Mana-Khemia ~zwei alchemist 二人目の錬金術士~ 作:村人A
イベント以外の課題とかは気が向かない限りぶっ飛ばしていくスタイル。
「……ニケちゃん、遅いね」
「また、どこかで遊んでるのかなぁ……」
フィロの爆発大事件☆(いつの間にか寝てたっぽくて、起きた時にヴェインがすぐ近くで寝てて死ぬほどびっくりした)から数日。今日も今日とてアトリエに集まにった私たちだが、いつも元気いっぱいなニケがまだ来ていなかった。
「お、噂をすればなんとやら、だね」
話していると、聞き慣れた軽快な足音。現れたのはニケ……なんだけど、なんか疲れてる……?
「おはよ、ニケ。……どうしたの? そんなに慌てて」
「しーっ! ちょっと静かに!」
焦った様子で周りをキョロキョロと見渡す。そしてなんかよくわかんないけどちょうどニケがすっぽり隠れられるくらいの物陰に隠れた。……え、ホントにどうしたの? まさかニケもNI☆N☆JAを目指すの?
「ニケちゃん?」
「しばらく匿って!! 誰か来てもいないって言ってね!!」
「……?」
ぴょこぴょことはねている髪の毛(とモフモフの尻尾)をさらに逆立て、完全に隠れてしまった。
一体なんなんだと首を傾げていると、アトリエに見覚えのない人たちがずんずんと入って来た。雰囲気からしてものっそい怒ってるっぽい。……なにしたのさ、ニケ……。
「ちょっと!」
「は、はい?」
「ニケって子、ここにいるでしょ?」
「あー……いえ、今日はまだ来てませんけど……」
「本当に? 隠してんじゃないでしょうね」
なんだこいつら。超ふてぶてしいぞ。言動からしてニケがなんかしたのは確定事項だけどさ。
「本当ですよ。あの、ニケちゃんになにか用事ですか?」
「用事って言うかね……」
「あんたらからも言っといてよ。あの子、誰彼構わず色目使って目障りなのよね」
「へー、ニケが色目を……ファッ!? マジですか!?」
「マジよ。うちの彼氏にまで手出してんのよ、あの泥棒猫!」
「やっぱ獣人っていやよn「おーけーおーけー、分かりました。後でニケには言っておくんで、お引き取りください」……ちゃ、ちゃんと伝えといてよ」
最後まで言わせるか。ヴェインの教育に悪い。
そんなわけでさっさと女三人衆を追い払い、ニケに事の真偽を聞こうとする。
「ニケ、もう大丈夫そうだよ」
「ねえ、ニケちゃん。今の話……あれ?」
「いないね。どっか逃げたのかな? ……いつの間に……」
先ほどまでニケが隠れていた場所を見るも、すでに影も形もなく消え去っていた。やっぱニンジャ目指してるのかな。ニケって。
「どうしよう……さっきの、ニケにちゃんと伝えた方がいいよね?」
「だねー……。絶対あの人たちまた来るもんねー……」
「そうだね……探しに行こうか」
気は乗らないけどね。
◇◇†◇◇
「にゃっふふ~ん、にゃふ~ん♪」
「あー! いた!」
「ひっ!?」
ニケを探して歩き回ること30分。ようやく見つけたニケは鼻歌なんか歌ってた。のんきだねぇ。
「びっくりしたー……またあいつらかと思った……」
「びっくりした、じゃないよ。のんきにこんなところで……」
「そうだよ。急にいなくなっちゃって、探したんだからね!」
ヴェインとフィロがニケを嗜める。ほんと、探したよー。なんか迷子の猫を探してる気分だったけど。え、サルファ? サルファは迷子になんてならないし。むしろ私たちが迷子になる方だったね!
「ごめんごめん。じっとしてるの苦手で。あいつらなんか言ってた?」
「人の男に手を出すな、とかなんとか……」
ヴェインの言葉に、ニケはあちゃー、というような表情……してるか?
「えへへ、失敗失敗。いちおフリーの男だけ狙ったつもりだったんだけど」
「まさかの事実だった!? そういうのはちょっとどうかと!」
「えー、だってー……」
「その先は俺様が説明してやろう!」
聞き慣れたトラブルメーカーの声と共に、上からグンナルさんが降ってきた。……えっ。
「わあ!? い、今どこから……」
「ヴェイン。気にしたら負けだよ」
「うむ。些細なことは気にするな。それよりも今はニケの事だろう」
本当にね。グンナルさん見てると私たちの持ってるささやかな一般常識ががらがらと崩れていきますよ。ええ。現在進行形で。
「さて、ニケが獣人であることは当然承知していると思うが……」
「まあ、耳とか尻尾とか生えてますし……」
「そんなに珍しいことじゃないよね? 獣人の子なんていっぱいいるし……」
フィロの言葉にうむ、と頷いて、だがしかしと続けた。
「確かに、我々と同じように暮らしているが……いくつか常識がずれている所があってな……。特に、個体数が少ない故に、恋愛観が著しく異なっているそうだ」
「個体数? ってことは、まさか……」
「そうなの! たくさん婿を連れて帰って、たくさん子供を作るの!」
「……わぁ」
ちょーっと恥ずかしいセリフをなんの躊躇いもなく言いきった。……なるほど、恋愛観が異なるというのは正しいようだ。
「だから、そういうことを大声で言うのは……」
「えー、なんで?」
「なんでって、それは……」
「ヴェインよ。世の中には種族の数だけ……いや、人の数だけ常識があるのだ。自らのそれが全てだとは思ってはいかん」
「格好いいセリフを変なところで使わないでください、グンナルさん……」
なんかなぁ。格好いいのか悪いのか分かんないや……。
「グンナル先輩、ニケちゃんのこと詳しいんですね」
「そういえば、教えたことあったっけ?」
「部下の情報は把握しておくものだからな。では、俺様は次の用事があるのでこれで!」
用事……って何だろう。また金のマナと契約交渉しに行くのかな? ……あの時は少しだけグンナルさんを見直したなぁ。……少しだけ。
「忙しい人だなあ……」
「ま、それでこそグンナルさんというかなんというか……」
「そうだね……あ、ニケちゃんにあの人たちの話を……」
「あ、それはもう大丈夫。さすがにうちも人の物には手を出さないって。また別の男探さなきゃなー。んじゃ」
ひらひら、と手(と尻尾)を振って何事もなかったかのようにニケは帰って行く。
「……本当に分かったのかな、あれ」
「さあ……」
本日も、我々のアトリエメンバーは騒がしい。
◇◇†◇◇
「それではお待ちかね……期末試験の内容を発表する!」
数日後。ゼップル先生の宣言に、教室の生徒たちが一斉に歓声を上げる。やっぱり気になっていたようだ。
「はいはい、静かに。今回の試験のポイントは、いかに短時間で指定の物を作れるか。そこで……」
と、ゼップル先生はセリフを切り、ごそごそと何か取り出した。
出てきたのは……なんか、白いヒモみたいな何かだった。……なんだ? あれ。
とか思ってたらレシピが配られた。一人一枚。紙には『強い繊維 ~食物繊維~』と書かれていた。
「明日の夕方までに『食物繊維』を作ってくること。これが実物だ」
明日の夕方!? とか、そんな、無理だよー! などと清々しく期限を述べたゼップル先生に、生徒から文句……というか弱音? が殺到する。
本人はどこ吹く風とばかりに『そんなに喜んでもらえると先生嬉しいなぁ』とか言ってるけど。
「と言うことで今日は解散! みんな頑張ってね!」
終わるんかい。
「明日の夕方だって……。大変!」
「うん……どうしよう……」
「んー、とりあえず調べてみよっか。家から持ってきた父様の本にも書いてあるかもしれないし」
案の定、ヴェインは不安そうだ。もっとこう……気楽に出来ないかな。……サルファに言ったら、『ヴェインも考えすぎな所はあるが、お前はお前で気楽すぎだ』と言われたけども。
「じゃあ、わたしは図書館で調べてくる。二人はアトリエに行ってて!」
「うん、分かった」
「私は本取ってくるから少し遅れるよ。量は少なかったから、あんまり期待しないでね」
それだけ言って寮の自室に走る。結局、食物繊維に関する本は一冊もなかったけど……これは、フィロに頼るしかないなぁ。
父様も、もっと入門書とか置いておいてくれればよかったのにー。一部は読めないし、意味分かんなかったし。『熱量』がどうの、『マナ』がどうの、『なんとか理論』がどうの……。読めないし難しいし所々破けてるしで意味不明だった。
……父様って、何の研究してたんだろう?
◇◇†◇◇
「ごめん、遅れちゃった!」
「おー、来た来た。お疲れ様ー」
「お疲れ、フィロ。どうだった?」
アトリエでフィロを待っていると、慌てたように走りながらフィロが駆け込んできた。かなり急いできたみたいだ。
「そんなに難しいものじゃないみたい。材料さえあれば、すぐ作れそう」
「なんだ、案外簡単なんだね。期末試験なんて言うからもっと難しいのかと思った」
ちょっと心配してたんだけど、損だったかな。
「うん。材料はアトリエにあったはずだから大丈夫。ただ、高台に一本だけ生えてる樹から取れる『ホッフェン』を使うと高品質になるみたい」
「んー……時間もないし、別にそこまでしなくても……」
「ばかものおおおおおお!!!!」
「……また出た」
ニケの言葉に、またもや背後から湧いて出てきたグンナルさん。どっから出てくるの。本当に。最近はもう気にするだけムダだと思って諦めてるけど。
「ありあわせで作ろうなど言語道断! 最高を求めずして何が錬金術士か!」
「……なんか、グンナルさんにだけは言われたくないというかなんというか」
それ言ったらあなたそもそも試験すら受けてないでしょうが。
「それはそうだけどさー……」
「軟弱者め……ええい! ならばホッフェンを取ってくるまで、この錬金釜は使用禁止だ!」
「なんですとぅ!?」
THE☆爆弾発言Mr.グンナル。なんということを言いやがるのかこの人は。
「いや、困るんですけど。他に作るものあるんですけど。リフュールポットとか」
「そんなものは買えばよかろう! 使いたければ、さっさとホッフェンを取ってこい!」
「ええー……」
「無茶苦茶だ……」
ヴェインの言葉に心の底から同意する。ま、仕方ないか。グンナルさんだからね。……これで納得できちゃうのが怖い。
◇◇†◇◇
「む?」
「ロクシス……」
「あれ、ロクシスくんと……ええと、悪の手先」
「トニとレーネだ! ったく、いい加減覚えろ! ……っとまあ、それはおいといて……どうやら目的は同じみたいだな」
ホッフェンを半ば無理やり取りに行かされた高台で、ロクシスくんとトニ先輩(笑)とレーネ先輩に会った。どうやらロクシスくんのホッフェン採取の手伝いをしているらしい。
「あー! ずるい! 上級生に手伝ってもらってるー!」
「かわいい後輩を手伝うのは当然でしょ? あなたたちの先輩が冷たいだけよ」
「……否定できない……というか羨ましい……。あれ、レーネ先輩のアトリエってもしかして優良物件?」
「あら、それじゃこっち来る?」
若干涙目になりながらロクシスくんたちを見つめていると、レーネ先輩から(まあ冗談だろうが)勧誘された。そういえば、この二人って最初に私たちを連れて行こうとしてたな。忘れてた。
「冗談。いくら優良物件でも今のアトリエの先輩がフリーダム問題児でも、移る気はありませんよ。……魅力的ではありますが」
「リヴィ!?」
「そっかー、残念」
「……急ぎましょう。こんな連中に付き合っているヒマはありません」
あれ、心なしかロクシスくんの目が冷たいぞ? なんか嫌われるようなことしたかなぁ。ジェイルさんから、『人見知りだから仲良くしてあげてね!』とかは言われたけど……。
……行っちゃった。
「私たちも行こうか」
「うん……」
「……このままあいつらと材料山分けってのも面白くないな……よし、ロクシス。しばらくあいつらを足止めしておけ」
「足止め、ですか?」
「あいつらが嫌いなんだろう? せっかくだ、少し痛めつけてやればいい」
「……別に、好きでも嫌いでもありませんが。先輩の命令では仕方ないですね」
「そういうことにしといてやる。それじゃ、任せたぞ」
「あんた、すっごい悪い顔してるよ」
「うるせえ!」
……ものすごい些細な違いですが、リヴィとフィロの一人称がビミョーに違うんです。リヴィが漢字で『私』、フィロはひらがなで『わたし』です。いや、ほんと小さな違いですが、見分けに使って頂ければ……。