「敵機、全機撃墜しました」
「……日本軍の被害は?」
「駆逐艦荒潮が敵潜の雷撃によって撃沈されたようです。そのほか戦艦長門、陸奥、大和の3隻が敵航空機によるロケット弾攻撃と雷撃を受けて陸奥が中破、大和及び長門が小破。幸い航行に支障は無いようですが、巡洋艦以下の艦艇にもそれぞれ被害が出ている模様です」
「そっか……荒潮さん、間に合わなかった……」
艦隊護衛型としても作られたアールヴァクには、味方を守れなかったという強い虚しさが心臓を抉るようにグサリと刺さる
「艦長。お言葉ですが、嘆いてる暇はありませんよ。……まだこの海域に敵潜水艦が潜んでいる可能性は高いですし、すぐに第二次攻撃隊が迫ってくるでしょう。艦隊が敵戦艦の攻撃圏内に入るのも時間の問題です」
だが状況は非情にも、アールヴァクが自責の念に駆られる時間すらも与えてくれない。
「そう、だよね……。まだやらなきゃいけないことは、沢山残ってる」
「艦長、ご指示を」
やりきれない思いを胸に抱えたまま、それでもアールヴァクは戦う。否、戦わざるにはいられなかった。
(……残った艦だけでも、守り切って見せる)
「うん……まず敵潜水艦の脅威を払う、対潜戦闘用意!!」
「了解、対潜戦闘用ォ意ッ!!」
カーンカーンカーン!! というけたたましい鐘の音と共に艦内が再び慌ただしくなる。
「アクティブ捜索始め!」
朝潮が撃沈されてから凡そ20分足らず。前世の大戦中期に登場した戦略型原子力潜水艦ならいざ知らず、大戦初期型の技術水準しか持たないこの時代の潜水艦は戦略原潜と比べると可潜艦と言っても過言ではない程度の性能しか持たず、水中速力はどんなに速くても精々5〜15kt程度。
先に撃墜した深海棲艦機が、前世の大戦初期の米軍の機体であった事を考えると、深海棲艦は米軍の装備を模倣している可能性が高い。
そうなると、先程朝潮を雷撃した潜水艦は米軍が大戦初期に使用していたガトー級、若しくはバラオ級である可能性が濃厚だった。
とはいえ、水上艦に対する潜水艦の優位は相当なものであり、相手の練度如何によっては手痛い反撃を食らう可能性もある事を考えると、決して油断はできない。
「航空機も即時待機させて。
「了解、航空機即時待機。準備出来次第発艦!!」
「おっしゃあ待ってたぜ!! ようやく俺らの出番だな!!」
「朝潮ちゃんの敵討ちだ、敵潜を血祭りに上げてやろうぜ!!」
航空機発艦用意の号令を受けて、今まで出番のなかった航空機搭乗員達は我先にと自らの愛機へと走る。
「駆逐艦朝潮より入電です」
「内容は?」
「“先ニ荒潮ヲ雷撃シタ艦ハ、潜水艦“カ級”ト思ワレル。十分ニ警戒サレタシ――”、以上です」
「カ級……? 聞いたことのないクラスだけど」
「はい、艦内のデータに該当する艦艇は存在しませんでした」
「……戦闘が終わったら詳しく話を聞く必要がありそうだね。これから先、敵の戦力が分からないんじゃ対処のしようがないよ」
「了解しました。もしかすると、こちらの世界では同一艦でも我々の世界とは名称が異なる可能性もありますね」
「……艦娘は前世の日本艦と同じだったんだけどね。通信士、朝潮に打電して。内容は“忠告ニ感謝スル。仇ハ必ズ討ツ”」
「了解」
………
……
…
『……何ダ、アノ艦ハ。識別表ニ無イ艦ダナ、新型カ?』
日本の艦には見慣れない全身鼠色の、凹凸の少ないのっぺりとした艦体。
艦橋の形はどこか高雄型重巡洋艦に通ずる意匠ではあるものの、艦全体が高雄型のそれよりも大きく、どこか軍艦というよりは宇宙船のようなスマートな印象を受ける。
そして何より、普通であれば煙突から濛々と立ち上っているはずの黒煙が一切見られないのも異様であった。
『艦隊旗艦殿、サッキノ凄マジイ爆発ハアイツノ仕業デハ……?』
ブリューナクの純粋核による攻撃。その巨大な爆発は、海中に潜んでいた潜水艦にも艦全体が揺さぶられる程の大きな揺れとして感じ取れる破壊力だったのだ。
『ワカラン。確カニ奇妙ナ見タ目ダガ、ソンナ破壊力ヲ持ッテイルヨウニハ見エナイガ……』
未知の艦に対する警戒。それは、深海棲艦側にとっても同じ事であった。
『艦隊旗艦殿、見タトコロ奴ハ独行ノヨウデス。三番艦ハ殺ラレマシタガ、コッチハ護衛ノ駆逐艦ハ見当タリマセン……今ガ戦功ヲ立テルチャンスデハ?』
『……ソウダナ、ドコマデイッテモ所詮ハ水上艦ヨ。水ニ浮カブモノガ水ニ潜ム我ラニ叶ウ訳ガ無イ、ヨシ攻撃ダ。
だが、深海棲艦達は味方艦を沈められた事で、それが自らの破滅を招く事になるとは夢にも思わず、かえって闘志に火が点いてしまっていた。
『了解、魚雷装填完了』
『ヨシ、我ガ艦ノ魚雷発射ニ続イテ全門斉射シロ。アイツヲ沈メレバ勲章モノダゾ……前部魚雷発射管、1番カラ6番マデ。
艦隊旗艦の
『ヨシ、潜望鏡下ロセ。以後潜望鏡深度デ無音航行ニ移ル』
『了解』
………
……
…
「レーダーに感、潜望鏡を探知……目標は潜水艦らしい!!」
「尻尾を掴んだ、絶対に逃さないで」
「了解、測的始め!!」
「艦長、航空機即時待機完成しました」
「ん、わかった。準備出来次第発艦させて」
「了解。間も無く航空機発艦する」
「航空機発艦!!」
アールヴァクの後部飛行甲板から、ローターの先端が空気を叩くバタバタというけたたましい音を立てて数機のヘリコプターが闘志を剥き出しにして発艦していく。
全体的にスラッとしたUFOの様な見た目の機体、
RAST(Recovery Assist, Secure and Traverse)と呼ばれる装置によって格納庫から飛行甲板に運ばれると、機体上部の畳まれていた主翼を展開する。
その大きさは日本軍の零式水偵や一〇〇式司偵は言うに及ばず、四式重爆をも超え、一式陸攻とほぼ同じ、爆撃機並の大きさである。
主翼を展開した
「航空機、発艦完了!!」
「魚雷音探知!! 本艦に接近する雷数4!! 070度、250度、共に距離1.5!!」
「魚雷回避運動始め!!」
アールヴァクのガスタービンエンジンがキィイイイン……と、まるでジェット戦闘機のような音を立て、エンジンの回転数を最大まで引き上げる。
「……ぐぅう、なんて凄まじい加速だよオイ!!」
「無駄口は叩くな、舌を噛むぞ……って、痛ぇっ!!」
アールヴァクの最大速力は魚雷艇やミサイル艇の速度を裕に上回る69.8kt……時速にして約130kmにも及び、乗組員には立っていられない程の凄まじい重力加速度がかかる。そのため、アールヴァクの乗組員は一部を除いて全員が4点式シートベルトを着用している。
「取舵030!!」
「了解ッ……とォーりかァーじ030!!」
(くっ……生身だと、こんなに加速がキツいなんて。でも、ヴェルナー艦長達はこれに耐えてたんだから……!!)
「取舵回頭を行う!! 総員何かに掴まれ!!」
彼女に搭載された新型高効率ガスタービンエンジンはアールヴァクの決して軽く無い艦体重量を物ともせず、グングンとその艦体を巨体に見合わない、“アールヴァク”、まさに太陽を引く馬の名に相応しい、まるで疾風のようなスピードへと加速させていく。
「
「艦長、誘導魚雷である可能性は低いと思われますが」
「念には念を、だよ。万が一があるかもしれないからね」
「了解しました、艦長がそうお考えならば。FAJ、MOD発射始め!!」
「魚雷推進音、遠ざかります!! 全弾回避した模様!!」
「よっしゃ、反撃の時間だ!! 気を引きしめろよ。対潜戦闘、VLA(
「VLA攻撃始め、射線方向052度」
「射線方向クリア」
「VLA発射始めよし」
「VLA用意」
「用ォ意……撃てェーッ!!」
掛け声と同時にVLA担当妖精がコンソールの横にあるスイッチを押し込むと、アールヴァクの前甲板上のVLSハッチが開き、勢いよく白煙を引いてASROCが敵潜の潜む海面上を目掛け飛翔する。
「ミサイル
その頃、アールヴァクを完全に見くびっていた深海棲艦カ級潜水艦は、思わぬしっぺ返しに大混乱に陥っていた。
『ワ、我ガ艦ノ後方カラ魚雷推進音!! 距離550(ヤード)!!』
『回避シロ!! メーンタンク注水、下ゲ舵一杯!! 最大戦速、深度200、急ゲ!!
ASROC(Anti Submarine Rocket)はロケットモーターを使い高速で空中を飛翔し、予めセットされた目標地点上空でロケットモーターを分離。その後、パラシュートで弾頭部の魚雷が着水し、敵潜水艦に向かって自立誘導を行う。
狙われた潜水艦はデコイや機関の停止など、あの手この手で魚雷を欺瞞する必要があるが、誘導魚雷など殆ど運用されていないこの世界においては、その対処法も確立されておらず、水中速力も遅い
『ギ、魚雷カラ探信音!! 逃ゲキレマセン!!』
『ナッ……ソンナ馬鹿ナ!?』
『魚雷音尚モ接近……300、200、100……!!』
『作戦中止!! 直チニコノ海域カラ離脱スル!!』
『チッ、畜生アノ悪魔メ!! グアッ、クソッ浸水ガッ!! ウワァァァアアッッッ!!』
瞬間、
その爆発は
擬音って使いどころが難しいですね……
※2019/6/5 一部誤字があったので訂正しました
最初に登場する超兵器はなんでしょう?
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超高速巡洋戦艦「ヴィルベルヴィント」
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超高速巡洋戦艦「シュトゥルムヴィント」
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超巨大双胴戦艦「播磨」
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超巨大潜水艦「ドレッドノート」
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