境界の彼方 ~next stage~ 作:眼鏡が好きなモブ男
「よう」
「ごきげんよう」
文芸部部室、午後4時30分。取り敢えず立っているのは疲れるので椅子に腰掛けることにした。
たった今挨拶を交わした人はこの地域を管轄している桜ノ宮家の一人娘、桜ノ宮
おっとりした雰囲気に丁寧な言葉遣い。余程のアホでなければすぐにどこかのお嬢様だと分かるだろう。
念の為紹介しとくとコイツは僕の幼馴染みであり、ちっさい頃からバカな事を一緒にやったもんだ。
さて、先程僕は凛香についておっとりしていると話した。
それはつまり、コイツの作り出す重い雰囲気は通常の倍重い雰囲気になるという事だ。
「貴方には幾つも言いたいことがありますが…今は一つで勘弁しましょう」
「正直聞きたくないが頼んだ」
「『栗山未來』を知っているでしょう?」
知っているなんてものではない。
ストーキングされた挙句、一方的に妖夢退治を手伝わされたのだから、忘れろと言われても無理な話だ。
「出来る限りで良いです。出来る限り彼女は避けなさい」
「いきなりそんなことを言われて、はいそうですねとはいかないだろ?」
「前例が無いと言えば分かるでしょう?」
前例が無いということは、今この状況がかなりの異常事態であるという事だ。
説明を忘れてしまっていたが、桜ノ宮家ってのは長く繁栄し続けている事で異界師業界では有名なのだ。
それなのに前例が無いというのは自然と雰囲気が重くなってしまうものだろう。
「あくまでも呪われた血の一族の者がやって来たという意味ではありますが」
「それで、まだあるだろ?」
「狙っている妖夢が危険すぎるのです。姉様が依頼したと風の噂で聞いたのですが…その名前を調べてみても一切情報が出て来ない。だから私は適当に『アンノウン』と呼んでいますが」
「なんの捻りも無いのな」
突っ込むと脛に蹴りが入った。
呻いている僕にかかってきた言葉は「何いきなり呻いてるんです?」だった。理不尽だ。いや、まだコイツの能力を使われてないだけマシかな。
「自分でも分かっているでしょう?貴方が余計な事に関わることで何が起こるのか」
ああ、分かってる。そんな事分かりきっている。
「で…?なんで…今そんな事を言うんだ…?」
目の前の幼馴染みはドアを指差した。
数秒後、コンコンと誰かがドアをノックした。
いや、誰だか察しついたけども。
入部するってことなら歓迎しなきゃいけないものだからしっかり「はーい」と返事をしてドアを開けた。
「入部を希望しているのですが…」
小さな体躯、ゆるふわ系の髪の毛、決して口には出さないが見事なまでの絶壁。
見間違える筈などない、栗山未來その人である。
新入部員が来たというのに未だに座ったままの幼馴染みは、してやったりといった表情をしていた。
次回こそは2000文字超えたいものですね