この話には残酷な描写が含まれています。
「…クソッ、深海棲艦の奴らめ!!選りに選ってこんな時に……」
飯山はパトロール中だった二式大偵からの報告に、一人デスクで歯噛みした。
「偵察機より入電!!『敵艦隊見ユ。トラック泊地ノ南東210浬ニオイテ、空母4隻ヲ中心トシタ有力ナ艦隊ヲ発見。敵ハ空母4、戦艦3、巡洋艦5、駆逐艦10隻。針路310度、速力22ノット』との事!!」
現在トラック泊地に停泊している艦は約20隻…但し、つい数日前に深海棲艦の急襲によって基地航空隊は壊滅。
現在本土に補充要請を出しているが、滑走路も敵艦隊の猛砲撃を受け復旧中。
虎の子の空母も数隻の護衛艦と共に輸送艦護衛任務についており、今の状況で出撃させられる航空機は数機の零式水偵と零観のみ。
それでも何もしないよりは遥かにマシだろう…そう判断するが早いか、飯山は直ぐに発艦命令を出した。
「水偵発艦急いで!!」
「よっしゃぁ、ようやく出番だぜ!!いっちょ敵さんのストーカーして来るとすっか!!」
「…威勢が良いのは良いことだけど、敵の制空隊に墜とされないように気をつけてね」
「大丈夫ですって、ご心配なさらず!!」
零式水偵のパイロット妖精達が、その眠い頭に自身で喝を入れる。
やがて各艦のカタパルトから勢いよく6機の零式水偵と3機の零観が射出され、敵艦隊が発見された方角へと扇状に飛んでいき…そして僅か10分の後、飯山の元へさらなる一報が入る。
「由良搭載の零観が敵の索敵機と接触、これを撃墜した模様!!」
「すぐに第一次攻撃隊が来るぞ!!大和、長門、陸奥の三隻を前面に展開させ敵機を誘引させる。古鷹、青葉、最上、三隈以下の艦艇は戦艦隊の内側に展開して撃ち漏らした敵を始末しろ!!」
トラック泊地の南東、花島水道を出た艦隊は敵攻撃に備え即時に防御体制を整える。
だが、この時艦隊は全員が空に意識が向ききっており…足下への意識がおざなりになっていたことを、後悔することになる。
「右舷距離300m、雷跡3!!」
「っ!?」
狙われたのは艦列の最後尾に居た朝潮であった。
突如として現れた雷跡に慌てた朝潮は面舵を一杯に取り、魚雷の迫る方向へと転舵しようとした…が、いくら軽快さが取り柄の駆逐艦とはいえ、艦隊運動の最中…更に言えば水道を出た直後の低速時を狙われてはひとたまりもなかった。
「駆逐艦朝潮、被雷ッ!!」
朝潮のやや右斜め前方を航行していた荒潮の見張り員が、悲痛な声で叫ぶ。
だがその声が彼の最期の声になった。
花島水道を抜けた先にはトラック泊地から出撃する艦隊を漸減すべく、夜陰に紛れて4隻のカ級がひっそりと待ち構えていたのだ。
先程朝潮を攻撃した1隻の僚艦が、荒潮の左舷へ向かって21inch Mk14魚雷4本を発射。
僅か700mの極至近距離で放たれたソレは、その全てが荒潮の船体へと吸い込まれていく。
そして荒潮の左舷へ4本の魚雷が命中し、ドンドンドン、と3回…命中したうちの1本は不発だった……途轍もない力で下から突き上げられる感覚と共に、荒潮の左舷に巨大な3本の水柱が上がる。
魚雷の穿たれた船体には大破孔が生じ、そこから急激に浸水し始めたのか、船体が急激に傾斜していく。
命中した魚雷のうち、船尾付近に命中した1本によって引き起こされた火災が荒潮が搭載していた爆雷へと引火…更に最悪な事に、その爆発で船体に突刺さっていた不発魚雷までもが誘爆する。
次の瞬間…辺り一帯を揺るがす規模の大爆発が起き、金属の軋む悲鳴のような音を立てながら荒潮の船体がまるで玩具か何かのように空中へと持ち上がる。
それは一瞬の出来事であったが…こうした惨劇を始めて目にする艦娘達には、まるで永遠かのように感じられた。
数秒後…海面に叩きつけられた朝潮の船体は竜骨が真っ二つに折れ、脱出しようとして海に飛び込んだ乗組員をも飲み込みながら、荒潮は海底へと没していった。
被雷してから、僅か1分30秒後の出来事である。
「対潜警戒厳となせ、対空対潜戦闘用意!!」
朝潮の被雷と荒潮の爆沈を目の当たりにしてしまった駆逐艦達は、戦友の仇を取るべく半ば半狂乱になりながら血眼で敵潜水艦を探し始める。
その甲斐あってか、雷と電の爆雷攻撃によってカ級1隻を撃沈する事に成功するものの…既に敵潜の大半は戦闘海域から離脱せしめており、必死の索敵、攻撃の殆どが徒労に終わったのだった。
そして更に大和の21号対空電探が艦隊に迫り来る敵機の群れを補足したことで、潜水艦狩りをしていた他の駆逐艦も慌てて陣形を組み直す。
「主砲三式弾装填、敵編隊の鼻っ面に叩き込みなさい!!」
潜水艦によって2隻の仲間をやられた艦隊は、完全に頭に血が昇っていた。
そしてその行き場のない怒りは敵編隊へとぶつけられる事になる。
「全砲門、一斉射ッ!!」
大和、長門、陸奥の三隻から、それぞれ45口径46cm砲…3基9門、45口径41cm連装砲…計8基16門の巨砲が、火山の噴火の如く咆哮する。
水面を抉り、大気を引き裂いて放たれたのは必殺の三式弾。
天に穿たれた25発の巨弾が織り成す破壊の咆哮が、地獄の底へ敵機を引きずり堕とさんと次々に殺戮の華を開いていく。
地獄の業火に咲いた魔性の華に見染められた者達は、次々とその魔手にと絡め取られていく…その中でも幸運な者は機体ごと爆散し、痛みさえ感じる間もないまま、一瞬のうちに意識が闇の中に消えることができた。
運の無い者は数千度の彩花に機体を焼かれ…地獄の苦しみの声にならない声をあげながら、その身もまた燃え盛り空を彩る花弁の一枚と化す。
そしてまた一機、また一機と、黒と橙の二色で紺碧の空を汚しながら、海面へ向かってひらひらと堕ちていった。
だが、咲き誇った魔性の華々の命もまた短い。
味方機が次々と焼かれる光景を目の当たりにしながらも、その命を自身の糧にするかのように、敵機の群れは歓迎の
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