舐めていた。好奇心のままに突き動かされる女子のことを舐めていた。
「キツイ……」
ちょうどやって来たのは4時間目の終わりだったらしく、怒涛の質問コーナーを終えたら昼休みになった。これで1時間半の休憩の後に午後の授業になるのだが好奇心のままに突き動かされる女子たちによる質問によって体力と精神力が削られて動くのも辛い状態になっていた。昼休みで助かった。このまま授業を受けろと言われてもまともに受けられる気がしない。
ともあれ何か口にしてエネルギーを補給しなくてはならない。机の上に体を投げ捨てた状態で鞄を漁り、持って来ていたペットボトルのスポーツドリンクを一口飲み、ココアシガレットをガリガリと噛み砕く。
「よぉ、しんどそうだな。今をときめく男子操縦者さん?」
「んぁ?」
動けるだけの体力の回復に努めようとしていたところを話しかけて来たのは入って来た時に見た、俺以外の男子だった。金髪碧眼のイケメン。爆ぜろとは思わない、もげろとも思わない。捻れれば良いのに。
「ブーメランって知ってるか?」
「マジレスは辞めてくれ。お前が来るよりも先に俺があの質問コーナーやらされたんだから少しばかり皮肉っても良いだろう?」
「悪い悪い。勤め先の都合で遅れた」
「そう思うなら体起こそうぜ。寝ながら言われても説得力が無いわ」
確かにそうだと思い直して体を起こす。幾分疲れは残っているが、それでも時間があったのでマシになっている。
「改めまして、アメリカの代表候補生のジョン・ドゥだ。同じ男子操縦者としてよろしくな」
「〝ファヴニール〟の専属パイロットの宿桜新。こちらこそよろしく……って、ジョン・ドゥ?」
ジョン・ドゥといえばうろ覚えだが確かに身元不明の男性の遺体に付けられる仮称だったはずだ。名前としてありえなくは無いがどこか違和感を感じる。ちなみに女性の場合はジェーン・ドゥだったはず。
「ストリートチルドレンっていえば察してくれる?」
「あぁ、そういう事」
今のご時世ではストリートチルドレンなんて珍しくもない。女尊男卑主義のせいで産まれたのが男だったからという理由で臍の緒付きの赤ん坊がゴミ捨て場に捨てられるのだ。だが、産まれて来られるだけまだマシと言えるかもしれない中には男だとわかった瞬間に薬で流産しようとする妊婦もいるらしいから。
彼もそうした1人なのだろう。年齢からしたら女尊男卑主義が広まり出した頃に捨てられて、それで親を憎んで名前を捨てたんじゃないかと予想が出来る。ともあれ、これ以上穿り返しても傷が広がるだけで良いことなんて何一つ無い。
「淡白な反応だな?これ言った時には女尊男卑主義からは蔑むような、普通の奴からは憐れむような目で見られるんだけど?」
「孤児院出身でね、同じじゃないけど類似してるから。それに孤児院だと似た者なんてわんさかいるし」
「……日本って治安が良いんじゃ無いんだっけ?」
「表沙汰にならなければカウントされないんだよ?」
「聞きたくなかった」
と、ジョンと五分程話したところである程度体力と精神力が回復してきた。なので立ち上がる。向かう先は食堂だ。なんにせよ食べなければ半日持たない。
「食堂行くけどどうする?」
「んじゃ一緒に行こうぜ?食堂で不幸自慢してテロってやろう」
「良いのか?俺の不幸自慢は108まであるぞ?」
「たったの100かよ、俺の不幸自慢で胃もたれさせてやるよ」
そんな事を話していたせいか、周りの態度がドン引きしていたと思う。
「やっぱり生ゴミは怖いよな?カビとか生えてたら一発で当たるし」
「あ〜俺は虫かな?空腹に耐えかねて食ったんだけど暴れるわ、殻が口の中に刺さるわ、内臓の臭みがエグいわで吐いてた。でも幼虫だと当たりなんだよな。カブトムシのとかクリーミーで中々美味かった」
「あ、分かる分かる。俺も一時期幼虫探してた。夏場だと見つけられるんだけど冬場になると見つからないよな」
食堂でカツ丼を、ジョンはハンバーグランチを食べながら不幸自慢食べ物編を語り合う。周囲からはそんな話するなという視線が向けられるが、俺もジョンもそれを無視してあれがキツイ、これが怖いと不幸自慢を続ける。
俺の場合は孤児院での経験ではなく、孤児院に入るまでの半年くらいの間の期間のことだが。
「にしても織斑一夏様様だぜ。ISに乗れるってだけでこんな良いものが食えるようになるんだからよ」
「そう言えばアメリカの代表候補生って言ってたよな?だったら専用機持ってるのか?」
「あるっちゃあるが、本当の意味の専用機じゃないな。俺の専用機は今作ってる最中で量産機を代わりに持たされてるんだよ。それに代表候補生といってもアメリカの所有権の主張のために用意されたホストってだけだ。一応訓練したけど」
そう言ってジョンが首元から出したのはチェーンを通したドッグタグだった。まぁ、不謹慎かもしれないがアメリカらしいと言えばアメリカらしい待機状態だな。
「そういうアラタはIS持ってるのか?」
「これこれ」
カツ丼をかっこんでいた箸を置いて、首に付けているチョーカーを人差し指でノックする。これが俺のISで、〝ファヴニール〟の開発した初めてのISだったりする。
「気になるな……なぁ、今度模擬戦してみないか?どんなのか気になる」
「良いけど場所とかどうするんだよ?そこら辺で気軽にドンパチするわけにはいかないだろ?」
「そうだよな……指宿先生に聞いてみるか」
「そうだな、それが良い」
実は模擬戦に誘われた事は内心では嬉しかったりする。〝ファヴニール〟ではジークのツテでドイツの軍隊から派遣された指導者からしかIS操縦の手解きは受けておらず、自分がどのくらい強いのか分からないからだ。用意されたホストだといっても代表候補生の訓練を受けているのならそれなりにやれるはず。自分の実力がどの程度なのか知る機会が得られて幸運だった。
ジョンも内心では同じ事を考えているのか、その目からは静かながらにもギラギラとした闘志が見え隠れしている。
楽しみだと思いながら最後に残った一口分のカツ丼を食べ切ろうとして、
「ねぇ、ちょっと良いかな?」
その良い気分に水を指す存在が現れた。
ジョン・ドゥ
オリキャラその1。アメリカの代表候補生で元ストリートチルドレン。親から捨てられた時に憎さから名前を捨てて身元不明の男性の遺体の仮称であるジョン・ドゥを名乗っている。頭のネジは外れてどこかに無くなっている。転生者で原作知識無し。
不幸自慢を食堂でして、周りの食欲を無くさせるテロを行う奴らがいるらしい。