Mana-Khemia ~zwei alchemist 二人目の錬金術士~   作:村人A

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連続投下。自動保存があって助かった……。


第2話 ここはグンナルのアトリ……やっぱ却下で

「はあ……歩き回って疲れちゃった」

 

「私もー。そろそろ寮に戻ったほうがいいのかな?」

 

 

 フィロと学園内を回り、気が付けばかなりの時間が経っていた。学園内は広くて、足が痛む。

 寮はどっちかな、と辺りを見回していると、階段の上の方から声がかかった。

 制服が青ではなく緑であるところを見ると、二年生なのだろう。しかし、いかにもガラが悪そうである。ポケットに手を突っ込みながらこちらに歩いてきた。

 

 

「おい。お前がヴェイン・アウレオルスか?で、そっちのお前はリヴィ・アウレオルスだな?」

 

「そうですけど……」

 

「ヴェインくん、リヴィちゃん、知ってる人?」

 

「ううん。不良の友達なんていないよ?」

 

「おいっ!?てめ、失礼なやつだな!?」

 

 

 見知らぬ不良(仮)はイラついたのか、ポケットから手を出して突っかかってくる。

 すると、一緒にいた金髪の女子がこちらを見ながら男子に話しかける。

 

 

「ほんとにこの子たちなの?片っぽはなんか冴えない顔してるけど」

 

「知るか。名前が同じなんだから、そうなんだろうさ」

 

「ふーん。まあいいわ。さっさと連れて行きましょ」

 

「あの……なんの用ですか?」

 

「お前らを連れてくるように言われてるんだ。ほら、さっさと来い」

 

 

 ぐい、とヴェインの腕を引っ張る男子生徒。乱暴な扱いに思わず顔をしかめてしまう。ちょっとお灸をすえてやるべきだろうか。しかし、その考えは実行に移す前に消え去った。

 

 

「待てーい!!」

 

 

 大きな声とともに、階段の上から赤毛の男が現れたのだ。後ろにはねあがった髪の毛、背中には機械仕掛けの大剣を背負っている。制服は改造でもしたのか原型を留めていない。

 

 ぶっちゃけ、面倒臭そうな人が増えただけだと思ってしまった。

 

 

「ちっ、グンナルか。今はお前に付き合ってるヒマはねえんだ、邪魔すんな」

 

「貴様らこそ、俺様の邪魔をしないでもらおうか。おい、そこのお前たち!」

 

「……私たち?」

 

 

 首をかしげながら聞き返す。それにグンナルと呼ばれた男は豪快に笑いながら頷いた。

 

 

「他に誰がいるというのだ。お前たちは、すでにこの俺様が予約済みだ」

 

「予約って、いつの間に……。それに、私たち初対面ですよね?」

 

「おうとも。俺様は今までお前たちと会ったことは一度もないぞ」

 

 

 がっはっは、と笑いながらグンナルさん(仮称)。話が噛み合っているのか噛み合っていないのかいまいちよく分からない。分かったのは、この人も面倒臭そうだということだけ。

 はてさて、どうすべきかな。

 

 

「ふざけるな!後からしゃしゃり出てきて勝手なことを言うんじゃねえ!」

 

「勝手なこと?ならばここは男らしく、体で決着をつけるか?」

 

「望むところだ!!」

 

 

 知らぬ間にヒートアップしている二人。この隙にこっそり逃げ出してもいいんだけど、面白そうなのでそのまま見ていることにする。

 ケンカを売られて突っかかっている赤毛……どっちも赤毛だった。不良(仮)に、隣で爪をいじっていた金髪の女子が忠告?する。

 

 

「やめとけば?アンタじゃ勝てないでしょ」

 

「お・ま・え・も・て・つ・だ・え!二人がかりならどうにでもなる!」

 

「やーよ。塗ったばっかのマニキュアはがれちゃうもん」

 

「お前なあ……!」

 

 

 なにこれ面白い。若干不良(仮)が不憫に見えるけど放置。ヴェインに手を出した罪は重い。

 

 

「……わたしたち関係なしに話が進んでるね」

 

「うん……どうしたらいいのかな……」

 

「ほっとけば?これはこれで面白いし」

 

「リ、リヴィ……」

 

 

 ふあ、と欠伸をしながらヴェインに返す。微妙に呆れたような顔をされたが気にしない気にしない。

 

 

「さあ、さあ!どこからでもかかって来るがいい!」

 

「……くそっ!覚えてろよ!」

 

 

 そうこうしている内に話はついたらしい。やられ役の三下のような捨てゼリフを言って、不良(仮)が逃げていく。

 これは一応お礼を言ったほうがいいのだろうか。

 

 

「戦わずして逃げたか……賢明な判断だな」

 

 

 ふっ、と笑って、こちらに歩いて来るグンナルさん(仮称)。そのまま私たちの目の前に立つと、腕組みをしながら話しかけてきた。

 

 

「ジャマ者は消えた。さあ、ついてこい」

 

「えと……状況がよくわからないんですけど」

 

「あの二人はトニとレーネ。分かりやすく言うと、悪の手先だな」

 

「悪、ですか……」

 

「危うくさらわれるところを、このグンナル様が助けてやったというわけだ」

 

「あ、ありがとうございまし、た……?」

 

 

 グンナルさん(確定)の言葉に戸惑っている様子の二人。私?グンナルさんの言い方に爆笑寸前ですがなにか?ふ、腹筋が……!

 

 なんとかポーカーフェイスを保ち、グンナルさんに話しかける。

 

 

「それで、わたしたちどこに行けばいいんですか?」

 

「それは行ってからのお楽しみだ。さあ、行くぞ!」

 

 

 もはやついてくることが確定したかのように歩きだしたグンナルさん。その余裕は一体どこから来るのだろうか。非常に気になる。

 

 

「どうしよう……?」

 

「行ってみようよ。面白そうだし!私興味あるし」

 

「うん、わたしも行きたい!」

 

 

 少し小走りになりながらグンナルさんの後を追いかけていく。さて、どんなところなのかなー。お姉さんワクワクしちゃうぜ。

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

 グンナルさんに案内されてたどり着いたのは、蒼い炎をあげる大きな釜がある部屋。そしてその部屋の奥には獣耳が生えた少女がいた。

 彼女はグンナルさんに気付いたのか、たたたっ、と軽快な動きで走ってくる。

 

 

「あ、グンちゃんおかえりー」

 

「おう、戻ったぞ」

 

 

 適当にグンナルさんへの挨拶を済ませた少女は、こちらを見てにぱっ、と笑った。

 

 

「その子たちが新しい被害者?」

 

「被害者ではない!同志だ!」

 

 

 むっ、とした様子で少女に反論するグンナルさん。しかし、連れて来られた側としては「えっ」と思わざるをえない。まあ、面白そうだからってついてきたのは私たちだけどね。

 

 

「わあ……アトリエだぁ……!」

 

「すごい……」

 

『アトリエか……懐かしいな』

 

 

 部屋の中を見回っていたヴェインとフィロが感動したようにそう呟いた。サルファは懐かしそうにしていたけど、見たことがあるのかな?

 

 アトリエ……確か、錬金術士が調合とかに使う部屋のことだよね。ってことは、あの大きな釜は錬金釜かな?意外とちゃんとした設備があるんだなあ。そういえば、うちにもあったけど、もっぱら料理用の鍋だった。

 ……ああ、なるほど。私が鍋で料理を作る度にサルファが呆れたような顔をしてたのは、錬金釜を料理用の鍋にしていたせいだったんだな。

 

 

「驚いているようだな。ここは俺様のアトリエ……そう、グンナルのアトリエだ!」

 

「アトリエに文句はないけどその名前は全力で却下しますグンナルさん」

 

「なにを言う!これ以上ふさわしい名前はあるまい!」

 

「却下で」

 

「……なんですか、騒がしい」

 

 

 アトリエの名前について口論していると、入り口の方から声が聞こえた。入ってきたのは教頭先生。

 ちょうど先生の方を向いていたグンナルさんが軽く手をあげる。え、それもしかして挨拶のつもりですか?

 

 

「おお、エルメントラウト女史。ちょうど良いところに来たな」

 

「教頭先生と呼びなさい。何度言ったら理解できるのですか」

 

「敬意を込めて、女史と呼んでいるではないか。それより見ろ、四人の新人だ。俺様を含め五人。これで問題なかろう」

 

「おや……しかし見たところ、全員一年生のようですね」

 

「うむ。期待の新戦力だ」

 

 

 胸を張って答えるグンナルさんを見て、はあ……とため息をついて頭を振る教頭先生。

 さっきから問題ないとか新戦力とか、なんの話をしているのだろう。

 

 

「……あなたに一年生を預けるのは不安ね。この子たちの将来が台無しになってしまう」

 

「失敬な。俺様の下につくほど幸せなことはあるまい」

 

 

 教頭先生の言葉にふんぞり返ってグンナルさん。ほんとにその自信はどこから来ているのですか。

 先生はもう一度大きなため息をつくと、鋭い目付きを更に鋭くしてグンナルさんに話しかける。

 

 

「……やはりこれは、認めるわけにはいきませんね」

 

「それでは約束が違うではないか!?」

 

「どうしよう……止めた方がいいのかな?」

 

 

 口論に発展しかけている二人を、おろおろとした様子で見つめながらヴェイン。一方、フィロと私はというと。

 

 

「わたしはフィロ。あなたも一年生?」

 

「うん。うちはニケ。獣人は珍しいからーって連れて来られたの」

 

「つまり、私たちと同じく連行されたわけね……。御愁傷様。あ、私はリヴィ。リヴィ・アウレオルスだよ」

 

「あはは、面白そうだからついてきたんだけどねー」

 

 

 このように、ガールズトークに華を咲かせていた。

 

 

「尻尾かわいいなぁ。ね、ね、さわってもいい?」

 

「いいよー。くすぐったくしないでね」

 

「あ、リヴィちゃんずるい!わたしもわたしもー!」

 

「あの、ちょっと、三人とも……」

 

 

 哀れヴェイン。君の味方はいなかった。

 

 しばらくそうして話したりモフモフしたり話したりモフモフしたりモフモフしたりしていると、突然グンナルさんの怒鳴り声が聞こえてきた。

 

 

「ならば我々が!十分にやれることを証明してやろうではないか!」

 

「そうですね。無理だと分かれば、あなたも諦めがつくでしょう。……二週間差し上げます。その間に、『ニクロ布』を作ってみせなさい」

 

「ニクロ布だな?いいだろう。後で吠え面かくなよ!」

 

「ダメだった時は、このアトリエの使用許可は取り消します。それまでは自由に使いなさい。すぐ後に使う人が困らないよう頼みますよ」

 

 

 売り言葉に買い言葉。いつの間にか話はついたらしい。……私たち抜きで。

 ふん、とため息をついて教頭先生が出ていく。その少し前に、私とヴェインを見て、ぽつりと呟いた。

 

 

「あなたがヴェイン……そして、あなたがリヴィですね」

 

「アッハイ」

 

「……ふん」

 

 

 何を思ったのか、教頭先生はもう一度鼻を鳴らして去っていった。なんだったのだろう、とヴェインと二人顔を見合わせて首をかしげる。

 

 そこに、ものすごくヒートアップしているグンナルさんが暑苦しく語り始めた。

 

 

「聞いたな!これは明らかに我々に対する挑戦だ!」

 

「うん。明らかにグンナルさんがケンカを売ってました」

 

「ケンカは買うものではない!売るものだ!」

 

 

 それには少しだけ同意します。やだ、意外と私この人と気が合うのでしょうか。

 

 

「そういうわけで、『ニクロ布』の調合はお前たちに任せる」

 

「えっ」

 

「俺様は、やらねばならぬことがあるのでな。では!」

 

 

 それだけ言うと、グンナルさんはアトリエから走り去ってしまった。調合押し付けられちゃったよ。

 

 ちなみに、この後サルファから、

 

 

『人の話を聞かないところはお前に似ているな』

 

 

なんてお言葉を頂いた。失礼な。人の話を聞かないんじゃない。ただ真面目に聞く気がないだけだ。

 

 ……あれ、これってダメなやつ?




あと二話!
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