とあるIS学園の整備員さん   作:逸般ピーポー

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多分これで過去編はいったんおしまい


始まりの前

3月24日。来週にはもう入学式である。来週から織斑君が入学し、ISの原作が始まる。

そんな日に、俺はたっちゃんに呼ばれたので生徒会室に来ていた。

 

「で、俺を呼んだ要件は?」

 

「ええと、たしか鹿波さんってプログラムとか、出来たわよね?」

 

生徒会室には俺とたっちゃん、あと虚さんしかいなかった。と言うか、この生徒会メンバーが生徒会として活動を始めるのは本当は明日かららしい。まあ、片付けとか掃除するなら今日がある意味ちょうどいいのかもね。

そう思っていたので掃除か雑用かと思っていたのだが、どうやら違うらしい。はて。プログラムとな?

たっちゃんは扇子を閉じたまま持ち、制服姿である。うん、やっぱり私服もいいけど制服もいいね。昨日の私服は可愛かったデース!可愛い子は何着ても映えるよなあ。ただ、かっちゃんだった頃は無邪気な可愛さが多分に出ていたのに対して最近のたっちゃんはやけに色っぽい感じに魅力的だ。うむ。ぜひ良い男を見つけろよ。あとナイスおっぱい。

 

「プログラムは出来ないことはないが…専門外だぞ?何をしろと」

 

「うん、ここ(IS学園)のサーバなんだけど。この間ハッキングを仕掛けられたらしいの」

 

「おいおい。大丈夫なのか、それ」

 

「幸い軽く仕掛けてきただけみたいですぐに逃げていったらしいわよ?多分狙いは明日から実装される生徒のデータ、それも織斑君のものが目的だと思うの」

 

「だろうなあ」

 

「それで、IS学園のサーバのプロテクトを緊急で強化したいんだけど、あいにく専門の人が今フランスに居るの。それで、鹿波さんにお手伝いをお願いしたいんだけど…」

 

「ふむ。ちょっと待ってね」

 

状況を整理してみよう。まず、こ↑こ↓、IS学園のセキュリティレベルは世界的に見てもトップレベルだ。

そんなIS学園のサーバにハッキングを仕掛けて追跡出来ていないとなれば、恐らくは亡国機業かクソ兎の仕業と見ていい。超凄腕のハッカーって線もあるけど。

ん?そう言えば追跡とかって出来てないのかな。そこんとこどうなん?

 

「追跡は出来なかったらしいわ。なんでもこちらの追跡を嘲笑うかのような鮮やかな逃げっぷりだったって」

 

「そうか」

 

そのレベルとなると、対クソ兎レベルのセキュリティやらプロテクト、ファイヤーウォールが要るな。…ふむ。クソ兎の好きなようにハッキングされかねない状況か。

クソ兎がうざったい高笑いでこちらを嘲笑している様子が簡単にまぶたに浮かぶ。許せんな。ああ、許せん。

 

ふむ。よし。受けよう。

あ、けどちょっと待って。期日とかどうなん。あったりするの?

 

「期日?」

 

「そう期日。あるのん?」

 

「はっきりとした期限はないけど、一週間かしら?それくらいよ?」

 

「ほーん」

 

んー、そうだねえ。どうするか。

とりあえずセキュリティをキッツいのにすればええんやな。よし。

アンサートーカー先生お願いします!

クソ兎(篠ノ之束)でも破れないようなセキュリティプログラムってどんなやつ?

 

そう思った瞬間、勢いよく脳内でアルファベットがダーッと流れていく。そう、それは新しいプログラムをダウンロードした時に、黒い背景のウィンドウにものすごい勢いで文字が流れていくように。

 

ストップ!ストーップ!

総行数は?

げぇ、24万8562行!?アカン。

最高まで合理化して最低限の行数で!

うむ、それでも22万1583行…。えーと、ざっくり22万行だとして。ブラインドタッチは出来るからおよそ1秒で一行タイピングすると仮定して。一時間では60秒×60分の3600行。1日八時間働く時間を全てセキュリティシステムの構築に費やすとしたら、3600行×8時間だから…えーっと。

28800行か。22万行を1日あたりの28800行で割れば、かかる日数になる…よな。うーん…7.64。1週間と半日かぁ…。まあ当然タイプミスや疲れも考慮しても、多分ギリギリ一週間では間に合わんなあ…。

 

「たっちゃんたっちゃん。多分無理じゃないけど、余裕を見ると一週間じゃあ終わんない」

 

「あら、別に1日くらいなら大丈夫だと思うわよ?ていうか、鹿波さん専門外なんじゃないの?大丈夫?」

 

「多分いける。ただ、いくつか条件があるけど」

 

「何かしら。というか、無理はしなくていいのよ?」

 

たっちゃんが心配気に俺の顔を覗きこんでくるが、知らんな。仮想敵があのクソ兎になった瞬間から、俺は止まるということを知らない。

君が!泣くまで!殴るのを!やめないっ!

うおぉん、俺は暴走火力発電所だ。なにそれ。

 

「いーや、やる。ただし、俺の本来の業務の代わりに二週間はプログラムの構築を業務にすることが一つ」

 

「それは大丈夫ね」

 

「二つ。多分プログラム中は手を止めるような余裕はないから、俺がプログラムをタイピングしながらでも水とか飲み物を飲ませてくれる誰かが常に居ること」

 

「私と虚が交代でどうかしら」

 

「それなら文句はない。けどそれ君らは大丈夫なん?」

 

「別に、去年の12月のことを考えれば平気よ?期間も決まっている訳だし」

 

 

去年の12月?ああ、たっちゃんが当主になったばかりの頃か。そんなに大変だったのか。お疲れ。

 

「そうか。じゃあ、残業は?」

 

「さすがに閉める時間を過ぎるのはダメ」

 

「よし。多少はオッケーってことだな。

あとは…そうだな。ああ、場所に指定はあるか?ここ(生徒会室)?」

 

「ここのサーバに接続しながらだから、多分物理的にここしかないんじゃないかしら」

 

「なら、休憩時間用に寝転がる事の出来るようにしてくれ」

 

「それ、必要なの?」

 

「当たり前DA!」

 

若干疑わしそうにたっちゃんがジト目…というか半目で見てくるが、こういうのは勢いが大事なのだ。あたかも当然のように言えば、無茶苦茶な要望が通ることもある!もちろん通らないことも多いが。

 

「うーん…。まあ、それは相談しておくわ。他には何かあるかしら」

 

「いや、ないな。ああ、あるとすれば、俺がプログラム書いてる間、たっちゃんが俺を抱きしめてくれればいいなー、というくらいか」

 

さりげなくセクハラをする人間の屑。うーんこの。

まあ断られるだろうし、冗談だけどね。さすがにそれは本気ではやらんよ。ほら、俺ってば良識ある大人だし?

そんなことを考えていたが、返ってきたのは予想外な答えだった。

 

「いいわよ?」

 

「え?」

 

あれ。聞き間違いかな。今なんか、オッケーみたいな意味の言葉が聞こえた気がしたけど。

 

「だから、それくらいならいいわよ?私でしょ?」

 

「あ、ああ」

 

あれれー?おかしいぞー?

きょとんとして事も無げに言うたっちゃんだが、きょとんとしているのはむしろ俺の方である。いや、普通ここは断るところだよね?え?俺がおかしいの?

ポカーンとする俺をよそに、じゃあ轡木さんに聞いてくるからー、と言ってたっちゃんはどっか行ってしまった。

しばらくしてはっ!と再起動した俺は納得した。

ああ、いつもの冗談か。ついつい真に受けてしまったが、そういえばたっちゃんは原作でも人をからかうのが得意だったね。

気にするだけ無駄無駄。さ、今からちょっとでも進めておきますかね。

 

俺は既に立ち上げてあったパソコンに向かって座り、頭の中にある文字列をキーボードに打ち込んでいく。結局その日は午後3時くらいから5時間ほど書き込み、終了。誰か脳内のイメージを具現化する機械作ってくんねえかな…。脳内の妄想映像を現実に映像化したり。脳内のメロディを楽譜にしたり。…脳内の文字列を現実の文字にしたりさ…。

 

なお、その後たっちゃんは8時になっても生徒会室に戻って来なかったので、俺はとっとと帰った。明日からは強行軍だからな…。

 

 

次の日。俺がいつも通り朝行くと、連絡が来ていた。

なになに…。お、俺の要望全部通った。よっしゃ。生徒会室で寝転んで休憩出来る。ああ、栄養ドリンクとか小腹が空いた時用にカップ麺も準備してもらおう。たしかポットはあったし。お箸もいるなあ…。

あれ、だんだんと生徒会室が泊まり込みの部屋になってないか?気のせい?いや、気のせいだな。うん。気のせいということにしておきましょう。

 

もう既に整備課のやつらにも連絡が来ていたらしく、頑張ってー。と雑な感じに送り出された。いてきまーす!

ならぬ、逝ってきまーす!

なお自業自得な模様。あほす。

 

さて、生徒会室に行くと既に虚さんが控えていた。これから一週間よろしくね?

 

「はい、こちらこそよろしくお願いいたします。何かご要望があれば、私達がお伺いいたします」

 

「あ、じゃあ栄養ドリンクは一箱とカップ麺を適当に3つほどお願い」

 

「かしこまりました」

 

すげえ。俺の超適当な指示に、何の疑問も質問も無く対応してくれるとか。うは、こんな美少女に言うこと聞いてもらえるとか役得!ひゃっほい!

 

最初はそう思ってました。はい。

 

虚さんはすぐに栄養ドリンクとカップ麺、そして気を利かせてミネラルウォーターを買ってきてくれた。そして俺はパソコンにひたすら脳内に浮かんだ文字をタイピング。

アンサートーカー先生…もっと…効率的で楽な方法はないんですか…。

答:ありません

マジかあ…。あ、楽な方法は?

答:音声入力。またはイメージインターフェースを介した視覚認識言語パッド

お、音声入力ええやん!ちなみに残り全部音声入力にするとかかる時間は?

答:10日と3時間24分52秒

 

おっせえ!え!なんで!?

答:音声による誤入力の多発

まじかよ。イメージインターフェースを使うとどれだけかかるの?

答:最短で24日と18時間2分31秒

なんで?なんでなん?なしてそんなに遅いんや…。

答:視覚認識の仕様としてカーソルの移動及び文字の決定に時間がかかるため

神は死んだ!

答:NO

すいません先生。最後のは質問じゃないです。そうだよね。俺がアンサートーカー先生もらったのって、神様からの贈り物だもんね。神に対して生きてるって表現が正しいのかは知らないけど。

 

あ、じゃあもっと効率的な方法は?

答:人体を改造しIS適性を微弱に保持、意識をコアネットワークに接続し…

すいません先生。もういいです。人体改造とかいやです。ショッカーもライダーも一度として憧れたことはありません。僕は戦隊派でした。

 

そんなバカな事を考えながら三時間。昼休憩の時間です。

そんなお昼ご飯の時間には、俺の腕はもはやプルプルしていた。アカン…。三時間ずっとタイピングとかアカン…。これからはちゃんと一時間に一回、10分くらいの休憩をとろう…。

 

「あの、大丈夫ですか…?」

 

虚さんにも心配されてるが、正直大丈夫じゃないです。腕を動かす気にならないの…。

 

「お嬢様からは最大限の協力をするように言われています。よろしければ、私が鹿波さんにご飯をお持ちしますが…」

 

ん?どゆこと?あーん?あーんイベントなの?

 

「一般的にはそのように言われる行為ですね」

 

虚さんが嫌なら別にいいよ。後で食べればいいし。

 

「私は鹿波さんが構わないのであれば気にしません」

 

俺は気にするよ。だって俺虚さんに何かしてあげたりとかしてないじゃん?ねえ。

 

そう言うと虚さんはフフッ、と上品に笑った。え、何よ。

 

「いえ、私は既に明るいお嬢様を取り戻してくれたことで十分鹿波さんのお世話になっておりますので」

 

いやー、あれね。うん。特に俺が何かした訳じゃないからね。うん。

 

そう言うも、虚さんは優しく微笑むばかりだった。

 

結局、ご飯はあーんされました。

味?わかるわけないじゃん!

 

 

午後から来たのはたっちゃん。良かった。これ以上虚さんと一緒にいたら、恥ずかしさで持たなかった。ナイスたっちゃん。

 

「ん?虚と何かあったの?」

 

いや、虚さんは悪くないんや…。ただ単に俺が意識し過ぎてるだけなんや…。

 

「?」

 

笑顔のまま首をかしげるたっちゃん。可愛い。

さて、午後からもタイピングじゃーい!

 

「おーぅ!」

 

たっちゃんも一緒に声を出して手を突き上げてくれたところで作業再開。すると、後ろからたっちゃんが俺の頭に顔を置いてきた。そして後頭部には柔らかな感触。そして俺の胸元にはたっちゃんの両腕。

え。まさか。

 

「ん?」

 

まさかマジでたっちゃんが俺を抱きしめながら作業することになるとは。あ、たっちゃんがちょっと頭を動かしたのが分かる。首をかしげたのかな?

でもたっちゃん。悪いけどタイピング中にはなるだけ動かないでね。

そう言うと、

 

「んー♪」

 

とだけ返ってきた。ああ、頷いたり声を出すと動いちゃうもんね。しかし柔らかい…。あと温かい。首が柔らかに挟まれている…。

俺は(どことは言わないが)ある一部と共に元気になり、その後は一時間ごとに休憩を入れながらタイピングして過ごした。タイピング中はずっとたっちゃんがくっついて来てて、結構恥ずかしかったです。はい。

あと栄養ドリンクにストローを差した状態でストローを口元に持ってきてもらったりした。こうすると画面を見てタイピングしながら飲み物が飲めるので非常に楽。これは虚さんにもやってもらおう。抱きつきはなしで。

 

 

 

二日目。今日の午前はたっちゃんから。今日もよろ。

ではさっそくやっていこー。

昨日の半日でもはや定番になってしまった体勢で今日もタイピング。カチャカチャ。柔らかい。ふにゅふにゅしてるう…。俺の首は昨日から感覚が鋭敏になってる気がする。俺気にしすぎぃ!

そういえば、と、あることが気になったので休憩時間にも基本的に引っ付いてくるたっちゃんに聞いてみた。休憩時間くらいは離れてもええんやで?

 

「んー…鹿波さんは、私じゃイヤ?」

 

全然。むしろバッチコイ。

 

「じゃ、何も問題ないわね!」

 

そう言って嬉しそうにするたっちゃん。うーんかわいい。

そういえばたっちゃん。暇じゃない?

 

「別に?だって、鹿波さんに飲み物飲ませてあげたりしてるし」

 

けど、大半俺がずっと打ち込んでるだけやで?

 

「鹿波さんにくっついていられるから大丈夫」

 

さよけ。けどたっちゃん。俺は知ってるんや。君、俺の髪の毛たまに口に入れてるやろ。やめなさい。

 

「はぁーい♪」

 

まったく。くんかくんかはすはすまではいいけど、お口に入れるのはアカンよ。主に危険度的に。

…なんか最近たっちゃんが変態性を帯びてきてる気がする。年頃の女の子として男に興味をもつのは別にいいけど、髪の毛はむはむはやめましょうねー。

 

ちなみに昼食は普通に食べた。別にくっついたりとかなし。うん、これくらいの距離感でいいのよ。

あーん?

なかったよ。

 

 

さて、午後から来た虚さんにたっちゃんが引きずられて行ったのを確認し、作業再開。なんかずっとたっちゃんがくっついてたから首周りが寒く感じる。が、一人でずっとタイピングしているとそれも気にならなくなった。

今日はちょっと遅めの7時まで作業。これならなんとか31日に終わりそうかな?

 

 

 

さて三日目。今日の朝は虚さんかなー、と思って生徒会室に行くと、そこにはたっちゃんの姿が。あれ?今日は虚さんお休み?

 

「今日から私がやるわ!」

 

バーン!とかいう効果音を背景に、なにやら腕組みまでして自信満々に言うたっちゃん。どうしたんや。

 

「ふっふっふ、ようやく一週間分のお仕事を終わらせて来たからね…。これで、31日までずっと!1日じゅう!鹿波さんと!イチャイチャ出来るわ!」

 

グッ!と拳を力強く握りながら叫ぶたっちゃん。はあ。さいで。イチャイチャはせんぞ。

 

「いいの。鹿波さんはそのままで。あ、今日終わった後にでも、膝枕してあげよっか?」

 

ほほう!たっちゃんの膝枕!するする、超する。

 

「じゃあ、決定ね!」

 

そんな感じでゆるーく今日も始まった。

 

ひたすら脳内の文字をタイピングする俺。その後ろで俺の頭を胸にかかえ、時々俺が水、と言えば水を飲めるようにしてくれるたっちゃん。その日はひたすら脳内ドーパミンが溢れだし、午前中はずっとたっちゃんとくっついたままタイピングをした。たまに腕を休めながら。…そろそろ腱鞘炎になりそう。ちゅらい。

 

そして生徒会室で仲良くお昼。たっちゃんが突然、

 

「あーん♪」

 

とか言ってきたけど無視。ちなみにいつもは食堂で買ってきてもらったやつを食べるか購買の弁当なのだが、今日はたっちゃんが作ってきてくれた手作りのお弁当(二人前)だった。つまりたっちゃんの方の具と俺の方の具は同じ。なので無視。しかし最近、ほんとにたっちゃんの距離感が近い気がする。何が問題って、最近たっちゃんと一体化(意味浅)してる時間が長いからか、あんまり気にならないのが最大の問題である。これ、訴えられたら一発で俺負けるぞ…。女尊男卑な世情的に。

 

 

 

さて、午後である。それにしても、今日は暖かい。春が近づいてるなあ、と思うと同時に、たっちゃんの身体が当たってる部分がそろそろ暑い。なので離れてもらうことにした。

 

「たっちゃんたっちゃん。ちょっと暑くなってきたからさ。ちょっと離れるか、制服一枚脱いでくれない?」

 

そして当然のようにセクハラ。流れるようにセクハラ。最低である。俺が。

ただ、実際たっちゃんの改造制服のベストはわりと地が厚く、ずっと頭が当たっていると暑くなってくるのだ。なので脱いでもらうのも一応解決法としては間違っていない。下心を多分に含んでいるので、そう言う意味では多いに間違っているが。げっすぅ!俺が。最低やな。知ってた。

 

しかし、やはりというべきか。最近のたっちゃんはどこかで頭を打ったようだ。もしくは暖かくなってきたので頭のネジがゆるんだか。

 

「ん。制服を脱げばいいのね?」

 

そう言って離れるたっちゃん。いや、離れるだけで十分です。だからその布擦れの音はなくていいです。そう思うも言い出しっぺだから言えない俺。ならどうしてセクハラするんですかねぇ…。頭のネジが緩んでるのは俺かもしれない。

 

そして再び頭に当たる、柔らかい2つの膨らみ。あ、なんかさっきよりも後頭部も柔らかいぞ。なんだろう。

先ほどよりも、よりはっきりと柔らかさを首筋に感じつつタイピング。もはや腕だけ別の生き物なんじゃないかというくらいずっと動いてる。いや俺が動かしてるんですけどね?腕重い。絶対後でたっちゃんに膝枕してもらおう。美少女はいつでも男の癒し。8つも下だから事案だな。訴訟。敗訴。…膝枕してもらうの、やめておいてもらった方がいいかもしれん。

なんて馬鹿なことを考えてて気付いた。後頭部の柔らかさは、これたっちゃんのお腹だわ。さっきまで厚手のベスト着てたから感じなかったけど。今カッターシャツにネクタイだけだもんな。そりゃ柔らかお腹の感触がほぼ直に当たってるから分かる訳だ。後頭部って意外と感度いいんやね。なんて考えてふと気づく。

あれ?たっちゃんネクタイしてる?そんな感じしないけど。

若干の焦りとともにたっちゃんに聞いてみた。

たっちゃんネクタイ着けてる…よね?

 

「ネクタイ?しよっか?」

 

してないのか…。どうりで後頭部にボタンと柔らかお腹、頭頂部におっきな柔らかおふたつを感じる訳だ…。

そんなことばかり考えていたら、外はもう夕方。もう少しやったら今日は終わろう…。

そう思っていると、今までずっと俺の胸元にあったたっちゃんの両腕がだらんと下に。ちょうど俺の両膝の上くらいに降りてきた。どったん?

 

「あ、気になった?ごめんね」

 

や、それはいいけんど。疲れたかね?

 

「うーん、まあそんなとこ」

 

さよか。疲れたんなら仕方ないな。うんうん。

でもねたっちゃん。さっきよりも強くお腹が当たってるんだけど。一瞬あれ?俺の後頭部に当たってるのっておっぱいじゃないよね?って素で思っちゃうくらい押し付けてきてるよね?大丈夫かたっちゃん。ていうか首筋におっぱい当てるよりも俺こっちの方が楽やねんけど。頭上におっぱい。うん、俺壊れてきてる。疲れちゃったからね、仕方ないね。さっきからおっぱいおっぱい言い過ぎィ!

 

 

7時。

「終わったー!」

 

今日の分は終了!あとはちょっとだけ寝っ転がって、う~んと伸びーをしたら終了です。お疲れ様でしたー。

 

「ん」

 

そう言ってたっちゃんがマットスペースに女の子座りして自分の膝をぽんぽんしてる。あれかな?無言の催促かな?

でもたっちゃん。その向きだと、おいちゃん真っ直ぐ寝るとちょうどたっちゃんの膝に真っ直ぐになるんや。なに?真っ直ぐ寝ろと。

 

しばらくして、またぽんぽん。ぽんぽん。ぽんぽん。…負けました。

諦めてたっちゃんのお膝に。

おっ…ふぉぉお…おおおぉぉお…。

やーらか。あったか。これはいいですねえ。今ならたっちゃんに堂々とセクハラ出来る気がする。あ、仲良くなってからはいつもしてるわ。今さらか。最低やな。

まあどうせ俺の腕も動かないし、今俺の頭の下にスカートの布地がある。大丈夫やろ。

 

「今ならたっちゃんのスカートの裏地が見える気がする…!」

 

「見たいの?」

 

おっ、ストレートに返ってきた。ぶっちゃけ本当に見たい訳じゃないしね。別に?…すいません嘘つきました。ちょっとだけ興味津々です。ちょっとだけ興味津々て何。

 

「もー、仕方ないなぁ♪」

 

そう言いながら、たっちゃんは俺の頭を支えてスカートの布地を抜きとった。え、ちょっと待ってまだ俺何も言ってないであああああ目の前にたっちゃんのスカートがあるうううう…!

たっちゃんのスカートを裏から見るという、超絶変態的行為をしているという現状が、そしてスカートを裏から見ているこの視界が、ひどく疲れた俺をダイレクトに刺激する。あ、整備服でよかった。だぼだぼだからバレない。バレないはず…。なんかじーっと視線をあそこに感じる気がするけど気のせいぃぃぃぃぃ…!

 

ちなみに裏から見るたっちゃんのスカートは、真っ正面は上辺の長い台形の白色の生地。そしてその両端にプリーツ部分があり、俺の方に飛び出ている。そこから両端に広がっており、両サイドの生地は足側に黒のラインが…って何を俺は真面目に分析してるのか。変態か。変態だった。仕方ないね。

うん?待てよ?…今俺の顔の目の前にスカートがある。つまり、俺の頭頂部側にはたっちゃんのあそこが…!?

 

「あ、今えっちなこと考えたでしょ。ダメよー?」

 

そんなことを笑いながら言ってくるたっちゃん。ばれてーら。でもたっちゃん、ちょっと上を見ればパンツが見えるとなれば、見ようとしないのは男じゃないと思うんだ。

そんなわけで、若干身体がずり落ちた感じにしつつ、ちょっとあごを上げーーーようとしたら顔をスカートの布越しに押さえられた。こっ、これはまた…!

 

「だからダーメ。今日は見せられるやつじゃないの」

 

「ちなみに何色」

 

「ん?ベージュのシンプルなやつ。だから今日はダメよ」

 

なにやらたっちゃんの中には基準があるらしい。しかし、当然のようにセクハラし、それに堂々と答えるとか、なかなかこの空間はカオスってますね。主にピンク色に。脳内ピンク。淫乱。

アウトだって?むしろチェンジだろ。アウト3つ。

 

しかしたっちゃんのスカートの裏地に顔が押し付けられているせいで、俺は息をするたびにたっちゃんのスカートの匂いを嗅いでることになってる。わーいたっちゃんの匂いがするー!さっきまでずっとべったりだったせいで、あんまりたっちゃんの匂いがしないように感じる定期。こんな定期あってたまるか。買います。

 

それから何事もなかったかのように俺は立ち上がり、たっちゃんと一緒に生徒会室を出る。くそう、なんでまだたっちゃんは未成年なんや…。だがそれがいい。

 

 

 

 

四日目。昨日言っていた私がずっと宣言はマジらしく、今日も午前中からたっちゃんだった。ちなみに俺は顔を会わせるのに恥ずかしさから少しためらいがあったのだが、たっちゃんは別に平気そうな顔をしていた。これが男女差か…。いや、ただ単に俺がシャイなだけかもしれん。

今日も午前中からたっちゃんべったり。しかも今日は最初からベストを脱いでいる。ふおお…これは麻薬だぜぇ…。もしくは病気。病名は、たっちゃんおっぱい病。ひでぇ名前だな。いやひどいのは俺の頭か…。もしくはスケベ心。

 

あ、でも今日は午後から虚さんが来た。そしてたっちゃんは相変わらず俺の頭上におっぱいぺったり。意外とおっぱいって重たいんやね。慣れてきてそう思った。頭が(おっぱいで)重い。これは全国の非モテな男達に呪い殺されますねぇ…。

あ、でも待てよ?世の中には貧乳はステータスという言葉があってな…。

やはりたっちゃんのが大きいだけか。そりゃ肩こるよなあ…。ちなみにたっちゃん的にはおっぱいは俺の頭の上でも肩の上でも楽だからどっちでもいいらしい。

でもねたっちゃん。他の生徒の子が来てもガン無視はどうかと思うの。急いで虚さんがその子からプリント受け取ってたけど、えっ…。って声が聞こえた後に物音一つしなかったから、多分あの子固まってたで。何?虚さんが対応したから万事問題ない?そうだな(便乗)

 

ちなみに今日は一時間ほど延長した。またしても昨日と同じ体勢で膝枕された。でも普通の膝枕だったんで良かった。さすがに昨日みたいなのを連発されるとおいちゃん狼さんになっちゃいかねないからね。いやそれはないか…。さすがに生徒、それも女の子を襲うほど落ちてない。いや十分すでに屑かもやけど。仕方ないやん?たっちゃんかわいいもの。

 

で、昨日よりは少し早めに終了。たっちゃんが若干虚ろな目で

 

「鹿波さん成分か…鹿波さん成分が…」

 

とか言ってたけど無視。なんや鹿波さん成分て。

壊れた?

 

 

五日目。今日は29日。さあ、31日には仕上げないと入学式の日からこんなデスマーチ染みたことをやる羽目になる。頑張ろう。まあ身から出た錆びなんだが。

今日もたっちゃんと一緒に…かと思ったが、居たのは虚さんだけだった。なんでも更識家の方で急遽仕事が出来ちゃったんだって。思わず笑った。絶対たっちゃん涙目か恨み節だったでしょ。そう聞くと、

「そうですね。どちらもです。泣きながら恨み事を言っていましたよ」

そう返ってきた。やっぱり。残念だったなたっちゃん。

( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \なんて

思わず高笑いしてしまった。さて、今日も頑張ろう。

 

 

六日目。なんとか今日中には終わりそう。ちなみに今日も虚さんだけだった。まだ終わらなかったのかな?御愁傷様である。

 

 

そしてその日の夕方に終わった。明日は普通に休むとしよう。

そして明後日からは入学式。織斑君が来るはずだ。

さて、俺以外に転生者はいるのかな?楽しみだ。




初めて10000字を超えました。マジか

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