ベート・ローガがヘスティアファミリアに入るのは間違っているだろうか   作:爺さんの心得

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 オリジナルスキルが出ます。




僕は今日、初めて初期位置に立つ

 

 

 

 

 

 今、ベートはヘスティアと対峙していた。

 この一文だけでは何を言っているのか分からないであろう。それもその筈、ベートも何故自分がこんなにも凄まれているのか、心当たりがないのだ。ベルも半裸でベッドに縮こまって、こちらの様子を伺っている。

 しかし大体の予想はつく。ヘスティアが握りしめている紙が、全てを物語っている。

 

 「……ベート君。ボクはね、君にすごーーーーーーく聞きたいことがあるんだけど」

 

 「……ンだよ」

 

 ベートが面倒臭そうに返した直後、ヘスティアは持っていた紙をベートの眼前に叩きつけ、こう迫った。

 

 「この!!ベル君の!!異常なステイタスの伸びは!!一体何なんだい!?」

 

 

 ーーー予想通りすぎて怖ェ。

 

 

 ベートは改めて、自分の察しの良さを恨んだ。

 

 

 

 

 

 全アビリティが異常なまでに上がったベルのステイタスに、さすがのベートも瞠目する。このステイタスの伸びは、ただの努力では計り知れない異質なものであった。

 なら何がこうなったのか。まずヘスティアとベートが目をつけたのは、ベルに最近発現したレアスキル【憧憬一途(リアリスフレーゼ)】だった。いや、十中八九このスキルが原因と見て間違いないであろう。そう、ベルのスキル欄を見るまでは。

 ステイタスで目を見開いていたベートの目に、あるスキルが目に入る。これはベルにも見せるので、憧憬一途の事は消されていたが、それはベートを動揺させるに十分なスキルであった。

 

 「……そのスキルの事についても聞きたいんだよ。そのスキル名、読んでご覧?」

 

 ヘスティアが訝しげに聞いてくる。

 ベートは操り人形のように、そのスキル名を口にした。

 

 

 「ーーー【冀望の凶狼(スペラガンド)】」

 

 

冀望の凶狼(スペラガンド)

・強者を望む限り全アビリティ上昇

・対象が凶狼の場合、比例して成長する

 

 

 

 「……ンだこのぶっ壊れたスキル……!」

 

 「でもそれ、ほぼ君が原因で出たんだろう」

 

 「ぐっ……!?」

 

 ヘスティアの言葉に何も出てこない。しかし、何故こんなスキルが出たのか。原因を探るのならばーーーベルが嘲笑された、昨日の出来事しか思いつかない。

 しかし自分はベルに何もしていない。ただ言葉を投げかけただけである。なのに何故、こんなスキルが生まれたのか。

 

 「……あ、あのー……神様?ベート、さん?」

 

 今まで蚊帳の外にいたベルが、恐る恐る二人に声をかけた。

 

 「その、何かあったんですか……?スキルとか、何か、聞こえたん……です、けど。もしかして、僕にも念願のスキルが出たんですか!?」

 

 「……あー、うん、デタヨデタヨ」

 

 今更ベルを送り出してから聞けばよかったと後悔するヘスティアだが、こればかりはさすがに我慢ならない。只でさえ剣姫によって発現したスキルのこともあるというのに、今度は自分の眷属によって発現したスキルなど、冷静さを欠けてもしょうがないのだ。

 こればかりは、黙ってはいられないであろう。それに自分の眷属だ。憧憬一途のように、他のファミリア関連のものではない。嘘が下手な彼に言うのは本当に、色々な意味で嫌だが……腹を括ろう。

 ヘスティアはベートから紙をひったくり、それをベルに見せた。

 

 「うわぁ……!ついに念願のスキル!一体どん………………ッッ!?!?」

 

 目線をスキル項目に移した時、ベルが石像のように固まってしまった。フルフルと手を震わすことも、パクパクと口を動かすことも、何もせずにただあのスキルを見つめるベルに、ヘスティアは「ベル君?」と顔を覗き込む。

 ベートはあのスキル名を思い出し、ふと気になったことを口にした。

 

 「……冀望、ねェ……。お前、俺に何を望んでんだ?」

 

 「ーーーーうぇっ!?え、あ、え、えええええとですねぇっ!?あ、あの!いや、えっと……!!」

 

 「いや、そんなに顔を真っ赤にしてもな……」

 

 あの昨夜の出来事に、ベルに何か思いが出来上がったのか。それはベートに対しての、強い願い。ならベルは、ベートに一体何を望んでいるのだろう。それが分からなければ、ベートのモヤモヤは晴れなかった。

 しかしベルは用紙を握り締め、真っ赤になって首を横に振っている。それは明確な拒絶ではなくーーーただの、羞恥。

 つまりベルは恥ずかしがっているのだ。そしてこのスキルにも、ベルにも何となく思い当たることがあるのは確定。

 だからこそ、ベートはその真意を聞き出したかったのだが……。

 

 「ぼ、ぼぼぼぼ僕!さ、早速ダンジョンに行ってきますねッッ!?」

 

 「え、ちょ、ベルく」

 

 「で、ではああああああああ!?」

 

 ベルは今までのものとは比べ物にならない程の速さで衣類を掻き込み、そしてまるで変身したかのように素早く衣類を着て部屋を出ていった。用紙を握り締めたまま。

 

 「……ンだよ、彼奴……」

 

 「……そ、そんなに恥ずかしがること、なのかな……?」

 

 ヘスティアとベートは、未だに直されていない開放感のある出入口を眺めながら、そう呆然と零したのだった。

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 「馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ……ッッ!」

 

 本当に、自分は大馬鹿者だ。

 

 「うわあああああ……!」

 

 こんな、こんな形で現れるなんて。

 

 ベルはメインストリートを抜けた後、噴水の縁に腰かけた。そして握りしめてグシャグシャになった用紙を、もう一度広げる。

 

 「…………ううううう……」

 

 そして、静かに悶えた。

 これは昨日、無我夢中にモンスターを狩りまくっていたベルに形成された、ベートへの強い思いを具現化したものだろう。そうに違いない。

 そう、このスキルを、ほぼベルは理解している。何故このスキル名なのか、何故今、発現したのか。その全てを、ベルは理解しているのだ。

 

 

 

 自分と同じ冒険者に貶され、今の自分の弱さを思い知らされた昨夜。それはベルにとっても忌み嫌う日であり、同時に英雄に近づく一歩だと実感している。

 だから、モンスターを殺しまくった。ただ夢中に、この悔しい思いを、憤怒を、悲しみを振り払うように。

 ウォーシャドウの大群が一時的に止み、ベルの体力が限界に近かったその時、ベルの背後に言葉を投げかける人がいた。それが、ベートだった。

 ベートの言葉は全てベルに突き刺さった。そしてそれら全てが正論だと、深々とベルの心に突き刺さる。

 正直、ベルはこのベートの声を、あの時は全て幻聴だと思っていたのだ。弱者に興味を持たないベートが、自分に喝を入れるために来るはずがないと思い込んでいたから。

 だからベルは答えなかった。

 そして、この幻聴がベルの原動力となる。倒れ伏せていたベルの体をさらに追い込み、そして奮い立たせることで、ベルはさらなる高みを目指す。

 ウォーシャドウの大群が再度現れた時、ベルはモンスター達に噛み付いた。自分の弱さを、醜さを、全てモンスターにぶつけて。

 その間の記憶はない。ただモンスターの肉を斬る感触と、自身に走る痛み、そして誰かに声を投げかけられている体感だけが、ベルに残っていた。

 我に返ったのは、ウォーシャドウを全て殺した後だった。

 その時、ベルはベートの方を振り返る。それはほぼ無意識の行動で、ベルの意識の元動いていたわけではなかった。

 そしてその時に、ベルは見た。

 

 

 

 ベートの眼の奥底に眠っている、『英雄』の瞳を。

 

 

 

 ああ、そうか。

 ベルはその時に悟った。ベートが何故自分なんかに言葉を投げかけるのか、何故自分に構うのか。

 ベートが自分をーーー『弱者』だと思っているから、ここにいるのだ。

 ベルはベートという狼人を幾分か理解していない所がある。彼の評判も、稼ぎも、性格もスタイルも、全てを理解していない。

 しかし、今の彼の瞳は手に取るようにわかる。弱者を見下し、そして嘲笑う眼だ。それは自分が弱者だから、ベートがそういう目をしているから。

 しかしベルは、そのベートの眼にーーー『憧れ』を、持った。

 

 (ーーー遠い)

 

 ベルとベートの間は、とても遠い。螺旋階段のスタートラインにいるベルは、遥か頂上にいるベートに追いつくなど、今は無理な話だ。

 しかし、だからこそ、ベルは駆け上がらなければならない。ベートという「強者」を越えるために、そして自分という「弱者」を進化させるために。

 だからベルはーーーベートの眼に、『冀望』を持った。

 その見下される眼。弱者を見下ろすその眼は、ベルを奮い立たせるには充分だった。

 そして同時に、ベルは望む。

 ベートがーーーもっと、遥か頂上に行くように。

 

 

 自分の英雄の道が、さらに素晴らしい道程になると信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 (なーんてこと思ってさああああああああああああ!?)

 

 全てを思い出して、ベルは頭を抱えた。

 ベルは強者のベートに強い憧れを持った。彼が高みに行く度に、自分もそれを追うかのようにさらなる高みに行けるかもという、全てはベルの強い憧憬によって産まれたものだった。

 こんな事をベートに言ってみろ。絶対に「巫山戯んな」と一喝されるに違いない。というか、彼を憧れてもいいのだろうか。彼は迷惑にしないだろうか。その不安がベルを占めているのだ。

 

 「…………で、でも、これって英雄に近づいたっていう、こと……だよね?」

 

 しかしこれも、強くなるために、ベートが望む強者に近づいたということだろう。そう割り切ってしまえばいいのだ。決してこれからベートに追求されるのが怖いとかそういうのは抱いていない。

 

 「……強くなるって、決めただろ」

 

 もう誰にも、見下されない。ベートにも、あんな眼をさせない。

 ベートの琥珀の眼を思い出す。自分よりも、遥かに「弱者」を実感している強い瞳。彼も底辺から這い上がって、今の地位がある。

 その『憧れ』を、ベルはこれからも背負っていく。

 そしていつかーーーベルが望む『冀望』に、届くであろう。

 

 「……ふぅ。よし!」

 

 用紙を丁寧に折り、落とさないようにポケットに入れ、ベルは自分に喝を入れる。

 

 

 

 これは、一種のスタートライン。

 

 

 

 

 

 まだ彼らの冒険は、始まったばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ベート君、すっごい嬉しそうだけど……もしかして、ベル君に憧れを持たれるの実は結構」

 

 「その口縫い合わせてやろうか?」

 

 

 

 






 書いてて思ったこと→ベルきゅんMなの?
 全然違います(真顔)
 デデーン!おめでとう!ベートきゅんはベルきゅんに憧れられた!
 正直すっごい悩んですけどやっぱりやっとこうかなって。ここからベルきゅんの冒険が始まると思うといてもたってもいられずに。後悔はしてないぜ!
 後半はベルきゅん視点だけど蛇足が結構多いような気がして、上手く伝わらないかもしれないです。本当いらない蛇足を入れて、私って本当に、馬鹿……!ベートきゅんに蹴り殺されに行きますね!
 とりあえずこれで第一章は終わりです。次からは怪物祭編ですね。やっほーい!アイズちゃん登場させちゃうよ~!ベートきゅんとアイズちゃんの絡みいれちゃうよ~!お楽しみに!
 あと日刊ランキング2位ありがとうございます!もう変わっちゃったけど思わず見た時「( 'ω')ファッ!?」って五度見くらいしました。表現が分かり辛いかもしれませんが、今後ともベートきゅん共々宜しくお願いします!

 (やべぇ今までで一番まともな後書きだ……)

 ちなみにベルきゅんがベートきゅんを振り返った時も、少なからずベートきゅんのこと幻覚だと思っています。あの子はいつ本物だと気づいたんだって?わかりません!(某駆逐系男子風)
 ベートがもっと遥か頂上に行くように→また遠くなったと実感して、悔しくなってもっと這い上がってくれるかもと思って。
 自分の英雄の道がさらに素晴らしい道程になると信じて→数々の試練を越えれるだろうと。
 何故ベートの瞳に憧れを持ったか→目と目が合うと全てを感じられるだろう?(え、違う?)
 まぁ真面目に言えば、ベートきゅんの全て(前話ベルにやられたことなど)が詰まった、揺るぎない瞳に惚れたから、かな?

 アッハイ。完全に作者の願望です。ごめんなさい。

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