「第一次攻撃隊ヨリ入電。敵戦艦小破二、中破一。巡洋艦小破一、中破一トノコトデス」
「……狙イ通リ敵ノ対空火力ハ衰エタ筈、直グニ第二次攻撃隊ヲ発艦サセナサイ」
「了解、第二次攻撃隊発艦ヲ急ゲ!!」
艦隊を指揮するモンタナ級戦艦、
「敵ノ航空攻撃ノ恐レハ無イモノト思ワレマスガ、コチラニハ例ノ“マジックヒューズ”モアルコトデスシ、直掩機モ爆装シテ攻撃ニ参加サセテハ如何デショウ?」
「ソウネ。タカガ十機ヤ二〇機程度ナラ、戦艦ノ対空砲火デモ十分落トセルデショウ……良イワ、アナタノ意見ヲ採用シマショウ。最低限ノ直掩機ダケヲ残シ、戦闘機ニモ爆装サセナサイ」
「了解シマシタ」
既にトラック諸島には碌な航空戦力が無いことは分かっていた。
彼女の絶対の自信を強固なものにしているのが、“マジックヒューズ”と呼ばれる対空用の近接信管、VT信管の存在である。
40ミリ以上の砲弾に装着できるこの信管は、これまでの時限信管とは大きく異なり、信管から微弱な電波を発信する。そして、敵機から跳ね返ってくる反射波をドップラー効果によって距離を検知し、一定の距離に近づくと起爆するというものだ。
従来の時限信管を用いた対空砲火では、その命中率はおよそ2500発に1発程度が関の山であったのに対し、このVT信管を用いた場合の命中率はおよそ700発に1発。その命中率実に約3・5倍という驚異的な水準まで向上したのである。
敵が航空戦力を殆ど持たない以上、第一次攻撃隊が新兵器の
その後は戦艦と巡洋艦による猛烈な艦砲射撃で、この戦闘は
そしてそれは今回も──その筈だった。
「第一次攻撃隊ヨリ入電!! 未確認ノ新型ト思ワレル重巡クラスノ艦ヲ確認、新型艦カラノ
「……聞キ間違エデハナイノ?」
「ハイ、間違イアリマセン!! 我、コレヨリ
「待チナサイ、後ハ戦艦隊デモ十分ヨ。ココデ無駄ナ損耗ヲスル必要ハ無イワ、直グニ帰投サセテ」
「了解、直グニ帰投命令ヲ……ッ!?」
その瞬間、彼女達が見ていた世界から色が失われた。
放たれた
「ナ、何ガ起キタ!? 誰カ報告セヨ!!」
「ワッ、ワカリマセン……目ヲ、目ヲヤラレマシタ!! トラック諸島ノ方デ、何カガ爆発シタヨウデス!!」
「火薬庫ノ引火ニヨル爆発デハ無イノカ?!」
「違イマス!! 島デハ無ク、空ガ、空ニ太陽ガ……!!」
「コレハ、現実ナノカ……夢?」
「神ヨ……」
眼前に浮かぶ無数の太陽。人智を超越したそのある種神々しさすら覚える光景に、如何に歴戦の深海棲艦達と言えどその心は浮き足立ち、受け止めきれない程の強大な精神的ショックによって、遂には本来深海棲艦が持たない神への祈りを捧げる者まで現れていた。
──彼女ただ1人を除いて。
「愚カナ……神ナド此ノ世ニ居ナイワ。神ナドト言ウノハ、所詮人間共ノ創リ出シタ、自ラノ罪カラ逃レ縋ル為ノ幻想ニ過ギナイ!! 目ヲ覚マシナサイ、サモナクバ……私ガコノ手デ介錯スルワヨ」
その彼女の言葉と行動は、未だ混乱冷めやらぬ今の深海棲艦達の正気を取り戻すには充分だった。
「各艦、状況ヲ報告シナサイ」
「……
「……
「
「
「
「
艦隊の主力たる戦艦と空母が我に返った事により、巡洋艦と駆逐艦も次第と落ち着きを取り戻し、乱れていた艦隊の足並みが徐々に元の整然さを取り戻していく。
「第一次攻撃隊ハドウナッタ」
「第一次攻撃隊カラノ通信、途絶シマシタ」
「……一機モ残ラズニ全滅シタトイウノカ」
「先程の爆発は恐ラク敵ノ新兵器ニヨル攻撃カト……」
「ソンナコト、トックニ分カッテルワ……作戦ハ続行ヨ、第二次攻撃隊ノ発艦ヲ急ガセナサイ」
「デ、デスガ……敵ノ攻撃ノ正体ガ掴メナイママ作戦ヲ続行スルノハ危険デス!!」
「狼狽エルナ!! アレ程ノ威力ガアル兵器、ソウ何発モ撃テルモノデハナイワ……ソレニ、想像シテミナサイ。アノ兵器ガ、我等ノ巣ノ頭上ヘト降リ注グ日ヲ」
「……ワカリマシタ。直チニ第二次攻撃隊ヲ発艦。ソノ後ハ艦隊速力ヲ上ゲ、戦艦隊ノ砲撃デ一気ニケリヲツケマショウ」
彼女達の心には既に失敗の二文字は無い。
──何故なら彼女の作戦は完璧なのだから。
「全艦ニ告グ、作戦ニ変更ハ無イ。第一次攻撃隊ハ恐ラク壊滅シタガ、所詮ハ人間ドモノ最期ノ悪足掻キ……奴等ノ全テヲ奪イ、殺シ、食ライ尽クシナサイ!!」
やがて深海棲艦達の正気は、その魂に刻み付けられた狂気へと変わっていくーー。
2年以上間が空いてしまい、本当に申し訳ありません。
謹んでお詫び申し上げます。
最初に登場する超兵器はなんでしょう?
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超高速巡洋戦艦「ヴィルベルヴィント」
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超高速巡洋戦艦「シュトゥルムヴィント」
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超巨大双胴戦艦「播磨」
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超巨大潜水艦「ドレッドノート」
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超巨大爆撃機「アルケオプテリクス」