恩義に報いる狂犬   作:鎌鼬

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入学④

 

 

「さてっと」

 

 

用務員室にて轡木さんから荷物を受け取り、部屋の片隅に積み上げて置く。部屋の内装はベットが二つにクローゼットが二つ、洗濯機付きの浴槽にトイレ、そこにガスコンロと電気コンロを兼ね備えたキッチンとパソコン最新型の液晶テレビまで設備されている超豪華な部屋になっていた。これだと普通に高級ホテルの一室でも通りそうな気がする。

 

 

内装を確認したところで始めるのは荷解き……では無く家探しだ。〝ファヴニール〟から送られてきた私物以外の段ボールからトランシーバーの様な物を取り出してスイッチを入れる。すると画面に付いていた針がエライ勢いで左から右一杯に振れる。

 

 

「やっぱりね」

 

 

ジークとノーレさんから注意されていて、絶対にあると思ってはいたが本当にあると分かって少し呆れてしまう。扉に鍵を掛けてベットのマット、机の引き出し、クローゼットの中、電灯、椅子の裏、コンセントの中まで空き巣の真似事をしているんじゃないかと錯覚してしまいそうな程に探し回り、目当ての物を机の上に並べていく。

 

 

「ひぃふぅみぃよぉ……数えるのが馬鹿らしくなるくらいに出てきたなぁおい」

 

 

机の上に並べられたのは小型の黒い機械。それら全てが盗聴、もしくは盗撮の目的で仕掛けられた物だ。

 

 

おそらく仕掛けたのは女性権利団体か日本の政府だろう。外国の政府が仕掛けた事も考えられるがIS学園に潜入し、急に決まったこの部屋にこれだけの量を仕掛けられるとは思えない。その点、女性権利団体ならばIS学園にいる教師の団員に盗聴機を渡して仕掛ける様に指示すれば良いし、日本の政府でも同じだ。

 

 

壊したところでまた仕掛けられる可能性があるのでもう仕掛けたくないと思わせる必要がある。なのでパソコンを開いて有名な動画サイトにアクセス、そこにあるガチでムキムキな男同士が互いのパンツを剥ぎ取るレスリングをしている動画を無限ルーフで流す。周りに音が漏れない様にヘッドフォンに繋ぎ、耳当ての部分に盗聴機を、画面に盗撮機を向けば終わりだ。きっと仕掛け人の元にはアニキ達がワッショイしている音と画像が送られているに違いない。

 

 

荒らした部屋を元に戻しながら食事に付いて考える。ここの食堂は朝の6時から8時、昼休憩、夕方の6時から9時の間開いて、その時間帯なら一部のメニューを除いて自由に食事を摂ることが出来る。今の時間は家探しに使った事もあって5時半、食堂が開くにはまだ少し時間がある。

 

 

なので7時頃になるまでトレーニングで時間を潰すことを決める。段ボールから黒いジャージとトレーニング用に持ってきたパワーリストを始めたした重りを取り出して装着、散策がてら適当に走るかと意気込んで外に出た時、ズゴンと重たい音が聞こえてきた。何事かと思い、音がした方向を向けばそこには人集りが出来ている。

 

 

「触らぬ神に祟りなしっと」

 

 

気にはなるがIS学園での人集りと言えばほぼ100%で女子の集まりという事になる。しかも寮という事でかほとんどがえらくラフな格好……タンクトップにホットパンツ、中には下着姿の格好の女子まで居るのだ。そんなところに行ってしまえば最悪変態扱いになる。変態扱いなど好き好んでされたいと思う上級者では無いのだ。南無阿弥陀仏と全く興味も無い念仏を唱えながら立ち去る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「地図で見て思ってたけどやっぱ広いな」

 

 

無理をせず、自分のペースを守りながら適当に敷地内を走り回ってIS学園の広さを再認識する。校舎にIS関連の専門棟、IS訓練場が複数、その上一周が5kmもある校庭まであるので当たり前かもしれないが。

 

 

春になって咲き乱れ、散っている桜並木を流し見しながら走り、人目のない事を確認してから逆立ちの姿勢になる。これは軍人から聞いた話なのだが足は手に比べて数倍の力があり、その理由は常に身体を支えているからなんだとか。つまり手を足の様に使えば足と同じくらいの力がつくはずだと副隊長から聞いたと力説していたのだ。それを聞いて筋が通っていて、あり得ない話では無いなと思って暇さえあれば逆立ちする様にしているのだ。

 

 

逆立ちを始めてからまだそんなに時間は経っていないが腕力は強くなっている気がする。加えて俺のISの都合上、身体を鍛えなければならないので腕力と同時にバランス感覚も鍛えられる逆立ちはもはやトレーニングの必須メニューとなっている。

 

 

だが逆立ちというのは人の目を引くもので、それを避けるためにこうして人目のないところでする様にしている。

 

 

「ねぇ、何をしているんだい?」

 

 

のだが……どうも見つかってしまった様だ。桜並木の陰から銀髪の女子が姿を見せた。背は然程高くは無く、恐らくは150cmから160cmの間。腰まで伸びた銀髪の髪を桜吹雪で靡かせながら好奇心に踊らせた蒼い瞳で俺のことを見ている。

 

 

「何って、逆立ちだけど?」

 

「それは見てわかるよ。どうして逆立ちなんてしてるのかを聞いてるんだ」

 

「トレーニングとしか言えないな、それ以外に理由無いし」

 

 

話しかけられても逆立ちのままはどうかと思うので足を地面につけて普通に立つ事にする。

 

 

「ふぅん、変わった人だ」

 

「それは自覚してる」

 

「でも一生懸命だ」

 

 

変わったなどという一見してみれば酷い評価をくれた彼女だが、次の言葉は好意的な評価をくれた。

 

 

「今の状況が納得出来なくて、でもそれで腐らずに一生懸命に頑張っている。うん、そういう人はボクは好きだよ」

 

「好きって、軽々しく言わないで欲しいね。勘違いしそうになる」

 

「あはは、ゴメンゴメン。世界で8人しかいない男性操縦者だからハニートラップとか気にするよね」

 

「そうそう、おかげで気楽に恋愛も出来ないからね」

 

 

ここまで話してようやく気がついた。何故かは知らないが、彼女とは()()()()()()()()。ジョンの様に同性で、似た様な境遇な上に思考も似ているとなれば遠慮無しで話す事が出来る。だが女性となれば性別という第一段階の時点である程度の溝が出来ている。普通ならその溝のせいで多少話し難さというものが生まれるはずなのだが彼女との会話にはそれが無いのだ。

 

 

「ボクは一年六組の新城響(しんじょうひびき)。ねぇ、君の名前を教えてよ」

 

「宿桜新だ」

 

 

桜吹雪が舞い散る中で、新城から差し伸べられた右手を、俺は躊躇う事なく取っていた。

 

 

 





新城響
桜並木の中で逆立ちしている新を見て興味を持って話しかけてきたボクっ娘。銀髪で蒼い瞳と日本人離れした容姿なのは父方の祖父がロシア人のクォーターな為。本人は日本生まれ日本育ちの生粋の日本人。ノット転生者。


銀髪のボクっ娘、現わる。これは某原作キャラのポジションを奪いに行ってる。

世界でたった8人しかいない男性操縦者の弱みを握り、自国に縛りつけようと躍起になって某暗部の長に日本政府は盗撮盗聴を命じましたとさ。その結果、某暗部の長とその従者の元にガチでムキムキなアニキ達によるパンツを剥ぎ取り合うレスリングの音声と画像が届いたらしい。

目覚めない事を切に願う。
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