謎の男こと整備士の調べがついた。
男の名前は鹿波室生。歳は24。
小学校、中学校共に公立の出だが、成績は常に学年首席。
中学校卒業後は高専に進学、機械工学を主に学ぶ。半導体、プログラミングなど電気電子情報にも深く精通し、こちらも首席で卒業。
その後IS学園に整備士として勤務。
勤務態度、能力ともに良好で、整備の他にバグやエラーチェック、デバッグにも携わる。
現在勤務四年目。これからも活躍が期待される。
「…へえ」
常に首席で卒業していることから、頭は悪くないのかもしれない。
しかし、調べた限りでは数多の有象無象から受ける印象と大差なく、何故この男がISコアを作れたのか、またISコアを使って何をするつもりなのか、まったく予測がつかない。
調べれば調べるほど、IS関連の企業から依頼を受けているわけではないことが決定的になっていく。
やや特殊だと言える部分は、この男が株式とFXで稼いでおり、海外のメガバンクなどの総資産が2億を下らないこと、IS関連の主要な企業の株を多く保有していることだけど。
これも、似たような人間は多くはないとは言え、ISコアが作れるほどの特殊性の発現とは考え難い。
そして何よりもこの男。
ISコアを完成させる気がないのか、と思うくらい遅々として作業が進んでいない。
もちろん、ISコアの反応はすでにある。
つまり、ハード側はもう完成している。
しかし肝心の内側、ISのプログラム部分。それも一番重要な心臓部分、ISの自己進化プログラムだけを完成させていない。
それも、わからないから進んでいない、というのではなく。
ほんの少しずつ進め、これまでのプログラムを見直し、無駄な部分を省き、簡略化できる部分を簡略化したデータをパソコン側に残している。
そんな作業を1日に数時間、しかも毎日ではないペースでやっていれば、ISコアはなかなか完成しない。
ISコアのプログラミングは私が最後に作ったコアの内容を丸々同じように作っていながら、パソコン側にあるデータはそこまで進めた内容を1から最適化している。
パソコン側にあるISコアのプログラム部分は一体どれだけデータ容量を削減されているのか。
しかも最適化されたデータが不具合が起きないかどうか、いちいちチェックをしながら作業を進めているのだ。
その様子は、まるで。
一つのパーツに15時間でも20時間でもかけて、300以上あるパーツを自分の納得いくまで作り上げる、プラモデル製作のような印象で。
自分にとってはわが子も同然のISコアを、そのように遊び道具にされるのは。
私には、到底認めることは出来なかった。
他者には基本、興味を示さない自分が。
会ってもいない人間に。
すでにほのかな敵意を抱いている。
これは確認しなければならない。
この男が、わが子達をどうするつもりなのか。
新しく生み出した子を、どうするつもりなのかを。
そして私は、自動拳銃のベレッタと、捕縛用の改造した大型狙撃銃ヘカートを携えて、IS学園に乗り込んだ。