Mana-Khemia ~zwei alchemist 二人目の錬金術士~   作:村人A

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今回の話の後半はマナケミアのドラマCDから。初めて聞いたときは殺意を覚えました。人間って怖い。あとサルファのキャラ崩壊にびっくり。

追記

ヴェインのモノローグまでを追加。キリがよかったので。途中まで同じです。


第7話 予想以上にトニが悪の手先やっててびっくりした……。許すまじ

「……ん? あれって……」

 

「……ロクシス?」

 

 たったかたったかと高台を登り、さくさくとその辺に湧いてたモンスターをぶっ飛ばしていき、ようやくホッフェンの樹があるであろう場所……の、手前に到着すると、そこには樹(ホッフェンの樹ではない)に寄りかかって本を読んでいるロクシスくんがいた。

 

「どしたの? あの二人は?」

 

「…………」

 

「わっ、ちょっと!?」

 

 ニケの問いかけにも答えず、ロクシスくんは臨戦態勢に入っ……えっ。

 

「少しばかり、君たちを痛めつけなくてはならない。先輩の命令なんでね」

 

「そんな!?」

 

「やめようよ、こんな……」

 

 いや確かにさ。人見知りだとは聞いてたけどさ。これ人見知りじゃないですよジェイルさぁん!?

 

「君たちの実力がどれ程なのか、見てみたい気持ちもあるしな」

 

「いい加減にしてよ! そんなのに付き合ってるほどヒマじゃないわよ!」

 

「そっちにその気がないなら、一方的にやらせてもらう!」

 

「……っ、危ない、さがって!」

 

 ロクシスくんとの戦闘(不本意)が、今! はじまる!

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

「なんでこんなことを……」

 

「いや本当、なんでー……?」

 

『油断するな。相手は本気だ』

 

 そんなこんなでなぜかロクシスくんと戦うことになりましたとさ。

 ……さて、ふざけてばっかもいられないなぁ。とりあえずいつも通りちょちょいっと武装します。……あれれー、ロクシスくんの目が冷たいぞ。高台の入り口で会った時より冷たいぞー。

 視線を追ってみると、どうやら私とヴェインを見つめて……否、睨んでいるようだ。なんでさ。

 

「それが君たちのマナの力……気に入らない!」

 

 だからなんでッ!? というか、ヴェインは分かるけど私はマナなんていないんですけどぉ!? なに? 私ってサルファと重複契約でもしてたの!?

 

 内心で叫びながら、双剣を構える。そういえば、真面目に戦闘するのって久しぶりじゃないか?

 

 最初はヴェインのアナライズからのフィロ&ニケのハンマー。ねえちょっと待ってフィロあなた今どこからハンマー出したのと突っ込みたくなる。しないけど。

 

「ぐっ……」

 

「ケンカ売ってきたんだし、ちょーっと我慢してよっ! ロクシスくんっ!」

 

 かーらーのー。二刀流ならではの連続攻撃。残念ながらヴェインみたく格好いい技名などないが。考えよっかなー……。

 

 ……が、ロクシスくんだって黙ってやられているわけじゃない。即座にカードやコモンスキルを用いて反撃してくる。

 

「なめるな……!」

 

「うぇっ!? 冷たい冷たいっ!」

 

 ロクシスくんにアイスレインをぶつけられた。うぅ、冷たいよぅ……。すぐ両手の剣を構えてガードしたけどさぁ……氷の破片が降ってくるんだよね……。地味に痛いし冷たい。

 

「仕返しだよっ! 『フラムゲイズ』!」

 

 お返しにこんがり焼いてあげました。服がちょっと焦げただけだけど。

 ロクシスくんが服についた火を消そうとしているところに間髪入れずにフィロが爆弾を投げつける。……大丈夫なの、あれ? ロクシスくんの目の前で爆発したけど。

 

 爆発の衝撃でバランスを崩したロクシスくんに、ヴェインが左手の剣を振り抜く。峰打ちなのか、あるいは対人戦だからサルファが刃を潰しているのかは分からないが、ヴェインの剣はロクシスくんに当たるも切れることはない。

 

「これでッ……!」

 

「ちっ……」

 

 しかし、潰していても打撃ダメージは入る。

 

 ロクシスくんは体力の限界が来てしまったのか、がくりと膝をついてしまった。

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

「ふっふーん。偉そうなこと言ってたけど、その程度?」

 

「……そっちは四人がかりだろう」

 

「うぐっ」

 

 じろり、というロクシスくんの視線になにも言えない。確かにこれは集団リンチですわぁ……。

 

「それに、目的は達成できた」

 

「あ、そうだった! 早く材料を……」

 

「うん、急ごう」

 

 膝をついてしゃがみこんだままのロクシスくんを残し、ホッフェンの樹へと急ぐ。……でもなんか、いやな予感がするんだよね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こうも違うのか……。マナを持っているだけで……。…………くそっ!!」

 

 走り去ったあと、ロクシスが悔しそうに地面を強く殴り付けていたことも。

 

 

 

 

 

「これだけ取れば充分でしょ」

 

「そうだな。あとは仕上げを……」

 

「……ちょっと。それはやばくない?」

 

「くくく、あいつらの悔しそうな顔が目に浮かぶぜ……!」

 

 

 ホッフェンの樹が危機に陥っていることも、誰も知る由はなかった。

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

「あれ……?」

 

「どうしたの? ニケ」

 

 ホッフェンの樹に向かって走り続け、ようやく到着するというところで、不意にニケが足を止めた。

 ……ん? なんだろう。風が……乾いて、熱い風が吹いてきてる? それに、なんだか焦げ臭いような……?

 

「風が熱いような……気のせいかな」

 

「ニケも? なんだろう……でもまあ、ホッフェンはすぐそこに……あ!?」

 

 見えたのは、無残に燃やし尽くされた樹と、その近くでニヤニヤと笑っているトニ先輩と気まずそうな顔のレーネ先輩。

 白くてふわふわしたホッフェンなど跡形もない。

 

「そんな……樹が……」

 

「ひどい……」

 

「残念だったなぁ。せっかくここまで来たのに」

 

「ごめんねー……。アタシは、止めたんだけど……」

 

「これは……」

 

 後からついてきたロクシスくんも、無残な樹を見つめて呆然としている。

 

「よう、時間稼ぎご苦労さん。ほら、お前の材料だ」

 

「先輩が、これを……?」

 

「見ろよ、あいつらの顔。ははっ、胸がスカッとしたぜ」

 

「…………」

 

 悪びれた様子もなく材料を渡してくるトニ先輩……もう、先輩なんてつけなくていいや。トニを睨み付けるロクシスくん。……どうやら、知らされていなかったようだ。

 

「ここまでする必要あったの?」

 

「いや、これは……」

 

「植物にだって命はあるんだよ! 絶対に許せない、こんな……」

 

「さすがにアタシもいい気はしないわね……。早めに帰りましょ」

 

「そうだな。ロクシス、戻って調合だ」

 

 ぽつり、と一人残されたのにも関わらず、燃えた樹を見つめているロクシスくん。もはや、なにも言葉が見つからないようだ。

 

「ひどいよ……この樹は、なにも悪くないのに……」

 

「サイテーだね、あんたたち」

 

「……確かに最低だな。返す言葉もない」

 

 下を向き、俯きながら言う。見ていられなくなったのか、ロクシスくんはそのまま帰ってしまった。

 

「……帰ろっか。もう試験なんて、どーでもよくなっちゃった」

 

「そうだね……ここにいても、しょうがないし」

 

 ニケとフィロも、辛そうな表情をして先に戻ってしまった。

 樹を見つめているヴェインとサルファの隣に立ち、いまだに黒い煙を上げている樹だったものを見つめた。

 

「ひどいね……。なんで、ここまでしなくちゃいけないんだろう……」

 

「……うん。いくらグンナルさんが嫌いだからって、これは……」

 

『救いがたいな。錬金術士って連中は……』

 

「みんながそうってワケじゃないと思うけど……」

 

『俺が知ってる錬金術士は、ロクでもない奴ばっかりさ』

 

 下を向きながら、サルファがそう言った。ロクでもない奴か……。……私たちは、どんな錬金術士になるんだろうな……。

 

「…………もう、助けてあげられないのかな。この樹…………」

 

『……おそらくな。できることなら、救ってやりたいが……』

 

「……人が壊したのに、人が直せないなんて、さ。無責任な話……だよね。……私たちがもっとすごい錬金術士だったら、助けられたのかな……」

 

「そうだね……。もし、できるなら……」

 

 

 

 

 

 そこまでヴェインが言ってからの記憶はない。

 

 意気消沈して、いつの間にか寮の自室に戻って寝ていた。

 

 あの樹がどうなったのかは知らない。

 

 久しぶりに、人の悪意というものを見た気がした。

 

 夢を見た。

 

 昔の夢。

 

 まだ学園に来る前の夢。

 

 たくさんの人の悪意を浴び続けた頃の夢。

 

 

 

 

《久しぶりに町まで来たけど……今日は、大丈夫かな……?》

 

《……ヴェイン。嫌なら、無理して来なくてもいいんだよ? 全部、私がやっておくから。……ヴェインが、石を投げられたり、追いかけ回されたりする必要は……》

 

《ううん、大丈夫。いつまでもリヴィ一人に任せていられないよ。リヴィこそ、隠れてて。……大丈夫だよ。今日こそ……》

 

 元気な八百屋さんとおばさんの声が聞こえてくる。……普通の人なら、この声が日常なんだろう。

 

《あ、あの……すいません!》

 

《らっしゃい! 何が欲しいんだい、坊主?》

 

《あ、ええと、あの……》

 

《ん? あんた、ヴェインって子じゃないのかい? あの山の奥に住んでる》

 

《あ、あ……はい……。そうです、けど……》

 

 おばさんは、ヴェインの返事を聞くなり悲鳴を上げ、八百屋のおじさんは怒鳴り声を出した。

 

《ひぃぃ!》

 

《なんだと!? ちっ、帰れ帰れ! お前なんかに売るモンはねえぞ!》

 

《えっ……? でも、あの、その……》

 

 たじろぐヴェインに、なおも罵声を浴びせる。困惑しているヴェインに、硬いものがぶつかった。

 こつん、ではなく、がすっ、と。

 

《お前! また来たのか!》

 

《もう来るなって言っただろ! この黒猫使いの魔女め!》

 

《ねぇねぇ、魔女って、女の人なんじゃないの?》

 

 小さな女の子の声で、石を投げつけていた男の子が首を傾げた。

 

《あ、そっか……んー、じゃあ、こいつは……》

 

《じゃあ、悪魔だよ》

 

《そうだよ、悪魔だよ!》

 

《悪魔だ! 出てけ出てけー! えーぃっ》

 

《うわっ》

 

 先ほどよりも少し大きな石がヴェインに投げつけられる。それを見たおばさんは、止める……わけもなく。

 

《こら、お前たち、こいつに近づくんじゃないよ》

 

《大丈夫だよ! 俺たちがこいつ追い出してやるんだ!》

 

《そうだそうだー!》

 

《うわっ、痛い、痛いよ!》

 

 ヴェインがやめてと言っても止まる気配はない。むしろさらに勢いは酷くなっていく。

 

《えーぃっ》

 

《えいっ》

 

《うわっ、痛い、痛いってば……!》

 

 投げつけられる石から逃げると、子供の中の一人がヴェインを指差した。

 

《やった! 逃げたぜ! よぉし、もっとぶつけてやれぇ!》

 

《おい、お前ら! あんまやり過ぎんなよ! ……しっかし、あいつが噂のヴェインってやつか。初めて見るが……陰気くせえ顔してやがるなー》

 

 八百屋のおじさんが忌々しそうにヴェインの走って行った方を睨み付けながら言った。

 

《ええ……》

 

《何しに町まで来たってんだ》

 

《あの山には、昔から得体の知れないやつが住み着くからねぇ……。ほら、十年間もさ》

 

《ん? あぁ! そうだったなぁ! ったく、さっさと野垂れ死ねばいいのになぁ》

 

《本当よね。ふふふふふ……》

 

《ははははは……》

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

《はあっ、はあっ……やっぱり、来なきゃよかったかな……でも……》

 

《大丈夫……? ヴェイン……。やっぱり、私が行った方が……》

 

《大丈夫だよ……。……ただいま、サルファ》

 

 山の奥にある、みすぼらしい小さな小屋の扉を開ける。そこには、一匹の黒猫が呆れたように座っていた。

 

《……また町に行ってたのか、二人とも……。懲りない奴らだな》

 

《そ、そんなんじゃないよ! ちょっと、買いたいものがあっただけで……》

 

 サルファに厳しい目で見られて、とっさに反論するも声が小さい。

 

《ほーぅ? 何を買うつもりだったんだ?》

 

《何って……食べ物、とか》

 

《川に行けばいくらでも魚が釣れるじゃないか》

 

《毎日魚だけじゃ飽きるよ……。肉はリヴィ一人に狩りを任せてるんだし。それに、味付けの塩だって……》

 

《前にもそう言って一度でも買えた試しがあるか。大体魚は生でかじるのが一番だ》

 

《それは……僕たちにはちょっと……》

 

《ほらほら、サルファ。もういいでしょ? ヴェインが心配なのは分かるけど、あんまりぐちぐち言ってると、今日の魚が釣れないよ?》

 

《……はぁ。不便な味覚をしているな、人間は。まあいい、釣竿の準備をしろ》

 

《えっ……。今日も、魚なの?》

 

《何にも食べないつもりなら、それでもいいがな?》

 

 サルファの意地悪な声に、ヴェインが若干涙目になりながら私の方を見た。

 

《……リヴィ、お肉は……》

 

《……ごめん。罠にはかかってなかった……》

 

《そ、そんなぁ……。分かったよ……》

 

 えへへ、と申し訳なく思いながら、今日も猪やウサギはかかっていなかったことを告げると、ヴェインはしょんぼりしながら釣竿を持って近くの川に向かった。

 ……その後ろ姿を見て、今度は自分で狩れるように弓でも作ろうかな、と思った。

 

《……おいヴェイン。ぼさっとするな。竿が引いてるぞ》

 

《えっ? あっ、とと……わっ!》

 

 サルファに言われて、魚が食いついていることに気付いたヴェインが慌てて竿を引くと、なかなか大きな魚が釣れた。竿に繋がった紐にぶら下がりながら、びちびちと音を立てて跳ねている。

 

《なかなかの大物だな》

 

《……はぁーぁ……》

 

《嬉しくなさそうだな。そんなに魚が嫌か?》

 

《まあ、人間って雑食だし。魚ばっかり食べてると、栄養も偏ってよくないんだよ?》

 

《いや、そうじゃないよ。そうじゃなくて……。さっき、町でちょっと……》

 

 ヴェインの言葉に、サルファが呆れたような声で話す。

 

《そんなに落ち込むなら、最初から町になんて行くな……》

 

《……そうだね。町のみんなは、僕のこと嫌ってるんだし……ねえ、二人とも。どうして僕は嫌われてるんだろう?》

 

《……さあな。人間の考えることはよく分からん》

 

《……私は、ヴェインとサルファがいればそれでいいやー、なんて》

 

《ちゃんと答えてよ! 真面目に聞いてるんだからさぁ……》

 

 半分ボケたような私のセリフに、ヴェインがむきになって噛みついてきた。

 

《むぅ。真面目に、答えてる、ぞ?》

 

《真面目にって……ああ! 先に食べないでよ!》

 

《むぐっ。新鮮なうちに、食うのが、むぐむぐっ。一番だ。どうだ、お前たちも、もぐ。食え》

 

《いや、だから生じゃ……はぁ、もういいよ!》

 

《サルファ。それは、君に焦げた魚を食べさせるのとほぼ同義だよ》

 

 もぐもぐと魚を食べながらサルファが答えた。私たちにも生で魚を食べることをすすめてくるので、私はサルファに『人間が生で魚を食べるとはどういうことか』を分かりやすく説明した。

 

《……仕方ないだろう。お前たちも、俺も。普通の存在じゃないんだ》

 

《……普通じゃないから、かぁ……》

 

《うーん。私は、ヴェインは普通にかわいくて普通に優しくて普通にいい子だと思うけどなぁ》

 

《お前は本当にヴェインが好きだな……。ヴェイン、お前そんなに人間の友人が欲しいのか? 人とのふれあいが欲しいのか?》

 

 人とのふれあいという言葉に、私はすぐさま反応した。

 

《HEYかもん! まいぶらざー! おねーちゃんの胸に飛び込んでおいでー!!》

 

《そういうことじゃないぞ、リヴィ……》

 

 サルファはまたもや呆れたような声を私に向けると、『で、どうなんだ?』とヴェインに続きを促した。私はノータイムですっぱりと切り捨てられたショックで体育座りで落ち込んだ。

 

《え? ええと、それは、その……そ、そんなことないよ! ほら、僕にはサルファも、リヴィだって、いるし……》

 

《本当にそう思っているのか?》

 

《本当だよ! ……ごめんね》

 

《ふっ。別に謝る必要はない。……変なこと聞いたな。さて、そろそろ帰るか》

 

《そうだね。これだけ釣れれば充分だし》

 

 不意に明るい声で続けたサルファにつられるように、ヴェインもまた明るい声で返事をして立ち上がる。

 それを見て、少しだけ申し訳ない気持ちになりながら私も立ち上がった。魚の入ったバケツを二人で持ち、家に向かう。

 

《……人間の友人か。あいつらには、必要なんだろうな……。俺もいつまでも傍にいられるわけじゃない》

 

 サルファが何か言っていたけど、よく聞こえなかった。なかなかついてこないサルファに気付いたヴェインが、大きな声で呼びかける。

 

《どうしたのサルファ! 置いてくよ!》

 

《あぁ! 今行く!》

 

 サルファはヴェインに返事をすると、また何かぶつぶつと呟いてた。でも、やっぱりよく聞こえなかったし、独り言を盗み聞きするような趣味もないし、気にしないことにした。

 

《……案外寂しがってるのは俺の方かもしれないな。あいつらにとっても俺しかいないように、俺にとっても、あいつらしか……。いずれにせよこの生活もそのうち終わる。あいつがそう望むのであれば、そう遠くないうちに……》

 

 サルファが何を言っていたのかは分からない。でも、なんか寂しそうだったから、帰ったあとに三人でたくさん遊んだ。

 

 結局、その日から一週間はずっと魚で、やっとウサギがかかった日にはヴェインがすごくキラキラした笑顔をしてたんだっけ。サルファは、『俺が食うのは魚だ』と言ってお肉は食べなかったから、二人で焼いて食べた。

 

 大した調味料もなくて、家の裏に生えてるハーブと一緒に炒めただけだったけど。一週間ぶりのお肉は、とても美味しかった。

 

 ……そこまで見て、目が覚めた。

 

 前半分は嫌な夢だったけど、後ろの方は楽しい思い出だった。

 

 ああ、そうだ。なんとかグンナルさんを説得して、ありあわせでもいいから食物繊維を作らないと。

 

 夢を振り払うように大きく伸びをして制服に着替える。

 

 さあ、今日もヴェインと一緒にアトリエに行こう。

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

「あ、いた!」

 

 制服に着替えて、ヴェインと二人でアトリエに向かって歩いていると、後ろからニケの声が聞こえてきた。

 振り向くと、なぜか頬を膨らませたフィロ。

 

「やっと見つけた! もー、二人とも来るの遅いよ!」

 

「どうしたの? そんなに慌てて……」

 

「なんかあったー?」

 

「二人とも知らないの? えっとね……」

 

「直接行った方が早いって! 行くよ!」

 

「行くって、どこへ?」

 

 すごい勢いでニケが詰め寄ってくる。どことなく嬉しそうだ。

 

「昨日の樹のところ。ほら、急いで!」

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

「樹が……」

 

「元に、戻って……えええ!?」

 

 フィロとニケに連れられて、昨日やって来たホッフェンの樹のところの行くと、そこには青々と葉を茂らせる樹があった。

 

 

「朝から学校中、この話でもちきりだよ」

 

「でも、どうして……?」

 

「さあ? 先生の誰かがこっそり治したんじゃない?」

 

「すごい……錬金術って、そんなこともできるんだ……!」

 

 てっきり治せないものだと思ってた。壊して治せないなんて無責任だと思っていたけど、目の前で生命力をみなぎらせて天に向かって生えている樹を見ると、錬金術はすごいものなんだと思った。

 単純な感想だけど、それくらいすごいと思ったのだ。

 

「それより、ほら! わたしたちも材料採ってこう」

 

「うん! 夕方までには間に合うね!」

 

『…………』

 

 サルファは、すっかり元通りになった樹を物憂げに見つめていた。

 

 

 

「これくらいあれば充分だよね」

 

「うん。早く帰って調合を……」

 

 そう言ってニケが振り向くと、そこには大きな木の実を背負った小さな子供がいた。

 

「わ! なによあんた!」

 

「ニケ? どうかしたー? 急に大声出して」

 

「この子……マナ?」

 

『あ……りが……き……なお……』

 

 木の実背負ってるし、多分木のマナかな。何か言ってるけど、何て言ってるか分からない……。

 

「……なんて言ってるんだろう?」

 

「さあ……。すごく内気な子なんだね」

 

「お礼、言ってるみたいだよ。樹を治してくれて、ありがとうって」

 

「なるほどー……ってニケ、分かるの!?」

 

「んー、なんとなく」

 

 ふむふむ。でも、樹を治したのって先生たちだよね。私たちじゃ治せないし……。

 

「別に僕たちが治したわけじゃないけど……」

 

「うん。だからあんたも気にしなくていいよ」

 

『ううう……お……っしょ……』

 

「え? だからいいって言ってるのに」

 

「ニケ、なんて言ってる?」

 

 マナの言葉にニケが反応するけど、あいにく私たちじゃなに言ってるか分からないので通訳ぷりーず。

 

「お礼に、一緒に行きたいって」

 

「一緒に……」

 

「あ、でもいいんじゃない? ニケちゃん、マナと契約してないんでしょ?」

 

「へ? うち?」

 

「うん。わたしとヴェインくんは、もうマナがいるし」

 

「まぁ、そうだけど……リヴィは?」

 

「いいんじゃない? 私じゃなに言ってるか分からないし」

 

 意志疎通が出来なかったらダメだと思うんだよね。なんか、ニケにぴったりな気もするし。

 

「そっか。うーん……あんたは、うちでいいの?」

 

『……う』

 

「分かった! それじゃよろしく!」

 

『よ……しく!』

 

 祝! ニケがマナと契約しましたー! 後で歓迎会でも開こうか! いやーめでたいめでたい!

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

 さっそくアトリエに戻って食物繊維を調合。苦労した甲斐あってかなり高品質なものができました!

 試験も無事合格、さてそれじゃあ今日は解散しようかー……というところに、ロクシスくんが通りかかった。

 

「…………」

 

「…………」

 

「なによ。なんか言ったらどう?」

 

「……試験は、終わったのか?」

 

「たった今提出してきたわよ。残念だったわね!」

 

「ニケ、落ち着いて」

 

 治ったとはいえ、燃えたことに変わりはない。ニケはかなり刺々しい態度だった。

 

「……昨日のことは本意じゃない。まさか先輩が、あんな行動に出るとは……」

 

「なによそれ。自分だけ悪くないとか言うつもり?」

 

「…………」

 

「ニケ」

 

「……せっかく試験終わっていい気分だったのに。もう台無し! 行こ行こ!」

 

「う、うん……」

 

 かなり苛々しているニケはフィロと一緒に帰ってしまった。置いてけぼりにされた私とヴェインに、ロクシスくんが話しかけてきた。

 

「……ヴェイン。リヴィ」

 

「え?」

 

「……どうかした?」

 

 ロクシスくんは、くいっと眼鏡を押し上げると、真剣な声で続けた。

 

「昨日の件は、わびておく。すまなかった」

 

「そんな、僕たちに謝られても……」

 

「そうそう。誰かは分からないけど、先生のおかげで治ったんだし。謝るなら、あの樹にね」

 

 私たちがそう言うと、今度は目付きを鋭くして……というか思いっきり睨み付けながら爆弾発言……宣言を投下した。

 

「だが、はっきり言っておく。私は君たちが嫌いだ」

 

「…………そっか」

 

 それだけ言って、ロクシスくんはいなくなってしまった。……ジェイルさん。弟君に嫌われましたー……。今度相談しに行こうかな。

 

「なんでだろう……。嫌われるようなこと、したのかな……?」

 

『さあな。人間の考えることはよく分からん』

 

「そうそう。もしかしたら、なにか誤解があるのかもしれないし。……グンナルさんのせいって可能性もあるし」

 

 転校してきたばっかりの頃にいきなり『嫌なヤツ』呼ばわりしたからね。一緒にいたし、嫌われててもおかしくない。……グンナルさんまじ許すまじ。

 

 

 

 ◇◇†◇◇

 

 

 

 ────ロクシス……なんで僕たちのこと嫌ってるんだろう。

 

 分からないと言えば、もう一つ。あの燃やされた樹のことも……。

 

 ……ダメだ。疲れてて頭が回らない。入学してから、毎日騒ぎが起きてるし……。リヴィはむしろ、自分から突っ込んで行くし……僕を巻き込んで。

 

 来週からは、しばらく学校も休みだし。ゆっくりできるといいな……。

 

 




ヴェイン「そういえば、リヴィはいつもどうやって買い物してたの?」

リヴィ「ふもとの町のさらに一つ隣の町まで変装して行って、バレないうちに買い物だけ済ませてとんずらしてた」

サルファ「……ちなみに、その町ってどの辺りにあったんだ?」

リヴィ「ふもとの町までが大体10分。隣町までは一時間くらい」

ヴェイン&サルファ『…………………………』
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