Mana-Khemia ~zwei alchemist 二人目の錬金術士~   作:村人A

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マナケミア2をクリアしてきました(遅い)

で、その後に1をやったら円環のスピードが早い早い。慣れって怖いね。


第14話 カム着火インフェルノォォォォォォォゥ‼

《強いっ! まさに圧勝!! この学園のアウトローたちを止められる者は、果たしているのかっ!?》

 

 開始早々一撃決着を決めたヴェインたちに、差し入れの水が渡される。

 ちなみに、『アウトロー』とは『無法者』の意である。

 

 圧倒的な試合を終えたグンナルは、いつものように腕を組んで仁王立ちしている。

 

「この程度では、肩慣らしにもならんな」

 

「…………」

 

 満足気にしているグンナルをよそに、ヴェインはぼーっと宙を見つめていた。何となく、自分がこういった競い合いの場にいて、なおかつ勝利をおさめたのが不思議な気分だった。

 

「何を呆けている? さては自分の強さに驚いたか」

 

「え? いえ! そんなことは……」

 

「謙遜するな。お前より強い一年生は、数える程しかいないはずだ。それこそリヴィとかな。……無論、俺様が一年の時は、もっと強かったがな!」

 

 ふはははは! といつもと同じように豪快に笑ってリングを降りていくグンナルを見て、ヴェインが後に続く。

 しかし、そこに期待していた人物たちの影はなく、グンナルは眉をひそめる。

 

「む、出迎えがないな。けしからん」

 

「応援に来てくれるって言ってましたけど……」

 

 パメラはともかく、フィロやリヴィが約束を違えるのは考えられない。

 だとすれば、何かあったのか。

 

 そんなことを考えていると、観客席の方から聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

「ちょっと、通して! 急いでるから……通してって!」

 

「この声……ニケ?」

 

「ニケ、遅いではないか」

 

 よほど急いで来たのか、息を切らしているニケはグンナルの言葉に何か言うでもなくまくし立てる。

 

「それどころじゃないよ! 大変なの!」

 

「どうしたの? そんなに慌てて……」

 

「これ! アトリエに手紙が置いてあって、それで……」

 

 ニケが握りしめていた紙切れには、とんでもないことが書いてあった。

 

「なになに……『女は預かる。大会が終われば返してやろう。だが、大会の結果によっては、女の安全は保証しない……』」

 

 この文面が指し示す事柄はただ一つ。

 

「どうしよう……フィロが誘拐されちゃったよ!!」

 

「……ふざけたマネを……!」

 

 読み終えたグンナルは、憤怒の形相で手に持っていた紙片を握り潰した。今ここに犯人がいれば、すぐさま背に担いだ機械剣で細切れのミンチにされていたことだろう。

 それほどまでに、グンナルは怒り狂っていた。

 

「誰がこんなことを……」

 

「分かんないよ。今パメラが探しに行ってるけど……」

 

「パメラだけ? リヴィは?」

 

「それが、見当たらなくて……。誘拐されたって知ったら突然走り出しちゃって」

 

 要は、分からないということだ。

 心当たりがあるのか、あるいはがむしゃらに探し回っているのか。もしかしたら、途中でパメラと合流しているかもしれない。

 

 しかし、現状彼女たちに連絡を取る手段はなく、八方手詰まりの状況だ。

 そんな中、のんきに声をかけてくる人物がいた。……言うまでもない。トニだ。

 

「騒がしいねぇ。……おや? いつも一緒にいる女が見当たらないが?」

 

「……いかにも貴様らしい、卑劣な手段だな」

 

「言ってる意味が分からないねぇ……。まあ、お互い頑張ろうじゃないか」

 

 にやにやとわざとらしくて嫌らしい笑みを浮かべたトニは、勝ち誇ったような顔で去っていった。

 どう考えても、彼が犯人であることは確実だろう。弁護する者はいない。何せ、いつの間にか治っていたとはいえ、ホッフェンの樹を燃やした前科持ちだ。

 

 しかし、犯人が分かったところでフィロが誘拐されている現状は変わらない。恐らくはトニとよく一緒に行動しているレーネが実行犯だろうが、誰かが救出に向かわなくてはならない。

 

「何なのよ、あいつ! ここまでするフツー!?」

 

「どうします? 先輩……」

 

「どうもこうもあるまい。お前たち二人はフィロを探しに行け」

 

「でも、大会は……」

 

 なんの躊躇いもなく放たれた予想外のグンナルの言葉に、ヴェインが俯きながら疑問を投げ掛けた。

 グンナルがこの大会を心から楽しみにしていたことを知っているからこその疑問だった。

 

「心配無用。こっちは俺様一人で十分だ。ただし、決勝までには必ず戻ってこい。いいな?」

 

「……はい!」

 

「頑張ってね、グンちゃん!」

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

 フィロを救出するために動き出した二人だが、現在何も手掛かりはない。

 ひとまずパメラと合流することにした二人は、校庭で合流したパメラ(のお友達のモンスター)がフィロがマナ遺跡の中に連れていかれるのを見たという情報を聞き、すぐさま救出に向かった。

 

 しかし、マナ遺跡の入り口で見たのは、思いもよらない人物だった。

 

「あれ……リヴィ!?」

 

「んー……? ヴェイン、と……みんな?」

 

「もー、何やってんの! 探したんだよ!?」

 

 そう、そこにいたのは、フィロが誘拐されたと知るや走り出し、以後行方知れずになっていたリヴィだった。

 

 既に両手には双剣を構えており、彼女が一足先に救出に来ていたことを知らせていた。

 

「ごめんごめん。フィロがここに連れてかれたって聞いてさ」

 

「それならいいんだけど……フィロは奥に?」

 

「たぶんね。本当はトニさんをフルボッコにしたいんだけど……ま、仕方ないか」

 

「「…………」」

 

 

 にこにこと微笑みながらさらりと飛び出てきた過激な発言に、ヴェインたちの動きが止まる。が、言った本人はやれやれとため息をついてずんずんと遺跡の奥に進んで行った。

 

 どうやら、犯人(恐らくトニ)に対する不満はそこらにいるモンスターにサンドバッグよろしくぶつけることにしたようだ。心なしか、両手に持っている双剣もいつもより刃が鋭い気がしないでもない。

 

「……僕たちも行こうか」

 

「そうね……」

 

 十分後、マナ遺跡のモンスターが軒並み消え失せ、狂ったように双剣を振るう少女の姿が見られたという。

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

 辺り一帯のモンスターを狩り尽くし、マナ遺跡を踏破する勢いで(一年生が進める範囲の)最奥にたどり着くと、そこにいたのは倒れ伏す探し人(フィロ)と、面倒くさそうに爪をいじっているレーネだった。

 飛び出して行きそうになるのをぐっと堪え、ゆっくりと二人に近づいていく。

 

「フィロ……っ」

 

「あら、見つかっちゃった。もう少し時間稼ぎたかったんだけどなー」

 

 飄々と答えるレーネを、リヴィが剣を地面に突き刺してじっと見つめた。

 

「レーネ先輩、フィロを返してください」

 

「うーん……アタシもこんなことしたくないんだけどねー。でも、たまには協力しないと怒られちゃうし……」

 

「トニさんマジ許すまじ」

 

 リヴィが静かに犯人への怒りとか憎悪とか呆れとかを燃やす。戻ったら一度ぼこぼこにしてくれようか。そんなことを割と真面目に考えていた。

 が、ここで今いない人物への怒りを燃やしても仕方がないので、リヴィはやれやれと頭を振ってレーネに向き直る。

 

「最終勧告です。先輩、フィロを返してください」

 

「あらら。やっぱ見逃してもらえないか。うーん……仕方ない。たまには体動かしてみようかしら」

 

 そう言って、後ろに突き刺してあった大剣を構える。水晶を加工して作られた、処刑人のごとき大剣を目にして、しかし彼女は怯まない。

 全てはフィロを救うため。話し合いのため地面に突き刺していた双剣を手に取り、躊躇なくレーネに向ける。

 

 ヴェインはサルファを変形させた剣と鋭い爪を纏い、ニケは愛用のクラックハンマーを構え、パメラは相変わらずふわふわとお気に入りのクマを抱き抱える。

 

「そんじゃ……恨みっこなしですよ、先輩!」

 

 恨むならトニを恨めと半ばやけくそのように言いながら、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

 一対四という卑怯極まりない状況でちくちくと痛む良心を自覚しながら、ヴェインがいつものように開幕アナライズをレーネにぶつける。

 その後ろから。対人戦用に刃を潰してある双剣を構えたリヴィが身軽な動きでヴェインの背を踏み台にして跳び上がり、そのまま空中で回転しながら、双剣という利点を活かした三連撃を繰り出す。

 

 その、まともに食らえばひとたまりもないであろう攻撃を、レーネは両手で構えた大剣でいなしていく。

 そして、攻撃が終わって追撃が入るまでの僅かな隙に、自身が契約している蒼炎のマナをサモニングで呼び出す。

 

 追撃するために控えていたニケが、突如現れたマナに攻撃を断念する。

 

 これで二対四。数だけならば依然としてこちらが有利だが、相手は一年上の先輩だ。

 当然、実戦経験も自分たちとは比較にならない。がむしゃらに攻撃しても簡単にいなされてしまう。

 

 更に、時折飛んでくるマナの援護のヘルウェイヴが鬱陶しい。

 

 どちらかに集中すれば、もう片方に攻撃される。ならばどうするか。────簡単だ。どちらも巻き込むほどの広範囲で攻撃すればいい。

 

「無数の刺よ……!」

 

 ヴェインのスキルの一つ、『エルーデソーン』。

 右手の爪を地面に突き刺し、辺り一帯に無数の刺が地面から突き出す。ちなみに、リヴィもこのスキルを使うことができる。

 理由は不明だが、恐らく自分たちはサルファと重複契約をしているのだろうとリヴィは推測している。

 

 まあ、実際にそうなのか、もしくはリヴィは別のマナと知らぬ間に契約していて、姉弟だから同じスキルを使えるのかは分からないが。

 

 予想外の攻撃に、しかしレーネは怯むことなく冷静に────

 

「もうっ……大人しくしてね!」

 

 ────大みかん爆弾を投げつけてきた。

 

「……ファッ!?」

 

「ちょっ、みかんて……うわっ!?」

 

 何とか直撃は避けたが、みかんの中には煙状の睡眠薬が含まれていたらしく、もろに煙を浴びたニケが眠りこけてしまった。

 一つ舌打ちをして、リヴィがニケの頭をはたく。

 結果、ニケの目は覚めたが、更なる追撃はできなくなった。

 

 蒼炎のマナから放たれたヘルウェイヴをバク転の要領でかわしながら、リヴィは戦況を観察し始めた。

 

「(あのマナが厄介だなぁ……。先輩から離れるとこっちにヘルウェイヴ、近付こうとすると先輩にブーストをかけて能力を底上げしてる……。単体なら全然楽なんだけど)」

 

 巨大なハンマーを振るっているため、他の仲間よりも疲労が激しいニケを下がらせ、入れ違いでやって来たパメラのクマさん攻撃を見ながら考える。

 

 かといって、ずっと範囲攻撃では、ヴェインと自分の魔力が尽きてしまう。

 ここはやはり、レーネを集中攻撃するべきだろう。

 アイコンタクトでヴェインに伝えて、近くにいたパメラにも攻撃のために突進、すれ違った時に伝える。

 

 横目でちらりと見たが、小さく頷いていたため恐らくは伝わったのだろう。

 ならば心配はいらない。

 

「「刃よ、貫け!」」

 

 『ブレイドピラー』。これも二人が使える共通のスキルだ。

 左手のブレードを突き刺し、地面から大量の刃を出現させるもので、先程の『エルーデソーン』と似たようなスキルだが、あちらが範囲攻撃なのに対し、こちらは一点集中型の攻撃だ。

 

 右手か左手かの僅かな違いに気付くことが出来なかったレーネは、もろにその攻撃を食らうことになった。

 刃を潰してあるとはいえ、突き出てくる時の勢いは凄まじい。

 風圧などで、レーネの頬にピッ、と一筋の切り傷が出来た。

 

「……ッ、ちょっと、マジかも……!」

 

 さすがにこのままではまずいと考えたのか、レーネが地面に手をつき、剣を高速回転させて待機状態に入る。

 蒼炎のマナがレーネを守るようにしている時点で、発動の途中で攻撃を入れることは不可能。

 

 ならば防御に専念すべき、と一番レーネの近くにいたリヴィは両手の剣を交差させる。

 

 ヴェインが回避するために後ろに飛ぶのと、チャージを終わらせたレーネがリヴィの元へ走るのはほぼ同時だった。

 

「すごいのいきますッ!」

 

 高速回転していた剣を掴み取り、レーネが突進する。

 魔力を付加されて巨大化した剣を、リヴィに向けて横一線に振り抜いた。

 

 レーネが得意としているスキル、『激気力全開一刀両断斬』。

 文字通り、全力の剣で一刀両断にするものだ。まともに食らえば戦闘不能に陥るだろう。

 

 桜色の刀身を受け止め、衝撃を減らすために後ろへと飛ぶ。とっさに発動させた小規模の『ブレイドピラー』で多少緩和されたが、それでも死なない程度に全力の攻撃だ。

 受けきれずにリヴィが吹き飛んでいく。

 

 しかし、リヴィがいなくなったとしても、周りにはヴェインやパメラ、後ろから戻ってきたニケがいる。吹き飛ばしたはずのリヴィも、コモンスキルを発動させるための準備を終わらせていた。

 

 結局、レーネは全員の総攻撃を食らい、負けたのだった。

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

「あいたた……降参降参。もお、少しくらい手加減してよー」

 

「トドメを刺さないだけでも、ありがたく思いなさい!」

 

「生憎と、誘拐犯にかける情けは持ち合わせていないので」

 

 手を腰に当て、苛立ったように……いや、実際苛立っているのだが、ニケが威嚇するように尻尾を逆立てる。リヴィも、くすくすと笑うように言ってはいたが、その目は微妙に笑っていなかった。

 

「おお、こわ……はいはい。アタシが悪かったわよ」

 

 所々ヒビが入った水晶剣を引きずりながら、レーネが立ち去る。と、思い出したようにこちらを向いて、

 

「あ、そうそう。その子、薬で眠ってるだけだから。ほっとけば勝手に起きるわよ」

 

 と言い残して、完全に姿が見えなくなった。

 とりあえずの脅威を退けた四人は、慌てて倒れ伏すフィロのもとへ駆け寄った。

 

 レーネの言う通り、薬で眠っているだけのようだ。

 

「さてと……先輩にも困ったもんだねぇ」

 

「そんなに悪い人じゃなさそうね~。お友達になれるかも~」

 

「なに言ってるの! あいつは誘拐犯よ、誘拐犯!」

 

「フィロ、大丈夫?」

 

 ニケの心配そうにかけられた声に反応したのか、フィロが腕を伸ばして大きなあくびをした。

 

「んー……むにゃ……あれ? あ……おふぁよう、みんな……」

 

「あ、起きた」

 

 まだ眠そうに目をこすっているフィロを抱え起こし、目の前でぱたぱたと手を振る。

 寝ぼけているのか、フィロはぽやー、といつもよりふにゃふにゃした笑顔で応えた。

 

「おはよ、フィロ。ケガとかない? 大丈夫だと思うけど、なにか変なこととかされなかった?」

 

「なにかって……? あれ? たしか、レーネ先輩にケーキをもらって、それを食べて……」

 

「知らない人から物をもらっちゃダメでしょ!」

 

 眠気が抜けない様子でほえほえとしているフィロに、ニケがあほ毛と尻尾を逆立てながら注意する。

 そんな友人に、フィロはとりあえず間違いを正そうとし、ほんの少し頬を膨らませて訂正した。

 

「知らない人じゃないよ。レーネ先輩だよ」

 

「いい? フィロ。レーネ先輩はともかく、トニさんになにかされそうになったら絶対についていったり物をもらったりしたらダメだよ? ……それはともかく、ヴェインは早く行った方がいいんじゃない?」

 

「あ、そうだね……行ってくる」

 

「あとから行くねー。……あ、そうだ。トニさん完膚なきまでにぼこぼこにしてきてねー」

 

「う、うん……?」

 

 ぐっ! と親指を立てながらいい笑顔で言われた過激発言に、思わず頷いてしまう。

 しかし、そこにツッコんでいる場合ではない。ヴェインはとりあえずグンナルの待つ学園まで急いで戻って行った。

 

 そんなヴェインを手を振って見送ったリヴィたちを見て、フィロが大きくあくびをした。

 

「んにゅ……じゃあ、あと5分だけ……」

 

「「ダメ! 起きなさい!!」」

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

《さあ、武闘大会もいよいよファイナルを迎えました……》

 

 司会の噛み締めるような言葉に、観客席から歓声が上がる。

 途中、グンナルのパートナーがいなくなってしまったため、レフェリーが勧誘されるという予想外の出来事があったが、概ね問題もなく武闘大会は決勝戦まで進んでいた。

 

《Aブロックからは、もちろんこの男! レフェリーを仲間に加え、圧倒的な強さで勝ち上がってきた。破壊王グンナル!! 対するは、学園でも一、二を争うクール&ダーティペア。トニ&ロクシス!!》

 

 司会のコールに、再び歓声が上がる。しかし、試合場に思い描いていた人物が見えないことに、ロクシスが顔をしかめた。

 

「ヴェインめ……逃げたのか……?」

 

「いいのかグンナル。棄権しないと、色々困るんじゃないのか?」

 

 トニの含むようなセリフに、グンナルは笑って答えた。

 

「ふん。相変わらずツメの甘い男だな」

 

「どういう意味だ!?」

 

「後ろを見てみろ」

 

 食ってかかるトニを鼻で笑うと、くいっ、と顎でトニの後ろを示した。言われた通りに後ろを振り向くと、予想外の人物にトニが丸々五秒間ほどフリーズした。

 

「ごめーん。取り返されちゃったー」

 

 てへっ☆というような顔で、悪びれもなく謝るレーネがそこにいた。

 

「なっ!? なにをやってるんだ、お前はぁぁ!?」

 

「先輩……また、余計なマネを?」

 

 呆れと怒りがない交ぜになった表情でロクシスが問う。前回のこともあり、ロクシスはこの先輩にさほど良い印象は抱いていなかった。

 

「余計とはなんだ! 上手くいくはずだったんだ」

 

「努力は認めますが、努力する方向が間違っているんですよ」

 

「貴様、言わせておけば……」

 

 もはや呆れ一色に染まったロクシスのもっともなセリフを受けたトニは、ギロリとロクシスを睨み付けた。この場合、完全にロクシスが正しいのだが、それを指摘したところでトニは逆ギレするだけだろう。

 そんな険悪な雰囲気の中、講堂の入り口からグンナルが待ち望んでいた声が聞こえてきた。

 

「先輩!」

 

「来たな……」

 

 誰あろう、本来のグンナルの(本人からすれば不本意な)パートナー、ヴェイン・アウレオルスだ。肩には契約しているマナのサルファを乗せている。

 

「すみません、遅くなりました」

 

「ふん、決勝ギリギリで間に合うとは。ヒーローっぽいではないか」

 

 くつくつと楽しそうに笑い、グンナルはここまでの戦いを共に駆け抜けてきた臨時パートナーのレフェリーに向き直る。

 

「お前の協力なくして、この場に立つことは不可能だった。感謝する」

 

「あなたと共に戦えたこと、光栄に思う。いいファイトを期待する」

 

 ぐっ、とお互いに握手をして、レフェリーは本来あるべき場所へと戻る。

 そんなグンナルをリヴィが見ていれば、『グンナルさんがお礼を言った……だと……!?』といささか大袈裟なリアクションをするであろう光景を、ヴェインはじっと眺め……レフェリーが戻るのと同時に、グンナルの隣に立った。

 

《おぉーっと、破壊王の相方が復活! ここに、決勝の舞台が整ったぁぁぁ!!》

 

 テンションが最高潮に達した会場から、大きな歓声が上がる。

 それを無視して、ロクシスがヴェインにため息をつきながら向き直った。

 

「……うちの先輩が、また迷惑をかけたみたいだな」

 

「ロクシス……」

 

「だが、それはそれだ。勝負は本気でやらせてもらう。……お前には負けない」

 

 すっ、と最近新調したアストラルカードをヴェインに突き付けながら、ロクシスが宣言する。

 相変わらず嫌われている理由が分からない、しかも不本意に参加させられたヴェインだったが、ここまで来て適当に済ませる気は毛頭なかった。

 

「僕だって……!」

 

 サルファを纏いながら、戦意を抱いてヴェインが雄々しく地面を踏みしめた。

 

《早くも火花を散らす一年生の両雄!! もはや一刻も待てない!!》

 

 司会が腕を交差させる。観客席からの声はない。

 

 緊張感のある空気の中、司会が腕を振り抜く。

 

《それでは決勝戦! ファイトォォォォォォ!!》

 

 鳴り響くゴングと共に、アルレビス学園武闘大会決勝戦が幕を開けた。




最初はヴェインの代わりに臨時でリヴィを参加させるつもりだった。が、それはそれで何かなーと思ったので結局救出隊に参加。

え、トニ?大丈夫、ボコる機会はまだある。
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