Mana-Khemia ~zwei alchemist 二人目の錬金術士~   作:村人A

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さらに投下。


第3話 いやあ、キノアラ×4匹は強敵でしたね

「んっと、リヴィたちはなにも聞いてないの?」

 

「さっきのグンナルさんと先生の言い争いで大体は推測できるけど……」

 

 

 グンナルさんが風のように去っていったあとのアトリエ。そこで私たちは、同じグンナルさんの被害者であるニケに話を聞いていた。

 

 

「えっとね、この学校では、四人以上の生徒がいれば、共同でアトリエを借りられるの。で、グンちゃんは去年までここを使ってたんだけど、先輩が卒業しちゃって。今年から一人になったから追い出されそうになったんだってさ」

 

「なるほど。アトリエ存続の危機、ということかー」

 

 

 ふむふむ、と相槌を打ちながら、グンナルさんが私たちを連れて来たのは数合わせのためだった、というわけかと納得する。

 でも、さっきの話だと二週間以内に『ニクロ布』を作らないと追い出されるってことらしいけど。

 

 

「大丈夫かな、僕たちだけで……」

 

「あはは、グンちゃんどっか行っちゃったしね」

 

「笑い事じゃないよ。錬金術なんて、まだ全然わからないのに……」

 

「わたし、結構得意だよ!錬金術」

 

 

 不安そうなヴェインに明るく笑いかけるフィロ。ニクロ布か……。確か、家から持ってきたレシピに載ってたかな?

 

 

「レシピはうちにあったし、きっと大丈夫!まだ二週間もあるんだしさ!」

 

「そんな簡単に行くかな……」

 

「はいはいうじうじしない。やってみなきゃ分かんないでしょ?」

 

「まあ、考えてもしょうがないし。今日はもう帰ろっか」

 

 

 なおも不安そうなヴェインの頭をぽんぽんと叩く。ニケの言った通り、今日はもう寮に戻ろう。

 戻ったら、家から持ってきた本を引っ張り出さないとな……。

 

 

「なんであんなに気楽なんだろう……」

 

『お前が考えすぎなだけだ。せっかくの学校生活なんだ。もっと楽しんだらどうだ』

 

「楽しむ、か……」

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

 一週間後。担任であるゼップル先生から、授業の課題が出された。

 未だに不安なのか、ヴェインは「『ニクロ布』も作らないといけないのに……」と呟いていた。

 

 

「うーん……まずは課題を片付けちゃおっか。四人でやればすぐに終わるよ」

 

「リヴィちゃんの言うとおりだよ!もう昨日レシピは見つかったんだから、焦らなくても大丈夫だって!」

 

「そうかな……」

 

 

 出された課題は基本的な回復薬である『リフュールポット』の材料である『きよ水』、『青い花びら』、『ハウレン草』を集めてゼップル先生のもとに持っていく、というものだ。『きよ水』はアトリエの水道に、他二つは『生きし森』というところに生えているそうだ。

 

 

「とりあえず、三十分後に『生きし森』で落ち合おうか。みんな武器とか用意してないだろうし」

 

「そだね。じゃ、三十分後!」

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

 三十分後。

 

 私たちは、課題のアイテムである『青い花びら』と『ハウレン草』を手に入れるため、『生きし森』の入り口にいた。

 

 

「お待たせっ!みんな待った?」

 

「大丈夫、さっき来たばっかりだよ。フィロも大丈夫?息あがってるけど」

 

「だ、大丈夫だよ……」

 

 

 当然ながら学園の外にはモンスターがいる。そのため、それぞれ使う武器を用意してから集まったんだけど……みんな、変わってる。

 

 フィロの武器は見た目なんの変哲もないカバン。フィロ曰く、爆弾とかを入れてあるらしい。

 

 ニケの武器はでかいハンマー。獣人故なのか、細い腕で先をぐらつかせることなく支えている。

 

 対する私とヴェインはなにも持っていない。そのことで二人には心配されたけど、私たちにはサルファがいる。なにをするのかは見てのお楽しみだ。

 

 

「植物系のアイテムみたいだし、その辺の草刈れば出てくるんじゃない?」

 

「そんなんでいいの?えっと、こう?」

 

 

 さくっ、とヴェインが小型のナイフでその辺に生えている草を刈り取る。周りの草を刈り取った後、なにかを握りしめて戻ってきた。

 

 

「なにそれ?……あ」

 

「『青い花びら』?これ、課題のアイテムじゃん!ラッキー!しかも四枚!もう全員分あるよ」

 

「うん。あれ、なんかあの辺りから音が……」

 

 

 誉められて照れ臭そうに頭の後ろを触るヴェイン。しかし、その視線が奥の草むらに固定された。

 がさがさと動いている草むらをじっ、と見つめていると、突如トゲのついた木にしがみついている謎の生き物が出現した。数は四匹。

 うわ、めっちゃ威嚇してる。

 

 

「うわあ、可愛い!」

 

「フィロ、それモンスターだよ」

 

「えっ、ど、どうしよう?」

 

「戦うしかないね。みんな、準備はいい?」

 

「もっちろん。ヴェイン、いくよ!」

 

「う、うん」

 

 

 各々が自分の武器を取り出し、モンスターに向けて構える。サルファがヴェインの腕に飛び付き、黒い繭で覆う。次に現れた時、ヴェインは右手に巨大な爪のようなものをつけ、左手には薄いプレートの剣をつけていた。

 私は見慣れているから特に思うことはないけど、フィロたちはかっこいいと騒いでいた。分かるよその気持ち。私も最初に見たときはそう思ったなぁ。

 

 そんなことを考えながら、前を向く。

 

 次の瞬間、私を薄い翡翠の色をした水晶が覆う。全身を覆うと、パリン、と小気味いい音を立てて砕け散る。

 両手にヴェインの右手に似たような籠手をつけ、その手にはヴェインのものよりは少しだけ幅が狭い剣を持っていた。いわゆる双剣だ。ただし、剣の長さはヴェインのものとほぼ同じである。

 

 これも私にとっては慣れたものなので、特に思うことはない。

 

 

「わ、ヴェインくんもリヴィちゃんもかっこいい!」

 

「そ、そうかな……?」

 

「ありがと、フィロ」

 

 

 それだけ言ってモンスターの方を向く。図鑑では見たことがある。確か、キノアラというモンスターだ。一生のほとんどを木の上で過ごすらしい。

 まあ、そんな豆知識、今はいらないか。

 

 両手に持った剣で二体同時に三回切り裂く。それだけでモンスターは形を崩していった。モンスターって、倒しても死体が残らないのが目に優しいよね。

 

 残った二匹のうち一匹は、倒された仲間たちを見て逃げようとした。しかし、それは失敗に終わった。

 

 

「えーいっ!」

 

 

 敵に背を向けるという愚行を犯したキノアラは、後ろから投げつけられたフィロの爆弾により木から転げ落ち、大きくハンマーを振りかぶったニケに潰された。

 どうなったのかは地面がクレーターになっていることからお察しである。

 

 残った最後の一匹は、左手の剣を巨大化させたヴェインに切り刻まれ、跡形もなく消滅した。

 

 完全勝利である。

 

 

「ふうっ。みんなすごいね!リヴィなんか一瞬で二匹倒しちゃってさ!」

 

「まあ、私は二刀流だから。二人もすごいよ。フィロの爆弾の威力は物凄かったし、ニケは跡形もなく消しちゃうし」

 

「えへへ、この爆弾、わたしが作ったんだ!それに、ヴェインくんもすごいよ!かっこよかった!」

 

「そうかな……?」

 

 

 誉められて嬉しいのか、顔を若干赤く染めるヴェイン。確かに、森にいたころは誉めてくれる人なんて私とサルファくらいしかいなかったもんね。

 そんなヴェインに、フィロが興味津々といった様子で話しかけた。

 

 

「ねえ、ヴェインくん!わたしもサルファくん着てみたいな!」

 

「あ、うちもうちも!」

 

「だって、サルファ……」

 

『無理だな。お前以外とやる気はない』

 

「……残念二人とも、ダメだってさ」

 

「えー、つまんないの」

 

 

 ぶー、と頬を膨らませるフィロ。不意に、その隣で同じように膨らんでいたニケがあれっ?と声をあげた。

 

 

「……でも、サルファってヴェインにくっついてたよね?リヴィはなんで武器を出せたの?」

 

「うーん……私もそれは昔から気になってたんだけど、いまいちよくわからないんだよね。なんでかできちゃう、みたいな?」

 

「そうなんだ……」

 

 

 まあ、今じゃもう全然気にならないけどね。考えてもしょうがないし。

 その後、首尾よくもうひとつの課題アイテムであり、『ニクロ布』の材料でもある『ハウレン草』を多めに手に入れた私たちは、ゼップル先生に報告するために学園へと戻るのだった。

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

「ゼップルせんせー、言われたもの持って来ましたー!」

 

「お、早かったね。君たちが一番乗りだよ」

 

 

 教員棟にあるゼップル先生の部屋を訪ねた私たちを、先生は錬金釜の前でにこにこしながら待っていた。

 集めてきたものを渡すと、先生はひとしきり眺めてから「うん」と頷いた。

 

 

「確かに課題のアイテムで間違いないね。じゃあ、次だ。君たちには『リフュールポット』を調合してもらうよ」

 

 

 おお、ついに錬金術を実践するときが来たのか。ちょっと感動していると、ゼップル先生はヴェインに一枚の紙切れを渡した。

 

 覗いてみると、そこには図とアイテムの名前、調合の手順などが丁寧に書かれていた。

 

 

「それがレシピ。簡単に言えば設計図だね。見ればわかると思うけど、レシピにはアイテムを作るための手順や、必要な材料が書かれているんだ。だからレシピを知らないと、どんな簡単な物でも作ることはできない」

 

「なるほど。うちではホコリ被ってたけど、大切な紙だったんですね」

 

「ほ、ホコリって……。まあ、そういうことだ。試しにここで作ってみなさい。一人一回ずつね」

 

「は、はい」

 

 

 ヴェインが緊張しながら錬金釜の前に立ち、レシピを見ながら材料をいれ始める。

 材料を混ぜるとき、その材料の属性に合った混ぜ方をしながら調合すると、普通に作るよりも高品質なものができる。

 ヴェインは慎重に慎重に、属性を間違わないように作っている。そのおかげか、三回中二回発光し、なかなかに良い出来のものが仕上がった。初めてにしては上出来らしい。

 

 続いてニケ、フィロの順番で調合する。ニケは一回だけ集中力を切らして反対の属性の混ぜ方をしてしまい、品質は少し悪くなってしまった。フィロは同じ属性で混ぜることはできなかったが、反対属性は一度もしなかった。

 

 さて、お次は私の番なわけだが……結果から言えば大成功だった。……ただし、みんなを驚愕させる結果だったけど。

 なんと、三回中三回全て同じ属性だったのだ。おかげで品質は最高級。結構雑にやったんだけどな。

 

 まあ、良い点数で困ることはないし、私とヴェインは『優』、フィロは『良』、ニケは『可』とそれぞれの評価をもらった。

 

 それと、普段はアトリエの錬金釜を使うように、とのこと。グンナルさんのアトリエだと伝えると、少し難しい顔をしてから、まあ大丈夫だろうと言われた。

 ……グンナルさんは悪い方で有名らしい、とみんなでため息をつくのだった。

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

「ああ……どうしよう。課題の日まであと一日しかないよ……」

 

「材料はあと一つなのにね……」

 

 

 初めての錬金術からさらに一週間。戦闘学の授業を瞬殺し、意気揚々とニクロ布の調合に乗り出したのだが。

 

 

「ほんと、『ふさふさ』ってどこにあるんだろ?」

 

 

 そう、材料がまだ揃っていないのだ。このままでは、アトリエを追い出されてしまう。

 図鑑で調べても説明しか載ってないし、家から持ってきたレシピにも書いていなかった。

 

 どん詰まりである。

 

 

「もー!グンちゃんはどこ行ってるのよ!こんな時に!」

 

 

 うがー、とこの状況の元凶であるグンナルさんに叫ぶ。確かに、張本人がいないのはちょっとよろしくないと思う。一応、あんなのでも先輩なわけだし……。

 

 

「おう、呼んだか?」

 

「あ、先輩!」

 

 

 みんなであーでもないこーでもないと愚痴り合っていると、アトリエの入り口からグンナルさん(元凶)が現れた。

 

 ここはまず……。

 

 

「こんな時にどこ行ってたんですかこのど阿呆ー!!」

 

「むっ!?」

 

 

 恨み辛みを込めたドロップキック。しかし悲しいかな、それなりの力だったにも関わらず、グンナルさんに避けられてしまった。

 

 ちっ、いつか顔面にぶちこんでやる。

 

 

「どうしたどうした?すごい歓迎ぶりだな」

 

「どこ行ってたんですかグンナルさん。そんなに呑気なことを言ってる場合じゃないんですけど」

 

 

 じとー、と睨み付けながら状況を説明する。

 

 しかし、話を聞いたグンナルさんの第一声は、

 

 

「なんと、まだ完成してなかったのか……嘆かわしい」

 

「元はと言えばグンナルさんのせいじゃないですか。それに、錬金術始めたばっかの素人に何を期待してるんですか、あなたは」

 

 

 はあ、とため息をつく。だが、こんなのでもやっぱり一応は先輩だった。足りない材料である『ふさふさ』のことを教えてくれたのだ。相変わらず、やることがあるとかって参加する気はないみたいだけど。

 

 最後の材料である『ふさふさ』は、旧校舎に生息している『ロアビースト』というモンスターが落とすらしい。ニクロ布の提出期限は明日。すぐにでも取りにいかなくてはいけない。

 みんなに声をかけて戦闘の支度をする。リフュールポットよし、イカロスの翼(帰還アイテム。何回使っても壊れない)も持った。

 

 よし、突撃だ!

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

 結論から言うとロアビーストは雑魚だった。

 

 ヴェインのアナライズで弱点を探り、私の双剣でピンポイントで攻撃し、フィロの爆弾その他諸々で吹き飛ばし、ニケのハンマーでぶっ潰した。

 お目当ての『ふさふさ』も、ちゃんと入手した。他のものにも使えそうなので、結構多めにぶんどっ……ゲフンゲフン、もらってきた。

 

 さっそくアトリエに戻り、ニクロ布を調合する。途中でフィロが隠し味と称して怪しげな粉末を用意。ヴェインは『普通に作ったほうが……』と不安そうにしていたが、グンナルさんはノリノリで『やれい、フィロ!』と言った。かくいう私も入れて欲しい側だった。失敗してもまだふさふさはあるしね。

 

 そうして出来たのはかなり高品質のニクロ布。一年生だけで作ったとは思えない出来映えだった。

 

 みんなで出来た出来たと喜んでいると、タイミングよくエルメントラウト女史、もとい教頭先生がやってきた。グンナルさんが自慢気にフィロにニクロ布を見せるように指示。

 教頭先生は受け取ったニクロ布をしばらく眺めたあと、『反面教師がいるのも悪くないかもしれませんね』と若干グンナルさんに失礼なことを言ってから、正式にアトリエを使用する許可をくれた。大勝利である。

 

 アトリエの使用許可をもぎとった私たちがみんなで文字通り跳んで喜んでいると、グンナルさんが豪快に笑いながら話しかけてきた。

 

 

「よし、さっそく祝杯をあげるぞ!」

 

「おー!グンちゃんの奢り?」

 

「うむ。活躍した者には十分に報いねばな!」

 

「グンナルさん太っ腹ー!ヴェイン、食堂行くよ!食堂!死ぬほど食べよう!」

 

「ま、待ってよみんな!」

 

 

 ヴェインの手を引っ張って、グンナルさんの後を追って食堂に向かって走り出した。

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

 ────こうして僕たちは、同じアトリエで勉強することになった。

 

 グンナル先輩と、フィロと、ニケと、リヴィ。それと僕と……。

 

 ドタバタの連続で、入学直後の不安もすっかり忘れてた。……リヴィは、最初から不安なんてなかったみたいだけど。

 

 でも、楽しかったな。リヴィたちと騒いで、冒険もして。森に三人だけでいたころにはできなかったことだらけだ。

 

 明日からもずっと、こんな毎日が続くのかな……。




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