恩義に報いる狂犬   作:鎌鼬

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入学①

 

 

「生きてますか?新君?」

 

「しょーじきしんどい」

 

 

ノーレさんの返事にも生返事で答えてしまう。だがそれくらいに辛いのだ。それが分かっているのかノーレさんは苦笑いしながら信号で停止した時にどこからか毛布を取り出して渡してくれた。

 

 

今、向かっている先はISの専門学校とも言える〝IS学園〟である。本当ならば〝ファヴニール〟で専属パイロットとしてゆっくりとISのことを学ぶはずだったが国からの圧力により貴重な男性操縦者をIS学園に通わせろという御達しがあったのだ。いかに大企業の〝ファヴニール〟とはいえ国からの圧力には耐えられず、突貫でISについての座学と実技を詰め込まされて学園送りになったのだ。

 

 

それを聞いた時にジークと一緒にファッキュー国家と中指を立てながら叫んだのは記憶に新しい。

 

 

〝ファヴニール〟日本支部とIS学園との関係上、どうしても授業開始には間に合わないが、それは連絡済みなために心配ない。近場のホテルで泊まることも考えたのだが男性操縦者という希少価値を考えると襲撃されかねないので日本支部で朝を過ごすことにしたのだ。

 

 

「辛そうですね」

 

「辛い、マジで辛い。就職してから今日まで睡眠時間が3時間超えなかった。俺、最低でも5時間は寝たいのに」

 

「まだ時間があるから寝たらどうですか?」

 

「……いや、ここで寝ると頭が働かなくなりそうだから遠慮しときます」

 

 

どうせIS学園まではあと二、三十分だ。それなら我慢して起きておいた方がいい。

 

 

「そういえば、俺たちの他にも男性操縦者が見つかったらしいですね?」

 

「えぇ、確か新君と最初に見つかった織斑一夏以外にも各国で見つかったらしいですよ」

 

 

眠気覚ましに選んだのはノーレさんとの会話。話題は俺と第一男性操縦者である織斑一夏以外に見つかった男性操縦者のことだ。ISのことを詰め込むのに必死過ぎてうろ覚えだが、確か他にも5人くらい見つかったと聞いている。

 

 

「日本は俺と織斑一夏だけでしたっけ?」

 

「そうそう、あとはアメリカと中国とブラジル、それとロシアとスペインとイギリスで全部で6人見つかったそうです 」

 

 

世界中を探してたった8人と言うべきか、それとも8人も見つかったと言うべきかは人それぞれだろうが個人的には前者だと言いたい。

 

 

「一通りの資料は揃えてありますけど見ますか?」

 

「良いですわ。他人なんて気にしてられる余裕なんて無いですし、それに俺は俺のやる事をやるだけですから」

 

「そうですか」

 

 

ポケットの中からココアシガレットを取り出して咥え、少しずつ削るように囓る。孤児院では甘味は時々出てたけど少量だったので飢えているのだ。大量に買っても経費で落とせるとか、大企業万歳。

 

 

「まぁ他にも男の子が7人もいるんですし、新君としては良かったと思いますけどね。ほら、IS学園って事実上の女子校ですし。他に見つからなかったら織斑一夏と男の子は2人だけでしたしね」

 

「それについては感謝ですよ……でも腐女子が居そうなんだよなぁ……」

 

「あ〜……そこはほら、頑張ってください」

 

「もっと的確なアドバイスくださいよぉ!!」

 

「無理です。同じ女子だけど腐女子は無理です……あいつら、アニメ見るとすぐに掛け算始めるから……純粋にアニメを楽しむ事しないから……」

 

 

個人的に危惧している腐女子について何かしらのアドバイスを貰えないかと期待していたが、ノーレさんのダークサイドを突いてしまったらしい。ノーレさんは日本のアニメが好きなんだが何かにつけて掛け算を始める腐女子のことが苦手なんだとか。まぁすぐに男同士の友情(意味深)とか言い出す女子はこちらから願い下げだ。

 

 

「ん、んん!!そうだ、折角だから彼女でも作ったらどうですか?」

 

「彼女か……考えてもなかったな……ハニートラップとかと考えないといけないですし」

 

「そこはひとまず置いといて。新君はどんな感じの子が好みなんですか?」

 

「好みねぇ……背は低めで髪が長い方が良いですね。胸はまぁ、気にしないです」

 

「ありゃ?男性からしたら大きい方が良いんじゃないですか?」

 

「ぶっちゃけ好きになったら気にしないと思いますよ?背とか髪とか胸とかも」

 

「おぉ、なんとも男らしい発言……っと、着きましたね」

 

 

ノーレさんがそう言って車を止めたのは駅。IS学園は海に浮かぶように建っていて、普通の手段で入ろうと思えばこの駅を使うしかないのだ。

 

 

「それじゃ、頑張ってください」

 

「えぇ、頑張ります」

 

 

ノーレさんに別れを告げ、()()()()()()()()()()()()を撫でて、俺はIS学園に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宿桜新だな?」

 

 

IS学園の正門で俺の名前を呼んだのは目付きの鋭い女教師だった。第一印象としては怖いやカッコいいと呼べそうな人だがその目には侮蔑の色は無い。元々こう言う目付きらしい。

 

 

「はい、〝ファヴニール〟専属パイロットの宿桜新です。よろしくお願いします」

 

「私は一年一組担任の織斑千冬だ。宿桜は三組になるが困った事があったら遠慮無く言ってくれ。さて、すまないが時間が押しているので少し急がせて貰うぞ」

 

 

そう言って織斑先生は歩き出した。鞄を持ち直してその後を追う。

 

 

「そういえば織斑ってことは織斑一夏とは姉弟ですか?」

 

「あぁそうだ……まったく、受験に行ったかと思えばISを動かすなど何をやらかしてるんだあいつは……」

 

「ご苦労様です」

 

「そういう宿桜も大変だったそうじゃないか。適正がある事が判明してからすぐに〝ファヴニール〟と契約をしたと聞いているが」

 

「そうですけど、まぁ早いうちに就職出来てラッキー程度に思ってますよ。社長からも良くして貰ってますし……それよりもここへの強制入学が決まってからの方が大変ですよ……主にIS関連の知識やら経験やらを詰め込む事が」

 

「確かにそうだな。何せここに入学を希望するものは小学生の頃からISについて学んでいるものがほとんどだ。あとは候補生に勧誘されて進路をここに変えた者もいるがそれでも一般人よりもISの知識は優れている。何、前に配られていた教本の始めの方だけでも頭に入れておけば最初の頃は問題無いだろう」

 

「だったら大丈夫です。教本の半分くらいまで読み込みましたから」

 

「ほう、それはなかなか……っと、着いたぞ」

 

 

授業中なのか静かな廊下を歩きながら案内された先は一年三組のプレートがぶら下げられた教室。織斑先生がドアの前に立つと空気が抜ける音がしてドアが勝手に開いた……自動ドアかよ。

 

 

「失礼する。宿桜新を連れてきた」

 

「あらあら織斑先生、ありがとうございます」

 

「何、手が空いていたからな。宿桜、入れ」

 

 

返事をして入ればおっとりとした雰囲気の女教師が教科書片手に黒板の前に立っている。教室の中を見渡せばそこには一面の女子……いや、端の方に1人だけ男子が見えた。どうやら男子は俺1人だけじゃなかったようだ。

 

 

「では私はこれで……頑張れよ、宿桜」

 

 

織斑先生はそう声をかけて教室から出て行った。そして教室にいた女教師が手招きをしているのでそれに従って近寄る。

 

 

「初めまして宿桜君、私は一年三組の担任の指宿彩芽(いぶすきあやめ)です。さっそくだけど自己紹介をしてもらえるかしら?」

 

「良いですよ」

 

 

教壇に立って教室を見渡す。三十人以上の視線に気圧されそうになるが、それを気合いで耐えて自己紹介をする。

 

 

「初めまして、それと遅れてすまない。〝ファヴニール〟の専属パイロットの宿桜新だ。好きに呼んでくれ。好きなものは甘味、嫌いな者は女尊男卑主義。IS関連の知識は詰め込んだが穴だらけで迷惑をかけるかもしれないが……その時はよろしく頼む」

 

 

そう言って頭を下げて自己紹介を締めくくる。返って来たのは……拍手だった。そして誰かテンションが上がったのか、指笛を吹いているらしい。頭を上げて探してみたら、端の方にいた男子が指笛を吹いていた。

 

 

「あと時間は10分くらいね……じゃあここからは質疑応答の時間にしましょうか」

 

 

指宿先生がそう言った途端、女子の目が野獣のような眼光を宿した。

 

 






ワンサマーとオリ主を除いた男子操縦者全員が転生者とかいうトラップ。

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