この作品は短編となります。
そのため1000文字で完結するお粗末なものです。
更に鬱的な描写や意味不明な描写などが含まれますのでそれらに耐えられる方のみ御閲覧をお願いします。
それでは、本編をどうぞ。
「大丈夫よ、心配しないで」
吊り下げられた電球が不規則に点灯と消灯を繰り返す。
小さなアパートの1室で優しい声が私に言い聞かせた。
「でもお母さん……血が……」
彼女の腹部からは赤黒い液体が蛇口を捻ったかのようにだらだらと溢れてくる。傷を覆うようにして白く細い手があてがわれていた。
「自分で決めたことだもの。このぐらい平気よ。」
痛みに歪める顔を必死に取り繕って弱々しい笑みを浮かべる。
きっと彼女は嘘をついているのだろう。どこか迷いの隠れた表情を見て私はそう思った。
力なく床に倒れる。
荒い呼吸は喘ぎへと変わり空気へと溶けていった。
「ごめんね。私のせいで……ごめんね。」
震えた声が静かに私の耳を撫でる。
「お母さんのせいじゃないよ。だから謝らないで。」
「ごめんね……。」
私の声は聞こえていないのだろう。彼女は縋るようにただその言葉を呟き続けた。
そして、最後に一言。
「愛してるわ。」
私も。
彼女がそれ以降再び動くことは無かった。
「うわ……こりゃひでえな……。」
中年の刑事が顔を顰める。
視線の先には横たわった女性とその周りの赤黒く変色した床。
「遺体の身元は?」
横たわる女性に向けて手を合わせながら背後の若い刑事に尋ねる。
「え?身元ですか?ちょ、ちょっと待ってくださいね……。」
若い刑事は慌ててポケットを探り、手帳を取り出す。
「えぇと、江本優菜さん32歳女性。近所のスーパーでパートをして生計をたてていたようです。」
「娘さんはどうしたんだ?」
「へ?いや、江本さんに婚姻歴はなくお子さんもいませんよ?」
若い刑事の言葉に中年の刑事がだるそうに振り向いた。
「あぁ?じゃあなんでベビーベッドとか子供の玩具があんだよ?」
部屋の隅にある子供用品の数々はその部屋に子供がこどもが住んでいると示すものだと中年の刑事は推測したのであろう。
全く意味がわからないというように首をかしげた。
「あ……それなんですがね……。」
すると若い刑事が、中年の刑事に耳打ちする。
「実は江本さん、以前付き合っていた男性との間に子供が出来たらしいんですが相手の男性が既婚者だったらしくて……江本さんは子供を産もうとしていたんですが相手の男に無理やり堕ろされたようで……。」
「あぁ……。」
ずいぶんと胸くそ悪いが聞かない話ではないな、と遺体を一瞥する。
「それで、まぁ江本さんは酷く落ち込んでしまって近所の方にも全く顔を見せない期間が数ヶ月ほど続いたらしいのですが、ある日いきなり顔を見せるようになったかと思うと、まるで自分に一人の娘がいるかのように振る舞っていたらしく……。」
「ショックすぎて堕ろされた自分のガキの幻覚見るようになってたってことか……。」
「そのようですね。」
若い刑事は説明し終わると手帳を閉じた。
中年の刑事は一際大きな溜め息をつくと重そうに腰を上げた。
そして戸棚の上に伏せられた写真立てを見つけるとおもむろにそれを起こす。そこには仲むつまじくピースする二人の男女が映っていた。
片方は江本さん、片方は恐らく堕ろされた子供の父親だろう。
明るい写真と対照的に、写真立てのフレームは相当強く握ったようで少し破損していた。
中年の刑事は静かに写真立てを元の状態に戻し、再度大きく溜め息をついた。
写真に背を向けて、下げた視線の先には遺体が映る。
そして小さな声で呟いた。
「まったく……嫌な話だよ。」
『本当に……嫌な話よね。』
応えるかのようにどこかで幼い声が呟いた。
さて、今回の短編は『嫌な話』という題名で書かせていただきました。
ド直球です。何の捻りもございません。
この作品を完成させた後に思ったのですが、一人暮らしの女性が自殺した場合そこに警察が来るということは現実にある話なのでしょうか?
恐らく遺体が残っているようなタイミングで警察の方が部屋にいるなんてことはないと思いますが……。
まぁ、そこに関しては目をつむっていただけると幸いです。
それでは、次回もよければ覗きに来てみてくださいね。
御閲覧ありがとうございました。