境界の彼方 ~next stage~ 作:眼鏡が好きなモブ男
めんどくさかったんでs((殴
第5話 手合わせ
「さてと、帰るか」
わざとらしくそう言って僕は学校を後にした。
帰宅途中、耳を澄ますと(そんなに澄まさなくても良いけど)何者かが僕の跡をつけている事に気付いた。いや、まあ誰か分かってるけどもね?
これで何回目だっけな。学校で3回と…外で5回位か。
さて、どうしたものか。ここで追跡者の名前を呼ぶのは簡単なのだ。しかし、その方法は既に実証済みで、呼んだ瞬間姿は消えていた。
つまり、不意打ちしか無いという結論に至るわけだ。
何事もないように歩くこと約1分。ここで僕は勝負に出た。
ここには特に曲がり角などが無く、隠れる場所は無い。
左足を上げて次の1歩を踏み出すように見せかけて後ろを振り向く…
いた。栗山未來だ。フリーズしている彼女の顔は焦燥に満ちていた。
「なあ栗山さん」
「こ、ここは誰?私はどこ?」
「ベタか!」
…突っ込まずにはいられなかった。彼女の動きが機械のようにガチガチだから尚更だ。
にしても、真面目な話、記憶喪失してたらこんなちっぽけな島国の公用語を使えるはず無いよな。
取り敢えず逃がさないためにも頭にチョップを加えとく。「DVだー!」とか「セクハラだー!」と言うからストーキング被害で訴えるぞと言って黙らせた。
本題に入ろう。
「なんで栗山さんは僕のことをつけまとうのかな?」
「…先輩に興味を持ったからです」
異性としての興味という可能性は敢えて排除しよう。
なぜなら、現代日本において求愛行動がストーキングだなんて考えたくないからだ。
「それで?目的は?」
「えっと…その…手合わせをと…」
「…前にも言っただろ。僕の『鏡』は初見殺しではあるが知っている奴には全くの無力なんだ」
鏡。深山一族に伝わる唯一無二の能力。
って言えば良く聞こえるだろう。実際はチキンプレイに走った御先祖様が編み出した全てを跳ね返す完全防御。
欠点は2つ。
1つ目。霊力消費がアホみたいに多い。
2つ目。
1つ目は仕方ない。強度を出す為だから出し惜しみはしてられないもんな。
問題は2つ目なんだ。
霊力を大量に使う為、大きさ調節等をしていたら出せる鏡は1枚が限界だ。
という事で心の底から「はあ?」と言ってやりたい気分である。
しかし、後輩女子はそうはさせてくれない。
いつの間にか背後に立っている。そしてこれまたいつの間にか赤黒い刃を握りしめている。
「うおおおお!!?」
どこぞの副団長も真っ青な突きを繰り出してきたものの、ここは経験の勝利と言ったところだろう。
悪い予感を感じた僕は咄嗟に横に避けていた。
もちろんコケたら詰むので回避した僕はそのまま走る。
さて、どうしたものか。こうした間もヤツは追ってきている。
振り向くとヤツはいなかった。どこだ?
ふと上を向くと…刃を下に突き立て落ちてくる者が1人。
回避しきれないと踏んだ僕は鏡を張った。
眼前が火花でいっぱいになったが、パキィンと音がしたのであの刃は折れていることだろう。
「やっと出しましたね、本気を」
ヤツは右手に握った折れた刃を右手で吸収すると、再びそれを
昔、聞いたことがある。
曰く、血を操る一族がいる、と。そして、その一族は他の異界師から忌み嫌われているのだ、と。
あの後輩女子はその一族の者なのだろう。そして、彼女が壮絶な人生を送ってきたのであろう事は想像に難くない。
しかし、だからといってここで僕がそう易々と死ぬ理由にはならない。
「さて、終わらせるか。この戦いを…」
ここで大事な要素は今は下校途中ということだ。つまり、僕は今カバンを持っているという事であり、その中には筆箱があり、さらにその中にはハサミ、カッターなどの凶器がある訳だ。ついでに、僕が彼女が刃を創り出した後、何度か鏡を使っている。これは、意識を鏡に向けるためだ。
あと、さっきの言葉も彼女をイラつかせる作戦の1つだ。
この後は実に上手く作戦が成功した。
僕がカバンを彼女目掛けて投げ、こっちから見てカバンの手前に
その隙を僕は逃さなかった。
ぶちまけられたカバンの中身から筆箱を、筆箱からカッターを取り出し、立ち上がった彼女の首に突きつけた。
「チェックメイト…だな」
「……!」
彼女は驚愕のあまり目を見開いている。そりゃ驚くよな。僕だって驚いてるもの。
「…まあ、立って話すのもアレだし、座って話さないか?」
近くの公園を指差し、取り敢えずベンチに座る。後輩女子が隙間を開けてるのはご愛嬌だろう。
再び本題に入る事に。
「で、本当の目的は何なんだ?」
「何のことですか?」
「とぼけるなよ。君が本気で僕を殺すつもりなら、僕を生物としての原型を保たない只の肉塊になってる」
「………」
そう、呪われた血の一族が忌み嫌われる理由がこれだ。
うろ覚えなのだが、確か「あらゆる物を内側から溶かす」みたいな特性が血そのものにある。
だから、少し遠くで座っているこの後輩女子は僕を殺そうと本気で思ったなら、血を浴びせるだけでいい。たったそれだけで、僕は物言わぬ肉塊になるのだ。
暫くの沈黙の後、呪われた一族の少女は口を開いた。
「…実は、相談したい事が…1つありまして…」
たったそれだけで僕は殺されかけてたのか?と言いたくなるのをグッと堪えた。
僕に心配させたくないのか無理に笑おうとしているものの、彼女の顔には哀愁の色が見て取れる。
彼女は今「相談したい事がある」と言ったが、その血統と職業故に相談出来る相手がいなかったのだろう。
だから僕は彼女の相談に乗ることにした。
「私…実は異界師になったばっかりなんです。だからいざって時に足がすくんだり、いくら悪いやつらとは言っても命を取ることに抵抗があって…」
本日2度目の驚きだ。
あの動きで異界師になったばっかり?信じたくないものだ。
それはともかく、返答をしなくちゃな。
「僕だって妖夢が怖くないわけじゃ無いさ。いくら完全防御とは言ってもそれを使うのは人間だからな。防御が間に合わなければ即アウト。それと…妖夢だからって悪いと決めつけるのは良くないと思うな」
「?どういう事ですか?」
「それはまた今度。そういえば…栗山さんは家に帰んないの?」
後輩女子の体がビクッと震えた。なんだろう、嫌な予感がする。
「ごめんなさい、相談したい事は2つあってですね…」
予感は確信へと変わった。
「家に住み着いた妖夢を退治するの、手伝ってくれません?」
ここで「寧ろこっちが本題だろ!」と突っ込むのを耐えれるような精神力は僕には無い。
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