FGOクリアしました、リアルで。   作:チョコラBB

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感想でボーイズラブが機能していないと言われましたが、よく見てほしい。
葉山×ダ・ヴィンチちゃん
ボーイズラブでしょ?


幕間の物語 鬼の宴 その5

葉山、カルデアに戻る。

そのニュースはカルデアに再度激震をもたらした。

茨木童子による暴行によって再起不能に陥った人類最後のマスターのヨゴレ担当、葉山慎二。

彼が約1か月ぶりにその姿を、カルデアから謎の失踪を行ったサーヴァント達と共に見せたのだ。

私、万能の天才たるレオナルド・ダ・ヴィンチから見ても画面越しとはいえ葉山君は記憶にある彼よりも逞しく、覇気のような物を放っている。

 

今回、彼は自らを貶めた茨木童子へのリベンジを行うため決闘を行う。

だが混血とはいえ生きている人間が英霊に挑むなど私のように天才でない者にでも結果は分かり切っている。

つまりは葉山慎二の敗北である。

コレは確定として、いかに彼が茨木童子も認める結果と覚悟を見せることが出来るか。

これと彼の健康状態、現在この二つがロマン達カルデアスタッフ達の焦点になっているのだが、非理論的と思いつつも私は彼の勝利も期待しているのであった。

 

 

俺ぐだ男は久しぶりにもう一人のマスター葉山慎二の姿を視界にとらえた。

彼は以前と異なり、一目で分かるような野生動物のような靱かな強靭さを得ていた。

男として、同じマスターとして戦う力を持つその姿に羨望と嫉妬を覚える。

思えば彼は自分にとってクーフーリンなどとはまた違った兄貴分のような存在かもしれない。

 

最初こそ彼は入院しておりあまり接点がなく、サーヴァントの皆はもちろん居たのだが俺は第四特異点までたった一人のマスターとしての重責を抱えていた。

人理修復への期待への重責、色々と濃いいサーバントたちとのコミュニケーション、

果てのない素材集めによりかなりのストレスが溜まっていた。

 

だがそんな色々と限界だった頃に葉山さんと合流したのだ。

年の近い男性にして同郷ということも有り、色々と共通の話題が有ったので話も弾み、すぐ仲良くなった。

だが俺にとって一番救いとなったのはマスターという同じ立場の人間であったからだろう。

言葉にはしづらいが、やはりマスターにはマスターの悩みや苦痛などはある。

例えばサーヴァントの皆が嫌いというわけでは無いのだが、やはり、なんというかしんどい事もあるのだ。

そんな時上手く口に出来ないマスター特有の悩みを共感し理解し相談しあう相手が居たこと、また人理を救うために必要不可欠なマスターという重責を半分持ってくれたことは俺にとっての救いだったのだ。

そんな時である。

彼自身のサーヴァントである茨木童子と俺のサーヴァントである酒呑童子による暴行事件は起きたのは。

頭が真っ白になった。

正直俺はこの事件までサーヴァント達は何だかんだ言って皆気の良い連中だと思っていたのだが、真っ当な英雄はともかく反英雄に対しては普段どれだけいい関係を築けても本質的には捕食者と非捕食者の関係なのだと理解した。

もちろんそれを理解した上で彼ら彼女らと真摯に向き合い、絆を深める。

そのことは間違いなんかじゃない。

俺は誰に何と言われても、その考えを変えることは無いだろうが俺も含めてカルデア全体がサーヴァントとの付き合い方を考えさせられる機会となった。

 

事件後、俺は復活できるからといってはアレだが酒呑童子を自害させた。

ぶっちゃけ激怒して後先考えなかった結果なのだが、結果としてカルデア内の不穏な空気を軽減することが出来た。

葉山さん本人も実際の所不明だがそれをケジメとして酒呑童子を許してくれた。

今後も色々とあるかもしれないが、また皆で力を合わせて人理修復を行いたい、俺はそう思った。

だからこの決闘も葉山さん的には必要な事なのだろうが、願わくば二人とも無事に終えて、また仲良くしてほしいと願った。

 

 

 

 

 

 

此処は葉山達が修練を行った特異点とはまた異なる特異点である。

多少の起伏は有るものの特に遮蔽物のない草原で、周囲には決闘の邪魔が入らぬようサーヴァント達が警戒している。

私エミヤは盾系宝具を使用できるため、マシュと共にぐだ男の護衛に回りながら目の前の二人を見ていた。

 

「・・・久しぶりの外か。長い事封印されて幽閉されていた気もするがそうでも無いようだな。」

 

「・・・ああ。アレから一か月、正確には1か月と1週間くらいかな。」

 

「正直・・・葉山貴様が吾に決闘を挑むなど思いも知れなかったぞ。貴様は少しでも危険を察知すると臆病にも逃げると思っておった。それに・・・ククク、大の勇士でもアレだけ鳴かされれば決闘どころか真っ当な生活ですら危ういというのに・・・少し見直したぞ?」

 

「肉体的にはともかく精神的には再起不能寸前までいったさ。だがマルタや他のサーヴァント達、ぐだ男君やカルデアのスタッフたちのお陰で此処までこれた。まあ・・・正直以前の俺が卑怯だの臆病だの言われても欠片も恥じ入る気も、直す気もないが心には留めておこうと思う。」

 

(直す気はないのか・・・まあ私も悪いとは思わないが。)

 

「何よりも・・・女性蔑視というわけでは無いが、やはり大の男が鬼とはいえ見た目少女にアレだけの辱めを受け尊厳を傷つけられた。それにお前らのせいで俺はニッチな性癖の扉を開けてしまう所だったんだ、リベンジを行うのは当たり前だろう?」

 

「クククッ!いや、そうだ!その通りだ!!アレだけの目に会えば折れるか報復するか、道は二つに一つ!!これは吾が愚かな質問をしてしまったようだなあ。何、謝ろう。

愚かな質問をして申し訳なかった。」

 

茨木童子が姿勢を正し一度頭を深く下げる。

数秒程して再び頭を上げて彼女は啖呵を切った。

 

「鬼は人に倒されるが定め・・・しかしこの身は腕は切られても未だ滅ぼされてはおらぬ。それでも吾に挑むのならば、是非はない!全力で来るがいいっ・・・!!」

 

「・・・」

 

葉山は素直に、真面目に、あっさりと謝罪した茨木童子に葉山はポカンと口を開けて驚いている。

私もその気持ちはよく分かる。

茨木童子の血潮は傲慢、心は鬼としてのカリスマ(笑)で出来ているからな。

そんなマスターである葉山や私達の言うことを聞かない彼女が素直に謝罪しているのだ。

今の彼女なら正しくカリスマ:Bくらいは持っているかもしれない。

そう言えば一説には大江山の鬼の首領は彼女で、力量はともかく酒呑童子はその客分に過ぎないと言われているそうだが・・・それも納得できそうではあるな。

だが葉山よ、決闘とはいえ敵の前でそんな隙を晒すとはケルトの洗礼を受けたモノとは思えないな。

そんなことだと・・・ああ、スカサハが「この後修行しなきゃ(使命感)」って目で見ているぞっ!!

 

「許してください・死んでしまいます!」

 

「?どうしたのエミヤ?」

 

小さいな声で呟いたつもりだがぐだ男に聞こえてしまったようだ。

自重しよう。

葉山死ぬなよ?(二つの意味で)

 

「どれ、今の貴様なら中々に好ましい。もしもこの戦いで生き残ることが出来たならば吾が貴様を飼って可愛がってやろう。」

 

「飼う・・・っ、可愛がる・・・っ!?(ゴクッ)」

 

おいお前顔を赤くして唾を飲み込むな。

今それも良いかな?とか思ったろ。

新たな性癖の扉が既に開いているんじゃないか!?

 

「・・・俺を飼うなんて舐めるなよ!決闘には俺が勝つ!!そしてその暁には逆に俺が今お前が言ったような目に会わせてやるよ!!そして俺の地に落ちた評判(幼児退行など)を戻してやる!」

 

「良かろう!!その約束忘れるなよ!?」

 

葉山よ。

格好いい事言っているつもりかもしれないが、冷静にお前の言っていること聞くと割と最低なこと言っているから評判は戻らないと思うぞ?

 

 

『ではこれから葉山慎二、茨木童子両名の決闘を行う。ルールは両者の合意により生死問わず、ルール問わずの無制限戦。但し戦闘不能及び降参をした相手に攻撃を行うことは禁止するよ。また負けた方は勝った方に従うという条件も追加、で良いね?』

 

「構わぬ。」

 

「同じく。」

 

『・・・出来れば人理修復という本業が有るのでマスターである葉山君は死なないでね?メディアに葉山君の遺体を礼装に改造とかさせたくないしね。』

 

「!?」

 

「うわあ・・・」

 

おい、ダ・ヴィンチ今物凄く黒い事言わなかったか!?

茨木童子もドン引きだし、葉山は明らかに動揺してるぞ。

 

『では決闘を開始する。開始の宣言を頼むよロマニ。』

 

「・・・負けられない理由が増えたっ・・・!!」

 

『では・・・決闘開始ィ!!』

 

両者は開始の宣言と共に地を蹴った。

 

 

 

 

マルタはその卓越した動体視力で決闘を見守っていた。

彼女は葉山の成長こそ修行を共に見ていたので知っているが、それでも茨木童子と戦うには不十分であると感じていた。

何せ彼女は真正の人外にして、見た目からは想像もできないほどの高ステータスにランクの高いスキルを習得しているのだ。

いい勝負は出来ても、彼女にはその頑強さから生半可な攻撃は効かず、逆に一度でも彼女の攻撃を食らえば葉山は即死、よくて重傷で戦闘不能となってしまう。

マルタの心中は不安でいっぱいであった。

 

「主よ・・・彼らが健やかであらんことを・・・。」

 

開始直後、音もなく葉山が茨木童子の背後に現れた。

ともに修行を行った者を除いた観戦者たちは其れを見て驚愕した。

それもそのはず。

葉山が行ったのは敏捷性にモノを言わせた唯の高速移動に非ず、本来は幕末の天才剣士が会得した体術にして死後スキルまで昇華された高速歩法。

 

縮地:C

 

オリジナルにこそ劣るものの油断していた茨木童子には葉山が消えたように見えているだろう。

知ってるか?新選組って他にもコレ出来た奴が何人か在籍してるらしい。

日本の幕末って恐ろしい。

 

さて葉山は茨木童子の背後に回り込むが、技量不足の為速度こそオリジナルに迫るがブレーキや切れが甘く軸足と魔力放出で強引に踏みとどまる。

足元ではギャギャギャギャッと地面を削る音が出ているが、葉山はそのまま相殺できなかった運動エネルギーを軸足の回転運動で活かして茨木童子の延髄を狙う。

音により気づいたのか辛うじて茨木童子は避けたが、いつの間にか葉山が手に持っていた大ぶりのナイフが掠り首元から出血した。

 

「!?な、何ィ!?」

 

驚愕する茨木童子。

それはそうだ。

今のは冗談抜きで即死しかねない攻撃であった。

対して葉山は攻撃の失敗を見るや再度縮地で距離と背後を取り、ナイフを己の影に投げ捨てながら新たに武器を取り出す。

今度の武器はガンソードというやつだろうか?

何か新宿辺りで黒人っぽいアーチャーが使ってそうな感じであるが、葉山の武装は先ほどのナイフを含めてエミヤに投影して貰った低ランクの武装や葉山の持っていた礼装をエジソンの技術力と玉藻、エレナ、スカサハの呪術、マハトマ、ルーンなどで魔改造したモノである。

流石にエミヤに宝具を投影して貰っても(爆弾として以外は)使いこなせないし、それでは葉山の力でリベンジしたことにはならないっということだったが唯の人間が英霊と正面からやり合うのだから卑怯じゃないとマルタは感じていた。

というか改造には力を借りてもセーフなのだろうか?判定が難しい所である。

 

ダンッダダダン!!

 

葉山は虚数魔術による影を媒介にした倉庫にナイフがズブズブと沈んでいくのを尻目に、躊躇いなく茨木童子の背中に発砲した。

 

「ガッ!?」

 

致命傷ではないが肌の表面に薄っすら血が滲むほどのダメージはあるようだ。

それを確認しながら只管茨木童子に引き金を引く葉山。

見た目はいたいけな少女にモデルガンを連射する成人男性に見えるため酷い絵面である。

 

「いい加減にしろぉ!!」

 

手に持つ大骨刀を振り回し、銃弾を弾く茨木童子。

彼女はそのまま猛スピードで駆けだすが、速度では葉山と互角、いや縮地が有る分葉山が逃げに徹すれば追いつくことは出来ない。

その分筋力や耐久が高いので葉山は勿論距離を取りつつ、銃弾やルーンストーン、魔術に黒鍵を遠距離攻撃に徹しながら冷静に茨木童子の動き、ダメージ量を分析している。

 

「くう!ちょこまかと!!これならどうだ!?」

 

大骨刀を切り上げるように地面に叩きつけると地が割れ、細かな石が散弾の如く葉山を襲う。

 

「!?」

 

此処で葉山の戦闘経験の少なさが露呈した。

葉山は咄嗟に縮地を用いて最初と同様に茨木童子の背後に移動してしまったのだ。

 

だがそれは悪手だ。

マルタの豊富な戦闘経験改め説法経験がそう判断した。

 

「同じ手は二度と喰わぬ。」

 

移動した直後、葉山の頭部間近に刀が迫っていた。

茨木童子は地を割った直後、葉山が咄嗟にまた背後に現れると予想しており、その場ですぐに回転斬りを行っていたのだ。

 

「何度も同じ手?そんなことしたらケルトでは生き残れない。」

 

オイお前純日本人(混血)であってケルト系の血は流れてないだろう。

どうやら葉山も読んでいたようでいつの間にかガンソードが最初のナイフに変わり、ギリギリで大骨刀を受け流していた。

そしてそのまま身体が泳いだ茨木童子に切りかかる。

 

「甘いわ!大江山大炎起!!」

 

だが茨木童子も然る物。

全身から炎が噴出し、葉山ごと周囲を燃やし尽くす。

 

「!?おわあ!!」

 

今度は流石予想していなかったのだろう。

多少身を焦がしながらも炎を避け切り、下がった。

 

「くはは!!思った以上にヤルではないか!!吾は叢原火を使う気はなかったのだがなあ!」

 

喜びに満ち溢れた茨木童子の声がして、見てみると彼女の背中には炎で形成された翼がはためいている。

オカシイな。私の記憶では鬼って翼が生えているんだっけか?

 

「どれ。お返しだ!!」

 

再び地を削り、石の散弾を放つ。

しかも今度は石の一つ一つが炎を纏っている

 

「うおおお!!」

 

葉山は虚数魔術で影で外套を生成し纏って攻撃を避ける。

そこそこの防御は見込めそうだが完全には防ぎきれないだろう。

 

「はあはあはあ。」

 

何とか無事のようであるが石が当たったのだろうか、全身がボロボロになっており肌の至る所から出血や打撲跡、火傷が見える。

 

「ほほう?耐えたか・・・もう一度だ!!」

 

茨木童子が再度石の散弾を放つが、

 

「大江山大炎起!!」

 

同時に火炎そのものも逃げ場がないほど広範囲に放たれた。

 

「影よ覆え!力を食らい尽くせ!!」

 

葉山も再度影の衣を展開するが、今度は左手に集中して闘牛士のマントのような形状となる。

そしてそのまま炎と散弾を受け止めると意外なほど勢いと炎がかき消される。

 

「?」

 

「あれは影の衣を媒介にして葉山の異能で熱エネルギーやら運動エネルギーを吸収しているのだ。」

 

「知っているのエミヤ!?」

 

「無論だ。と言っても仕組みは単純だ。今まで奴の手に限定されていた異能を魔術を使って範囲を誤認させてマント全体に行き渡らることに成功したのだ。まあ強力な反面、かなり集中力を要するのだがね。」

 

「ははっ愉快だ!そら!もう一度だ!!」

 

追加の炎を散弾を放つ茨木童子。

だが今度は・・・

 

「!いけない!?」

 

炎に紛れて茨木童子本人も近づき、刀を振り下ろす。

正直構えも何もなっていないように見えるが、その速度は凄まじい。

 

「ぐ!?が、があっ!!?」

 

火傷なども顧みずギリギリ刀を避けたが追撃で放たれた大振りの拳は避けきれずクリーンヒットしてしまった。

こちらも構えも何もなっていない唯の拳であるが鬼の渾身の一撃だ。

葉山は人形のように吹き飛ばされてしまった。

 

「はははははははははははは!!!!!」

 

「が、があああああ!!」

 

ガガンッ!!

 

茨木童子が吹き飛び倒れたままの葉山に再度刀を振り下ろす。

声に反応した葉山は魔力放出で倒れたまま回避するも、既に受け身も取れないのか地面に滑り込むように移動している。

 

それを見た茨木童子は更にご機嫌に笑いながら刀を、拳を、踏みつけを、炎を繰り出し、地面は裂け大炎上した。

 

「うおりゃ!!」

 

「うお!?」

 

最後の踏み付けを半ば掠りながら葉山は閃光手りゅう弾を茨木童子に投げつけて目つぶし、そのまま魔力放出で距離を取る。

 

「くう!?小癪な真似を・・・」

 

「はっはっはっはっ!?」

 

両者動きが止まるが差は明らかだった。

片や茨木童子は多少の出血は有るものの重大な損傷はなく、その小さな傷すらも既に塞がっているという有様。

対して葉山は火炎耐性でも有るのか意外と軽度の火傷を全身に負っており、同様に全身に擦り傷や打撲艮が見られる。

しかも呼吸音や吐血からみてアバラや内臓も損傷しているものと思われる。

 

マルタは胸の前で手を強く握り込み耐える。

どんなに重症でも葉山は立ち、降参していない。

そうなれば決闘である以上手出しは出来なかった。

まあイザとなれば強引にでも助けるつもりであるが、少なくとも今はその時ではない。

見れば他のサーヴァントも静かに決闘見守っているようで・・・ナイチンゲールが怪我人である葉山の治療するために向かってきたがラーマ、カルナ、ジークフリート、スカサハに取り押さえられている。

そうだよね、ナイチンゲールだもんね、そりゃ治療しに来るよね(確信)

 

それからしばらくは先ほどの焼き増しだった。

茨木童子の攻撃を掠りながらも葉山が避けて反撃、多少の傷をつけてまた逃げ惑う。

その繰り返しであった。

 

「貴様はようやった。だがこれ以上はもう意味のない繰り返しよ・・・。負けを認めよ、今ならば命だけならば許してやろう。」

 

「はあはあっ!!お断りだ!!」

 

「・・・そうか。もう一度だけ言うぞ。負けを認めよ、然もなければ、吾は貴様を確実に殺す。」

 

葉山は中指を立てる。

 

「ならばもう言わん!」

 

茨木童子が高く飛び上がり葉山の直上へと落下していく。

ボロボロとはいえ葉山はその攻撃を避けて反撃しようとするが着地と共にひと際巨大な揺れと共に二人の周辺の大地が完全に砕け散り、全方向へと火炎が奔る。

その時の衝撃は凄まじく、葉山も、遠く離れたマルタ達も体勢が崩れてしまった。

 

「姦計にて断たれ、戻りし身の右腕は怪異と成った!――」

 

英霊にとって己の逸話や武具を昇華させた切り札ともいうべき宝具。

茨木童子はソレを葉山に対して使用した。

少なくとも彼女はソレを使う程度には葉山を認めたのだろう。

マルタはもう十分だと判断し、葉山を救わんと拳を握る。

 

「!何のつもりよ!!どきなさい!!」

 

「悪いが往かせられねえな。まだ決着はついてねえ、あんたの気持ちも分かるが横から手出しはさせねえよ。」

 

今にも葉山の救助に行こうとしたマルタ。

他にも先ほどから暴れているナイチンゲールに加えてエジソンやブーティカ、エレナ、マシュ、アステリオス達も動こうとしていた。

だがそんな彼らの前にはクーフーリンを初めとするフェルグス、メイヴといったケルト勢に加えてエミヤやレオニダスまでもが立ちふさがる。

そして中でも働かないことに定評のある男、アンデルセンが前に出て語る。

 

「バカめ!少年誌のような安直な展開な上に動機が非道い目に会わされた女への仕返し!?

本当に下らんことこの上ないが、奴が自ら望んで相手も応じた。

本人が助けも求めていないのに外野がしゃしゃり出てどうする?

悪いことは言わん、たとえ奴が“死んでも”邪魔はするな。

ケジメを付けなくては生き残ったところで役に立たない所か下手に拗らせば害悪にしかならん。」

 

それを聞いてエレナが叫ぶ。

 

「“死んでも”!?何言ってんのよ!!死んだら元も子も無いでしょ!良いからどきなさい!!ネロも何でそっちにいるのよ!?」

 

「えっ?余か?だって男と女がお互いを求めての決闘であろう?それを第三者が口出しするなど浪漫ではないではないか!」

 

ソレは何か違うのではないだろうか?

いや合っている・・・?

それにしてはエミヤ達も驚いているようだが。

 

「走れ叢原火『羅生門大怨起』!!」

 

そんな馬鹿なことをしている内に茨木童子の宝具が発動した。

 

「いけない!!?」

 

轟音と共に茨木童子の右手が怨みの炎を帯びて巨大化し、葉山に向かって放たれた。

腕は高速で空を駆け葉山との間に会った障害物を根こそぎ消し炭に変えていった。

 

「さらばだ!!葉山慎二!!」

 

「葉山!!」

 

爆炎を振りまき、満身創痍の葉山に宝具が着弾した。

マルタは遂顔を逸らしてしまった。

恐らく目を開けると其処には炭しか残っていないか・・・良くて葉山の肉片だけだろう。

マルタはそんな暗い想像と邪魔をしたクーフーリンたちへの怒りを胸に秘めて、意を決して目を開くと

 

「グッガアアアアア!!?痛い!?吾の腕がっ!?腕が痛い!?」

 

何故か茨木童子が右腕を抑えて苦しんでいた。

見ると其処にはあるはずの右腕がなく、断面から血が溢れていた。

 

「・・・俺の勝ちだ、やっと宝具を使ってくれたな茨木童子。」

 

葉山は立っていた。

相も変わらず満身創痍のままであるが、その眼には強い意志の光が灯り魔力を全身に纏っている。

その右手には刃渡り80㎝程の折れた刀を握り、左手には茨木童子のモノと思われる右腕が握られていた。

 

「そ、それは!?」

 

「髭切。逸話によると渡辺綱が茨木童子の腕を切り落とす際に使われた名刀らしいけど二度目はどんな気分だ?」

 

「何故!何故貴様がそれを持っているのだ!?」

 

「そりゃレイシフト出来て相手の真名を知っているんだ。メタを張るのは当然だろう?

もちろん平安京に直接行って妖怪退治とか小説にしたら一冊分くらいの大冒険をした上で渡辺綱本人から借りたんだよ。茨木童子をもう一回切るって言って頼んだらノリノリで貸してくれたよ。」

 

「~~~~あのマザコン武者が!!」

 

葉山は折れた刀を投げ捨てて縮地により茨木童子の懐へ突っ込む。

その手にはたった今捨てたはずの髭切が“折れていない完全な状態”で握られていた。

 

「・・・といっても借りただけでさっきのも含めてコレも模造品なんだけどね。エミヤに本物の髭切見せてあげたら一晩でやってくれました。」

 

「名刀には勝てなかったよ・・・。(エミヤ感)」

 

「~~~~~余計な事をっ!!」

 

「倍プッシュだ。」

 

葉山は更にもう一本、投影髭切を取り出し茨木童子に突き刺す。

しかもちゃんといつかのXの如く刺した刀を動かし傷口を抉るのも忘れない。

 

「こんな物ぉっ!!何故力が入らぬのだ!?」

 

「投影髭切で鬼の神秘が弱っまたせいで毒が勢いよく回ってきたんだろう?」

 

「ど・・・毒?」

 

「最初からお前を傷つけてたナイフ、アレ元々この前ガチャで当てたヒュドラ・タガーなんだ。むしろ何でアレだけ切って今まで平気だったのか俺が聞きたい。」

 

「く、くそ!最初から、最初からこれを狙っていたのかぁ!!?」

 

「当り前じゃないですか。自分でも言ってたろ?俺は臆病者だって。茨木童子みたいな強敵相手ならそりゃ策も弄するし徹底的に弱点付きますよ。毒の扱い方はロビンに習ったしね。」

 

「アイツもかぁ!?」

 

「ねえどんな気持ち?大物風吹かせて格下と侮っていた男に良いようにされて死にそうなのは、どんな気持ち?ねえどんな気持ち?」

 

魔力放出(炎):C → 鬼種の魔:C

 

葉山が貯め込んでいたエネルギーと自前の魔力を全て投影髭切へと注ぎ込む。

過剰に注ぎ込まれた魔力により投影髭切二本が罅割れていく。

 

鬼種の魔:C → 鬼種の魔:B

 

「・・・覚悟はできたか?茨木童子いやばらきー、いやさ“イバラギン”よ。」

 

茨木童子に刺さっていた二本の投影髭切。

この二本は供給された魔力に耐えきれず構成が解れ自壊し、込められた魔力が全て茨木童子の体内で解放される。

 

「貴様は・・・そんなにも・・・そんなにも勝ちたいか!? そうまでして勝利が欲しいのか!?

この吾が・・・たったひとつ懐いた祈りさえ、踏みにじって・・・貴様はッ、何一つ恥じることもないのか!?」

 

葉山はオマケでもう一本投影髭切で茨木童子の脚を地面に縫い付け、縮地により退避した。

最後まで容赦のない男である。

 

「赦さん・・・断じて貴様を赦さんッ! 名利に憑かれ、鬼の誇りを貶めた葉山・・・

その夢を吾の血で穢すがいい!

葉山に呪いあれ! その願いに災いあれ! いつか地獄の釜に落ちながら、この茨木

童子の怒りを思い出せ!」

 

「あっ蘇ったら約束通りマイルームで二回戦目なんでよろしくお願いいたします。」

 

「くっ!?くそおおおお!!」

 

「『模倣・壊れた幻想』」

 

ドゴオンッ!!!

 

『茨木童子死亡確認。再召喚は・・・3日後だね。よって勝者はマスター葉山慎二とする。』

 

「「・・・わああああ」」

 

後半戦の余りのエゲツなさに皆(ケルト除く)ドン引きである。

勝手にやったとはいえ私達サーヴァント同士のシリアスな対立描写とかどうしたら良いのだろうか?

ホラ、皆気まづくてお互いの顔を見れないで・・・解散していくし・・・。

エレナなんか真っ赤になって俯いてプルプル震えてるじゃない。

アレ?そういえば結局ネロの言ったことが一番正しかったんじゃないかしら?

 

『ところで君たちの気持ちもよく理解できるんだけど・・・その・・・葉山君を医務室に運んでくれないかな?彼結構シャレにならない怪我しているせいでドンドンバイタルが低下してるんだよね。仮にたとえるならイメージ的にはナイアガラな感じ?』

 

「それ死んでるじゃない!!速く葉山を運ぶわよ!」

 

この後緊急搬送した葉山は3日所か5日ほど入院するも心的外傷も克服し、一回り大きく成長して正式にマスターとして復帰することとなる。

第6特異点でも復帰後大いに活躍することとなるが、彼の汚名は消えることなく、

『人類最後のマスター(エゲツない担当)』などの二つ名が人理に刻まれることとなった。

 




ちなみにもしもぐだ男がぐだ子だったらマスターとしての共感や溢れるヒロイン力で正ヒロインになります。
そしてマシュ→ぐだ子→葉山という三角関係となります。


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