声は──
「……随分前にCV.が変わってるんでこの種田ヴォイスはマシュではないです!恐らくこの声はきよひーかと……!」
「!そうか……!全く気が付かなかった……!」
『ドクター……?』
「……ど、どうするんだいぐだ男君?このまま嘘をついたら確実にBAD ENDなんだけど……!?」
「……大丈夫です。今から俺の言うとおりに──」
◇
わたくしはここら辺に
わたくしをこんなに焦らしておいてまだ焦らすだなんて……ふふ。
ですけど
『……ねぇ、所で君は
「……!」
突然投げ掛けられた疑問。わたくしは無論、マシュさんではありません。
ロマニさんはわたくしをマシュさんと思っていましたが、これは疑いの声音。もしわたくしがここでマシュさんになりきればきっと
そもそも初めにロマニさんがわたくしをマシュさんと呼んだ時点でわたくしはそれを否定しなければなりませんでした。ならばわたくしは……!
「──ぁぁぁあああっ!!許してください
「大丈夫だきよひー。許す許さないもないよ」
「ぁ……ます、たぁ……」
いつの間にか泣き崩れるわたくしの前に
(計画通り。きよひーはいつの間にか自分が嘘をつきかけていた事に気付いて混乱してしまった。これなら俺もin鐘にならずに済みそうだ)
「──もぅ……」
「ん?」
「もう堪えきれませんわぁぁぁっ!
「うっほぁぁぁわぁぁぁ!!??」
もうわたくし我慢できません!この数日間、
「わたくし!ここで!今!!
「まさぐってないいいいいいい!!誘ってないよおおおおお!!」
「わああああああ!!誰かあああああ!ぐだ男君の貞操が大変だああああああ!!」
そうです!何も夫婦の営みは夜だけとは限らないのです!お互いに愛し合っているなら朝でも昼でも外でも!!皆さんが見てる前でも!!!
(令呪が無いから抑えられないッ!!ああ!駄目だあああ!ズボンが下ろされるるるるるるるるるる!!!!けど何だこの感覚は……?無理矢理されるのも悪くはないぞ?)
「
「って駄目だあああ!?」
(いかん!散る!)性的に
「ここで登場ご主人の真の嫁鯖キャット~」
「うっ!?」
うなじの辺りに衝撃が走り、わたくしの意思とは無関係に体が力なくカルデアの床に沈んで行く。
嗚呼、もうあと少しで
「やぁゲーティア」
「……ソロモンか。何だ?」
「君がぐだ男君に何故協力するのか気になってね」
「はんっ。勘違いするなよ。私は統括局として勝手な事をする身内を処理するだけだ。私としてはいつぐだ男と戦うのも問題ないがな」
「君の狙いは……いや、それはわざわざ言うことでもないね」
「貴様のその分かったような言葉遣いは人間になっても変わらずだな」
「それはどうも。それより、君達は死んだ筈だけど何で生きているんだい?」
「簡単なことだ。とある馬鹿が私達を引っ張りあげてきては偉そうに命令してきたから見切りをつけてきただけだ。ビーストⅡに関しては知らん」
「ロボバトルの時も狙ってかい?」
「馬鹿か?本気でやらねばあのマシンも動かん」
「しかし君がねぇ……よっと。まぁ取り敢えずぐだ男君も最近休めてないからあまり困らせないでくれればボクはカルデアに居るのを容認するよ」
「どうなるかは私も知らないからな。ただ、もう私も充分な力は出せない。今では精々ヘラクレスに及ぶかどうかであろうよ」
「充分過ぎるじゃないか。まぁ、ぐだ男君も何かあれば対処するから彼に任せるよ」
「とっとと行け。私も暇ではない」
「……そうだね」
忙しいと言うゲーティアの手元。そこにはスマートフォンを横にしてとある遊ぶアプリゲームで「バスターチェイン」と表示されていた。
「小癪!小癪!!小癪ゥ!!!何故落ちぬのだ種ごときが!!」
反省はしてる。後悔もしてる。