やはり俺が世界を救うのはまちがっている。   作:カモシカ

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第十一話 そして、彼らの初探索は終了する。

「『щБЖ:ййБй』」

「ガッ!?」

 

 一色の声に導かれた先にいたのはゴブリンアサシン。

 短剣を持つ暗殺者であり、暗殺者とは暗殺対象に気づかれないまま殺す事が求められる。

 一色に気づかれてしまったのは……まあ、それがゴブリンの限界なのだろう。ゴブリンだし。

 

 ともあれ、ゴブリンアサシンにがっつりアサシンされた訳だが……

 

「『黒騎士スキル・無限再生自動発動(オートスタート)』」

 

 ステータスには表示されない《職業(クラス)スキル》というものがある。

 葉山の《天騎士》なら『光輝なる聖剣技(ホーリーアーツ)』、雪ノ下の《魔導師見習い》なら『魔力暴走』、由比ヶ浜の《召喚術士》なら『妖魔兵団』などなど。まだレベルがたりなくて使えないなんてものもあるらしいが、物によっては強力な技らしい。

 

 そこにきて俺の『無限再生』は頭一つ抜けたキチガイ性能を誇る。

 その効果は単純。『剣技、物理攻撃で受けたダメージを瞬時に回復する』というもの。《死神》の職業スキルと合わせると即死以外無効というバケモノになる。

 

 まあ要するに、

 

「残念だったな……『剣技:斬鉄』」

 

 威力重視の剣技『斬鉄』叩き込み、ゴブリンアサシンをサクッと始末する。すまんな。これも生きるためだ。

 ステータスの伸びが極端に低い俺は、代わりなのかなんなのかスキル等のほぼ全てが強力なのだ。そもそも職業が二つあるなんてのは本来ありえないもので、そのありえない事を体現している時点でお察しである。

 

「お兄ちゃん大丈夫!?」

 

 後ろの敵を倒し終え、雪ノ下の指揮の元、俺が引き付けていたフェンサーやガーディアンと戦っていた小町が駆け寄ってくる。

 

「おう。お前も俺の職業スキルは知ってるだろ?あのぐらい大した事ねーよ」

「そうじゃないでしょ!最終的に無傷だから良いってことにはならないの!今回は大丈夫だったけど、次もそうだとは限らないんだからね!」

「はい!すいません!」

 

 小町(いもうと)には敵わない。だってお兄ちゃんだもの。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 

 その後は危なげなく、俺たちは無事にダンジョンから帰還した。

 

「勇者諸君、今回の探索は全員無事に乗り越えることが出来た!初めての本格的な探索にも関わらず良くやってくれた!各パーティーごとに反省もあるだろうが、今は自分の、仲間の無事を喜ぶといい」

 

 アンセルムさんが語っているが、俺たちはそんなものより目の前のご馳走に注目している。

 

 召喚された次の日も豪勢な食事だったが、今夜のそれは前回以上である。幾つか見覚えのあるメニューもあったが、もしかしたら親父たちがこの国に持ち込んだ料理なのかもしれない。

 ……ちょっとだけ、家が恋しくなる。

 

 同じ事を考えたのか、小町も心なしか沈んだ顔をしている。

 

「わっ、いきなりどしたの?お兄ちゃん」

「ん。いや……なんとなく、な」

 

 取り敢えず頭を撫でる。ほぼほぼ脊髄反射のお兄ちゃんスキルだ。これが正解なのかは分からないが、小町の顔色も戻ってきたので少なくとも間違いではなかったのだろう。

 

 葉山を中心に盛り上がる食堂。姦しく喋る一色や由比ヶ浜。それに巻き込まれる雪ノ下と川崎。

 

 そんな俺たちをよそに、初探索が終わった日の夜は更けていった。




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